1. みつばは もともと、どんな ところに はえて いたの?
1. もとは、うす暗い林にはえる野草だった
1. 日本原産の野草 ── 湿った林から、江戸時代の畑へ
みつばを 見ると、1ぽんの くきに はが 3まい ついて います。「みつば」という なまえは、ここから きて います[1]。
やまの なかの、うすぐらくて しめった はやしや、さわの ちかくに はえる くさでした。たかさは 30〜80センチ ほどの くさです[2]。にほんが ふるさとの やさいで、そういう やさいは すくないと いわれます[1]。
むかしは、のはらで とって たべて いました。はたけで そだてる ように なったのは、えどじだいと いわれます[1]。
くらい はやしが すきな くさを、どうして いちねんじゅう おみせに ならべられるのでしょう。まず、はじまりの たねから 見て みましょう。
パックのみつばを1本つまんでみると、茎の先に小さな葉が3枚ついています。「みつば」の名は、1本の茎に葉が3枚ずつつくことから来ています[1]。
野生のみつばは、うす暗くジメジメした山林や沢沿いに多い多年草です。高さは30〜80cmで、初夏に白い小さな花が咲きます[2]。日本原産の野菜は数少なく、みつばはその一つです[1]。
野草として使われた時代は長く、野菜として育て始められたのは江戸時代といわれます[1]。室町時代の書物には、正月の野菜として「みつばぜり」が出てきます。江戸時代の『農業全書』(1697年)や『大和本草』(1709年)には栽培のことが書かれ、このころに広まったと考えられています[3]。
暗い林が好きな草を、どうやって一年中育てるのでしょう。まず、出発点の種から見てみます。
みつばの茎を1本取り、先の葉を数えると小葉が3枚ある。名前の由来は、1本の茎に3枚ずつ葉がつくことにある[1]。数少ない日本原産の野菜の一つで、野生種はうす暗くジメジメした山林や沢沿いに生える多年草である。茎は直立して高さ30〜80cm、初夏に白い小さな花をつける[2]。
この草を人が育て始めたのはいつか。野草として使われた期間は長く、野菜としての栽培が始まったのは江戸時代とされる[1]。文献では、室町時代の書に正月の野菜「みつばぜり」が見え、『農業全書』(のうぎょうぜんしょ、1697年)と『大和本草』(やまとほんぞう、1709年)に栽培の記述があるため、江戸時代に栽培が広まったと考えられる[3]。ただし「考えられる」という推定であり、広まった時期や地域まで示す資料ではない。
ここで疑問が出る。暗く湿った林を好む草を、現代の農家はどう扱うのか。出発点は種である。
2. みつばの たねは、どうやって めを だすの?
2. 暗い林の草なのに、種は光で芽を出しやすい
2. 好光性種子 ── 薄がけの土と、発芽の条件
みつばの たねは、ひかりが あたると めを だしやすいと、そだてかたの かいせつに かいて あります[6]。ですから、つちを かぶせるのは 5ミリほどの うすさに します。あつく かぶせない ように します。
めが でるまでに、10にち いじょう かかる ことも あります。この そだてかたの めやすでは、ちょうどよい あたたかさは 15〜20どで、かわかすと しっぱいしやすいそうです[6]。ひとつの きじの めやすなので、そだてる ところで かわると おもいます。
くらい はやしの くさなのに、たねは ひかりが すき。ふしぎな くみあわせです。めが でた あと、みつばは どんな ところで そだてられるのでしょう。いちばん おおいのは、つちを つかわない そだてかたです。
3. スーパーの みつばは、つちが なくても そだつの?
3. パックのみつばは、水で育てる「糸みつば」が大半
3. 糸みつばの水耕栽培 ── 年7〜8回の収穫と、液温25℃の管理
スーパーで ふつうに うって いる みつばは、「いとみつば」と いいます。はから くきまで ぜんぶ あおい みつばです[1]。
これは、えいようを とかした みずの なかで そだてる やりかたが ふつうです[1]。1ねんに 7〜8かい とれるので、いちねんじゅう おみせに ならびます[1]。
とうきょうの おおきな いちばの 2016ねんの きろくでは、うれた みつばの 89パーセントが いとみつばでした[1]。これは とうきょうの いちばの かずで、にほんじゅうの わりあいでは ありません。
みずが あつく なりすぎないように することが だいじです。みずの おんどが 25どを こえない ように きを つける ところも あります[5]。
みどりの みつばの ほかに、まっしろな みつばも あります。どうやって つくるのでしょう。
スーパーで見かける、葉柄まで全体が青いみつばは「糸みつば(青みつば)」といいます。水耕栽培が主流で、年に7〜8回収穫できるため、一年中店に並びます[1]。糸みつばは、株を密に植えて茎を細く育てるといわれます[3]。
東京都中央卸売市場の2016年の取扱高は、糸みつばが1820トン(89.1%)、切りみつばが48トン(2.4%)、根みつばが174トン(8.5%)でした[1]。足すと約2040トンです。東京の市場の数字なので、全国の生産割合ではありません。
水の上で育てるのは、手間が少ないわけではありません。栄養を溶かした培養液の温度が25℃以上にならないよう、病気を防ぐ管理の目安が示されています[5]。
ところが、同じみつばでも、茎が白いものがあります。どうやって白くするのでしょうか。
パックの青いみつばは、なぜ一年中手に入るのか。市場に出回る糸みつば(青みつば)は、葉柄が全体に青く、水耕栽培が主流である。年に7〜8回収穫できるため、周年出回る[1]。糸みつばは密植で茎を細く育てるとされる[3]。
東京都中央卸売市場の2016年の取扱高は、糸みつば1820トン(89.1%)、切りみつば48トン(2.4%)、根みつば174トン(8.5%)だった[1]。合計は約2040トンで、1820÷2042≒0.891と確かめられる。ただし東京の市場の数字であり、全国の生産割合を示すものではない。全国の出荷量は、令和2年(2020年)で1万2400トン、県別では千葉2500トン、茨城1560トン、愛知1550トンの順で、千葉と茨城は切りみつば・根みつばの産地でもある[1]。年の違う数字なので、両者を組み合わせた割合は出せない。
水耕栽培は、管理が不要という意味ではない。病気を防ぐ管理の目安として、培養液の液温を25℃以上にしないことが示されている[5]。
では、茎の白いみつばはどう作るのか。光を使う糸みつばとは逆の発想がある。
4. まっしろな みつばは、どうやって つくるの?
4. 光をさえぎって育てると、白くやわらかい「切りみつば」になる
4. 切りみつばの軟化栽培 ── 遮光、再採光、株元での収穫
しろい みつばは 「きりみつば」です。ひかりを さえぎった くらい ところで そだてます[1]。くきが ほそくて しろく、かおりが おだやかで やわらかい みつばに なります[3]。
ふしぎなのは、さいごです。はが ひらく ころに ひかりを いれて、はを みどりに します。そして、かぶもとから きって とります[1]。
100ねん いじょう まえの 1919ねん(たいしょう 8ねん)、とうきょうの しけんじょうが、うどで さきに おこなわれて いた しろく そだてる やりかたを、みつばでも ためしはじめました[4]。そのあと とうきょうでは、しろく そだてる みつばが ふえました[4]。
もうひとつ、つちを つかって そだてる みつばが あります。
茎が細く白い「切りみつば(白みつば)」は、光をさえぎった軟化床で育てます。葉が開くころに光を入れて緑色にし、株元で切り取ります[1]。白い茎はやわらかく、香りがおだやかです[3]。
面白いのは最後の工程です。ずっと暗がりに置くのではなく、葉が開くころに光を入れて葉を緑にします。茎は白く、葉は緑というみつばは、暗さと光を順番に使って作られています。
この方法は、ウドで先に行われていた軟化栽培が手本でした。東京府立農事試験場は、大正8年(1919年)からウドの方法に似たやり方でミツバの試験を始め、東京ではミツバの軟化促成栽培が増えました[4]。
3つ目の姿は、暗さではなく土の力を借ります。
茎が白いのは、なぜか。切りみつば(白みつば)は、遮光した軟化床で育て、葉が開くころに光を入れて緑色にし、株元で切り取る[1]。茎は細く白く、香りがおだやかでやわらかい[3]。暗がりで育てて茎を白くやわらかくする方法を軟化(軟白化)という。
工程の最後に光を入れる点が興味深い。暗い状態を保ったまま収穫するのではなく、葉が開いた時点で光を当て、葉を緑にしてから切る。茎は白く、葉は緑という姿は、暗さと光を順に使った結果である。
この技術には先行例がある。東京府立農事試験場は、大正8年(1919年)にウドとともにミツバやミョウガなどでも試験を始めた。ウドの軟化栽培は、土窖(どこう)と日よけの藁を使って新芽を軟白化させる方法で、ミツバでもこれに似た方法が試され、東京ではミツバの軟化促成栽培が増えた[4]。ミツバだけの技術ではなく、別の野菜で成功した方法を応用した例である。
残る1つは、光を遮るのでなく、土をかぶせる育て方だ。
5. ねっこが ついた みつばは、どうやって そだてるの?
5. 冬に土をかぶせて、根つきで出荷する「根みつば」
5. 根みつばの土寄せ ── 収穫まで約1年かかる育て方
3つめは 「ねみつば」です。ねっこが ついた まま うって います[1]。
はるごろ たねを まき、ふゆに はが かれると、ねもとに つちを かぶせます。つぎの はるに はが つちの うえに でて きた ころ、ねごと とって だします[1]。つちを かぶせると、くきが しろく そだちます[1]。
はるに たねを まいて、とるのは つぎの はる。1ねん ちかく かかります。いとみつばは 1ねんに 7〜8かいなのに、ずいぶん ゆっくりです。
そだてかたが ちがうと、あじや かおりも ちがうのでしょうか。
根みつばは、春ごろに種をまき、冬に葉が枯れたら根元に土寄せをします。翌春に葉が地上に出たころ、根つきのまま収穫して出荷します[1]。土をかぶせることで、茎は白く育ちます[1]。
種をまいてから収穫まで、およそ1年かかる計算です。年に7〜8回収穫できる糸みつばとくらべると、時間のかけ方がまったくちがいます。冬の寒さのあいだ、土が根元を包んでいる時間が、この育て方の特徴です。
手間と時間をかけた根みつばは、味にもちがいがあるのでしょうか。
3つ目の根みつばは、時間のかけ方が極端に違う。春ごろに種をまき、冬に葉が枯れると根元に土寄せをする。翌春に葉が地上に出たころ、根つきのまま収穫し、出荷する。土寄せによって茎は白く育つ[1]。
種まきから収穫まで、およそ1年を要する計算になる。年に7〜8回収穫できる糸みつばは、同じ株から収穫を繰り返す。一方で根みつばは、1年近くかけて1回収穫する。同じみつばでも、時間の使い方がまったく異なる。
では、これほど育て方の違うみつばは、食べたときにも違うのか。
6. 3つの みつばは、あじも ちがうの?
6. 育て方がちがうと、香りもちがい、好みも分かれた
6. 野生種に近い根みつば ── 香りと、関東・関西の好み
ねみつばは、3つの なかで いちばん のうの みつばに ちかく、かおりが つよいと いわれます[3]。きりみつばは かおりが おだやかで、やわらかいです[3]。
かおりの もとには 「ミツバエン」などの せいぶんが あると、しりょうで しょうかい されて います[1]。
むかしは、かんとうでは かおりの つよい ねみつば、かんさいでは おだやかな いとみつばが このまれたと いわれます[3]。いまは いとみつばが いちねんじゅう でまわって、すききらいが ちかづいたそうです[3]。
くらい はやしの くさが、ひかりと くらさと つちと みずで、3つの すがたに なりました。
根みつばは、3つのなかでいちばん野生種に近く、香りや風味が強いといわれます。切りみつばは茎が細く白く、香りがおだやかでやわらかい味です[3]。
香りには、クリプトテーネンやミツバエンという成分が含まれると、資料で紹介されています[1]。食欲を増すなどの効き目も紹介されていますが、ここでは香りの成分の話として読んでおきましょう。
関東では香りの強い根みつば、関西ではおだやかな糸みつばが好まれてきたといわれます。糸みつばが一年中出回るようになって、全国の好みは近づいたとされます[3]。
暗い林にはえていた1つの草が、水・暗がり・土の使い分けで、3つの姿になっています。
根みつばは3つのうちで最も野生種に近く、香りや風味が強い。切りみつばは茎が細く白く、香りがおだやかでやわらかい[3]。香りの成分にはクリプトテーネンやミツバエンが含まれると、資料は紹介している[1]。食欲増進などの効能も挙げられているが、ここでは成分の紹介として読むにとどめる。
好みには地域差があったとされる。関東は香りの強い根みつば、関西はおだやかな糸みつばを好んだが、糸みつばが通年出回ったことで全国の好みが近づいた、という説明がある[3]。これは1つの解説にある見方で、数字で確かめた研究ではない。
流れをまとめると、野生のみつばは暗く湿った林の草だった。それを人が、水(糸みつば)、暗がりと再採光(切りみつば)、土寄せ(根みつば)という3通りの条件で育て分けている。同じ種でも、育つ環境を変えれば姿と味が変わるという例になる。
おうちの みつばで、そだてかたを あてて みよう
台所のみつばで、育て方を読み取ってみる
売り場のみつばから育て方を推理し、資料で確かめる
みつばを かって きたら、たべる まえに 3つ 見て みましょう。
- はは 1ぽんの くきに なんまい ついて いるかな。
- くきは あおいかな、しろいかな。ほそいかな。
- ねっこは ついて いるかな。
くきが あおくて ほそければ いとみつば、しろければ きりみつば、ねっこが ついて いれば ねみつばだと かんがえられます。パックの うらに ある さんちも 見て みましょう。2020ねんは ちばけん、いばらきけん、あいちけんの じゅんに たくさん とれました[1]。
みつばを買ったら、使う前に3つ見てみましょう。
- 1本の茎についている葉の数
- 茎の色と太さ
- 根がついているかどうか
茎が青くて細ければ糸みつば、茎が白ければ切りみつば、根つきなら根みつばと考えられます[1]。パックの裏の産地も見てみましょう。2020年の出荷量は、千葉県、茨城県、愛知県の順に多くなっています[1]。
根つきのみつばを見かけたら、種をまいてから収穫まで約1年かけて育てられたことを思い出してみると、見え方が変わるかもしれません。
売り場で、茎の色、太さ、根つきかどうか、葉の枚数を確かめ、育て方を推理する。茎が青く細ければ糸みつば、白ければ切りみつば、根つきなら根みつばという見分け方が考えられる。産地表示は、令和2年(2020年)の都道府県別出荷量(千葉、茨城、愛知の順)と照らし合わせられる[1]。
資料としては、農畜産業振興機構『野菜情報』のみつばの需給動向(2021年12月)が出発点になる。東京の市場の取扱高と、全国の出荷量は、年も範囲も違う数字なので、混ぜずに読むとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
みつばの種類・出荷量は農畜産業振興機構と東京都の資料、歴史と味は解説記事、水耕栽培の管理は愛知県の資料、種のまき方は園芸の解説による。
- 農畜産業振興機構『野菜情報』「みつばの需給動向」(2018年1月・2021年12月) https://www.alic.go.jp/ (3種類・取扱高・出荷量・栽培のようす)
- 野田市 植物カード ミツバ https://www.city.noda.chiba.jp/ (野生のミツバの生える場所と大きさ)
- nippon.com「にっぽん食べ物図鑑」ミツバ https://www.nippon.com/ja/japan-topics/c15338/ (歴史・味・地域の好み)
- 東京都農林総合研究センター「農総研だより」第8回 https://www.tokyo-aff.or.jp/ (軟化栽培の試験)
- 愛知県 ミツバ(水耕)の防除資料 https://www.pref.aichi.jp/ (培養液の温度管理)
なおした ところ
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