1. 月が かける のは、かげの せい?
1. 月が欠けるのは、影がかかるからではない
1. 影説の検討:月は常に半分が照らされている
三日月を 見て、「地球の かげが かかって いるのかな」と 思った ことは ありませんか。じつは、そうでは ありません。
月は、自分では 光りません。太陽の 光を はね返して 光って います[1]。だから 太陽に 向いた 半分は、いつも 明るいのです[3]。
地球から 見ると、その 明るい 半分が、まるく 見える ときも、細く 見える ときも あります。月が 地球の まわりを まわるので、見える 向きが かわって いくからです[2]。
三日月を見て、「地球の影がかかって、一部が隠れている」と思ったことはないでしょうか。実際には、満ち欠けは地球の影のせいではありません[2]。
光っている半分は、いつもある
月は自分では光らず、太陽の光を反射して輝いています[1]。NASAも、月は常に半分が太陽に照らされていて、地球から見える割合が月の公転につれて変わる、と説明しています[3]。月にも昼の側と夜の側があるわけです。
月が地球の周りを回ると、照らされた半球を地球から見る向きが少しずつ変わります。満ち欠けは、月の形が変わるのではなく、見え方が変わる現象です[2]。
とはいえ、影が関わらないと言い切るには、確かめたい点があります。満月のとき、地球の影はどこにあるのでしょうか。
満ち欠けの原因として、まず思いつく説明は「地球の影が月にかかる」というものである。しかしこの説は、満ち欠けの経過とも、月食の頻度とも合わない。
国立天文台は、月は自ら光るのではなく太陽光を反射して輝いており[1]、満ち欠けは太陽に照らされた半球の見え方が、地球から見て次第に変わるために起こると説明する[2]。NASAも、月は常に半分が太陽に照らされており、そのうち地球から見える割合が公転につれて変わる、とする[3]。つまり月には昼側と夜側があり、満ち欠けは月そのものの変化ではなく、観測者の視点の変化である。
そのため、影説の当否は、満月の方向にある地球の影と、月の位置を比べれば検討できる。これが第3章の議論になる。
2. 新月、半月、満月は、太陽との 角度で きまる
2. 新月から満月まで、太陽との角度で決まる
2. 太陽と月の黄経差:新月・上弦・満月・下弦の定義
太陽、地球、月を、上から 見たと しましょう。月が 太陽と おなじ ほうこうに あると、光る 半分は 地球と はんたいを むきます。これが 新月です。見えにくく なります[1]。
月が 太陽の はんたいがわに くると、光る 半分が 地球に 向きます。これが 満月です。
その 中ほどで、太陽と 月が ちょうど 直角に なると、半分だけ 見えます。上弦と 下弦の 半月です。
角度を4つ覚える
地球から見て、月が太陽と同じ方向にあるときが新月です。月の照らされた面は地球と反対側を向くので、ほとんど見えません。月が太陽の反対側に来ると、照らされた面が地球を向いて満月になります。その間で、太陽と月の角度がほぼ直角になると、半分が見える上弦と下弦です[1]。
国立天文台の暦では、新月・上弦・満月・下弦を、太陽と月の黄経の差が0度・90度・180度・270度になる瞬間と決めています[1]。これは瞬間の定義なので、見た目が「ぴったり半分」になる時刻と、厳密には一致しません。
すると、満月は太陽の反対側、つまり地球の影が伸びる側にいることになります。それなのに、なぜ毎月月食にならないのでしょうか。
では、見える形は何で決まるのか。答えは、太陽・地球・月がつくる角度である。月が太陽とほぼ同じ方向にあれば、照らされた半球は地球と反対を向き、新月になる。太陽の反対側に来れば、照らされた半球が地球を向き、満月になる。その中間で太陽と月の角度がほぼ直角になると、半分が見える[1]。
暦のうえでは、新月(朔)・上弦・満月(望)・下弦を、太陽と月の黄経差が0°・90°・180°・270°になる瞬間と定める[1]。ここで注意したいのは、この定義が瞬間を指すことである。人が見て「半分」と感じる時刻とは、厳密には一致しない。
この配置から、ひとつ疑問が生じる。満月は太陽の反対側、すなわち地球の影が伸びる方向にある。それなら、満月のたびに月は影に入るはずだが、実際はそうならない。
3. 満月の よるに、月は かげに 入らないの?
3. 満月は、地球の影のすぐそばを通りすぎている
3. 月食が毎月起きない理由:軌道面の傾き
満月の ときは、太陽、地球、月が、ほぼ 一直線に ならびます。それなら、毎月 月が かげに 入りそうです。
でも、月が 地球の まわりを まわる 道は、少し ななめです。だから ふつうは、かげの 上か 下を とおりすぎます[2]。
月の 道と、地球の 道が まじわる ところの 近くで 満月に なった ときだけ、月が かげに 入ります。これが 月食です。かげで かけるのなら、毎月 月食に なるはずです。
5.1度のかたむき
月の公転軌道面(白道面)は、地球が太陽の周りを回る面(黄道面)に対して、5.1度ほど傾いています[4]。小さな角度ですが、地球の影を通りぬけるかどうかは、この傾きで決まります。
満月の方向には確かに地球の影が伸びていますが、満月はほとんどの場合、その影の上か下をすり抜けます[2]。月食が起きるのは、満月で、しかも月が白道と黄道の交わる点(交点)の近くにあるときだけです。
同じ理由で、新月のたびに日食になることもありません。傾きがなければ新月ごとに日食になりますが、実際は、交点の近くで新月になるときしか起きないのです[4]。
影が主役なら、月食は満月のたびにあるはずです。そうならないことが、影説への有力な反証になります。では、満ち欠けが一巡する間隔はどれくらいでしょうか。
満月のたびに月食が起きないのはなぜか。それは、月の公転軌道面(白道面)が、黄道面に対して約5.1°傾いているからである[4]。もし傾きがなければ、満月ごとに月は地球の影を通り、新月ごとに太陽を隠すことになる。
実際には、満月はほとんどの場合、影の上か下をすり抜ける[2]。月食は、満月が白道と黄道の交点付近にあるときに限って起き、日食も、交点付近で新月になるときにしか起きない[4]。
したがって、影説には二重の問題がある。第一に、満ち欠けは月食のない月にも毎月起きる。第二に、満月のとき月が影に入るのは、交点付近という限られた場合だけである。この二点から、満ち欠けは影ではなく、照らされた半球の見え方で説明される。
ここまでで原因は説明できた。次の問いは周期である。月の満ち欠けが一巡する間隔は、月が地球を一周する時間と同じなのか。
4. 月が ひとまわり しても、新月に もどらない
4. 月が地球を一周しても、新月に戻れない
4. 朔望月と恒星月:約2日のずれはどこから来るか
月が 地球の まわりを ひとまわり するのは、約27日です。でも、新月から つぎの 新月までは、約29日と 半分 かかります[3]。
2日ほど、ながく なるのです。どうしてでしょう。
月が まわって いる あいだに、地球も 太陽の まわりを 少し すすみます。すると 太陽の ほうこうが かわります。月は、太陽との むきを もとに もどすために、もう少し 追いかけなければ なりません。
この「約2日」は、月が ひとまわりする 日数と、新月から 新月までの 日数の ちがいです。地球が すすむ ぶん、月は 新月の いちまで よけいに すすむ ひつようが あるのです。
27.3日と29.5日
NASAは、月が地球を一周するのに約27.3日かかる一方、新月から次の新月までは約29.5日かかる、と書いています[3]。
理由は、月が一周する間に、地球も太陽の周りを進むからです。地球が進むと、地球から見た太陽の方向も変わります。1か月で約30度ほどずれるといわれます。月は、新月の位置まで少し余分に進んで、太陽との位置関係を元に戻さなければなりません。この余分な分が、二つの周期の差で、29.53−27.32で約2.2日です。
29.5日は平均値
満ち欠けの周期は、平均29.530589日で、朔望月と呼ばれます[1]。ただし毎回この長さではなく、実際には約29.3日から29.8日の範囲で、その長さが約1年のあいだにゆっくり変化します[1]。
この周期のどこにいるかを数える方法はないでしょうか。じつは、日数で数える決まりがあります。
国立天文台は、満ち欠けの周期(朔望月)を平均29.530589日、約29.5日としている[1]。ところがNASAによれば、月が地球を一周する時間(恒星月)は約27.3日で、新月から新月までは約29.5日かかる[3]。
この差が生じるのは、満ち欠けの周期が「太陽との位置関係」で決まるからである。月が一周する間に、地球も太陽の周りを進み、地球から見た太陽の方向も変わる。恒星に対しては一周しても、太陽に対する向きは約30°ぶんずれるので、月は新月の位置まで余分に進まねばならない。この余分な分が二つの周期の差で、29.53−27.32から約2.2日となる。月は1日に約13°進むので、30°÷13°で約2.3日になる(筆者の検算で、公的資料の記述ではない)。
なお、29.5日は平均値である。実際の朔望月は約29.3〜29.8日の範囲で、その長さが約1年のあいだに変動する[1]。「満月まで29.5日ごとにぴったり来る」と考えると、予想がずれる。
では、この周期のなかで、今日の月がどこにいるかは、どう表すのか。
5. 今日の 月は、何日目? うらがわは?
5. 今日の月は何日目か:月齢と、見えない裏側
5. 月齢と裏側:見えない側の満ち欠け
新月から 何日 たったかを あらわす 数を、げつれいと いいます[5]。げつれいが 7 ごろに 上弦、15 ごろに 満月、22 ごろに 下弦に なります。
月は、いつも おなじ 面を 地球に 向けて います。だから 地球から は、うらがわの 大部分が 見えません。
でも、うらがわにも 形の かわり方は あります。新月の ときは、見えない うらがわが 昼です。見えない だけで、いつも 半分は 光って いるのです[6]。
月齢という数え方
新月の瞬間からの経過日数が月齢です。正午の時点で数え、新月の翌日の正午を約1とします[5]。月齢7ごろが上弦、15前後が満月、22前後が下弦です[5]。月の動きの速さは一定でないので、満月がぴったり15になるとは限りません。
見えない裏側にも、満ち欠けがある
月は、地球に同じ面を向け続けています。そのため、私たちには裏側の大部分が見えません。NASAは、月の半分は常に照らされているので、裏側も私たちの視線の外で満ち欠けしている、と説明しています[6]。
「裏側は暗い側」というのは、思い違いです。新月のとき、地球からは暗く見えますが、裏側は太陽に照らされた昼になっています。
周期のなかの位置は、月齢で表す。月齢は新月の瞬間からの経過日数で、正午の時点で数え、新月の翌日の正午を約1とする[5]。国立天文台は、月齢7で上弦、15前後で満月、22前後で下弦としている[5]。月の速さが一定でないため、満月の月齢はぴったり15になるとは限らない。
ところで、満ち欠けが「照らされた半球の見え方」なら、月の裏側はどうなっているのか。月は地球に同じ面を向け続けるので、裏側の大部分は見えない。NASAは、月は常に半分が照らされているため、裏側も視線の外で満ち欠けを経ている、と説明する[6]。
したがって「裏側=暗い側」は誤りである。地球から見た新月のとき、裏側は太陽に照らされた昼にある。この事実は、満ち欠けが「月が欠ける現象」ではなく「見る角度の現象」であることを、別の側面から示す。
6. 半月に 見える ときの 角度から、太陽までの きょりを はかろうと した 人
6. 半月に見えるときの角度から、太陽までの距離を測ろうとした人
6. アリスタルコスの方法:半月から太陽の距離を測る
むかし、ギリシャに アリスタルコスという 人が いました。この 人は、月が 半月に 見える ときに おもしろい ことを かんがえました。
月が ちょうど 半分に 見える とき、太陽、月、地球は 直角三角形に なります。そこで 地球から 見た 太陽と 月の 角度を はかれば、太陽が 月の 何ばい とおいかを 出せる、と かんがえたのです。
この 人は 角度を 87度と 見つもり、太陽は 月の 18〜20ばい とおいと 答えました[7]。じっさいの 太陽は、月の 約400ばいも とおくに あります。やり方は 正しく、角度を はかるのが むずかしかったのです。
直角三角形に気づく
古代ギリシャのアリスタルコスは、紀元前3世紀の前半ごろの人です。月がちょうど半分に見えるとき、太陽・月・地球は直角三角形をつくる、と考えました。ここで地球から見た太陽と月の角度が分かれば、太陽までの距離が月の何倍かが決まります。
彼は、その角度を約87度と見積もり、太陽までの距離は月の18〜20倍だと結論しました[7]。実際の角度は90度にずっと近く、太陽は月の約400倍遠いとされます[7]。
3度のちがいで、20倍が400倍になる
87度と90度では、3度しか違いません。それでも結果は、約20倍と約400倍に大きく開きます。ほぼ直角のとき、角度のわずかな誤差が距離の答えを大きく変えるからです。方法は正しく、測定が難しかったのだと説明されます[7]。
半月の形は、古代にはどう使われたのか。サモス島のアリスタルコス(紀元前310年ごろの生まれ)は、月がちょうど半分に見えるとき、太陽・月・地球が直角三角形をなすと考えた[7]。このとき、地球から見た月と太陽の角度が分かれば、三角形の辺の比、つまり太陽と月までの距離の比が決まる。
アリスタルコスはこの角度を約87°と見積もり、太陽までの距離を月の18〜20倍と結論した。実際の角度は90°に近く、太陽は月の約400倍遠い[7]。
この食いちがいは、検算できる。直角三角形で、地球と月の距離に対する地球と太陽の距離の比は、1÷cos(角度)で表せる。cos87°は約0.052なので、比は約19倍になり、18〜20倍の記述と合う(筆者の検算)。角度が90°に迫ると、cosは0に近づき、比は急に大きくなる。つまり、3°の測定誤差が、20倍と400倍の差になる。方法は正しく、測定が難しかったのである[7]。
なお、18〜20倍は距離の比である。大きさの比と同じと書く資料もあるが、単純化に注意が要る[7]。
7. 今夜、月と 太陽の 向きを たしかめよう
7. 今夜、月の光る側がどちらを向くか確かめる
7. 観察と原典:光る側が太陽を向くことを検算する
夕方に、空に 月が 出て いたら、さがして みましょう。月の 光って いる ほうが、いまは 見えない 太陽の ほうを 向いて いるはずです。
三日月でも 半月でも、光る ほうと 太陽は、同じ ほうこうに なります。2、3日 つづけて 見ると、光る 部分が 少しずつ ふえたり、へったり します。
とても まぶしいので、太陽を 見ては いけません。月だけを 見て、太陽は 「あのへんに あるはず」と 思い うかべましょう。
夕方の月で確かめる
夕方か夜に月が見えたら、光っている側がどちらを向くかを見てみます。三日月も半月も、光る側は、おおむね見えていない太陽のある方向を向いているはずです。見える範囲で確かめてみてください。光る側と太陽がおおよそ同じ方向だという観察は、満ち欠けが照らされ方の問題だと示す手がかりになります。
数日続けると、光る部分の増減と、月の位置の移り変わりが分かります。太陽は絶対に直接見ないでください。月だけを見て、太陽の位置は頭の中で想像します。
原典に当たる
半月の角度から太陽までの距離を測ろうとした話は、出典欄のLinda Hall Libraryのページで読めます。3度の差が20倍と400倍を分けるという話を、自分でも作図して確かめたくなるかもしれません。
この記事の主張は、観察で検証できる。夕方か夜に月が見えたら、光っている側の向きを確認する。三日月でも半月でも、光る側は、おおむね見えていない太陽のある方向を向くはずである(見える範囲で確かめる)。もし満ち欠けが地球の影によるなら、この対応は生まれにくい。太陽を直接見ることは避け、月だけを見る。
数日続けて記録すれば、新月から満月への周期を、自分のデータで確かめられる。月齢は国立天文台の暦の資料で調べられる[5]。
なお、本文の数値のうち、約2日と約2.3日の検算、およびcosを用いた約19倍の算出は、筆者の計算であり、公的資料の記述ではない。アリスタルコスの方法は二次資料の要約で読んだため、原典での記述は、出典欄の資料から辿って確かめる余地がある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数値や名称は、資料によって細部が異なることがあります。
- 国立天文台 暦Wiki「月の満ち欠け」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B7EEA4CECBFEA4C1B7E7A4B1.html (満ち欠けの原因・黄経差の定義・朔望月)
- 三菱電機 DSPACE コラム(国立天文台・渡部潤一氏のコメント) https://www.mitsubishielectric.co.jp/dspace/column/cw09_b.html (影ではないこと・月食が毎月起きない理由)
- NASA Science: Moon Phases https://science.nasa.gov/moon/moon-phases/ (常に半分が照らされること・27.3日と29.5日)
- 国立天文台 暦Wiki「日食/月食」 https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/C6FCBFA92FBEF2B7EF.html (軌道面の傾き・日食と月食の条件)
- 国立天文台 FAQ「月齢」 https://www.nao.ac.jp/faq/a0204.html (月齢の数え方)
- NASA SVS: Lunar Near and Far Side Phases https://svs.gsfc.nasa.gov/14992 (裏側の満ち欠け)
- Linda Hall Library: Aristarchus of Samos https://www.lindahall.org/about/news/scientist-of-the-day/aristarchus-of-samos/ (アリスタルコスの半月の方法)
なおした ところ
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