1. もやしは、なにの なまえ?
1. もやしは植物の名前ではなかった
1. 「もやし」は種の名前ではなく、育て方の名前である
「もやしは、もやしという くさの 芽でしょう?」と おもう人は、おおいかもしれません。でも、もやしは しょくぶつの なまえでは ありません[1]。
まめなどの たねを、くらい ところで めを ださせて、のばした もの。それを「もやし」と よびます[2]。
ことばの もとは、「めを ださせる」という いみの「もやす」だと いわれます[2]。
だから、つかう まめが ちがえば、できる もやしも ちがいます。では、スーパーの もやしは、どの まめなのでしょう。
「もやし草」は存在しない
ニンジンならニンジン、ダイコンならダイコンという植物があります。ところが、もやしにはそういう植物がありません。辞典では、豆類や穀類などの種を発芽させて、のばしたものと説明されています[1]。
名前の由来は「萌やす」
もやしは、穀類や豆類の種を人の手で、暗いところで発芽させて育てる野菜です。光を当てずに育てることを「軟化栽培」といいます[2]。名前は、芽を出させる意味の「萌やす」に由来するといわれます[2]。
つまり、豆の種類を変えれば、できるもやしも変わります。では、いちばんよく見かけるもやしは、何の豆から育ったものなのでしょうか。
辞典類は、もやしを「植物名ではなく、豆類や穀類などの種子を発芽させ、伸長させたもの」と説明する[1]。ニンジンやダイコンのように、種から花・実まで育てる作物とは、名前の指すものが違う。
百科事典的な説明では、もやし(糵、萌やし)は穀類・豆類の種子を人為的に暗所で発芽させ、軟化栽培したスプラウト野菜である[2]。軟化栽培は、光を当てずに育てる方法を指す。語源は、発芽させるという意味の動詞「萌やす」の連用形とされ、これも単一の資料の説明にとどまるため、「といわれる」の強さで受け取るのが妥当である[2]。
もやしは育て方の名前なので、「何の芽か」の答えは原料の種子ごとに変わる。では、日本の店頭に並ぶもやしの原料は、実際にはどの豆が多いのか。
2. スーパーの もやしは、どの まめ?
2. いちばん多いのは、緑豆のもやし
2. 店頭のもやしの原料:緑豆が最多とされる
もやしに なる まめは、いろいろ あります。だいずや、緑豆などが、おもな ものです[2]。ほかに、あずきや そばの もやしも あります[2]。
日本で いちばん おおく でまわって いるのは、緑豆の もやしです[1]。だいずの もやしは、まめが ついた まま うられる ことが おおいといわれます[1]。
緑豆は、インドが ふるさとの まめです[3]。つぶは ちいさいのに、のびると ふくろいっぱいの もやしに なります。
緑豆・大豆・ブラックマッペ
もやしの主な原料は、大豆、緑豆、ブラックマッペ(黒緑豆)です。ほかにもアズキやソバなどから、もやしがつくられます[2]。
日本でいちばん多く出回っているのは、緑豆のもやしです[1]。ブラックマッペのもやしは少し細めで、大豆のもやしは豆がついたまま売られるといわれます[1]。
緑豆はインド生まれ
緑豆はインド原産の豆で、学名はVigna radiataです。日本では、もやしの原料としてほぼ全部を海外から輸入しているという説明があります[3]。2012年の記事にも、消費する緑豆のほぼ全部を中国などからの輸入にたよっている、と書かれています[4]。
インド生まれの小さな豆が、海を越えて日本に着きます。では、その豆はどうやって、袋の中の細長いもやしになるのでしょうか。
日本で最も多く出回るもやしは、緑豆(緑豆)のもやしとされる[1]。国内生産の約9割が緑豆とする民間記事もあるが、統計で裏づけられた数字ではないため、ここでは「最も多い」にとどめる。主要原料は大豆・緑豆・ブラックマッペ(ケツルアズキ、Vigna mungo)で、ほかにアズキ、アルファルファ、ソバなどからもつくられる[2]。ブラックマッペのもやしはやや細く、大豆のもやしは豆がついたまま流通する[1]。
緑豆の学名はVigna radiataで、インド原産である[3]。日本ではもやしの原料としてほぼ全量が中国(内モンゴル)から輸入されるという説明がある一方[3]、2012年12月の記事は「消費する緑豆のほぼ全部を中国などからの輸入にたよる」と書き、産地を中国に限っていない[4]。産地の内訳は資料で表現が違うため、ここでは「ほぼ輸入」とだけ読む。
なお、古い辞典に「現在はブラックマッペが主」とする記述があり、資料間で食い違う。今の主流を述べるときは、緑豆が最多とする資料に従った。では、この輸入された豆は、どんな条件で約1週間のうちにもやしの姿になるのか。
3. まっくらな へやで、1しゅうかん
3. 光を入れない場所で、約1週間
3. 発芽から収穫まで:水・光・温度の条件と7〜10日
もやしを そだてるのに、つちは いりません。いるのは、水と、くらい ばしょと、ちょうど いい あたたかさです。
おうちで そだてる ばあい、たねを ひとばん 水に つけます。つぎに、光が はいらない ところに おいて、1日に 3かい あらいます。それを 7日から 10日 くりかえすと、もやしが できます[6]。
大きな こうじょうでは、水の ながれや おんどを きかいで ととのえて、1しゅうかんほどで しゅうかくする といわれます[5]。
ちいさな まめが、くらやみで ぐんぐん のびる。でも、どうして こんなに はやく のびるのでしょう。
家庭での育て方
家庭で育てる方法の例では、種を一晩水にひたし、光が入らない場所に置いて、1日3回洗います。これを7〜10日くりかえします[6]。ほかの栽培法の一例では、豆の10倍の量の水に一晩つけ、風通しのよい薄暗い部屋に置いて、1日2回ほどすすぎます[2]。洗う回数に少し違いがありますが、水・暗さ・ほどよい温度を保って、1週間ほど育てる点は共通しています。
どこまで伸びたら収穫か
発芽したあと、芽と根の間にあたる部分(胚軸)が5cm以上に伸びたら収穫できる、という目安があります[2]。
工場では
工場では、水と温度を管理し、光を通さない環境で育てて、約1週間で収穫するといわれます[5]。
光の入らない場所で、土がなくても、1週間ほどで5cm以上になるのです。では、こうして育つもやしは、昔から今の形で食べられていたのでしょうか。
家庭向けの手順の一例では、種を一晩水に浸し、光が入らない場所で1日3回洗い、7〜10日繰り返す[6]。別の栽培法の記述では、豆の10倍量の水に一晩つけ(浸種)、風通しのよい薄暗い部屋に置いて1日2回ほどすすぐと、7〜10日ほどで発芽が進み、胚軸が5cm以上伸びたところで収穫できる[2]。根を太くするためにエチレンを添加する工夫も紹介されている[2]。
洗う回数が3回と2回で食い違うのは、前者が家庭の観察用、後者が栽培法の一例と、想定する条件が違うためと考えられる。どちらも、水・暗さ・数日〜10日、という点は一致する。
工場では、湿度と温度を管理し、水を流して光を遮り、約1週間で収穫するとされる[5]。ただし、自動化の具体的な内容は、出典の記述がごく簡単なため、ここでは「1週間ほど」の確かな範囲にとどめる。
どの手順にも土や肥料が出てこない点は目を引く。暗所では光合成ができないが、伸びる仕組みの詳細は本稿の出典では扱っていない。では、こうして育てるもやしは、昔から野菜として食べられていたのか。
4. むかしの もやしは、くすりだった
4. 昔のもやしは、野菜より薬や麹だった
4. 古文献の「もやし」:薬用・麹用から野菜へ
いま、もやしは やさいとして たべます。でも、むかしの 人にとっては、ちがう ものだった ようです。
へいあんじだいの 本には、もやしが のっています。江戸じだいの 本にも、くすりに なる ものとして しょうかいされました。むかしの 本では、もやしは くすりとして しょうかいされる ことも ありました[2]。
また、むかしの 本には「よねの もやし」「むぎの もやし」という ことばも あります。こめや むぎを めばえさせた もので、しょうゆや おさけを つくる ときに つかわれました[1]。
平安時代の本にも載っている
平安時代の『本草和名』には「毛也之」という名前で、もやしが載っています。江戸時代の『和漢三才図会』では、薬の効き目があるものとして紹介されました。このように、昔の本では、薬として紹介されることもありました[2]。
米や麦のもやしも「もやし」
平安時代の辞書『和名抄』では、「蘖」の字を「よねのもやし」と読み、醤油の仲間をつくるのに使いました。別に「むぎのもやし」があり、こちらは酒づくりや薬に使われました[1]。昔の文献に出てくる「もやし」は、今の豆もやしとは別のものを指すことがあります。今の野菜としてのもやしは、比較的新しい食べ方とされます[1]。
では、野菜としてのもやしは、いつごろ、どう広まったのでしょうか。
平安時代の『本草和名』に「毛也之」として記載があり、江戸時代の『和漢三才図会』では薬効のあるものとして紹介されている。古い文献では薬としての紹介が目立つ[2]。
ただし古文献の「もやし」は、今の豆もやしと同じ物とは限らない。『和名抄』は「蘖」を「よねのもやし」と読み、醤油類の製造に使われたとする。別に「むぎのもやし」があり、酒づくりや薬に使われた[1]。米や麦を発芽させたもので、麹の原料の話である。したがって「もやしは平安時代からある」と書くときは、どの「もやし」を指すか区別が必要になる。野菜としてのもやしは比較的新しい食べ方と説明される[1]。
では、薬や麹の材料だったものは、いつ食卓の野菜になったのか。
5. たべものとして ひろまったのは いつ?
5. 野菜としてのもやしは、いつ広まったのか
5. 食用としての普及:1842年の売りさばき禁止と1850年以降の伝来説
江戸じだいの おわりごろ、1842ねんに、とやまの はんでは、もやしを うる ことが きんじられた といいます。「ぜいたくに なるから」という りゆうでした[2]。
そのあと、1850ねんより あとに、ながさきから つたわった そだてかたが、江戸に ひろまったと、ひとつの 本には かかれて います[2]。
やさいとして ひろく つかわれるように なったのは、めいじじだいより あとだ と される ことが おおいようです[2]。いまは やすい やさいの もやしが、むかしは ぜいたくだと おもわれた ことが あったのですね。
「ぜいたくになる」と禁じた藩
1842年(天保13年)、富山藩では、もやしの売りさばきが禁じられたと伝えられます。もやしは、ぜいたくにつながるものと見られたためです[2]。
長崎から江戸へ
食べるためのもやしは、1850年以降に長崎で伝えられた栽培方法が江戸に広まったもの、という説明があります[2]。野菜として広く使われるようになったのは、明治時代以降とされます[2]。
この話は、ひとつの資料にある説明なので、「といわれる」くらいの強さで読むのがよいでしょう。ただ、今は安い野菜として知られるもやしが、一時は「ぜいたく」と見られたことがあるのは、おもしろい対比です。では、その安さの裏で、豆の値段はどうなっているのでしょうか。
6. やすい もやしの うらで、まめの ねだんは?
6. 安いもやしを支える、豆の値段の話
6. 原料価格の上昇:緑豆の輸入依存と1995年比3.5倍
もやしは、スーパーで とても やすい やさいです。でも、もとに なる まめは、ほとんど がいこくから きています[4]。
もやしの 会社が あつまった 組合の はなしでは、中国で できた緑豆の ねだんは、2021ねんには 1995ねんの 3.5ばいほどに なっていました[5]。たとえば、1995ねんに 100円だった ものが、350円に なる ぐらいの ちがいです。
これは まめの ねだんの はなしで、もやしの おみせでの ねだんでは ありません。もやしの ねだんは、まめの ねだんだけでは きまりません。
2012ねんには、あたらしい そだて場所を ふやす うごきも ありました[4]。
豆は海の向こうから
2012年12月の記事によると、日本では消費する緑豆のほぼ全部を中国などからの輸入にたよっています。この年には、国内の会社がバングラデシュで緑豆の栽培を始め、供給元を広げようとしました[4]。
3.5倍になった豆の値段
もやしの生産者の団体によると、中国産の緑豆の価格は、2021年に1995年の約3.5倍になりました。2010年以降、中国での人件費の高騰や、天候不順で上がったといいます[5]。たとえば、1995年に100円だった量なら、2021年は350円ほどです。
この3.5倍は緑豆そのものの価格で、もやしの店での値段ではありません。報道では、もやし農家が1袋26円ほどで出荷する例も紹介されています[5]。原料が上がっても売る値段を上げにくい、という状況が読み取れます。
安いもやしにも、輸入する豆の価格が関わっています。ここまで読んで気になったことを、家で確かめる方法があります。
日本では消費する緑豆のほぼ100%を中国などからの輸入に頼るとされ、2012年にはバングラデシュで国内企業が緑豆の栽培を始めて供給源を広げた[4]。これは2012年時点の記述で、現在の割合や産地の内訳は、ここでは扱わない。
工業組合もやし生産者協会によれば、中国産緑豆の価格は2021年に1995年の約3.5倍となった。2010年以降の中国の人件費の高騰や天候不順が背景にあるとされる[5]。仮に1995年に100円だった量なら、2021年は約350円で、差は250円になる。ただし、これは原料の緑豆の価格であり、小売価格やもやしの値上がり率ではない。
同じ報道では、もやし農家が1袋26円ほどで出荷する例が紹介されている[5]。原料が上がっても出荷価格を上げにくい構図が読み取れる。ただし、これは一例であり、全国の農家の状況を示すものではない。
輸入に依存する小さな豆が、1週間で袋いっぱいのもやしになる。この変化を、家で自分の目で追うことができる。
7. うちで そだてて、のびる ようすを はかろう
7. 台所で、1週間の伸びをはかる
7. 家庭での観察:伸びを測り、資料の目安と比べる
もやしの たねを つかって、おうちでも そだてられます。おとなの 人と いっしょに やってみましょう。
ようきは きれいに あらって、水は 1日3かい、きれいな 水に かえます。ひかりが はいらない ところに おいて、まい日 おなじ じかんに、ものさしで のびを はかります[6]。
この ページでは、のびる ようすを みる ことが ねらいです。もし たべるときは、かならず おとなと いっしょに、よく あらってからに しましょう。
1しゅうかんくらいで、どのくらい のびるでしょう。ぐんぐん のびる 日と、あまり のびない 日が あるかも しれません。ノートに すうじを かいて、くらべてみてください。
やってみよう:伸びを毎日はかる
もやし用の豆を一晩水にひたし、光が入らない場所に置いて、1日3回洗います[6]。容器は清潔にして、水はこまめに入れかえます。食べるときは、大人と一緒に、よく洗ってからにしましょう。
毎日同じ時間に、ものさしで、いちばん長いもやしの長さをはかります。資料では、5cm以上が収穫の目安とされています[2]。自分の育てたもやしが、何日目に5cmを越えるかを記録すると、「7〜10日」という目安との違いを自分の数字で比べられます。
伸びが早い日と遅い日はあるのか、洗う回数を変えると違いが出るのか。家で試せる問いが、いくつも出てきます。
家庭での観察は、資料の目安を自分のデータと照らす手段になる。もやし用の豆を一晩水に浸し、光が入らない場所で1日3回洗う(7〜10日)[6]。容器は清潔に保ち、水を入れかえる。収穫の目安は胚軸が5cm以上とされる[2]。
毎日同じ時刻に、最も長い個体をものさしで測れば、何日目に5cmを超えるかが分かる。同じ豆を同じ数だけ使い、容器や置き場所をそろえて洗う回数だけを3回と2回に変えれば、資料間で食い違う洗浄回数が、成長にどう影響するかを観察できる(条件を変えるのは1回に1つだけにする)。食用にする場合は、保健上の注意を大人と確認する。
資料を読み比べる際は、第1に、定義の出典(辞典類)、第2に、栽培法の出典(Wikipedia 以外にも当たる)、第3に、価格の出典(業界団体・報道)を区別する。Wikipedia は入り口として便利だが、年代や数字を引用する前に、本文の脚注の原典を読むとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。数字や年代は、リンク先の記述を見て確認できます。Wikipedia の記述は説の一つとして扱いました。
- コトバンク「もやし」(日本大百科全書、世界大百科事典、小学館食の医学館)https://kotobank.jp/word/%E3%82%82%E3%82%84%E3%81%97-142784 (定義・種類・和名抄の記述)
- Wikipedia「もやし」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%82%E3%82%84%E3%81%97 (栽培法・歴史・原料の記述)
- Wikipedia「リョクトウ」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A7%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A6 (原産地・輸入の説明)
- LOGISTICS TODAY「緑豆」の記事(2012年12月17日)https://www.logi-today.com/57555 (輸入依存・バングラデシュでの栽培)
- KSB瀬戸内海放送ニュース(2022年5月17日)https://news.ksb.co.jp/article/14623173 (緑豆の価格・もやしの出荷価格・育成期間)
- 明治 食育 観察レシピ「もやし」https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/homework/observation/beansprouts/ (家庭での育て方)
なおした ところ
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