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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

ピザの きじは、なんで ふくらむの?

ピザ生地は、材料が少ないのに、なぜふくらむのか

ピザ生地は、少ない材料でなぜ膨らむのか ──ナポリの規則が定める待ち時間と焼き時間

分野:歴史・文化

ナポリの ピザの きまりでは、きじを 6じかん いじょう やすませて、やくのは たった 60びょうから 90びょうです[2]。

きじの もとは、こむぎこ、みず、しお、イースト。ざいりょうは とても すくないのに、どうして ふくらむのでしょう。ふくらむ ひみつと、ナポリの ピザやさんの ならわしが わかります。

ナポリのピッツァには、生地を室温で6時間以上休ませ、焼くのはわずか60〜90秒、という規則があります[2]。休む時間は、焼く時間の少なくとも240倍です(6時間を90秒で割った計算)。

基本の材料は小麦粉、水、塩、イースト。規則にはオリーブ油も出てきますが、どれも身近なものです。この単純な生地が、なぜあんなにふくらむのでしょうか。ふくらむしくみと、その生地にのるトマトやマルゲリータの話が分かります。

ナポリのピッツァを定めたEUの規則は、こねた生地に室温で計6時間以上の発酵時間を求め、焼成は60〜90秒と定める[2]。待つ時間が焼く時間の240倍以上になる計算だ(6時間=21600秒を90秒で割った値)。

基本の材料は小麦粉、イースト、水、塩で、規則にはオリーブ油も加わる。砂糖や卵は出てこない。この生地が膨らむ理由、規則が決める長い待ち時間と短い焼き、そしてトマトとマルゲリータの伝説を、規則とユネスコの資料から読むと分かる。

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1. ピザの きじには、なにが はいって いるの?

1. 生地の材料は、粉・水・塩・イーストが基本

1. ナポリの規則が書く材料 ── 基本の材料と、その分量

ナポリの ピザの きまり(EUの きまり)では、きじの もとは こむぎこ、イースト、のめる みずです。そこに しおと オリーブの あぶらを たします[2]。

みず 1リットルに、しおは 50〜55g、イーストは 3g。これは ナポリの きまりの かずです。おうちの ふつうの つくりかたでは ありません。

こんなに すくない ざいりょうで、きじは ふくらみます。ひみつは、こむぎこの なかの「グルテン」と、イーストが だす ガスです[1]。

ナポリのピッツァを定めたEUの規則(ピッツァ・ナポレターナSTG)は、生地の基本の材料を、小麦粉、ビール酵母(イースト)、飲める水としています。ここに海の塩か食卓塩と、エクストラバージンオリーブ油を使います[2]。

分量は、水1リットルに塩が50〜55g、イーストが3gです[2]。水1リットルを約1kgとすると、塩は水の重さの5〜5.5%です。これはナポリの規則の数字で、家庭の標準ではありません。

砂糖も卵もバターも出てきません。それでも、あのふくらんだ生地になります。ふくらませているのは、小麦粉の中のグルテンというたんぱく質と、イーストが出すガスです[1]。

ナポリのピッツァ(ピッツァ・ナポレターナSTG)の規則は、基本の材料を小麦粉、ビール酵母(イースト)、飲用の水とし、これに海塩または食卓塩とエクストラバージンオリーブ油を加えると定める[2]。分量は水1リットルあたり塩50〜55g、イースト3gである[2]。水1リットルを約1kgとみなせば、塩は水の重さの5〜5.5%にあたる(概算)。

この数字はナポリの規則であって、家庭や他の地域のピザの標準ではない点に注意したい。ただ、砂糖や卵を使わず、これだけの材料でふくらむ生地ができる、という事実は動かない。

では、何がこの生地を膨らませているのか。答えは小麦粉の中のグルテンというたんぱく質と、イーストが出すガスの組み合わせにある[1]。次章で、その仕組みを読む。

2. こねると、きじの なかに なにが できるの?

2. こねると生地の中に「網」ができて、ガスをためる

2. グルテンの骨格とイーストのガス ── 膨らみの二つの要素

こむぎこには、「グルテン」という ものが はいって います。みずと まぜて こねると、グルテンは あみのような かたちに なります[1]。

イーストは、ガスを だします。ふうせんの なかの くうきの ように、ガスは ふくらもうとします。それを あみが つつんで、にがさずに ためて おきます[1]。

だから きじが ふくらむのです。あみが ガスを ためる ふくろの やくめを して いると いえます。ただし ほんとうの グルテンは、ふくろより もっと ふくざつです。

では、ガスが たまるのを、どのくらい まつのでしょう。

小麦粉に含まれるたんぱく質のグルテンは、水と混ぜてこねられると、網目状の骨格をつくります。そこにイーストが生み出す炭酸ガスが閉じ込められて、生地がふくらみます[1]。

ふうせんで考えると分かりやすいかもしれません。中の空気を出すのがイースト、空気を逃がさないゴムの膜にあたるのが、グルテンの網です。ただしグルテンの網は、ゴムの膜のように1枚でできているわけではなく、生地の中に広がる網目です。

ガスを出す役と、ガスをためる役がそろわないと、生地は大きくなれません。こねる作業は、ためる役の網を生地の中に作る時間なのです。

では、ナポリの職人は、その生地をどれだけ待つのでしょうか。

膨らみには二つの要素がある。一つは小麦粉に含まれるたんぱく質のグルテンで、水と混ぜてこねられると網目状の骨格をつくる。もう一つはイーストで、これが炭酸ガスを生み、ガスは網に閉じ込められて生地を膨らませる[1]。

ここで大事なのは、役割が分かれていることだ。ガスを生む側だけがあっても、受けとめる網がなければ、ガスは生地の外へ抜けるだろう。逆に網だけでは、膨らませる力が足りない。ガスの発生と、ガスの保持。その二つがそろって、はじめて生地は大きくなる。

こねる作業は、保持する側の網を作る工程にあたる。たとえるなら、イーストが空気を送りこむ人、グルテンの網が空気をためる袋だ。ただし実際のグルテンは袋のような一枚の膜ではなく、生地中に広がる網目状の構造である。

では、ナポリの規則は、この生地を何時間待たせるのか。

3. やく まえに、6じかんも なにを まつの?

3. 焼く前に、6時間以上も生地を休ませる

3. 発酵の待ち時間 ── 2時間と4〜6時間の二段階

ナポリの きまりでは、こねた あと、へやの おんどで 2じかん やすませます。つぎに まるめて、また 4じかんから 6じかん まちます[2]。

ぜんぶで 6じかんから 8じかん。きじの なかで、イーストが ガスを だし、あみが ためて いく じかんです。

のばす ときは、手だけを つかいます。めんぼうや きかいは、つかっては いけません[2]。

きじの たまは、1つ 180gから 250g。おおきな りんごの おもさに ちかいです。

規則では、生地をこねたあと、室温で2時間休ませます。その後、生地を丸めて、さらに4〜6時間ふくらませます[2]。合計すると6〜8時間です。イーストが出すガスを、グルテンの網がためていく時間だと考えられます。

生地玉の重さは、1つ180〜250gです[2]。大きめのりんご1個ほどの重さです。

形を整えるときの決まりも変わっています。成形は手で行い、めん棒や機械で押しのばすことは認められていません[2]。ふくらんだ生地を押しつぶしてしまわないためかもしれませんが、規則の資料にはそうした理由は書かれていません。

待ち時間をたっぷりとったあと、焼く時間はたった1分ほどです。その焼き方を見てみましょう。

規則は発酵を二段階で定める。こねたあと室温で2時間休ませ、その後に生地を丸めて、さらに4〜6時間ふくらませる[2]。合計は6〜8時間になる。前章の見方に立てば、この間にイーストがガスを出し続け、グルテンの網がそれをためこんでいく。

生地玉は1つ180〜250gである[2]。成形は手で行い、めん棒や機械プレスの使用は許されない[2]。機械を禁じる理由は、引用した規則の範囲では述べられていない。ふくらんだ生地を押しつぶさないためだと推測できるが、これは推測にとどまる。

注目したいのは、待ち時間と焼き時間の差だ。待つ時間は最短でも6時間(21600秒)、焼く時間は最長でも90秒だから、少なくとも240倍の差がある。生地づくりのほぼすべてが、焼く前の時間に使われている。この時間は、規則が求めるナポリ流の数字であり、すべてのピザに共通する条件ではない。

では、そうして育てた生地を、規則はどのような形にして、どのくらいの熱で焼かせるのか。

4. まんなかは うすく、ふちは たかく。やくのは 1ぷんちょっと

4. 中央は薄く、縁は高く。焼くのは1分ちょっと

4. 形の寸法と焼成条件 ── 485℃の床と60〜90秒

きまりでは、ピザの おおきさは 35センチまで。まんなかの あつさは 0.4センチ いかで、ふちだけ 1〜2センチ たかく もり あげます[2]。

やく かまは、まきを もやす かまです。ゆかが 485ど ぐらい、てんじょうが 430ど ぐらい。おゆが わく 100どより、ずっと あつい おんどです[2]。

そこで 60びょうから 90びょう。1ぷんから 1ぷん30びょうで できあがりです[2]。

どうして こんなに あつい かまで みじかく やくのかは、しらべた しりょうに かいて ありません。ふしぎが のこります。

規則は、できあがりの形も決めています。直径は35cm以下、中央の厚さは0.4cm以下(誤差は±10%)、縁は1〜2cmの盛り上がりです[2]。中央はうすく、縁だけがふっくらした形です。

焼く窯は薪窯で、床がおよそ485℃、天井がおよそ430℃です。焼く時間は60〜90秒で、これを超えてはならないとされています[2]。485℃は、水がわく100℃より385℃も高い温度です。

ただし床と天井の温度は、資料によって逆に書かれていることもあります。ここでは規則に従いました。

なぜそんな高温で短く焼くのかという理由は、引用した資料には書かれていません。ここでは、数字そのものを紹介するにとどめます。生地を長く待ち、窯には短くいれる。その形の上にのるのが、トマトです。

規則は、できあがりの寸法を定める。直径は35cm以下、中央部の厚さは0.4cm以下(許容誤差±10%)、縁は厚さ1〜2cmで盛り上がった形にする[2]。英語版Wikipediaなどでは中央を0.25cmとするものもあるが、本稿は規則の付属書の記載(0.4cm)に従う。

焼成は薪窯で行う。床がおよそ485℃、天井がおよそ430℃、焼成時間は60〜90秒で、これを超えてはならない[2]。ただし、床と天井の温度を逆に書く資料もある。ここでは規則本文に合わせた。

485℃は水の沸点(100℃)より385℃高い。さらに生地を先ほどの6〜8時間待たせる設計と並べると、ナポリ流が「長い待ち」と「短く強い焼き」の組み合わせだとわかる。

なぜ高温短時間なのか。水分の蒸発や表面の焼き色が関わるという説明は考えられるが、引用した資料にはその根拠が書かれていないため、理由は断定しない。また、これはあくまでナポリの規則の条件であり、家庭用のオーブンの焼き方ではない。

形と焼きがそろったところで、その上にのせるものに目を向けよう。ピザの赤の主役、トマトである。

5. トマトは むかし、どく だと うたがわれたって ほんと?

5. 観賞用だったトマトが、ピザの赤になるまで

5. 毒を疑われたトマト ── ヨーロッパ到来から1853年の記録まで

トマトは、アメリカの たいりくが ふるさとです。スペインを とおって ヨーロッパへ つたわり、イタリアには 1500ねんだいの なかごろに とどきました[4]。

さいしょは、かんしょうようでした。どくが あるのでは、と うたがわれ、「どくの りんご」と よばれた こともあります[4]。ただし これは むかしからの いいつたえで、ほんとうに どくだったかは はっきり しません。

1853ねんには、バジル、モッツァレラ、トマトの ピザを かいた ぶんしょうが のこって います[5]。

では「マルゲリータ」の なまえは、どう つけられたのでしょう。

トマトの故郷はアメリカ大陸です。種がメキシコからスペインに運ばれ、そこからヨーロッパに広まりました。イタリアには1500年代なかばに届いたとされます[4]。

最初は食べものではなく観賞用でした。ナス科の植物で毒があるのではないかと疑われ、「毒のりんご」と呼ばれたこともあるといいます[4]。これは言い伝えとして紹介されているもので、毒の疑いが本当だったとは書かれていません。

ピザにトマトがのった正確な時期は、資料によってばらつきます。確かなのは、1853年にエマヌエーレ・ロッコという人が、バジル、モッツァレラ、トマトののったピッツァを文章に書いていることです[5]。

ここからトマトとピザが結びつき、やがて有名な名前が生まれます。

トマトはアメリカ大陸原産で、メキシコからスペインへ種が運ばれ、ヨーロッパに広まった。イタリアに届いたのは1500年代なかばとされる[4]。当初は観賞用で、ナス科の植物であることから毒を疑われ、「毒のりんご」と呼ばれたともいう[4]。トマトに毒があるという話は、言い伝えとして紹介されている。

ピザにトマトがのった時期は、資料間でばらつく。年代として確かなのは、1853年にエマヌエーレ・ロッコが、バジル、モッツァレラ、トマトののったピッツァを文章に記していることまでである[5]。

つまり、トマトは「毒かもしれない観賞用の植物」から、やがてナポリの食卓へ入り、ピザの上に載った。広まった時期までは言い切れないが、1853年にはもう、赤・白・緑の三色がそろったピッツァが書かれていたことになる。

この三色が、のちに王妃の名前と結びつく。その話は本当なのか。

6. 「マルゲリータ」は、おうひさまの ために 作ったの?

6. 王妃のための「マルゲリータ」は、本当にあった話か

6. マルゲリータ命名譚への疑い ── 1889年の手紙と、1853年の記録

ゆうめいな はなしが あります。1889ねん、ピザを やく ラファエレ・エスポジトさんが、マルゲリータ おうひさまの ために、赤・白・緑の ピザを つくった、というのです[5]。

けれど、うたがう ひとも います。おうひさまが きた ことは、おうしつの きろくに のって いません。おうひさまから とされる おれいの てがみも、ひつせきが あわない、と いわれます[5]。

その てがみは、のちに おみせを ついだ しんせきが つくった、という せつも あります。でも、これは「せつ」で、ほんとうかは わかりません。

はっきり いえるのは、1853ねんに もう、おなじ ざいりょうの ピザが かかれて いる ことです。「おうひさまの ために つくった」と いいきるのは、むずかしいのです。

よく知られているのは、こんな話です。1889年、ピザ職人のラファエレ・エスポジトが、イタリアのマルゲリータ王妃のために、赤(トマト)・白(モッツァレラ)・緑(バジル)のピッツァを作った。これが「ピッツァ・マルゲリータ」の名前の由来だ、というものです[5]。

ところが、この話には疑いがかけられています。王室の官報には、王妃の訪問も、お礼の手紙もありません。手紙の筆跡が合わないという指摘もあります。1930年代に店を引き継いだ親族が偽造したのでは、という説も出ています[5]。

ただし偽造は、あくまで説の一つです。先に見たとおり、1853年には同じ材料のピッツァがすでに文章に書かれていますから、「王妃のために発明した」とは言い切れません。伝説として楽しみつつ、記録が何を言っているかを見る。そのような読み方が、この話にはよく合います。

広く知られている説明はこうだ。1889年、ピザ職人ラファエレ・エスポジトが、マルゲリータ王妃のために、トマト(赤)、モッツァレラ(白)、バジル(緑)のピッツァを作り、これが「マルゲリータ」の名のもとになった[5]。

しかし、この物語を裏づけるはずの資料に疑いがある。王室の官報(Gazette)に王妃の訪問も手紙も記されていない。手紙の筆跡が一致しない。さらに、1930年代に店を継いだ親族が偽造したという説もある[5]。偽造は「説」であり、断定は避ける。

決定的なのは時間の前後である。1853年のロッコの文章には、バジル、モッツァレラ、トマトののったピッツァがすでにある(前章)。1889年はその36年後(1889−1853)だから、三色の取り合わせは、少なくとも命名譚より前にあった。名前の由来は、王妃の逸話が唯一の説明と言えるかどうか、資料からは決めきれない。

この節から学べるのは、有名な話も、手紙や官報といった「裏づけ」を確かめると、形が変わることがある、という点だ。

ところで、そんな長い歴史と技を、ナポリではどうやって受けついでいるのか。

7. ナポリの ピザを やく わざは、どう つたわるの?

7. ユネスコが認めた「ナポリのピッツァ職人の技」

7. 無形文化遺産としてのピッツァ職人の技 ── 2017年の登録と師弟の伝承

2017ねんの 12がつ、「ナポリの ピザを やく ひとの わざ」が、ユネスコに みとめられました。むかしから つたわる たいせつな ぎじゅつとして、せかいの リストに のったのです[3]。

この わざには、きじを つくる ところと、まきの かまで やく ところを あわせて、4つの だんかいが あります。ナポリには、いま 3000にんぐらいの ピザを やく ひとが います[3]。

わざは、おもに「ボッテガ」で つたわります。ボッテガは、ナポリの ことばで、おみせ・こうぼうの こと。でしは、おやかたの しごとを みて おぼえます[3]。おうちで まなぶ ことも あるそうです。

2017年12月、韓国の済州で開かれたユネスコ無形文化遺産保護条約の委員会で、「ナポリのピッツァ職人の技」が、無形文化遺産の代表一覧表に載りました[3]。

この技には、生地づくりと、薪窯で焼くところをあわせた4つの段階があります。ナポリにはいまも約3000人のピッツァ職人が暮らしています[3]。

伝わり方も特徴的です。技は、おもに「ボッテガ」とよばれる工房で、弟子が親方の仕事を見ながら受けつがれます。家庭で学ぶ場合もあります[3]。

粉・水・塩・イーストという単純な材料を、長い時間と短い焼きで一枚にする。その手の感覚が、見て覚えるかたちで次の人へ渡されていることになります。

2017年12月、第12回ユネスコ無形文化遺産保護条約の政府間委員会(韓国・済州)で、「ナポリのピッツァ職人(ピッツァイオーロ)の技」が代表一覧表に記載された[3]。

ユネスコの登録資料は、この技を、生地の準備と薪窯での焼きにかかわる4つの段階を含むものとし、ナポリには現在約3000人のピッツァイオーロがいると記す[3]。

伝承の場について、資料は知識と技能がおもに「ボッテガ」(工房・店)で伝えられると述べる。弟子が親方の仕事を見て学ぶ形で、家庭で学ぶ場合もある[3]。

ここまでの章の数字を思い出すと、生地の発酵に数時間、窯の焼きは1分前後である。その待ちと焼きの見きわめを、規則の文章だけで身につけるのは難しそうだ。観察して覚える伝承が重んじられる理由は、資料にそう書かれているわけではないが、この条件と照らすと納得しやすい。

規則の数字と、人の手の感覚。二つを合わせて読むと、「ふくらむ生地」の話が、料理の技の話へとつながる。

8. こなと みずを こねて、さわって みよう

8. 小麦粉と水をこねて、手ごたえの変化を確かめる

8. 生地の変化を手で確かめ、規則の分量を計算してみる

こむぎこを つかうので、こむぎアレルギーの ひとは やらないで ください。おうちの ひとと いっしょに やりましょう。

こむぎこ 大さじ 4に、みずを 大さじ 2ぐらい くわえて、手で こねて みます。はじめの ざらざらと、こねた あとの さわりごこちを くらべて みましょう。こねる まえと あとで、さわった かんじが かわるか、たしかめて みましょう。

ピザやさんに いったら、まんなかと ふちを みくらべて みましょう。まんなかが うすくて、ふちが ふっくらして いるのは、きまりの すがたに ちかいかたちです。

ピザの まるい かたちの ちがいに、きづけたら すてきです。

家にある小麦粉と水で、こねる前とこねたあとの手ごたえの変化を確かめられます。小麦粉を大さじ4、水を大さじ2ほど混ぜて、5分ほどこねてみてください。はじめは粉っぽく、べたつきもありますが、こねるうちに手ごたえが変わるか、観察してみましょう。小麦アレルギーのある人は、この作業をしないでください。

計算もできます。規則の塩は水1リットルあたり50〜55gでした。水500mLなら、半分の25〜27.5gです。これはナポリの規則の分量で、家庭のレシピの標準ではありません。

ピザ屋さんで、中央の薄さと縁のふくらみを見比べるのもよいでしょう。規則では、中央が0.4cm以下、縁が1〜2cmです[2]。

焼きあがった生地のふちを指で軽くおして、やわらかさを比べるのもおもしろいでしょう。ピザ屋さんの窯の前で、職人が何秒で生地を取り出すか、数えてみるのも一つの調べ方です。

手でできる確認として、小麦粉に水を加えてこね、触感の変化を観察する方法がある。目安は小麦粉大さじ4に水大さじ2ほどである。小麦アレルギーがある場合は行わないこと。グルテンの網ができているかどうかは、手ごたえの変化から推測するにとどまる。

分量の計算も手がかりになる。規則の塩は水1リットルあたり50〜55g、イーストは3gである[2]。水500mLなら塩は25〜27.5g、イーストは1.5gになる。これらはナポリの規則の値であり、家庭用の分量ではない。

資料の読みどころは三つある。①EU規則の付属書[2]は、材料・分量・時間・温度・寸法が数字で書かれている一次資料で、英語。②ユネスコの登録ページ[3]は、技の伝承の仕方を記す。③マルゲリータの話は、National Geographicの記事[5]が、伝説と記録のずれを整理している。

残る問いもある。高温短時間で焼く理由と、トマトがピザにのった時期は、本稿の資料では決められなかった。次に調べるなら、ナポリのピッツァ協会の公式資料や、イタリア語の史料が手がかりになる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:製品の解説、EU規則、ユネスコの登録ページ、大学の解説、用語集、雑誌の記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. パナソニック「米粉パンの解説」。https://panasonic.jp/life/food/990006.html (グルテンの網とイーストの炭酸ガスについて)
  2. EU規則97/2010 付属書(ピッツァ・ナポレターナSTG)。https://legislation.gov.uk/eur/2010/97/annexes/data.xht (材料、分量、待ち時間、寸法、窯の温度と焼き時間について。英語)
  3. UNESCO「Art of Neapolitan ‘Pizzaiuolo’」。https://ich.unesco.org/en/RL/art-of-neapolitan-pizzaiuolo-00722?RL=00722 (無形文化遺産への記載と、技の伝承について。英語)
  4. University of Vermont Extension「History of tomatoes」。https://www.uvm.edu/extension/news/history-tomatoes (トマトのヨーロッパへの伝来と、毒の疑いについて。英語)
  5. National Geographic「Pizza Margherita may be fit for a queen, but was it named after one?」。https://www.nationalgeographic.com/history/history-magazine/article/pizza-margherita-may-be-fit-for-a-queen-but-was-it-named-after-one (マルゲリータの命名譚と、1853年の記録について。英語)

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