1. なまえの 「あらう」は、ほんとうに あらって いるの?
1. アライグマの前足の動きは、本当に洗っているのか
1. 「洗熊」の名の由来と、「洗っていない」とされる理由
あらいぐまの なまえは、「あらう くま」と かきます。水の なかで 前足を うごかす すがたが、手を あらって いる ように 見えるからです。
でも、よごれを おとして いる わけでは ない、という せつが ゆうりょくです。水べで えものを さがす うごきが、くせに なったもの、と かんがえられて います。
かわれて いる あらいぐまは、たべものを わざわざ 水に はこんで、ひたす ことが あると いいます[6]。どうして そう するのかは、まだ じゅうぶんには わかって いません。
アライグマの名前は、漢字で「洗熊」と書きます。札幌市円山動物園の資料は、前足を水中に入れて獲物を探る姿が、手を洗っているように見えることが名前の由来だと説明しています[1]。
つまり名前の元になったのは、「洗っているように見える」動きです。実際には、洗っていないという説が有力です。野生では、水辺で前足をさぐるように動かして、水中の生きものを見つけます。飼育されている個体は、食べ物を水に運んで浸すことがありますが、これは岸辺での食べ方の動作がそのまま残ったもので、汚れを落とすためではないと考えられています[6]。
ただし、なぜその動作が残るのかは、完全には解明されていません。名前は見た目から付いたもので、動きの理由はまた別の話だと分かります。
和名の「洗熊」は、円山動物園の解説によれば、前足を水中に入れて獲物を探る姿が手を洗う動作に見えることが由来である[1]。名前は見た目の印象から付いたものであり、動きの理由を説明しているわけではない。
では実際には何をしているのか。英語版Wikipediaの記述によれば、野生では水辺で前足でさぐって水生の獲物を探し、飼育下では食べ物を水に運んで浸す行動が見られる。有力な説は、後者が岸辺での採食動作が固定されて残ったもの(固定行動パターン)で、汚れを落とすためではないというものである[6]。ただしこれは二次資料にもとづく説明で、原論文までは確かめていない。理由が完全には解明されていない点は、記事の最後まで残る問いとなる。
この「洗わないのに洗う」動きがどんな感覚と結びついているのか。それを知るために、まず何を食べているのかを見る。
2. なにを たべて いるの? ──「なんでも」が こたえ
2. 何を食べているのか:「雑食」といわれる幅の広さ
2. 水辺の小動物から農作物まで:雑食性と食べ物の内訳
こたえは、「なんでも」です。雑食と いって、どうぶつも しょくぶつも たべる なかまです。
昆虫、果実、ちいさな どうぶつまで たべる、と まるやま どうぶつえんの しりょうに かかれて います[1]。
アメリカの ある ぐんの しりょうでは、しぜんの なかでは、きの み、さかな、かえる、かめ、とり、たまごなどを たべる、と あります[5]。
たべ物の わりあいは、ある しらべでは、虫など せぼねの ない どうぶつが 4わり、しょくぶつが 3わり、せぼねの ある どうぶつが 3わりほどと いう めやすでした。ただし、すむ ばしょや きせつで かわります[6]。
答えを一言でいえば、「ほぼ何でも」です。円山動物園の資料は、アライグマは雑食性で、昆虫や果実、小型の哺乳類までいろいろなものを食べると説明しています[1]。千葉県の資料も、小型の哺乳類や鳥類から野菜、果実、穀物までなんでも食べるとしています[2]。
アメリカのファクス郡の野生動物の資料には、自然な食事として、果実、ベリー、植物、穀物、ナッツ、昆虫、魚、カエル、カメ、小型の哺乳類、鳥、卵が並んでいます[5]。水辺の小動物から木の実まで、まさに何でもです。
食べ物の内訳の目安として、英語版Wikipediaが紹介する一つの目安では、虫などの無脊椎動物がおよそ40%、植物が33%、脊椎動物が27%と紹介しています[6]。合計は100%です。ただし調査した場所や時期で変わる目安で、日本の数字ではありません。
答えは、特定の獲物に絞らない雑食性である。円山動物園の資料は、昆虫や果実、小型の哺乳類まで多様に食べると述べ[1]、千葉県の資料も、小型の哺乳類・鳥類から野菜・果実・穀物までなんでも食べるとしている[2]。
北米の例では、ファクス郡の資料が自然な食事として、果実・ベリー・植物・穀物・ナッツ・昆虫・魚・カエル・カメ・小型哺乳類・鳥・卵を挙げる[5]。水の中の動物、地上の植物、鳥の卵と、食べ物の入手先は水辺・地上・樹上にまたがる。
内訳の目安として、英語版Wikipediaが紹介する一つの目安では、無脊椎動物約40%、植物約33%、脊椎動物約27%とする[6]。合計は100%で、植物より無脊椎動物の割合が大きい。ただしこれは二次資料の要約で、調査地や時期によって変わる値であり、日本の個体群に当てはめられるとは限らない。
では、これほど多様な食べ物を見つけ出す道具は何か。その主役が、水に入れていた前足である。
3. 前足は、水の なかで 「目」の かわりを して いる?
3. 水の中で前足が「目」のように働く理由
3. 前足の触覚が採食を支える仕組み
あらいぐまは、よるに うごく どうぶつです[4]。水の なかでは、手の かんかくが たいせつに なると いわれます。まえあしで えものを さぐります。
そこで やくに たつのが 前足です。水に ぬれると、前足の かわが やわらかく なり、触覚が するどく なる、と いわれて います[6]。
のう の なかの、からだの かんじを あつかう ところでは、その 3ぶんの 2ほどが、さわった かんじを あつかう、という せつも あります[6]。
水の なかで ゆびを うごかして、えものを さがす。この うごきが、「あらう」ように 見えたのでしょう。
アライグマは基本的に夜に活動する動物です。堺市の資料によれば、爪が鋭く手先が器用です[4]。水の中では、目よりも前足の触覚が大切だといわれ、前足で獲物を探ります。
英語版Wikipediaによれば、前足の表面をおおう薄い角質の層は水でやわらかくなり、水の中でこすると触覚の感度が高まります。感覚を扱う大脳皮質の約3分の2が触覚の処理にあてられるともいわれます[6]。ただし、これは一次の論文では確かめていない二次資料の記述です。
水に入れて動かすことで、濡れた手が敏感になり、見えない水の中の小動物を指先で見つけられる。そう考えると、「洗う」ように見える動きは、手で食べ物を見る動きだと説明できます。
この前足は、水辺だけでなく、人の家の近くでも使われています。
アライグマは夜行性で、基本は夜に活動するが昼に目撃されることもある。爪が鋭く手先が器用である[4]。視覚より触覚が重要とされ、水中では前足で獲物を探る。
英語版Wikipediaによると、前足の薄い角質層は水でやわらかくなり、触覚の感度が高まる。また、感覚をつかさどる大脳皮質の約3分の2が触覚の処理にあてられるという[6]。これらは一次論文を確かめていない二次資料の記述で、「〜という」「〜とされる」と受け取るのが適切である。
以上をつなげると、水に手を入れる意味が見えてくる。水でやわらかくなった前足は、見えない水中の獲物の形や動きを触って判断する道具になる。つまり水中での前足の動きは、洗浄というより、触覚による探索と考えるほうが、野生での行動(水辺でのさぐり)と、飼育下の行動(食べ物を水に浸す)の両方をうまく説明できる。ただし、飼育下の行動がなぜ残るのかは、冒頭で触れたとおり、確定した答えがない。
4. 人の くらしの ちかくでは、たべものが どう かわる?
4. 人のくらしの近くで、食事はどう変わるか
4. 人里での食性の変化:自然な食事と「改変された食事」
アメリカの しりょうは、人の ちかくでは、ペットフードや ごみ、とりの えさも たべる、と かいて います[5]。
日本の さいたまけんの しりょうでも、ペットフードや 果実、すてられた 農作物も たべるので、えさを やらないよう、よびかけて います[3]。
千葉県の しりょうでは、トウモロコシ、スイカ、ブドウなどの 農作物の ひがいが 出ています[2]。
あらいぐまは わるい どうぶつ、と いう ことでは ありません。たべものを さがす 力が すぐれて いて、人の 近くにも 食べ物が ある、と いう ことです。
ファクス郡の資料は、アライグマの食事を二つに分けています。果実や魚などの「自然な食事」と、ペットフードやごみ、鳥の餌の種などを含む「人の影響を受けた食事」です[5]。
日本の自治体も同じことを伝えています。埼玉県の資料は、アライグマは雑食性で何でも食べ、ペットフードや果実、廃棄される農作物なども含まれるとして、ふだんの生活でのエサやりに注意するよう呼びかけています[3]。
千葉県の資料では、トウモロコシ、スイカ、ブドウなどの農作物に被害が出ているとされています[2]。畑の作物は、アライグマにとっては「甘くて栄養のある果実や穀物」にすぎません。動物にとっては食べ物が見つかる場所ですが、人の側には被害になります。
野生動物にえさを与えないことが、被害を増やさないことにつながると、各県の資料は示しています。
ファクス郡の資料は、食事を「自然な食事」(果実・ベリー・植物・穀物・ナッツ・昆虫・魚・カエル・カメ・小型哺乳類・鳥・卵)と、「改変された食事」(ペットフード、ごみ、鳥の餌の種子)に分けている[5]。雑食性は、新しい食べ物が現れたときに、それを取り込める柔軟さでもある。
日本でも同じ指摘がある。埼玉県の資料は、ペットフードや果実、廃棄される農作物なども食べるとして、ふだんの生活でのエサやりに注意を促す[3]。千葉県の資料では、トウモロコシ・スイカ・ブドウなどの農作物被害が挙げられている[2]。
ここで注意したいのは、「農作物を狙っている」と動物の意図を読み込まないことだ。資料が示すのは、食べ物の候補が広いことと、人の生活圏に食べ物が多いという事実の組み合わせである。被害の背景に、雑食性と手先の器用さがある、と整理できるが、個々の被害の原因を一つに決めることはできない。
では、そもそもなぜ日本で、このような場面が増えたのか。
5. にほんに いなかった どうぶつが、なぜ 食べものを さがして いるの?
5. 日本にはいなかったアライグマが、なぜ身近な存在になったのか
5. 北米原産の外来種が定着した経緯と、食べられる側への影響
あらいぐまは、もともと 北アメリカの どうぶつです。日本に もともと すんで いた わけでは ありません。
テレビの アニメで 人気に なって、ペットとして つれて こられました。そのあと、にげたり、すてられたり して、野生に なりました[7]。
北海道では、1979ねんに えにわ市で かわれて いた 10とうほどが にげて、うしを かう ちいきに すみついた のが はじまり、と いわれて います[7]。
もともと 日本に いなかった どうぶつが ふえると、まわりの いきものにも えいきょうが 出ます。千葉県の しりょうには、もともと 日本に すむ カエルや サンショウウオ、かめを たべる ひがいも かかれて います[2]。外来種の ことを 考える ときは、人が なにを したかも 大切です。
アライグマは北米原産で、日本に来たのは人の手によります。北海道の資料は、テレビアニメの放映もあってペットとして輸入された個体が逃げ出したり捨てられたりして、野生化したと説明しています[7]。
北海道では、1979年に恵庭市で飼育されていた10頭程度が逃亡して、酪農地帯に定着したのが始まりと言われています[7]。
食べ物が多様なことは、すみかを広げやすいことにもつながります。そして、食べられる側にも影響があります。千葉県の資料は、トウモロコシやスイカなどの農作物だけでなく、トウキョウサンショウウオやニホンイシガメといった在来の両生類・爬虫類を捕食するといった、生態系への被害を挙げています[2]。
前足で水中をさぐる動きは、もとの生息地では暮らしの一部ですが、日本の水辺の小さな生きものにとっては、新しい出来事になります。
アライグマは北米原産で、日本ではテレビアニメの放映もあってペットとして輸入され、逃げ出したり捨てられたりした個体が野生化した、と北海道の資料は説明する[7]。北海道では、1979年に恵庭市で飼育されていた10頭程度が逃亡し、酪農地帯に定着したのが始まりとされる[7]。ただし、この年は自治体資料の記述にもとづくもので、全国の定着の経緯を一つにまとめられるわけではない。
雑食性と水辺での採食の巧みさが、定着を後押ししたという見方は成り立つが、資料はそれを直接の因果として述べてはいない。
影響としては、農作物被害に加えて、千葉県の資料が在来の両生類・爬虫類(トウキョウサンショウウオ、ニホンイシガメなど)を捕食する生態系被害を挙げている[2]。水辺に頼る小動物が、前足の「さぐり」の対象になるためである。
食べ物の多様さは、元の生息地では暮らしの強みとなる。しかし生態系の外から持ちこまれると、在来の生きものとの関係を変えうる。この二面性が、アライグマの食性を考えるときの要点になる。
6. じぶんでも ためして みたく なったら
6. 前足の「さぐる」感覚を、自分の手で確かめてみる
6. 触覚による探索を、水と小物で再現してみる
きょう できる こと
せんめんきに ぬるい 水を 入れます。スポンジや おもちゃを いくつか 入れて、目を つぶって 手で さわって みましょう。なにが 入って いるか、あてられるでしょうか。
やる ときは、おとなの ひとと いっしょに、水を こぼさない ように して ください。
しらべる とき
おうちの 人と、すんで いる 県の ホームページで 「アライグマ」を さがして みましょう。
なにを たべるのか、どんな ひがいが あるのかが かかれて います。
今日できること
洗面器にぬるま湯を入れ、ビー玉やスポンジなどを沈めます。目を閉じて手でさぐり、何があるか当ててみましょう。水に入れた手は、乾いた手よりも形が分かりやすいと感じるかもしれません。
水をこぼさないように、おとなの人と一緒にやってください。
資料を読むなら
自分の住む都道府県の「アライグマ」のページを探してみてください[2][3]。食べ物や被害の説明、エサやりに関する注意が書かれています。
残った問い
飼育下で食べ物を水に浸す動作が、なぜ残るのか。この問いには、まだ決まった答えがありません。
今日できること
洗面器に水を入れ、複数の小物を沈めて、目を閉じた状態で手で識別する。水に浸した手と乾いた手で、識別のしやすさを比べるとよい。感想を記録して終わらず、条件(水温・浸す時間)を変えて比べると、前足の角質が水でやわらかくなる説明([6])の意味が、体で理解できる。ただし人の手とアライグマの前足は構造が異なる点には注意する。
資料を読むなら
千葉県[2]・埼玉県[3]・北海道[7]の資料は日本語で読める。食べ物、被害、エサやりの注意点が自治体ごとに整理されている。
残った問い
食べ物を水に浸す動作が、飼育下でなぜ残るのか。固定行動パターンという説明は有力だが、完全には解明されていない。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。
- 札幌市円山動物園 アライグマ. https://www.city.sapporo.jp/zoo/047-f.html (名前の由来・雑食性)
- 千葉県 アライグマ. https://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/choujuu/araiguma.html (食べ物と被害)
- 埼玉県 アライグマ. https://www.pref.saitama.lg.jp/b0508/saitamakennoyseiseibutu/araiguma.html (人の食べ物とエサやり)
- 堺市 特定外来生物アライグマ. https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/gomi/kankyo_hozen/gairai/tokugairai_araiguma.html (夜行性・手先の器用さ)
- Fairfax County Wildlife: Raccoon. https://www.fairfaxcounty.gov/wildlife/raccoon (自然な食事と人里の食事)
- Wikipedia: Raccoon. https://en.wikipedia.org/wiki/Raccoon (食べ物の内訳の目安・前足の触覚・水に浸す行動)
- 北海道 アライグマ. https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/alien/araiguma/araiguma_top.html (日本での野生化の経緯)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
- 低学年むけの県名の書き方、食べ物の割合と脳の説明のあいまいな点、遊びの小物の安全面を直しました(先生の目での読み直しによる)。
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