1. いまの レインコートは、ぬのに ぬりものを して ある
1. 布だけでは雨を防げない。裏の樹脂や膜が水を止める
1. 土台の布と、防水の層 ── コーティングとラミネート
レインコートの ぬのを さわって みると、ナイロンなどの うすい ぬのが おおいです。でも、ナイロンの ぬのだけでは、あめを ふせげません。
ぬのの うらに、樹脂という やわらかい プラスチックの なかまを ぬったり、うすい まくを はりつけたり して います[3]。この ぬりものや まくが、みずを とおさない やくめを して います。
ぬのは、じょうぶさや きごこちを うけもち、ぬりものは みずを ふせぐ。やくわり ぶんたんを して いるのです。
では、むかしの ひとは、なにで あめを ふせいで いたのでしょうか。
2. むかしの 合羽は、あぶらを ぬった 紙
2. 江戸の合羽は、桐油を塗った紙だった
2. 紙合羽 ── 高価な羅紗の代わりに、油を塗った和紙
「合羽」ということばは、ポルトガルの ことばの「カパ」から きた、といわれます[1]。
がいこくから はいって きた ものは、とても たかい ねだんでした。そこで、日本では、和紙に あぶらを ぬった「紙合羽」が つくられました[1]。
つかった あぶらは、桐油です。アブラギリという きの みから とる あぶらで、しめりけや あめを よく ふせぐので、つつみがみや 合羽に つかわれました[2]。
あめの ひに、あぶらを ぬった かみを きる。ふしぎですが、かみは あぶらを ぬると、みずを はじく ように なるのです。
外国の布は高かったので、紙に油を塗った
「合羽」という言葉は、ポルトガル語の「カパ」に由来する当て字といわれます。輸入された羅紗で作ったものは高価でした[1]。
そこで国内では、和紙に桐油や荏油を塗った紙合羽が作られたと説明されています[1]。
桐油は、アブラギリの実から採る油
桐油は、アブラギリという木の実から採る油です。これをひいた桐油紙は、湿気や雨をよく防ぐため、包み紙や合羽に使われました[2]。紙は、水に濡れると弱くなる素材です。そこに油の膜をつくって、雨をはじかせたのです。
つまり、今のコーティングの考え方は、すでに「紙+油」の形で使われていたといえます。では、布に防水の層を重ねる発想は、どこから来たのでしょうか。
3. ごみから うまれた、ゴムの ぬの
3. ガス工場の廃棄物から生まれたゴム引き布
3. 1823年 ── マッキントッシュの二枚貼りゴム布と、その欠点
つぎは、1823ねんの イギリスの はなしです。スコットランドの 化学者、マッキントッシュさんは、ガスこうじょうで でる ごみ(廃棄物)に ちゅうもくしました[4]。
その ごみの 一つが、コールタールナフサという えきたいです。これには、ゴムを とかす ちからが ありました。
とかした ゴムを、ぬの 2まいの あいだに はさんで はりあわせると、みずを とおさない ぬのが できました[4]。
ただし、この ぬのにも こまった ところが ありました。ぬうと 針の あなが あいて しまう ことが あった、と いわれます[5]。
ゴムを とかす ちからが ある、という ごみの せいしつに きづいた ことが、あたらしい ふくの はじまりでした。
溶けたゴムで、布を2枚貼り合わせる
1823年、スコットランドの化学者チャールズ・マッキントッシュは、ガス工場の廃棄物であるコールタールナフサに、ゴムを溶かす性質があることを利用しました。溶かしたゴムで布を2枚貼り合わせ、防水の布を作ったのです[4]。特許もこの年に取られたと伝えられています。
ごみとして捨てられていたものの性質に気づいたことが、新しい素材のきっかけでした。
水は止まったが、新しい悩みが出た
ところが、この布には欠点もありました。仕立てる際に縫うと針穴が空く、といわれます[5]。
水を止めたいのに、縫うと穴が空く。素材は完成ではなく、次の工夫を呼ぶ出発点でした。そして、水を止められるようになった人たちは、もう一つの困りごとに気づきます。
4. あめを ふせぐと、なかが むれて しまう
4. 雨を防ぐほど、中は蒸れる
4. 防水と蒸れの矛盾 ── 水を通さない素材は水蒸気も通さない
みずを とおさない ふくを きて あるくと、なかが むしむし して きます。これは、あせが 水蒸気に なって、そとへ でられないからです。
みずを ふせぐ ことだけを ねらった ぬのは、からだから でる 水蒸気も にげにくく、ながい じかん きて いると、うちがわが 蒸れる ことが あると、せつめい されて います[6]。
ポリえんかビニル(PVC)と いう ざいりょうは「やすくて みずを ふせぐ ちからは すぐれて いるけれど、かぜや しっけを とおしにくい」と しょうかい される ことが あります[6]。
みずを とめる ことと、蒸れを にがす ことは、ふつうに かんがえると はんたいの ことです。
雨は入れず、汗の水蒸気は出したい
雨の日に自転車でレインコートを着て、走った後に内側がじっとり湿っていた、という経験をした人は多いでしょう。体からは汗が出て、それが水蒸気になります。
防水だけを目的にした素材は、体から出る水蒸気も逃げにくく、長く着ると内側が蒸れることがある、と説明されています[6]。PVCは「安価で防水性に優れるが通気性がない」と紹介されることもあります[6]。
水の粒と水蒸気では、大きさが全くちがう
雨粒と水蒸気は、同じ水でも大きさがまるでちがいます。雨粒は小さな水の粒の集まり、水蒸気は水の分子がばらばらに飛んでいる状態です。ここに、蒸れの問題を解くヒントがあります。水の粒は通さず、水蒸気だけを通す道があれば、両立できるかもしれません。
5. みずは とおさず、水蒸気は とおす まく
5. 水滴は止めて水蒸気は通す「透湿防水」
5. 透湿防水 ── 孔の大きさと、数値の読み方
この こまりごとの こたえが、「透湿防水」です。そとからの みずは ふせいで、なかの しっけは にがす しくみです[3]。
ゴアテックスという まくは、とても ちいさな あなが たくさん あいて います。あなの おおきさは、みずの つぶより 2まんぶんの 1ほど。みずの つぶより ずっと ちいさいので、あめは とおりません。
いっぽう、あなは 水蒸気の つぶより 700ばい ほど おおきい。だから、水蒸気は でて いけます[7]。
ただし、この かずは、まくを つくった かいしゃ じしんの せつめいです。
水滴より小さく、水蒸気より大きい孔
透湿防水とは、外からの水は防ぎ、内からの湿気は逃がす加工のことです[3]。方式の一つは、水滴より小さく、水蒸気より大きい孔をたくさんあけた膜を使うものです[3]。孔のない膜が水蒸気を通す方式もあります。
ゴア社は、自社の膜について、1平方インチに約90億個の孔があり、各孔は水滴より2万倍小さく、水蒸気の分子より700倍大きいと説明しています[7]。これは会社自身の比較であり、客観的な測定とは区別して読む必要があります。
数字を、身近な単位にそろえてみる
1平方インチは約6.45平方センチです。90億を6.45で割ると、1平方センチあたり約14億個になります。指先ほどの面積に、10億個を超える孔があいている計算です。
防水と蒸れにくさは、数字で比べられる
防水性は「耐水圧」、蒸れにくさは「透湿度」で表されます。耐水圧は、水を押しつけたとき、どれだけの水の高さ(mm)まで耐えるかの数字です。耐水圧2,000mmは中雨の目安とされますが、衣服では8,000mm以上が目安といわれます。アウトドア用のレインウェアでは、1万mm以上が一般的です[3]。1万mmは10mです。
透湿度は、24時間に1平方メートルの布を通る水蒸気の量(g)で、5,000〜8,000g程度を基準にするとよいと紹介されています[3]。ただし、耐水圧の目安は出典や用途でちがい、固定の値ではありません。
透湿防水は、外からの水の侵入を防ぎ、内からの湿気を逃がす加工である[3]。方式には、水滴より小さく水蒸気より大きい微細な孔を使うものと、孔のない膜が水蒸気を通すものがある。
ゴア社は、自社膜について、1平方インチあたり約90億個の孔があり、各孔は水滴の約2万分の1、水蒸気分子の約700倍の大きさだと説明する[7]。比較の基準は会社自身の設定である。1平方インチを約6.45cm²とすると、90億÷6.45で1cm²あたり約14億個になる。
性能は数値で表される。耐水圧2,000mmは中雨の目安とされるが、衣服では不十分なことが多く、8,000mm以上が目安といわれる。アウトドア用レインウェアでは1万mm以上が一般的で、1万mmは水柱10mの圧力に相当する[3]。蒸れにくさの目安は、透湿度5,000〜8,000g(24時間・1m²あたり)とされる[3]。ただし、これらの目安は出典・用途によって異なり、固定値ではない。
この二つの数値は、別々の性能を表している。耐水圧は水をどれだけ止められるか、透湿度は水蒸気をどれだけ逃がせるかの目安で、片方が高いからといって、もう片方も高いとは限らない。製品の説明を読むときは、片方の数字だけで「高性能」と決めず、耐水圧と透湿度の両方、さらに使う場面(短時間の雨か、長時間の運動か)を合わせて考えるのがよい。なお、1万mmという耐水圧は水柱の高さ10mに相当し、それだけの水の重みに耐えるという意味だが、雨粒が当たる勢いや、リュックの肩ひもが布を押す力などは別の条件になる。実際の使用では、数字どおりにならないこともある。
6. おうちの レインコートを、ひっくりかえして みよう
6. 家のレインコートのタグを読む
6. 手元のレインウェアで確かめる
おうちの レインコートの うらがわを みて みましょう。つるつる、ざらざら、ゴムのような かんじ。まず、さわって みます。
つぎに、ラベル(タグ)を さがします。「ナイロン」「ポリエステル」「ポリえんかビニル」など、ざいりょうの なまえが かいて ある ことが あります。
うらがわが ぬれて いる ものと、いない ものを くらべても おもしろいです。きた あと、うちがわが 蒸れて いたら、それが この きじの はなしです。
タグに のって いる 数字が あれば、みずを どれだけ ふせぐかを あらわす「たいすいあつ」や、むれにくさを あらわす「とうしつど」という ことばを さがして みましょう。
今日できること
家にあるレインコートやカッパの裏側を見て、触ってみてください。つるつるしているか、ゴムのような感触か、布が見えるか。素材によって違うはずです。
次に、洗濯表示や品質表示のタグを探します。「ナイロン」「ポリエステル」「ポリ塩化ビニル」などの繊維名が書かれていることがあります。透湿防水の製品なら、耐水圧や透湿度の数値が書いてあるかもしれません。
着たあとの内側に注目する
雨の日に着たあと、内側の濡れ方に違いがあるか、観察してみます。素材の違うコートがあれば、同じ人が似た天気で同じくらいの時間着たときを比べると、違いが見えやすくなります。
水を止めることと、蒸れを逃がすこと。昔の人と今の私たちは、同じ問題を別の方法で扱っています。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
事実の確認に使った資料です。製品の性能数値は、メーカーや用途で異なるため、目安として読んでください。
- 日本大百科全書・世界大百科事典「合羽」(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E5%90%88%E7%BE%BD (合羽の語源と紙合羽)
- デジタル大辞泉「桐油紙」(コトバンク) https://kotobank.jp/word/%E6%A1%90%E6%B2%B9%E7%B4%99 (桐油紙の用途)
- BE-PAL「透湿防水とは」 https://www.bepal.net/archives/345716 (コーティング・ラミネート、透湿防水、耐水圧と透湿度の目安)
- Grace's Guide「Charles Macintosh」 https://www.gracesguide.co.uk/Charles_Macintosh (ゴム引き布の発明)
- Encyclopaedia Britannica「Charles Macintosh」 https://www.britannica.com/print/article/354755 (初期のゴム引き布の欠点)
- Weblio辞書「レインコート」 https://www.weblio.jp/content/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%88 (PVC・ゴム引きと蒸れ)
- GORE-TEX 公式 Lab ブログ https://www.gore-tex.com/blog/lab (孔の数と大きさ。会社自身の説明)
なおした ところ
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