1. 車で 5時間の 町まで、買い物に いける?
1. 往復10時間かかる町へ、買い物に行ける?
1. 町まで5時間の往復10時間 ── 「買いに行く」が成り立たない距離
わたしたちは、牛乳が なくなったら、近くの お店へ 行きます。歩いて 5分の ことも あります。
オーストラリアの ある 牧場は ちがいます。町まで 車で 5時間。行って もどって くるだけで 10時間です[4]。朝に 出ても、帰る ころには 夜に なります。
だから この 牧場では、「買いに 行く」より「注文して とどけて もらう」が 中心に なります。それも、1回で 数か月ぶんを まとめて たのみます。15人が くらす 牧場の れいです[4]。
ただし、これは 1つの 牧場の 話です。オーストラリアの 牧場が ぜんぶ 同じ では ありません。
では、そんなに 遠い 牧場って、どれくらい ひろいのでしょう。
日本で食べ物が足りなくなったとき、多くの人は近くのお店へ行きます。歩いて数分のこともあります。
オーストラリアのクイーンズランド州のある牧場は、そうはいきません。町まで車で約5時間かかり、往復すれば10時間です。この牧場では、買い物は「行く」ものではなく、「注文して届けてもらう」ものになっています[4]。
しかも、注文は数か月に1回。1回の注文で、数か月ぶんの食料をまとめて頼みます。ここは15人が暮らす牧場で、個人のブログに書かれた一例です。オーストラリアの牧場すべてがこうだとは言えません[4]。
では、そんなに遠い牧場とは、どれくらい広いところなのでしょうか。
日本の感覚では、食料品が切れたら近所の店へ行けば済む。ところがクイーンズランド州のある牧場では、町まで車で約5時間かかる。往復は単純に計算して10時間で、日帰りでも1日がほぼつぶれる。そのためこの牧場では、買い物は「行くもの」ではなく「注文して届けてもらうもの」になっている[4]。
注文の頻度は数か月に1回で、1回の注文が数か月ぶんの食料にあたる。15人が暮らす牧場について、住人自身が書いた個人ブログの記述であり、出典としては二次的なものだ。豪州の牧場すべてに当てはまる一般化はできず、「ある牧場の例」として読む必要がある[4]。
では、距離がそこまで伸びる背景には、どんな広さの牧場があるのか。次章で、世界最大とされる牧場の面積から確かめる。
2. いちばん ひろい 牧場は、どれくらい?
2. 世界最大とされる牧場は、アメリカ最大の7倍以上
2. アンナ・クリーク牧場の面積 ── 資料で2.4万と3万km²に割れる
ここからは、べつの 牧場の 話です。オーストラリアの 南に、アンナ・クリーク牧場が あります。肉を とる 牛を そだてる 牧場で、いま はたらいて いる 牧場では せかい一 大きいと されます[1]。
広さは、やく 2万4000平方キロメートルと いわれます。ただし、ギネスの 記ろくでは 3万平方キロメートルで、数字が 少し ちがいます[2]。だから「2万4000から 3万」と、はばを もたせて おぼえましょう。
アメリカで 一ばん 大きい 牧場は、キング牧場で、やく 3340平方キロメートルです。アンナ・クリークは、その 7倍 いじょうです[1]。
2万3876を 3340で わると 7.1ほど。ほんとうに 7倍を こえて います。
こんなに ひろい ので、牧場の 中を 車で 走るだけでも 長い 時間が かかります。町は、もっと 遠く です。
世界最大とされる牧場
ここからは、前の章の牧場とは別の、南オーストラリア州のアンナ・クリーク牧場を見ます。
この牧場はのアンナ・クリーク牧場は、現在も稼働している肉牛牧場として、世界最大とされています。面積はWikipediaの記述で約23,876km²です[1]。
ところが、ギネス世界記録は同じ牧場を最大の牛の牧場として挙げながら、面積を30,000km²としています[2]。出典によって数字が違うので、「約2.4万から3万km²」と幅をもたせて読むのが安全です。
アメリカ最大の牧場と比べる
Wikipediaの記述では、アメリカ最大の牧場はテキサス州のキング牧場で、約3,340km²です。アンナ・クリーク牧場は、その7倍以上の広さとされます[1]。23,876÷3,340を計算すると約7.15で、確かに7倍を超えます。ギネスの30,000km²で計算すれば約9倍で、数字の幅がそのまま倍率の幅になります。
牧場の中を車で走るだけでも、長い時間がかかる広さです。最寄りの町が遠いのは、不思議ではなくなってきます。
ここからは前章の牧場とは別の例として、南オーストラリア州のアンナ・クリーク牧場を見る。この牧場は、稼働中の肉牛牧場として世界最大とされる。Wikipediaは面積を約23,876km²(約590万エーカー)と書く[1]。一方ギネス世界記録は同じ牧場を最大の牛の牧場に挙げつつ、面積を30,000km²とする[2]。どちらも別の算定値なのか、年による変動なのかは資料からは分からないため、本記事では「約2.4万〜3万km²」と幅で扱う。
比較の物差しとして、Wikipediaはアメリカ最大の牧場であるテキサス州のキング牧場(約3,340km²)を挙げる。23,876÷3,340≒7.15、30,000÷3,340≒9.0となり、アンナ・クリークは「7倍以上」と書かれるが、採用する面積しだいで7倍台から9倍近くまで動く[1][2]。
1つの牧場が数千〜数万km²に及ぶなら、牧場内の移動だけで半日が消える。さらに、物資を売る町はその外側にある。次章では、そうした距離の中で、買い物の「頼み方」がどう組み立てられているのかを見る。
3. 数か月ぶんを、どうやって たのむの?
3. 数か月ぶんの食料を、どうやって決めて頼むのか
3. 数か月ぶんの発注 ── 在庫点検と「届くまで数週間」の条件
町まで 5時間の 牧場では、数か月に 1回、そうこと 冷蔵庫を しらべます[4]。中に ある 物と、なくなりそうな 物を かくにんする ためです。
それから、お店に 注文を まとめて 出します。たのんでも、すぐには とどきません。牧場に つくまで、少なくとも 数週間 かかります[4]。
数か月ぶんを 一度に たのむので、足りなく ならない ように、先の ことまで 考える ひつようが あります。にもつも たくさんです。
ここで 気に なる ことが あります。野菜や 果物、こおらせたの 食べ物は、数か月 もつのでしょうか。
その 牧場では、そういう 足の はやい 物は、また べつの 方ほうで とどけて もらいます。
この牧場では、数か月に1回、倉庫と冷蔵庫を点検して、何が減っているかを確かめます。そのうえで卸売のお店へ注文を出します[4]。
頼んだ荷物は、すぐには届きません。牧場に着くまで、少なくとも数週間かかります。そして、1回の注文で数か月ぶんをまかなうことになります[4]。
これは、買い物のリストを作る人にとって、かなりむずかしい作業です。足りなければ数週間は待つしかなく、多すぎれば保管する場所が要ります。先を読む力が必要な「買い物」だといえます。
ここで疑問が出ます。野菜や果物、冷凍した食べ物を、数か月ぶんも置いておけるのでしょうか。
この牧場では、傷みやすいものは別の方法で届けてもらっています。次の章で見ましょう。
この牧場の注文は、数か月ごとに倉庫・冷蔵庫の在庫を点検し、卸売店へまとめて発注する形をとる。注文品が牧場に着くまでには少なくとも数週間かかり、1回の注文で数か月ぶんをまかなう前提になっている[4]。
この方式には条件がある。リードタイム(注文から到着まで)が数週間あるため、在庫が切れてから頼んでも間に合わない。残りの量と、次の荷物が着くまでの日数を見越して、あらかじめ多めに頼むしかない。一方、多く頼みすぎると保管場所が足りなくなる。注文者には、消費量の見積もりが求められる。
ただし、数か月ぶんの保存ができるのは、日持ちする食品に限られる。では、果物や野菜、冷凍品のように傷みやすいものは、どう扱われているのか。同じ牧場の例から、次章で配達の仕組みを確かめる。
4. 毎しゅう とぶ 小さな ひこうき
4. 傷みやすいものは、毎週、小型機で届く
4. 傷みやすい食品の配達 ── 会社の小型機と、取りに行く場合の所要時間
こおらせた 食べ物や、果物、野菜、パンは、日もちが しません。そこで この 牧場では、毎しゅう 会社の 小さな ひこうきが とどけます[4]。
ひこうきを 動かすのは、町の そうこの かんりを している 人です。同じ ひこうきは、ほかの 3つの 牧場も まわります[4]。
もし、トラックで 取りに 行ったら どうでしょう。ある 日は、朝の 4時に 出て、帰ったのは 夜の 10時半 ごろでした[4]。
4時から 10時半まで 数えると、18時間半です。ほとんど 1日 かかって います。
もう 1つ、郵便の 話です。この 地いきには、1日 かけて 走る 郵便の 車が、1週間に 2回 ありました。すこしだけ なら 荷物も 運べたと いいます。これは 2006年ごろの 記ろくです[1]。
冷凍した食品、果物や野菜、パンは、数か月は置けません。この牧場では、会社の小型機が毎週届けます。操縦するのは、町の倉庫の管理者です。同じ便は、ほかの3つの牧場も回ります[4]。
なぜ小型機なのでしょうか。理由の1つは、取りに行く手間の大きさです。ある日、トラックで荷物を取りに行ったときは、午前4時に出て、帰ったのは午後10時半ごろでした[4]。出発から帰着まで、約18時間半です。1日がほぼ荷物の受け取りだけで終わります。
同じ便が4つの牧場を回るため、それぞれが別々に取りに行く必要はありません。「毎週、新しいものが届く」ことは、数か月ぶんをまとめて頼む方法の弱点を、うまく補っています。
郵便の便
アンナ・クリーク牧場の資料には、2006年の記録として、クーバーピディとオドナダッタを結ぶ1日行程の郵便便が週2回走り、少量の荷物も運べたと書かれています[1]。今の運行がどうなっているかは、この資料からは分かりません。
日持ちしない食品はどうするのか。同じ牧場の例では、冷凍品・果物や野菜・パンは会社の小型機で毎週届く。操縦は町の倉庫の管理者が担い、同じ便が他の3牧場も回る[4]。
この体制が選ばれる理由は、「取りに行く」場合の所要時間と比べるとはっきりする。同じ牧場の記述では、トラックで荷物を取りに出た日、午前4時に出発し、午後10時半ごろ帰着した。差を取ると18.5時間で、ほぼ丸1日が荷物の受け取りに使われる[4]。小型機なら、受け取りに人手と1日を割く必要が減り、しかも4牧場で運航を共有できる。
数か月ぶんの発注と毎週の小型機は、役割が違う。前者は日持ちする食品の量を確保し、後者は傷みやすい食品の鮮度を保つ。この分担は、この牧場の例から読み取れるものであり、他の牧場の運用までは確認できない。
郵便便もある。Wikipediaのアンナ・クリーク牧場の項には、2006年時点でクーバーピディ〜オドナダッタを結ぶ1日行程の郵便便が週2回走り、少量の荷物も運べたとある。ただし2006年の記録で、現在の運行は不明だ[1]。
5. 牧場は、小さな 町みたい
5. 牧場が「小さな町」になり、衛星で世界とつながる
5. 牧場内の自給と通信 ── 売店・発電・衛星回線と、空の学校
遠くまで 行けない 牧場は、中に いろいろ そろえます。ある せつめいでは、牧場は 小さな 町の ようで、大切な 物を 売る 小さな お店や、じぶんで 電気を つくる 道ぐと 日光の 電気が あると いわれます。衛星で テレビや インターネットも つかえるそうです[3]。アンナ・クリーク牧場の 母屋も、まわりに 何も ない ほど 遠いのに、衛星の つうしんが あります[1]。
ただし、どの 牧場にも お店が ある わけでは ありません[3]。
子どもの 勉強は どうでしょう。「空の 学校」という 仕組みが あります。先生は アリススプリングスに いて、無線で 授業を しました。1951年6月8日が、はじめての 正式な 授業です[6]。
遠い 子は、アリススプリングスから 1000キロメートル いじょう はなれて 住んで います。2009年まで 無線で、そのあと 多くの 学校が インターネットに うつりました[5][6]。
町まで遠い牧場は、牧場の中にいろいろな機能を持つようになります。ある解説では、豪州の大牧場は「次の集落まで車で1日」ということが多く、牧場は小さな町のようだと説明されます。必需品を売る小さな売店、発電機や太陽光の電気、衛星のテレビとインターネットがあるそうです[3]。ただし一般的な説明で、どの牧場にも売店があるとは言えません。
アンナ・クリーク牧場の母屋も、とても孤立した場所にありますが、衛星通信でテレビとインターネットが使えます[1]。こうした通信は、注文を出すのにも使えると考えられます。
空の学校
子どもの勉強は、「空の学校」で支えられてきました。1951年6月8日、アリススプリングスにある王立フライングドクター・サービスの基地から、遠い牧場の家に置かれたペダル式の無線機へ、最初の公式な授業が送られました[6]。
対象の地域は約130万km²で、遠い子は拠点のアリススプリングスから1000km以上離れて住むと、2010年の記事は伝えています[5]。授業は2009年まで無線で、その後は多くの学校がインターネットへ移りました[6]。
町が遠いなら、牧場の側が町の機能を抱えこむ。Amusing Planetの解説は、豪州の大牧場では次の集落まで車で1日かかることが多く、牧場は必需品を売る小さな売店、発電機や太陽光の電気、衛星のテレビ・インターネットを備えた「小さな町」のようだと説明する。ただし一般論で、どの牧場にも売店があるとは書かれていない[3]。
アンナ・クリーク牧場自体についても、母屋は孤立しているが衛星通信でテレビとインターネットが使える、と記されている[1]。この通信は注文を出す手段としても使えると考えられるが、資料が述べているのは母屋の衛星通信までだ。
通信は教育にも使われた。アリススプリングス・スクール・オブ・ジ・エアは、対象地域が約130万km²に及び、遠い生徒は拠点から1000km以上離れて住む(2010年の記事の数字)[5]。最初の公式授業は1951年6月8日、アリススプリングスのRFDS基地から、各家のペダル式無線機へ送られた。授業は2009年まで無線で、その後は多くの学校がインターネットへ移った。全校が一斉に移ったわけではない[6]。
6. 自分の 家から 一番 近い お店まで、はかって みよう
6. 自分の家から最寄りの店までを測り、「もし月に1回しか行けなかったら」を考える
6. 出口 ── 自分の「店までの距離」と、牧場の注文を比べる
おうちの 人と いっしょに、地図で 家から 一番 近い お店を さがしましょう。歩いた とき、車の とき、それぞれ どれくらいの 時間か 聞いて みます。
つぎに、「その お店に 1か月に 1回しか 行けない」と 考えます。1か月ぶんの 食べ物を 紙に 書き出して みましょう。肉や 野菜、牛乳など、日もちする もの、しない ものに 分けると、牧場の 人の くろうが 分かります。
お店への 道は、ひとりで 歩かない ように、おうちの 人と 相談して 決めて ください。
あなたの 家の 一番 近い お店は、どれくらい 遠かった でしょう。牧場の 人は、もっと 遠くを、数か月ぶんで 考えて いました。
家族と地図を開いて、自分の家から一番近いお店までの距離と、歩いた場合・車の場合の時間を調べてみましょう。
そのうえで、「もしそのお店に月に1回しか行けなかったら」と想像して、1か月ぶんの食べ物を紙に書き出します。長くもつもの、傷みやすいものに分けると、この牧場がなぜ数か月ぶんの注文と毎週の小型機を使い分けているのか、実感できると思います。道を歩いて確かめるときは、ひとりで行かず、家の人と決めてください。
この記事の注文と配達の話は、個人のブログ1件の例です。友だちや家の人にも「いちばん近いお店まで、どれくらいかかる?」と聞いて、距離のちがいを比べてみると、牧場の例との差が見えてきます。
自宅から最寄りの店までの距離を、地図で測ってみるとよい。歩きと車の所要時間も調べ、次に「月1回しか行けない」と仮定して、1か月の食料を日持ちするものと傷みやすいものに分ける。この分類が、牧場の「数か月ぶんの発注」と「毎週の小型機」の役割分担にそのまま対応する。ひとりで遠くへ行かず、家の人と相談して行うこと。
この記事の数字の多くは、個人ブログ1件(注文・配達)、Wikipedia(アンナ・クリーク牧場)、解説記事に依拠している。面積はWikipediaとギネスで食い違い、買い物の頻度も牧場ごとに違う。そのため、牧場の例をそのまま一般化せず、家族や友人にも最寄りの店までの距離と所要時間を聞き、自分の暮らしの数字と並べて比べてみるとよい。距離が違えば、食料の分け方も変わる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:Wikipedia、ギネス世界記録、解説記事、個人のブログ、オーストラリアの雑誌、王立フライングドクター・サービスの記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- Anna Creek Station(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Anna_Creek_Station (牧場の面積、キング牧場との比較、郵便便、衛星通信について。二次資料)
- Guinness World Records「Largest cattle station」。https://www.guinnessworldrecords.com/world-records/68935-largest-cattle-station (最大の牛の牧場と面積の数字について)
- Amusing Planet「Anna Creek」。https://www.amusingplanet.com/2018/04/anna-creek-cattle-station-bigger-than.html (大牧場が小さな町のようだという一般的な説明について。解説記事)
- Miss Chardy「Outback Cattle Station: how do we get our groceries?」。https://misschardy.com/outback-cattle-station-how-do-we-get-our-groceries/ (クイーンズランド州のある牧場の注文と配達の例について。個人ブログ1件)
- Australian Geographic「Australia's School of the Air」(2010年)。https://www.australiangeographic.com.au/history-culture/2010/08/australias-school-of-the-air/ (空の学校の対象地域と距離について)
- Royal Flying Doctor Service「Adelaide Miethke and the School of the Air」。https://www.flyingdoctor.org.au/news/adelaide-miethke/ (空の学校の最初の授業について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。