1. しおを ふると、やさいから 水が でるのは どうして?
1. 塩をふると、野菜から水が出るのはなぜか
1. 野菜から水が出る ── 浸透圧と原形質分離
きゅうりに しおを ふって、しばらく おくと、おさらに 水が たまって きます。きゅうりは、ふにゃっと やわらかく なります。
やさいの 中には、細胞と いう ちいさな ふくろが たくさん あります。ふくろの まくは、水は とおすけれど、しおの つぶは とおしにくい つくりです。ふくろの 外に こい しお水が できると、水は うすい ほう(ふくろの 中)から、こい ほう(ふくろの 外)へ うつって いきます。この 水を うごかす ちからを、しんとうあつと いいます。
では、たべものに くっついて いる ばいきんの からだでも、おなじ ことが おきるのでしょうか。
きゅうりの薄切りに塩をふって置いておくと、しばらくして皿に水がたまります。塩事業センターの実験では、きゅうりの中心をくりぬいて塩を入れておくと、穴に水がたまってきます。塩には野菜などの水分を吸い出すはたらきがあり、脱水作用と呼ばれます[1][2]。
水が出てくるのは、野菜の細胞が、水は通すけれど塩の粒は通しにくい膜で包まれているからです。細胞の外に濃い塩水ができると、水は薄いほうから濃いほうへ移っていきます。この水を動かす力が浸透圧です[3]。
植物の細胞には、膜の外側に丈夫な壁(細胞壁)もあります。外の液が細胞の中より濃いと、中から水が出て、膜に包まれた部分だけが縮み、壁から離れます。これを原形質分離といいます[4]。植物は、細胞の中の水の圧力(膨圧)で体を支えているので[4]、水が出るとその力が下がり、野菜がしんなりすると考えられます。
では、食べ物にすむ菌の細胞でも、同じことが起きるのでしょうか。
きゅうりの薄切りに塩をふって置くと、しばらくして皿に水がたまる。塩事業センターの実験ページでは、きゅうりの中心をくりぬいて食塩を入れておくと、穴に水がたまってくる様子を紹介している。塩には野菜などの水分を吸い出すはたらきがあり、これを脱水作用と呼ぶ[1][2]。
水を動かしているのは浸透圧だ。溶媒(ここでは水)だけを通す膜を半透膜といい、半透膜をはさんで純粋な溶媒と溶液を置くと、溶媒が溶液のほうへ浸透していく。この移動を止めるために溶液側に加える圧力が、その溶液の浸透圧だ。濃度が低い側から高い側へ溶媒が移る動きは、両側の状態が釣り合うまで続く。生物の細胞膜は、半透膜として働く[3]。
野菜にふった塩は、表面の水分に溶けて濃い塩水になる。細胞の外側が中より濃くなるので、水が細胞から外へ出ていく。植物細胞には膜の外側に細胞壁があり、壁は変形しにくいので、膜に包まれた部分だけが縮んで壁から離れる。この現象を原形質分離という[4]。植物は、細胞内の水の圧力(膨圧)で体を支えている[4]。塩をふった野菜がしんなりするのは、細胞から水が出て膨圧が下がるためと考えられる。
問いは次に移る。同じことは、食べ物の表面や中にいる微生物の細胞でも起きるのだろうか。
2. しおを かけると、ばいきんは ふえにくく なるの?
2. 塩は、菌が「使える水」を減らす
2. 微生物が使える水を減らす ── 水分活性という考え方
ばいきんも、ふえる ときには 水が いります。しおを たくさん かけると、ばいきんの からだからも 水が でて いって、ふえにくく なります。
もう1つ、だいじな ことが あります。たべものの 中の 水は、ぜんぶが ばいきんに つかえる わけでは ありません。しおの つぶが 水を ぎゅっと つかまえて いる ようすを、おもいうかべて ください。つかまった 水は、ばいきんが つかいにくく なります。ただし ほんとうは、しおの つぶが 手で つかんで いる わけでは ありません。
「つかえる 水」を へらす やりかたは、ほかにも あります。ひものは かわかして、れいとうしょくひんは こおらせて、ばいきんが つかえる 水を へらして います。
塩漬けが腐敗を抑える理由は、大きく2つで説明されます。1つは浸透圧です。菌の細胞からも水が出ていくので、菌は弱ったり、増えにくくなったりします。もう1つは、食品の中の「使える水」が減ることです[5]。塩事業センターも、食品を塩漬けにすると雑菌が利用できる水分が少なくなり、腐敗の原因になる雑菌の働きが抑えられる、と説明しています[1]。
食品の中の水は、全部が菌に使えるわけではありません。使える水(自由水)の割合を表す数字が水分活性(Aw)で、食品の保存性の目安にされます。純粋な水を1として、0から1のあいだの数字で表します[6]。米国食品医薬品局(FDA)の技術資料は、水分活性を、食品自身の蒸気圧と、同じ条件での蒸留水の蒸気圧との比、と説明しています[7]。
この数字が小さいほど、菌は増えにくくなります。一般的な食中毒菌では、水分活性0.900前後以上が増えられる目安とされ、0.600以下ではどんな微生物も増えられないとされます[6]。腸炎ビブリオは、0.94以下では増えないとされています[8]。塩や砂糖は水を引きつけて、この数字を下げます。
「使える水を減らす」のは、塩だけではありません。干物は乾燥によって、微生物が使える水を減らしています[9]。凍らせた水も菌には使えなくなることは、冷凍食品のメモで書きました。塩、砂糖、乾燥、凍結は、どれも「菌に使える水を減らす」という点で、つながっています。
では、塩をたくさん使えば、菌は全部止まるのでしょうか。
浸透圧は、食品にすむ微生物にも働く。塩漬けが腐敗を抑える理由は、大きく2つで説明される。1つは、浸透圧によって微生物の細胞から水が失われ、菌が弱ったり増えにくくなったりすること(殺菌・静菌)。もう1つは、塩が水を引きつけて、微生物が利用できる自由水の割合が下がること、すなわち水分活性の低下だ[5]。塩事業センターも、塩漬けで雑菌が利用できる水分が少なくなり、腐敗の原因になる雑菌の働きが抑えられる、と説明する[1]。
水分活性(Aw)は、食品中の自由水の割合を表す数値で、保存性の指標になる。純水を1とし、0から1の範囲で表す[6]。米国食品医薬品局(FDA)の技術資料は、水分活性を、食品自身の蒸気圧と、同じ条件での蒸留水の蒸気圧の比と定義している[7]。
微生物が増える下限は、種類によってちがう。一般的な食中毒菌では0.900前後以上が増殖できる目安とされ、0.600以下ではどの微生物も増えられないとされる[6]。腸炎ビブリオは、水分活性0.94以下では増殖しないと整理されている[8]。つまり、水がたっぷり含まれていても、塩や砂糖が水を引きつけて自由水が減れば、微生物には「水が足りない」状態になる。
この考え方は、塩以外にも共通する。干物は、乾燥によって微生物が利用できる自由水を減らして水分活性を下げ、保存性を高めている[9]。冷凍では、水が氷になって微生物が使えなくなる。この点は冷凍食品のメモで書いた。塩蔵、乾燥、凍結は、どれも「微生物に使える水を減らす」保存法だ。
では、塩を十分に使えば、微生物は全部止まるのだろうか。
3. しおを たくさん つかえば、ずっと くさらない?
3. 塩をたくさん使えば、ずっと腐らないのか
3. 塩があっても増える菌 ── 腸炎ビブリオ・黄色ブドウ球菌・低塩分の塩辛
こたえは、「ずっと くさらないとは かぎらない」です。
うみに すんで いる ばいきんの なかまに、しおが すきな ものが います。ちょうえんビブリオと いう ばいきんです。うみの 水は、100グラムの 中に しおが 3グラムより すこし おおいくらい です。この ばいきんは、ふえる ために、3パーセントぐらいの しおけが いるようです。でも、しおけが 8パーセントより こく なると、この ばいきんは ふえられなく なります。
しおを たくさん つかっても、ふえる ばいきんも います。
むかし、しおを すくなく した いかの しおからで、たくさんの 人が おなかを こわした ことが ありました。しおが すくないと、ばいきんが ふえやすく なるからです。そのあと、くには、おなじような しおの すくない しおからは、つめたい ところ(10ど いか)で あつかうように、と つたえました。
たべものの ふくろに 「れいぞうこで ほぞん」と かいて あったら、その とおりに しましょう。
答えは、「そうとは限らない」です。塩の量が足りないとき、塩に強い菌がいるとき、そして温度などほかの条件がそろったときには、塩を使った食品でも菌は増えます。
塩を好む菌 ── 腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは、海や河口にすむ細菌です。増えるのに3%ほどの塩分を必要とする好塩性の菌で、塩分1〜8%で増えられます。水分活性が0.94以下になると増殖できなくなるとされ、いちばんよい条件では10分以内に分裂します[8]。10分ごとに2倍になり続けるとすれば、1時間で64倍、3時間で26万倍あまりになります。これは計算した値です。実際の食品の中では、温度や食品の種類で増え方は変わります。4℃ではあまり増減がなく、25℃ではイカやホタテ、エビ、カニなどで盛んに増えた、という報告があります[8]。
塩事業センターは、日本の塩づくりの説明で、海水の塩分濃度を約3%と紹介しています[10]。米国海洋大気庁(NOAA)は、世界の海水の平均を約3.5%と説明しています[19]。海水100グラムに、塩が3グラムあまり溶けている濃さです。腸炎ビブリオが必要とする「3%ほど」は、海水の濃さに近いことになります。
塩に強い菌 ── 黄色ブドウ球菌
食品安全委員会のファクトシートによると、黄色ブドウ球菌は食塩濃度16〜18%でも増えられます。ほかの条件が合えば、10%でも毒素(エンテロトキシン)をつくります。この毒素は熱に強く、ふつうの加熱調理では働きを失いません[11]。
塩が足りなかった塩辛 ── 2007年の食中毒
2007年9月、宮城県で作られた低塩分のイカの塩辛が原因で、腸炎ビブリオによる食中毒が12の自治体にまたがって起きました。患者は595人(10月29日現在、推定を含む)で、死者は出ていません。厚生労働省が同じ年の12月に出した通知は、この塩辛は昔ながらの高塩分の熟成塩辛とちがって塩分が4%前後と低く、食中毒菌が増えるのを抑える効果を期待できない、と指摘しました。そのうえで、原料の衛生管理と工場の低温管理が不適切だったことが主な原因と考えられる、と報告しています[12]。腸炎ビブリオが増えられる塩分は1〜8%なので、この塩辛の4%前後という濃さは、菌の増殖を止めるほどの高さではありませんでした。
通知は、こうした低塩分の塩辛について、作るところから食べるまで、10℃以下の低温管理を求めています[12]。塩は「量」が足りなければ、この例のように、菌を抑えきれないことがあります。
塩がどれだけ働くかは、塩の量、菌の種類、温度の組み合わせで決まります。では、塩と同じように水を引きつけて食べ物を守るものは、ほかにもあるのでしょうか。
答えは、「そうとは限らない」だ。塩の量が足りないとき、塩に強い菌がいるとき、温度などほかの条件がそろったときには、塩を使った食品でも菌は増える。
塩を好む菌 ── 腸炎ビブリオ
腸炎ビブリオは、海水や河口の汽水域にすむ好塩性の細菌だ。生育に3%ほどの塩分を必要とし、塩分1〜8%で増殖でき、至適条件では10分以内に分裂する。水分活性は0.94以下では増殖しない[8]。10分ごとに2倍になり続けると仮定すれば、1時間で64倍、3時間で26万倍あまりになる(計算)。実際の食品では温度や種類で増え方が変わり、4℃では大きな増減がなく、25℃では軟体類や甲殻類で著しく増殖したと報告されている[8]。
この菌は1950年、大阪府南部で起きた「シラス食中毒事件」の原因として、日本で最初に見つかった。当初の和名は、好塩性であることにちなむ「病原性好塩菌」で、1963年に「腸炎ビブリオ」と改められた[8]。
塩事業センターは、日本の塩づくりの説明で、海水の塩分濃度を約3%と紹介している[10]。米国海洋大気庁(NOAA)は、世界の海水の平均を約3.5%、つまり海水の重さの3.5%が溶けている塩だと説明する[19]。海水100グラムに塩が3グラムあまり、1リットルなら30グラムあまりにあたる。腸炎ビブリオが生育に必要とする3%ほどの塩分は、海水の濃さに近い。
塩に強い菌 ── 黄色ブドウ球菌
食品安全委員会のファクトシートによると、黄色ブドウ球菌は食塩濃度16〜18%でも増殖でき、ほかの条件が適当なら、10%でもエンテロトキシン(腸管毒)を産生する。菌自体の耐熱性は高くないが、エンテロトキシンは耐熱性が高く、通常の加熱調理では活性を失わない[11]。塩漬けにして加熱すれば安全、とは言えない理由のひとつだ。
塩が足りなかった塩辛 ── 2007年の広域食中毒
2007年9月、宮城県内で製造された低塩分のイカの塩辛を原因に、腸炎ビブリオ(O3:K6)による食中毒が12の自治体にまたがって起きた。患者は595人(10月29日現在、推定を含む)、死者は0人だった。厚生労働省が同年12月10日に出した通知は、この塩辛を「伝統的な高塩分熟成塩辛とは異なり、塩分濃度が低く(4%前後)、腸炎ビブリオ等の食中毒菌の増殖抑制効果が期待できない」製品と位置づけた。製造から消費まで一貫した低温管理が必要な製品なのに、原材料の衛生管理と製造施設の低温管理が不適切だったことが主要因と推定される、との調査報告を受けたものだ。夏の外気温が高いなかで長時間の作業が行われたこと、仕込み用冷蔵庫のパッキンが傷み、12〜18℃の状態が5時間半あったことも、原因の調査結果に挙げられている[12]。
数字を並べると、この塩辛の塩分(4%前後)は、腸炎ビブリオが増殖できる範囲(1〜8%)に入っている。通知は、こうした低塩分の塩辛について、製造・流通・販売を通じて10℃以下の低温管理を求めた[12]。この事例では、塩だけでは菌を抑えきれず、低温管理が必要とされた。
塩がどれだけ働くかは、塩の量、菌の種類、温度の組み合わせで決まる。塩は万能の防腐剤ではない。では、塩と同じように水を引きつけて微生物を抑えるものは、ほかにもあるのだろうか。
4. さとうでも、たべものは ながもち するの?
4. 砂糖でも食べ物が長持ちするのはなぜか
4. 砂糖漬けとジャム ── 塩と砂糖の、水を引く力のちがい
さとうも、水に とけて、こい 水を つくります。だから しおと おなじように、水を ひきつけて、ばいきんが つかえる 水を へらします。さとうを たくさん つかった ジャムや さとうづけは、ながもち する たべものです。
でも、おなじ おもさなら、しおの ほうが、すこしの りょうで 水を ひきつけられます。しおの つぶは、さとうの つぶより ずっと たくさん あるからです。ちいさな ビーズと、おおきな ボールを、おなじ おもさだけ あつめた ところを おもいうかべて ください。ビーズの ほうが、かずが ずっと おおく なります。ただし ほんとうは、しおも さとうも、目に 見えない ほど ちいさい つぶです。
そのぶん、さとうで ながもち させる ときは、たくさんの さとうが いります。
砂糖も水によく溶けて、濃い液をつくります。水を引きつけて、菌に使える水を減らす点は塩と同じです。砂糖漬け、あんこ、ジャムなどは、砂糖が防腐の役目をしている食品として説明されます[13]。ジャムは、果物に砂糖を加えて煮つめ、果物の中の水分を砂糖に置きかえて、ペクチンと酸の作用でゼリー状にした食品です[14]。米国ジョージア大学の家庭食品保存センターも、ジャムやゼリーの砂糖について、味やゲルのもとになるだけでなく、微生物が増えるのを防ぐ保存料でもあると説明しています[15]。
同じ重さなら、塩のほうがずっと多くの粒
浸透圧の大きさは、溶けている粒の数で決まります[3]。食塩は、水の中でナトリウムイオンと塩化物イオンの2つの粒に分かれます。砂糖は分かれず、しかも1粒が塩よりずっと重い(食塩の式量は約58、砂糖の分子量は約342)ので、同じ100グラムで数えると、粒の数は塩のほうが10倍あまり多くなります。これは計算した値です。
この計算だけで保存性が決まるわけではありませんが、砂糖で長持ちさせようとすると、ジャムのようにたくさんの砂糖が要る理由のひとつは、ここにあると考えられます。では、砂糖も冷蔵庫も身近でなかった昔の人は、塩をどう使って食べ物を保存していたのでしょうか。
砂糖も水によく溶け、濃い溶液をつくる。水を引きつけて微生物の使える水を減らす点は、塩と同じだ。砂糖漬け、あんこ、果実ジャムなどは、砂糖が防腐の役割を担う食品として挙げられる[13]。ジャムは、果物に砂糖を加えて加熱濃縮し、果物中の水分を砂糖に置き換えるとともに、ペクチンと酸の作用でゼリー化した食品だ[14]。米国ジョージア大学の家庭食品保存センター(NCHFP)は、ジャム・ゼリー用の材料としての砂糖を、ゲルをつくる材料であり、同時に、微生物の増殖を防ぐ保存料でもあると説明している[15]。
同じ重さなら、塩のほうがずっと多くの粒
浸透圧は、溶けている粒(分子やイオン)のモル濃度に比例する。電解質は、電離して生じたイオンの数で数える[3]。食塩(NaCl、式量約58.4)は水中でNa+とCl−の2つに分かれる。ショ糖(分子量約342)は分かれない。同じ100グラムで粒の数を数えると、食塩は約1.7モル×2で約3.4モル、ショ糖は約0.29モルで、食塩のほうが10倍あまり多い(理想的な溶液として計算した値)。
実際の保存性は、水分活性や酸性度、温度などにも左右されるので、この比だけで決まるわけではない。ただ、砂糖で保存性を持たせるジャムや砂糖漬けが、たくさんの砂糖を使う理由のひとつは、ここにあると考えられる。では、砂糖も冷蔵庫も身近でなかった時代、人は塩をどう使って食べ物を保存したのか。
5. れいぞうこが ない ころは、どうして いたの?
5. 冷蔵庫のない時代、塩はほかの方法と組んで使われた
5. 塩蔵・乾燥・発酵 ── 塩は単独でなく、組み合わせて使われた
むかしの 人は、しおと ほかの ことを、いっしょに つかいました。
さかなを しおに つけてから、ほして かわかします。これが ひものです。かわかすと、ばいきんが つかえる 水が へります。
やさいを しおに つけて、しばらく おきます。これが つけものです。しおの おかげで、たべものを くさらせる ばいきんが ふえにくく なり、おいしい つけものを つくる ばいきん(にゅうさんきん)が はたらきやすく なります。
いまの しおからには、しおが すくない ものも あります。しおが すくない たべものは、つめたい ところに おく ことが ひつような ものが あります。
保存食は、塩蔵、糖蔵、乾燥、燻製、発酵などを使って作られてきました[16]。塩は、ほかの方法と組み合わせて使われることが多くありました。
干物は、魚を塩水に短時間つけてから干すことが多く、塩と乾燥の組み合わせです。乾燥で、微生物が使える水を減らします[9]。
漬物では、塩が腐敗のもとになる雑菌の働きを抑えるので、発酵に必要な微生物が働きやすくなります[1]。乳酸発酵で酸性に傾くと、腐敗や食中毒の原因になるほかの微生物も増えにくくなり、食品が長く保存できるようになります[17]。塩は、全部の菌を止めるだけでなく、味方の菌が働きやすい環境をつくる役もしています。
塩をたくさん使う例が、梅干しです。梅干しは、昔ながらの作り方では塩分25〜30%で漬け、現代の基本的な製品は20%程度以下だとされます[18]。これに対して、塩を減らした塩辛のような食品は、塩だけでは菌を抑えきれないので、低温管理が必要とされました。売り場での置き場所のちがいの理由は、商品ごとの塩分や保存方法の表示で確かめられます。
保存食は、塩蔵、糖蔵、乾燥、燻製、発酵などの方法を組み合わせてきた[16]。塩は、そのなかで単独よりも、ほかの方法との組み合わせで使われることが多い。
干物は、魚を塩水に10分から数十分つけてから干すことが多い(静岡県での製造方法の説明)。塩で下味をつけると同時に、乾燥で微生物が利用できる自由水を減らし、水分活性を下げて保存性を高める[9]。
漬物では、塩の役割が、微生物の抑制だけでは終わらない。塩事業センターは、塩漬けにすると腐敗の原因になる雑菌の働きが抑えられ、そのぶん、発酵に必要な微生物が働きやすくなる、と説明する[1]。乳酸発酵でpHが酸性側に偏ると、腐敗や食中毒の原因になるほかの微生物の繁殖が抑えられ、食品の長期保存が可能になる[17]。塩は、腐らせる菌を抑えるだけでなく、味方の菌が働きやすい環境をつくる役も担っている。
塩を大量に使う例が梅干しだ。伝統的な製法では塩分25〜30%で漬け、現代の基本的な製品は20%程度以下とされる[18]。対照的に、塩分を4%前後に抑えた塩辛は、塩だけでは菌を抑えきれず、低温管理が必要とされた(先の通知の例)。売り場での置き場所は商品ごとの塩分や保存方法の表示で決まるので、店で確かめられる。
6. しおは、どこから くるの?
6. 塩そのものは、どこから来るのか
6. 海水の塩分は約3% ── 塩づくりと、海の塩の出どころ
にほんの しおは、うみの 水から つくります。うみの 水には、しおが 100グラムに 3グラムより すこし おおいくらいしか ないので、その 水を こく して、にて つめて、しおを とります。むかしの 人には、たいへんな しごとでした。
ところで、うみの しおは、どこから きたのでしょう。かわの 水が はこんできた、と いわれて きましたが、それだけでは なかったようです。それは、べつの メモで しらべました。「うみの しおは、かわが はこんだ だけでは なかった」を、読んで みて ください。
塩事業センターの説明では、日本は岩塩がほとんど取れず、海水の塩分濃度も約3%と低く、雨が多くて湿度も高い国です。そのため、海水を濃縮してから煮つめるという、2段階の塩づくりが発達しました[10]。8世紀ごろには、かなり大きな規模の塩の産地があったことが知られています[10]。
この濃さは、腸炎ビブリオが必要とする3%ほどに近いものです。海水をそのまま使うだけでは、この菌が増えられる範囲に入っています。塩で食べ物を長持ちさせるには、海水より濃い塩の力を、ほかの工夫と組み合わせて使う必要があったのでしょう。
そもそも、海の塩はどこから来たのでしょうか。「川が運んだ」という説明には、別の話もありました。その話は、海の塩は、川が運んだだけではなかったのメモで書いています。
塩事業センターの説明では、日本は岩塩資源に恵まれず、海水の塩分濃度が3%と低く、多雨多湿の環境でもある。そのため、海水を濃縮してから煮つめる2段階の独自の方式が発達した。8世紀ごろには、この方法による相当な規模の塩産地があったことが知られている[10]。
海水の塩分(約3〜3.5%)は、腸炎ビブリオが生育に必要とする3%ほどに近い[8]。海水そのままの濃さは、この菌が増殖できる範囲(1〜8%)に入っている。塩で保存性を持たせるには、海水より濃い塩分にするか、干す・発酵させる・冷やすといったほかの手を組み合わせる必要がある。
そもそも、海の塩はどこから来たのか。川が運んだ、という古典的な説明には、別の見方もあった。その経緯は、海の塩は、川が運んだだけではなかったのメモで書いている。
7. じぶんで しらべて みよう
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
おうちの 人と いっしょに、きゅうりを うすく きって もらいましょう。1まいには しおを ひとつまみ ふり、もう1まいには なにも しません。10ぷんから 30ぷんぐらい おいて、おさらの ようすを くらべます。しおを ふった ほうに、水の つぶが 出て くるでしょうか。しらべたら、その ばで たべます。おいたままに しません。
おみせに いったら、うめぼしと しおからの ふくろを 見て みましょう。「ほぞんの しかた」に、なんと かいて ありますか。
たべものを わざと くさらせて くらべたり、しおづけを じぶんで つくって ためしたり する ことは しません。
家の台所で、きゅうりの薄切りを使って確かめられます。包丁はおうちの人に使ってもらいます。1枚には塩をひとつまみふり、もう1枚には何もしないで、10分から30分置いて比べます。塩をふったほうに水が出てくるか、切り口の見た目はどうちがうかを見ます[2]。確かめたら、その場で食べます。置きっぱなしにはしません。
お店に行ったら、梅干し、イカの塩辛、ジャム、干物の袋の「保存方法」の表示を見比べてみましょう。常温のもの、冷蔵のもの、「開封後は冷蔵庫へ」と書いてあるものがあります。それぞれ、塩や砂糖の量や、水分の多さがどうちがうかを、原材料や成分の表示から読み取れるでしょうか。
食べ物をわざと腐らせて比べたり、塩漬けを自分で作って試したりすることは、しません。食中毒の危険があります。
この話は、台所とお店でまず確かめられる。きゅうりの薄切りを2枚用意し(包丁は大人に頼む)、1枚に塩をひとつまみふり、もう1枚は何もしないで、10〜30分置いて比べる。塩をふった側に水がにじむこと、しんなりして見た目が変わることを見る。塩事業センターの実験ページには、きゅうりの中心をくりぬいて食塩を入れる形の手順が載っている[2]。確かめたら、その場で食べる。置きっぱなしにはしない。
店では、梅干し、イカの塩辛、ジャム、干物などのパッケージの保存方法の表示(常温、要冷蔵、開封後は冷蔵)を見比べる。成分表示の食塩相当量や、原材料の並び順と合わせて読むと、「塩や砂糖で水を引きつけているものは常温、塩分を抑えたものは冷蔵」という傾向があるかを、自分の目で確かめられる。
読み比べるなら、原典から2つ。厚生労働省の「低塩分塩辛の取り扱いについて」は、実際に起きた事例を1枚の通知にまとめた文書で[12]、塩の量と低温管理の関係が、具体的な数字で書かれている。食品安全委員会の「ブドウ球菌食中毒(ファクトシート)」[11]と「腸炎ビブリオの概要」[8]は、塩に強い菌・塩を好む菌の性質が、数字で整理されている。
食べ物をわざと腐らせて比べたり、塩漬けを自作して保存を試したりすることは、しない。食中毒の危険がある。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:食品安全委員会、厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)などの公的機関の資料、塩事業センターと米国の大学の解説、百科事典(ウィキペディア)を使いました。百科事典の項目は一般向けの整理で、保存や食品衛生の判断には、公的機関の資料を優先しています。数字は、資料が示した条件のものです。
- 塩事業センター「塩百科:塩の用途」。 https://www.shiojigyo.com/siohyakka/useto/ (塩漬けで、雑菌が利用できる水分が減ること、発酵に必要な微生物が働きやすくなることの説明に使った)
- 塩事業センター「塩百科:塩の学習室 きゅうりの水を吸い出してみよう」。 https://www.shiojigyo.com/siohyakka/experiment/exp05.html (きゅうりの中心をくりぬいて食塩を入れ、水が出てくる様子を見る実験と、その脱水作用の説明に使った)
- Wikipedia「浸透圧」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/浸透圧 (浸透圧と半透膜、粒の数と浸透圧の関係、細胞膜が半透膜として働くことの説明に使った)
- Wikipedia「原形質分離」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/原形質分離 (植物細胞で、外の液が濃いときに細胞膜だけが縮んで細胞壁から離れる現象と、膨圧の説明に使った)
- Wikipedia「塩蔵」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/塩蔵 (塩漬けが腐敗を抑える理由を、浸透圧と水分活性の低下の2つで整理した説明に使った)
- Wikipedia「水分活性」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/水分活性 (水分活性の意味と、一般的な食中毒菌が増える目安(0.900以上)、どの微生物も増えられない目安(0.600以下)に使った)
- 米国食品医薬品局(FDA)「Water Activity (aw) in Foods」(検査の技術ガイド)。 https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/inspection-technical-guides/water-activity-aw-foods (水分活性の定義(食品の蒸気圧と蒸留水の蒸気圧の比)に使った)
- 食品安全委員会「腸炎ビブリオの概要」(平成21年度食品安全確保総合調査「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」〈社団法人畜産技術協会作成〉より抜粋)。 https://www.fsc.go.jp/sonota/hazard/H21_17.pdf (腸炎ビブリオの塩分(1〜8%、3%を好む)、分裂の速さ、水分活性0.94以下では増殖しないこと、温度による増え方、1950年の発見と名前の由来に使った)
- Wikipedia「干物」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/干物 (干物が、乾燥で自由水を減らして水分活性を下げていること、塩水に短時間つけてから干す作り方の説明に使った)
- 塩事業センター「塩百科:日本の塩づくりの歴史」。 https://www.shiojigyo.com/siohyakka/made/history.html (塩事業センターが海水の塩分濃度を約3%と説明していること、2段階の塩づくりが発達した背景、8世紀ごろの塩産地の説明に使った)
- 食品安全委員会「ブドウ球菌食中毒(ファクトシート)」(作成日:2011年11月24日、最終更新日:2021年3月30日)。 https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/09staphylococcal.pdf (黄色ブドウ球菌が食塩濃度16〜18%でも増殖し、10%でも毒素をつくること、毒素が耐熱性であることに使った)
- 厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課長通知(食安監発第1210001号)「低塩分塩辛の取り扱いについて」(2007年12月10日)。 https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/kanshi/dl/071221-2.pdf (2007年9月に起きた低塩分イカ塩辛による広域食中毒の状況(患者595人など)、塩分4%前後で増殖抑制効果が期待できないこと、10℃以下の低温管理を求めた内容に使った)
- Wikipedia「砂糖」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/砂糖 (砂糖漬け、あんこ、果実ジャムなど、砂糖が防腐の役割を担う食品の説明に使った)
- Wikipedia「ジャム」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/ジャム (ジャムが、果物の水分を砂糖に置き換え、ペクチンと酸でゼリー状にした食品であることの説明に使った)
- National Center for Home Food Preservation(米国ジョージア大学)「Jellied Product Ingredients」。 https://nchfp.uga.edu/how/make-jam-jelly/jellied-product-ingredients (ジャム・ゼリー用の材料としての砂糖が、ゲルをつくる材料であり、保存料でもあるという説明に使った)
- Wikipedia「保存食」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/保存食 (塩蔵、糖蔵、乾燥、燻製、発酵などの保存の方法についての整理に使った)
- Wikipedia「漬物」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/漬物 (漬物で、乳酸発酵によってpHが酸性側に偏り、ほかの微生物の繁殖が抑えられることの説明に使った)
- Wikipedia「梅干し」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/梅干し (梅干しの塩分の目安(伝統的な製法で25〜30%、現代の基本的な製品で20%程度以下)に使った)
- 米国海洋大気庁(NOAA)国立海洋局「Why is the ocean salty?」。 https://oceanservice.noaa.gov/facts/whysalty.html (世界の海水の平均の塩分が約3.5%(重さの3.5%)という説明に使った)
なおした ところ
更新履歴
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