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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

アザラシは あしを つかわずに、りくを どう すすむの?

アザラシは背骨をうねらせて陸を進む ── アシカとの動きの違い

アシカは歩き、アザラシは背骨でうねる ── 陸上移動の違いと、水中・陸上での後ろひれの役割

分野:生きもの

ゾウアザラシの おすは、体重が 2700キログラムにも なります。しらべた 人の はなしでは、その 大きな 体が、りくの 上で 後ろの ひれを 使わずに すすんだ そうです[2]。

どうして 使わないのでしょうか。おなじ なかまの アシカは、りくを 歩けるのに、どこが ちがうのでしょうか。この メモを 読むと、二ひきの ひれの むきと、すすみ方の ちがいが 分かります。

キタゾウアザラシの雄は、体重が最大2700kgに達するといいます。その巨体が陸上を進むとき、後ろひれは使われなかったと、この種を調べた研究は報告しています[2]。

後ろ足を使わずに、どうやって進むのでしょうか。同じ海にすむアシカは陸を歩けるのに、何がちがうのでしょうか。後ろひれの向きと、背骨のうねり、陸での「楽さ」の差から、その答えが見えてきます。

キタゾウアザラシの雄は最大2700kgに達する。この種の陸上移動を調べた研究では、胸・腰まわり・前ひれが地面に触れる主な部分で、後ろひれは使われなかったと報告されている[2]。

後ろひれを使えないのに、なぜ進めるのか。そして、同じ鰭脚類のアシカが四肢で歩けるのは、体のどこが違うからか。後ろひれの向き、背骨の動き、移動のエネルギーの差をつなげると、水中と陸上で後ろひれの役割が入れかわる様子が分かる。

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1. 水族館で、おなかを つけて いるのは どっち?

1. プールサイドで、腹をつけて進むのはどちらか

1. 「歩く」と「はう」── 何を比べるのか

水族館や どうぶつえんで、アシカと アザラシを 見たことが ありますか。アシカは 前の ひれで 体を おこして、歩くように 見える ことが あります。

アザラシは、おなかを じめんに つけて、もぞもぞ すすみます。どちらも 海の どうぶつなのに、どうして こんなに ちがうのでしょう。

まずは、アシカの あしの ひみつから 見て みましょう。

水族館や動物園では、アシカが前ひれで上体を起こし、四つ足で歩くように見える場面があります。アザラシのほうは、腹を地面につけて、もぞもぞと進むことが多いです。

どちらも海に暮らす仲間なのに、陸での動きはなぜこんなに違うのでしょうか。英語の論文では、アシカの仲間を otariid(アシカ科)、アザラシの仲間を phocid(アザラシ科)と呼んで、その差を調べています[1]。

まず、歩けるほうのアシカから見てみます。

水族館で両者を並べて見ると、アシカは前ひれで上体を起こして歩き、アザラシは腹をつけて進むことが多い。この差は、見た目の印象ではなく、陸上移動の研究として測られている[1]。

比べる対象は、アシカ科(アシカ・オットセイ)とアザラシ科である。ともに鰭脚類だが、陸上では動き方の仕組みが違う。では、歩けるアシカの体は、どこがアザラシと違うのか。

2. アシカの 後ろひれは、体の 下に はいる

2. アシカは後ろひれを体の下へ回せる

2. アシカ科は後ろひれを体の下に入れて、四肢で歩く

アシカの 後ろひれは、体の 下で 前むきに できます。だから ひれを つかって 体を ささえ、4本で 歩けるのです[1][3]。

アシカの 前ひれは 大きいと、しらべた 人の 文にも 書かれて います[1]。

水族館で アシカが ショーを しやすいのは、歩けるからだと いう 記事も あります[5]。ただし、これは その 記事の 見方です。

カリフォルニアアシカなどのアシカ科は、前肢が大きく、後ろ足を体の下に入れて四足歩行ができます[1]。Pinnipedia(鰭脚類)の解説も、アシカ科は後ろひれを体の下に向けられるので、陸上で動きやすいと説明しています[3]。

体の下に足が入ると、前後のひれを使って体を支えられます。これがアシカ流の「歩き」の土台です。

水族館のショーでアシカが芸をしやすい理由の一つとして、後ろ足を折りたたんで歩けることをあげる一般向けの記事もあります[5]。ただしこれは記事の見方で、研究の結論ではありません。

では、この「体の下に入る」ができないと、何が起こるのでしょうか。

Kerrらの論文要旨は、アシカ科が大きな前肢をもち、後ろ足を体の下に回して四足で歩けると述べる[1]。Pinnipediaの解説も、アシカ科は後ろひれを体の下に向けられるため陸上で助けになると説明する[3]。

この「回せる」ことは、陸で歩く助けになる。後ろひれが体の下に入れば、前ひれと合わせて前後のひれで体を支えやすい。だからアシカは、4本のひれを使って歩けるのである。

水族館のショーで芸をしやすい一因とする一般向けの記事もあるが、これは研究の結論ではなく記事の見方にとどまる[5]。では、この回転ができない側は、どう動くのか。

3. アザラシの 後ろひれは、前に 出せない

3. アザラシの後ろひれは、後ろを向いたままになる

3. アザラシ科は後ろひれを前に出せず、「四肢歩行」が成り立たない

アザラシの 後ろひれは、ずっと 後ろを むいて います。体の 下に いれられません[1][3]。

日本の ことばの 本にも、アザラシは 前あしと おなかで はって すすむだけで、歩けないと あります[4]。いもむしのように すすむ、と 書いて あります。

では、あしを 使えない 体は、どうやって 前に 出るのでしょうか。

アザラシ科は前肢が小さく、陸の上では後ろひれを体の下に入れられません[1]。解説でも、後ろひれを前へ向けられないため、陸上の動きは遅くぎこちなくなるとされています[3]。

日本語の辞典は、アザラシが陸上では四肢歩行ができず、前肢と体幹部ではって進むだけで、後肢は後ろを向いたまま前へ動かせないと記しています。芋虫のような動きと表現されています[4]。

では、足が役に立たないまま、体はどう前へ出るのでしょうか。

アザラシ科は前肢が小さく、論文要旨は、陸上移動の間、後ろひれを体の下に入れられないと述べる[1]。後ろひれを前へ向けられないため、陸上の動きが遅くぎこちなくなるという説明もある[3]。

日本語の辞典は、アザラシは陸上で四肢歩行ができず、前肢と体幹部ではって移動するのみで、後肢は後方を向き前方へ動かせないと記す。耳介がない点もあわせて挙げる[4]。

つまり、四肢歩行が成り立たない理由として、資料は後肢を前へ向けられないことを挙げている。では、後肢を使わずに、体はどう進むのか。

4. ゾウアザラシは、せぼねで うねって すすむ

4. 背骨を上下に曲げて、うねりで進む

4. 背骨の背腹方向の屈曲が、陸上移動をつくる

キタゾウアザラシを しらべた 研究が あります。ゾウアザラシは、せぼねを 上下に まげて、リズムよく うねって すすみました[2]。

ちきゅうに ついて いたのは、むねと こしの まわり、それに 前ひれが おもでした。後ろひれは 使われませんでした[2]。

ただし これは ゾウアザラシで わかった ことです。ほかの アザラシも ぜんぶ おなじかは、この 研究だけでは 分かりません。

キタゾウアザラシを調べた研究では、背骨を背中側とお腹側へ交互に曲げることで、リズミカルなうねりを生み、その力で進んだと報告されています。地面に触れていたのは胸・腰まわり・前ひれが中心で、後ろひれは使われませんでした[2]。

体を大きな虫のように波打たせて、前へずらしていくようなイメージです。ただしこれはキタゾウアザラシの結果で、ほかのアザラシ類すべてに同じ動きがあてはまるとは、この論文だけでは言えません。

この動きは、楽なのでしょうか。それとも大変なのでしょうか。

Tennettらの研究は、キタゾウアザラシが陸上で、背骨を背中側と腹側へ交互に曲げる(背腹屈曲)ことで生まれるリズミカルな波状運動で進むと報告している。地面に接していたのは主に胸・腰まわり・前ひれで、後ろひれは使われなかった[2]。

ここで注意したいのは、この結果がキタゾウアザラシについてのものだという点である。ほかの種でも同じ仕組みかは、この論文だけからは言えない。

前に出るための力を、足ではなく体幹で作る。それは、歩く動きに比べて費用がかかるのではないか。この点を測った研究が次にくる。

5. うねって すすむのは、つかれるの?

5. うねって進むと、歩くより「高くつく」のか

5. 移動コストを比べる ── アシカ3頭とアザラシ3種

アシカと、アザラシの 三しゅるいで、りくで どれだけ 力が いるかを くらべた 研究が あります。しらべた 人の まとめには、アザラシの ほうが、より 大きな 力が いると 書かれて います[1]。

アシカは 体が 上下に ゆれにくく、はやく 動けたと いいます。

ゾウアザラシは、おすで いちばん 大きい ときは 2700キログラムに なります。1キロの さとうの ふくろ 2700こ ぶんです。この 大きさと、水の中に あった 体が、りくの はやさと ねばりづよさを おさえて いると 書かれて います[2]。

ただし、これは 力学の けいさんで、息から はかった もの では ありません。

Kerrらは、カリフォルニアアシカと、ゼニガタアザラシ(ハーバーシール)・ハイイロアザラシ・キタゾウアザラシの、陸上での移動にかかる力学的コストなどを比べました。論文の要旨によると、アザラシ3種のコストと出力がアシカより有意に高い、という結果です。要旨には、アシカは重心の上下動が小さく、速度が高かったとも書かれています[1]。

キタゾウアザラシの雄は最大2700kgで、アザラシ科では世界で2番目に大きいといいます。泳ぎや潜水は得意でも、その大きさと水中向きの体の作りが、陸上での速さと持久力を限っていると、研究は述べています[2]。

ただし、ここでの「コスト」は力学的な計算で、呼吸から測った代謝のコストではありません。アシカは3頭だけの比較です。この結果は、傾向を示すものとして読むのが適切です。

では、なぜアザラシは、わざわざ陸上に不利な体で生きているのでしょうか。

Kerrらは、カリフォルニアアシカと、アザラシ3種(ハーバーシール・ハイイロアザラシ・キタゾウアザラシ)の陸上移動を、力学的移動コストと出力で比べている。要旨によれば、アザラシ3種は、いずれもアシカより有意に高い値を示した。アシカは重心の上下動が小さく、速度が高いとも記される[1]。

注意したいのは、測られているのが力学的なコストで、酸素消費などの代謝コストではない点である。アシカの個体数も3頭にとどまる。そのため、アザラシのほうが陸上では動きにくい、という傾向を示す結果として読むのが妥当である。

キタゾウアザラシについては、雄が最大2700kgに達し、アザラシ科で2番目に大きいと記される。泳ぎと潜水は得意でも、大きさと水中に適した体の作りが、陸上の速さと持久力を限っているとされる[2]。では、その「水中に適した体」は、水の中でどう使われているのか。

6. 水の中では、ひれの やくわりが ぎゃくに なる?

6. 水の中では、役割が入れかわる

6. 水中では前ひれと後ろひれの役割が逆転する、という説明

アシカは 水の中で、長い 前ひれを 大きく かいて およぎます[6]。りくで 歩く ための ひれが、水の中では およぐ ための ひれでも あるのです。

アザラシは 後ろひれを 左右に ふって およぐと いわれます。ただし、この メモでは、原文で たしかめて いません。

りくと 水の中で、つかう ひれの めだち方が かわるのかも しれません。ほんとうに そうか、水族館の 人に 聞いて みたく なります。

アシカは水中で、長い前ひれを大きくかくようにして泳ぎ、推進力の大部分を前ひれのかき動作でつくるという測定が、トドの仲間で報告されています[6]。前ひれを推進に使うのはアシカ科の特徴の一つとされます。ただし、「アシカだけ泳ぎ方が違う」といった言い切りは、この資料からはできません。

一方、アザラシは水中で、後ろひれを左右に振って泳ぐと説明されることが多いようです。

アシカは水中では前ひれで進み、陸上では前後のひれを使います。アザラシは、後ろひれが水中で主役なのに、陸上では後ろを向いたまま使えません。水中と陸上で、ひれの役目の重さが入れかわっているのかもしれません。

確かめるには、水族館の水中観察窓の前で、泳ぎ方を見るのが近道です。

アシカは水中で、長い前ひれを大きくかいて泳ぐ。トドを調べた報告では、前ひれのかきの駆動相で、推力の大部分が生まれるとされる[6]。前ひれを推進に使うことは、アシカ科の特徴とされるが、「アシカだけが違う」と言い切る根拠までは、この資料にはない。

アザラシ科については、水中では左右の後ろひれを合わせ、魚の尾びれのように左右へ交互に振って泳ぐ、という説明が広く見られる。しかしこの記事では、原典の論文や日本語の動物学資料でその点を照合していない。

役割の重さは、陸と水で入れかわっているように見える。アシカは、水中では前ひれで推進し、陸上では前後のひれを使う。アザラシは、水中で推進の主役になりうる後ろひれが、陸では後方を向いたまま使われない。ひれの向きと体の作りが、どの環境で動きやすいかに関わっている、という見方である。

7. じぶんでも たしかめて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

やってみよう。家の ゆかで、二つの すすみ方を くらべます。まわりに あぶない ものが ないか 見て、おうちの 人に 見て もらいましょう。

ひとつ目は、よつんばいで 歩きます。二つ目は、あしを 後ろに のばした まま、おなかを ゆかに つけて すすみます。体の どこが ゆかに つくか、どちらが すすみやすいか、くらべて みましょう。ただし、人間の 体だから、本物の アザラシとは ちがいます。

水族館や どうぶつえんへ 行ける ときは、しゃしんや えいぞう、ずかんでも いいので、アシカと アザラシの 耳を 見て みましょう。アシカの なかまには 外に 出た 耳たぶが あり、アザラシには 耳の あなだけだと いわれて います[4][7][8]。後ろひれの むきも、見くらべて みましょう。

次のようなことを、試したり調べたりできそうです。

  • 家の床で、よつんばいで進む場合と、足を後ろにのばしたまま腹ばいになり、腹を床につけて進む場合を比べてみましょう。体のどこが床につくか、どちらが進みやすいかをメモします。周りの安全を確かめ、家の人に見てもらってください。人間の体なので、本物のアザラシの動きとは違います。
  • 水族館や動物園に行けるときは、写真や映像、図鑑でもよいので、アシカとアザラシの耳と後ろひれの向きを見比べてみましょう。アシカ科には外耳介(耳たぶ)があり、アザラシにはなく耳の穴だけ、という説明があります[4][7][8]。
  • 飼育員さんに、泳ぐときにどのひれをよく使うか聞いてみましょう。

この記事では、論文の要旨と辞典・解説を突き合わせた。さらに調べるなら、次の道すじがある。

  • Kerrらの論文(J Exp Biol 2022)とTennettらの論文(J Exp Biol 2018)の本文で、本記事が要旨だけから読んだ数値と条件を確かめる[1][2]。
  • 水族館で、アシカ科の耳たぶと、アザラシの耳の穴を見比べる[4][7][8]。前ひれの爪の有無に違いがあるとする資料もあるが、原典の図鑑は確認していない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

論文は要旨の範囲で読んだ。記事の数値と結論は要旨の範囲にとどめている。

  1. Kerr et al. (2022) Biomechanical energetics of terrestrial locomotion. Journal of Experimental Biology 225(18). https://cob.silverchair.com/jeb/article/225/18/jeb244163/276647/Biomechanical-energetics-of-terrestrial-locomotion (アシカ科とアザラシ科の陸上移動の違い・移動コストの比較)
  2. Tennett et al. (2018) キタゾウアザラシの陸上移動。Journal of Experimental Biology 221(18). https://cob.silverchair.com/jeb/article-pdf/doi/10.1242/jeb.180117/1903428/jeb180117.pdf (背骨のうねりによる移動・体の大きさ)
  3. New World Encyclopedia「Pinnipedia」 https://www.newworldencyclopedia.org/entry/Pinnipedia (後ろひれの向きと陸上での動き)
  4. コトバンク「アザラシ」 https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%82%B6%E3%83%A9%E3%82%B7 (陸上での移動、耳介がないこと)
  5. BE-PAL「アザラシとの違いは?」 https://www.bepal.net/archives/511730 (アシカの歩き方の一般向け説明)
  6. Wikipedia「Flipper (anatomy)」 https://en.wikipedia.org/wiki/Flipper_(anatomy) (アシカの前ひれによる泳ぎ)
  7. honcierge「海獣図鑑」紹介記事 https://honcierge.jp/articles/shelf_story/6563 (耳たぶ・爪による見分け)
  8. NOAA Fisheries「Is it a seal or a sea lion?」 https://www.fisheries.noaa.gov/feature-story/it-seal-or-sea-lion (耳たぶの有無)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

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