心ぞうの うごきが おしえて くれた、アホウドリの ひみつ

アホウドリは、なぜ疲れずに飛べるのか

アホウドリはなぜ疲れずに飛べるのか ── ダイナミックソアリングの物理

分野:生きもの

アホウドリの せなかに 小さな きかいを つけて、とんで いる ときの 心ぞうの うごきを しらべた 研究者が います。

きかいが おくって きた すうじは、1ぷんかんに 144かい。この すうじから、海の 上での ふしぎな とびかたが 見えて きました。いっしょに しらべて いきましょう。

アホウドリの背中に小さな心拍計をつけて、飛んでいるときの心臓の動きを調べた研究者がいます。

送られてきた数字は、1分間に144回。この数字から、海の上での不思議な飛び方が見えてきました。研究者や国立極地研究所の資料で、その理由をたどります。

アホウドリの背に小型の心拍計を装着し、飛行中の心拍数を計測した研究がある。

記録された心拍数は1分間に144回だった。この数字から、海上での特異な飛行法が浮かび上がる。学術論文や研究機関の資料でその理由をたどる。

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1. 心ぞうの うごきは、休んで いる ときと おなじくらい

1. 心拍数は、休んでいるときとほとんど同じだった

1. 飛行中と休息中で、心拍数は変わらない

この 研究の あいては、アホウドリの なかまの「コアホウドリ」と いう 鳥です[1]。144かいと いう すうじだけでは、それが はやいのか おそいのか わかりません。そこで 研究者たちは、水の 上に ういて 休んで いる ときの 心ぞうの うごきも しらべました。

すると、休んで いる ときは 150かい。とんで いる ほうが、すこし おそいくらいでした[1]

いっぽう、とびたつ ときや、おりる ときの 心ぞうの うごきは、1ぷんかんに やく200かいにも なります[1]

なぜ、長い あいだ とびつづけて いるのに、心ぞうは 休んで いる ときと おなじくらいの はやさで すむのでしょう。

この研究の相手は、アホウドリの仲間の「コアホウドリ」という鳥です[1]。144回という数字だけでは、それが速いのか遅いのか分かりません。そこで研究者たちは、水の上に浮いて休んでいるときの心拍数も調べました。

すると、休んでいるときは150回。飛んでいるほうが、わずかに遅いくらいでした[1]

一方、飛び立つときや、着地するときの心拍数は、1分間に約200回にもなります[1]

なぜ、長いあいだ飛びつづけているのに、心臓は休んでいるときと同じくらいの速さで済むのでしょうか。

対象となったのは、アホウドリの仲間であるコアホウドリ(black-browed albatross)である[1]。144回という数字だけでは基準がないため、研究者たちは海面に着水して休んでいるときの心拍数も測定した。

2013年に発表されたこの研究によれば、休息時の心拍数は150回で、飛行中の144回とほぼ変わらなかった[1]

対照的に、離着水の際の心拍数は、1分間に約200回まで上昇する[1]

なぜ、長時間の飛行中も、心拍数が休息時とほぼ変わらずに済むのか。

2. 風の つよさの ちがいを つかう「とびかた」

2. 風速差を利用する「ダイナミックソアリング」

2. 風速の違いを利用して、ダイナミックソアリングで飛ぶ

この ひみつは「ダイナミックソアリング」と いう とびかたに あります。

海の 上では、水面に ちかい ところと、すこし 上の ところで、風の つよさが ちがいます。

アホウドリは、風に むかって、坂を のぼるように たかく あがって いきます。そして たかさが やく15メートルに なると、こんどは 風に せなかを おされる むきに かわって、下へ すべって いきます[2]

高さが 下がって きたら、また 風上に むきを かえて のぼります。これを くりかえして、羽ばたかずに すすみます。

でも、いくら 風に のるとは いえ、あの 大きな つばさを ずっと 広げた ままで、つかれないのでしょうか。

この秘密は「ダイナミックソアリング」という飛び方にあります。

海の上では、水面に近いところと、少し上のところで、風の強さが違います。

アホウドリは、風に向かって坂を登るように高く上がっていきます。そして高さが約15メートルになると、今度は風に背中を押される向きに変わって、下へ滑っていきます[2]

高さが下がってきたら、また風上に向きを変えて上昇します。これを繰り返して、羽ばたかずに進みます。

でも、いくら風に乗るとはいえ、あの大きな翼をずっと広げたままで、疲れないのでしょうか。

この秘密は「ダイナミックソアリング」と呼ばれる飛行法にある。

海面付近では、高度によって風速が異なる(風速勾配がある)。

アホウドリは風に向かって斜面を上るように上昇し、高度が約15メートルに達すると、今度は風を背に受ける向きへ旋回して下方へ滑空する[2]

高度が下がると再び風上へ旋回して上昇する。この周期運動を繰り返すことで、羽ばたかずに推進力を得ている。

しかし、風に乗るとはいえ、あの大きな翼を広げたままの姿勢を維持することに、負担はないのだろうか。

3. つばさを ひろげた まま とめる「けん」

3. 翼を広げたまま固定する、肩の腱

3. 肩の腱でロックして、3.7メートルの翼を支える

アホウドリの なかまの 中で いちばん つばさが 長い「ワタリアホウドリ」は、はしから はしまで、3.7メートルにも なります[2]

こんなに 長い つばさを、ずっと 広げた ままに するのは、たいへんな ことです。

でも、アホウドリの なかまの かたには、とくべつな「けん」(すじの ような もの)が あって、つばさを 広げた まま こていできる しくみに なって います[2]。たとえるなら、かさを 広げた まま とめて おける ストッパーのような ものです。ただし 本当は、きかいの ぶひんでは なく、ほねと きんにくを つなぐ、じょうぶな「すじ」です。

つまり、つばさを 広げつづけるのに、きんにくの ちからを つかいつづける ひつようが ありません。

では、アホウドリは「まったく」羽ばたかないのでしょうか。

アホウドリの仲間の中でもっとも翼が長い「ワタリアホウドリ」は、端から端まで、3.7メートルにもなります[2]

こんなに長い翼を、ずっと広げたままにするのは、大変なことです。

でも、アホウドリの仲間の肩には、特別な「腱」(すじのようなもの)があって、翼を広げたまま固定できるしくみになっています[2]

つまり、翼を広げつづけるのに、筋肉の力を使いつづける必要がありません。

では、アホウドリは「まったく」羽ばたかないのでしょうか。

アホウドリ科の中で最大の翼開長を持つワタリアホウドリ(wandering albatross)は、翼開長(翼を広げたときの端から端までの長さ)が最大3.7メートルに達する[2]

これほど長い翼を持続的に広げた姿勢に保つには、通常であれば筋肉の持続的な収縮が必要になる。

しかし、アホウドリ科の鳥の肩関節には特殊な腱があり、翼を広げた状態で機械的にロックできる構造になっている[2]

この構造により、翼を広げつづけるための筋力消費が不要になっている。

では、アホウドリは飛行中、まったく羽ばたかないのだろうか。

4. すこしの 羽ばたきが、大きな ちからを つかう

4. わずか4.6%の羽ばたきが、13%のエネルギーを使う

4. 飛行時間の4.6%の羽ばたきが、エネルギーの13.3%を占める

それでも、アホウドリは、まったく 羽ばたかない わけでは ありません。

1章で 出てきた コアホウドリの 研究に よると、とんで いる 時間の うち、羽ばたいて いるのは、たった 4.6パーセントほどです[1]

でも、この すこしの 羽ばたきが、つかう エネルギーの やく13パーセントを しめて います[1]

すこしの 羽ばたきに、それだけの ちからが いる。だからこそ、アホウドリは、できるだけ 羽ばたかずに すべる ことを えらんで いるのでしょう。

この とびかたで、アホウドリは いったい どれくらいの きょりを いどうできるのでしょう。

それでも、アホウドリは、まったく羽ばたかないわけではありません。

1章で紹介したコアホウドリの研究によると、飛んでいる時間のうち、羽ばたいているのは、たった4.6パーセントほどです[1]

でも、この少しの羽ばたきが、使うエネルギーの約13パーセントを占めています[1]

少しの羽ばたきに、それだけの力がいる。だからこそアホウドリは、できるだけ羽ばたかずに滑ることを選んでいるのでしょう。

この飛び方で、アホウドリはいったいどれくらいの距離を移動できるのでしょうか。

とはいえ、アホウドリはまったく羽ばたかないわけではない。

1章のコアホウドリを対象とした研究によれば、巡航飛行中に羽ばたいている時間は、全体のわずか4.6±1.4%にすぎない[1]

しかし、この短い羽ばたきが、巡航飛行全体のエネルギー消費のうち約13.3%を占めている[1]

時間としてはわずかな羽ばたきに、不釣り合いなほどのエネルギーコストがかかる。だからこそアホウドリは、羽ばたきを最小限に抑え、滑空を最大限に活用する戦略をとっていると考えられる。

この飛行法で、アホウドリはどれほどの距離を移動できるのだろうか。

5. 何千キロも、休まずに とぶ

5. 何千キロも、休まずに飛べる

5. 無着水のまま、数千キロを移動する

この とびかたの おかげで、アホウドリの なかまは、ほとんど 羽ばたかずに、すう千キロを とぶ ことが できます[3]

にんげんが おなじ きょりを あるいたら、なんにちも かかります。でも アホウドリは、からだの ちからを ほとんど つかわずに、とびつづける ことが できます。

この、風の ちからだけで とぶ しくみは、いったい どこに いかせるのでしょう。

この飛び方のおかげで、アホウドリの仲間は、ほとんど羽ばたかずに、数千キロを飛ぶことができます[3]

人間が同じ距離を歩いたら、何日もかかります。でもアホウドリは、体の力をほとんど使わずに、飛びつづけることができます。

この、風の力だけで飛ぶしくみは、いったいどこに生かせるのでしょうか。

この飛行法により、アホウドリ科の鳥は羽ばたきを最小限に抑えながら、数千キロメートルを滑空できる[3]

燃料を使う航空機とは異なり、アホウドリは自らのエネルギーをほとんど消費せずに、長距離を移動しつづけることができる。

この、風のエネルギーだけで飛行するしくみは、どのような分野に応用できるのか。

6. アホウドリに まなぶ、これからの ひこうき

6. アホウドリに学ぶ、これからの航空機

6. 次世代航空機の設計に、飛び方のしくみを応用する

いまの ひこうきは、エンジンで 大きな ちからを 出して とんで います。ねんりょうを たくさん つかいます。

でも、アホウドリのように、風の ちからだけで とぶ ことが できたら、ねんりょうを へらせるかも しれません。

研究者たちは、アホウドリの とびかたを まねた、あたらしい ひこうきの けんきゅうを して います[2]

心ぞうの うごきを はかって わかった、エネルギーの むだの なさは、風の ちからを いかす ひこうきの せっけいの ヒントに なって います。

いまの飛行機は、エンジンで大きな力を出して飛んでいます。燃料をたくさん使います。

でも、アホウドリのように、風の力だけで飛ぶことができたら、燃料を減らせるかもしれません。

研究者たちは、アホウドリの飛び方をまねた、新しい飛行機の研究をしています[2]

心臓の動きを測ってわかった、エネルギー効率の良さは、風の力をいかす飛行機の設計のヒントになっています。

現在の航空機は、エンジンの推力によって飛行しており、多くの燃料を消費する。

アホウドリのように、風のエネルギーだけで飛行できれば、燃料消費を大幅に削減できる可能性がある。

研究者たちは、アホウドリの飛行法を模倣した、次世代航空機の設計研究を進めている[2]

心拍数の計測によって実証された圧倒的なエネルギー効率は、風力を活用する航空機設計の着想源となっている。

じぶんでも やって みる

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

じぶんでも、かぜと つばさの かんけいを たしかめて みましょう。

風の つよい 日に、とんびや カモメが 空を とんで いたら、羽ばたく かいすうを かぞえて みましょう。風の ない 日や、よわい 日と くらべると、かいすうは どう ちがうでしょうか。

紙ひこうきを つくって とばして みるのも、たしかめる ほうほうの ひとつです。風の 日と、風の ない 日で、とびかたが ちがうか くらべて みましょう。

あんぜんの ために

紙ひこうきを とばす ときは、人や 車の いない ひろい ところで、まわりに 気を つけて やりましょう。 とりを さがす ときは、あるきながら 空を 見上げず、あんぜんな ばしょで 立ちどまって 見ましょう。

自分でも、風と翼の関係を確かめてみましょう。

風の強い日に、トンビやカモメが空を飛んでいたら、羽ばたく回数を数えてみましょう。風のない日や弱い日と比べると、回数はどう違うでしょうか。

紙飛行機を作って飛ばしてみるのも、確かめる方法のひとつです。風のある日とない日で、飛び方が違うか比べてみましょう。

安全のために

紙飛行機を飛ばすときは、人や車のいない広いところで、周りに気をつけて行いましょう。鳥をさがすときは、歩きながら空を見上げず、安全な場所で立ち止まって見ましょう。

自分の手で確かめる

風のある日に、トンビやカモメが飛ぶ様子を観察し、羽ばたきの回数を数えてみる。風がほとんどない日と比較すると、回数にどれくらいの差があるだろうか。

紙飛行機を複数作り、翼の形や重心を変えて滑空距離を比較してみるのも一つの方法である。

原典で確かめる

  • アホウドリの心拍数と飛行の関係を報告した学術論文を読んでみる。[1]
  • ダイナミックソアリングを応用した航空機の研究について、詳しい解説記事を読む。[2]
安全のために

紙飛行機を飛ばすときは、人や車のいない広いところで、周りに気をつけて行いましょう。鳥を観察するときは、歩きながら空を見上げず、安全な場所で立ち止まって行いましょう。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

この記事は、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

出典について:Journal of Experimental Biology(学術誌)、ナショナルジオグラフィック日本版、Wikipediaの公開情報を使いました。「アホウドリ」はアホウドリ科の鳥をまとめて指す言葉として使っていますが、心拍数の研究はコアホウドリ、最大の翼開長はワタリアホウドリの値など、種によって数値が異なる場合は本文中に明記しています。このメモは、これらの機関・企業のものではなく、個人のまとめです。

  1. Sakamoto, K. Q., Takahashi, A., Iwata, T., Yamamoto, T., Yamamoto, M., Trathan, P. N.「Heart rate and estimated energy expenditure of flapping and gliding in black-browed albatrosses」(Journal of Experimental Biology, 216巻16号, 2013年)。 https://journals.biologists.com/jeb/article/216/16/3175/11573/Heart-rate-and-estimated-energy-expenditure-of (対象種はコアホウドリ。飛行中の心拍数144・休息時150・離着水時約200、羽ばたき時間の割合4.6%とエネルギー消費の割合13.3%)
  2. ナショナルジオグラフィック日本版「アホウドリに学ぶ未来の航空技術」(原記事は2012年9月9日公開)。 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/6711/ (ダイナミックソアリングのしくみ、肩の腱による翼の固定。3.7メートルの翼開長は、アホウドリ科の中でも最大種ワタリアホウドリの値。次世代航空機への応用研究)
  3. Wikipedia「アホウドリ」。 https://ja.wikipedia.org/wiki/アホウドリ (ダイナミックソアリングで羽ばたかずに数千キロを滑空できること)

なおした ところ

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