1. サメの はだは、ちいさな 歯で できて いる
1. サメの肌は、小さな歯のような鱗でできている
1. 楯鱗(じゅんりん)には、前後に走る細い溝がある
サメの はだに ならんで いるのは、「楯鱗」と よばれる ちいさな うろこです。つくりが 歯に よく にて いて、歯と おなじ もとから できたと せつめいされます[5]。
この うろこには、頭から しっぽへ むかう 細い すじが 何本も 通って います。アオザメの 一つの うろこでは、すじと すじの あいだが 0.05ミリ ほど。1ミリの 20分の1くらいです。すじの 向きは、およぐ 向きと 同じです。
2. みぞは、ていこうを 5〜10%ほど へらす
2. 溝は、水の抵抗を数%〜1割ほど減らす
2. 実験室では、リブレットが抵抗を5〜10%ほど減らした
水が はやく ながれると、はだの 近くで、小さな うずが たくさん できます。この うずが はだを こすると、ていこうが 大きく なります。サメの みぞは、その うずを はだから 少し はなす はたらきを すると 考えられて います。ただし、しくみは、まだ ぜんぶ 分かって いません[5]。
人が つくった みぞで じっけんすると、ていこうは 3%から 10%くらい へりました。たとえば、つるつるの 板と くらべて、ていこうが 9.9%へった みぞも あります。サメの はだを まねして つくった ものでも、5%から 8%くらい へりました。
飛行機でも ためされて います。エアバスA320の はねや 体の ひろい ところに みぞの シートを はって とばした じっけんでは、飛行機ぜんたいの ていこうが 2%より 少し へったと ほうこくされて います[4]。2%は 小さく 見えますが、ねんりょうの ちがいに つながる かもしれません。
水が速く流れると、肌の近くに小さな渦ができ、これが肌をこすって抵抗が大きくなります。サメの溝は、その渦を肌から少し遠ざけることで、摩擦を減らすと説明されます。ただし、仕組みは完全には理解されていないと書かれています[5]。
人工の溝を使った実験を整理した論文では、板に溝をつけたとき、つるつるの板より抵抗が9.9%減った例があります。サメの皮膚を型取りして作った複製では5.2〜8.3%、硬いプラスチックの複製では約3%でした[1]。条件によって、数%から1割ほどに分かれます。
飛行機でも試されました。エアバスA320の飛行試験で、機体の表面の約70%を溝つきのシートで覆ったところ、機体全体の抵抗が2%弱減ったと報告されています[4]。2%は小さく見えますが、燃料消費の差につながる可能性があります。
乱流境界層では、壁面近くの縦渦が壁面摩擦を大きくする。リブレットは、この渦を溝の先端より上に保ち、壁面との接触を減らすことで摩擦を下げるとされる[5]。ただし、機構は完全には解明されていないと記述されている[5]。
Oeffnerと Lauder(2012)の序論は、先行研究の抵抗低減を次のように整理している。調整可能な板状リブレットで9.9%、サメの楯鱗に似た扇形リブレットで約7%、サメ皮膚の銅型からつくったシリコン複製で5.2〜8.3%、硬質プラスチックの複製で約3%[1]。値は形状や素材、測り方で分かれ、おおむね3〜10%の範囲にある。
航空機については、エアバスA320の飛行試験では、機体表面の約70%をリブレットで覆い、燃料消費の測定から機体全体の抵抗が2%弱減ったと報告されている[4]。機体全体の値なので、実験室での壁面摩擦の低減率とは測っている量が違う。
3. みぞは、大きければ いい わけでは ない
3. 溝は、大きければよいわけではない
3. 溝が大きくなりすぎると、抵抗低減の効果が崩れる
それなら、みぞを もっと 大きく すれば、もっと へるのでしょうか。じつは そうでは ありません。
ある けんきゅうでは、みぞが 小さい うちは、大きく するほど ていこうが へりました。けれど、みぞが ある 大きさを こえると、へる 力が なくなり、むしろ ていこうが ふえて しまう ことも ありました[2]。ちょうど いい 大きさが あるのです。
4. ほんものの サメの はだは、みぞだけでは ない
4. 本物のサメの皮膚は、溝だけでは説明しきれない
4. サメの皮膚には、抵抗低減以外の効果もあるかもしれない
サメの はだを そのまま 使った じっけんも あります。羽ばたく ロボットの ひれに サメの かわを つけて、およぐ はやさを くらべました。
ほんものの サメの かわを つけた ほうが、うろこを けずった ものより 12.3%、はやく およぎました。人の つくった みぞの ある シリコンでは、7.2%でした[1]。
この ふたつの ちがいは、みぞだけでは ときあかせないかも しれません。研究者は、うろこが 水の ながれを かえて、前へ すすむ 力も 生んでいるかもしれないと 考えました[1]。サメの かわは やわらかく、うろこが 動けることも かかわって いそうです。かたい 板に した サメの かわでは、この ちがいは 出ませんでした[1]。
5. サメはだを まねした みずぎは、どうだった?
5. サメ肌をまねした水着は、どうだったのか
5. 競泳水着の評価は、研究によって割れた
サメの はだを まねした みずぎは、1999年に 売られ、2000年の シドニー オリンピックで 注目されました[3]。会社は、ていこうが 7.5%へると せつめいしました。けれど、あとで 人が はかった 研究では、ていこうが 2%ほど へったように 見えました。でも、数字の ゆらぎと くべつ できるほどの ちがいでは ありませんでした[3]。
アメリカの 研究者が ロボットで ためしたときも、この みずぎの ぬのだけでは、およぐ はやさは 一定して 上がりませんでした[1]。みずぎの 力は、体を ぎゅっと しめつける はたらきも 大きいと 考える 研究者も います[3]。
だからと いって、サメの みぞが 役に 立たないと いう わけでは ありません。水ぎの ぬのは、サメの はだと 形も やわらかさも ちがうからです。
サメ肌をうたった競泳水着は1999年に登場し、2000年のシドニー五輪で注目されました[3]。メーカーは抵抗が7.5%減ると説明しましたが、のちに人で測った研究(Toussaintら、2002)では約2%で、統計的に差があるとは言えませんでした[3]。
先ほどのロボット実験でも、水着の生地だけでは、泳ぐ速さが一定して上がることはありませんでした[1]。水着の効果は、体を締めつける力が主な理由だと考える研究者もいます[3]。ただし、論文によって結論が割れていて、はっきりした合意はありません[3]。
これは、サメの溝が役に立たないという意味ではありません。水着の生地は、サメの皮膚とは形も柔らかさも違うので、同じ効果が出るとは限らないということです。
サメ肌をうたう競泳水着(Speedo Fastskin)は1999年に登場し、2000年のシドニー五輪で注目された[3]。メーカーは抵抗が7.5%減ると主張したが、Toussaintら(2002)の測定では約2%で、統計的に有意でなかった(p=0.31)[3]。
Oeffnerと Lauder(2012)でも、水着生地は泳速を一貫して上げなかった[1]。総説は、研究間で抵抗低減の結論が割れていること、全身水着の効果の主因として体の圧迫が挙げられてきたことを記している[3]。2010年1月からは、FINAのルール変更で、全身を覆う水着は認められなくなった[3]。
生地の溝が、サメの皮膚と同じ寸法・柔らかさで、人の泳ぐ速さでも最適か。そこが論点になる。水着で効果が見えなかったことは、サメの溝そのものを否定する結果ではない。
6. 自分でも やって みよう
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
水ぞくかんで サメの かわの ひょうほんが あれば、さわれるか たずねて みましょう。さわれる ときは、頭から しっぽの 向きと、その ぎゃくで、さわりごこちが ちがうか たしかめて みてください。かならず、かかりの 人に きいてから さわります。
また、おうちの 人が そばに いる ときに、おふろで 手のひらを ひらいて 水の 中を すすめて みましょう(すべらないように 気を つけます)。手の 向きを かえると、手に かかる 水の 力が どう かわるでしょうか。
水族館や博物館で確かめる
さわってよいと書かれた、サメの皮膚の標本の展示があれば、係の人にたずねてから、前から後ろの向きと逆向きで、手ざわりを比べてみましょう。拡大写真があれば、溝の向きも探せます。
原典を読む
Oeffnerと Lauderの論文[1]は、序論に先行研究の数字がまとまっています。英語ですが、本文に出てきた数字が何を比べた結果なのかを、見てみましょう。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:[1][2]は学術論文、[3][4]は総説論文、[5]はWikipediaです。数字は実験の条件によって変わります。
- Oeffner J, Lauder GV. The hydrodynamic function of shark skin and two biomimetic applications. Journal of Experimental Biology 215(5): 785–795 (2012). https://journals.biologists.com/jeb/article/215/5/785/11221/The-hydrodynamic-function-of-shark-skin-and-two (アオザメの楯鱗の寸法、先行研究の抵抗低減率、泳速の12.3%・7.2%、水着生地の結果)
- García-Mayoral R, Jiménez J. Drag reduction by riblets. Philosophical Transactions of the Royal Society A 369(1940): 1412–1427 (2011). https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsta.2010.0359 (小さい溝は大きさに比例して効果、大きいと崩れる。断面積との関係。要旨のみ確認)
- Morales AT, Tamayo Fajardo JA, González-García H. High-Speed Swimsuits and Their Historical Development in Competitive Swimming. Frontiers in Psychology 10: 2639 (2019). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6927279/ (Fastskinの登場、7.5%の主張と約2%の測定、圧迫、2010年のルール変更)
- Viswanath PR. Aircraft viscous drag reduction using riblets. Progress in Aerospace Sciences 38(6): 571–600 (2002). https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0376042102000489 (A320の飛行試験:表面の約70%を覆い、機体全体の抵抗が2%弱減少)
- Wikipedia(英語版)「Placoid scale」。 https://en.wikipedia.org/wiki/Placoid_scale (楯鱗は歯と相同、数が増える、渦をはなす仕組みは完全には未解明)
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