1. はなびは ひかってから、なぜ おとが おくれるの?
1. 花火は光ってから、なぜ音が遅れて届くのか
1. 花火の光と音のずれ ── 3秒の遅れは、何メートルの距離にあたるか
はなび大会で、そらが ぱっと ひかります。それから すこし たって、「ドーン」と おとが きこえます。
おとは、光よりも ずっと おそく すすむからです。おとが すすむ はやさは、1秒で およそ 340メートルです[2]。
もし ひかってから 3秒 たって おとが きこえたら、340メートルの 3ばいで、およそ 1キロメートルです。
ただし、これは おおよその かずです。この あとで、おとの はやさが かわる ことも おはなしします。
夜空がぱっと明るくなり、少し間をおいて「ドーン」と音が届きます。この遅れは、音が光よりずっとゆっくり進むために起こります。
気象庁の子ども向けページには、雷の音は空気がしん動することで伝わり、1秒間におよそ340メートル進むと書かれています[2]。
この数字を使えば、遠さを見積もれます。光ってから3秒後に音が届いたなら、340×3で約1020メートル、つまりおよそ1キロメートルです。時計がなくても、「いち、に、さん」と数えるだけで、花火や雷までの距離が見当づけられます。
ただし、340メートルという数字は目安です。空気の温度などで、音の速さは少し変わります。
2. 空気は ほんとうに 耳まで はこばれて くるの?
2. 空気が飛んでくるのではない ── 押し縮められた状態が渡っていく
2. 音は縦波(疎密波)── 空気の「状態」が隣へ渡る
おとは、空気が ぜんぶ いっしょに とんで くるのでは ありません。空気が ぎゅっと おされた ところが、となりへ、となりへと うつって いくのです。
たとえば、きゅうじょうで みんなが じゅんばんに 立って すわる「ウェーブ」を おもいだして ください。人は その ばしょで 立ったり すわったり するだけです。それでも、ウェーブは ぐるっと まわって いきます。
音も おなじで、空気の ぎゅっと おされた ところと、ゆるんだ ところが、つぎつぎ となりに つたわって、耳に とどきます[1]。
ただし 人の ウェーブは、人が 上と 下に うごいて、なみは よこに すすみますが、音は すすむ むきと おなじ むきに、おしたり ひいたり して つたわります。
空気は押し合いながら、状態を手渡す
音が空気の中を進むとき、空気そのものが発生源から耳まで飛んでくるわけではありません。百科事典は、音波を、気体が押し縮められたり引き伸ばされたりする状態が伝わっていく波だと説明し、疎密波とも呼びます[1]。
スタジアムの「ウェーブ」が、わかりやすいたとえです。観客は席を立ち座りするだけで、場所は動きません。それでも、立つ動きは隣から隣へ渡って、客席をぐるりと回ります。音も、空気の押し縮められた部分と引き伸ばされた部分が、隣へ隣へと渡っていきます。
たとえと、本当のちがい
ウェーブは、人が上下に動いて、波は横に進みます。音は、空気の動く向きと波の進む向きが同じです[1]。縦に押したり引いたりして、その向きに進むという点が、ウェーブとの違いです。
だから、気体のないところでは、音は進めません。音は、空気のような「物」が押し合ってはじめて渡れる波です。
音波は、媒質の振動方向が波の進行方向に平行な縦波であり、気体の圧縮と伸張の状態が伝わるので疎密波ともいう[1]。媒質の粒子が音源から耳まで移動するのではなく、局所的な圧力変化が隣接部分へ次々に受け渡されていく。
観客席のウェーブは、個人は動かず「立つ」状態が移っていく点で近い。ただし横波的な見え方をするため、押し引きの向きと進行方向が一致する音の縦波とは、そこが違う。
ここでは「状態が伝わる」という書き方にとどめる。
音が物の押し合いで進むなら、押し合いの様子、つまり物の状態によって、進む速さも変わるはずだ。
3. 音の はやさは、いつも おなじなの?
3. 音の速さは、気温や通る物でどう変わるのか
3. 音速 c=331.5+0.6t ── 気温と媒質で、どこまで変わるか
おとの はやさは、いつも 340メートルでは ありません。あつい 日には すこし はやく、さむい 日には すこし おそく なります。
0度の ときは 1秒で およそ 331メートル、15度の ときは およそ 340メートルです[3]。
みずの 中では、1秒に およそ 1430メートル。てつや ガラスの 中では、およそ 5000メートルも すすみます[3]。空気より、ずっと はやいのです。
ただし、てつの かずは「およそ」の めやすです。ものの しゅるいで、かなり かわります。
気温が上がると、少し速くなる
空気中の音の速さは、気温t℃のとき、実用的には 331.5+0.6×t(メートル毎秒)で求められます[3]。0℃なら約331.5メートル毎秒、15℃なら約340メートル毎秒です。気象庁が示す340メートルは、15℃前後の目安だと分かります。
この式で、夏の30℃を計算すると、331.5+0.6×30=349.5で、およそ350メートル毎秒です。冬の0℃との差は、18メートル毎秒ほどです。
水や鉄の中では、さらにずっと速い
音は、物の中でも進みます。水中の音速は、15℃で約1430メートル毎秒、室温の鉄やガラスなど固体では約5000メートル毎秒とされます[3]。空気中の340メートル毎秒と比べると、水中は約4倍、固体は約15倍です。
ただし、固体の値は物の種類で大きく変わるため、5000は目安です。
音が物を通って耳に届くなら、空気の中だけが道ではないかもしれません。では、耳に着いた音は、どう進むのでしょうか。
空気中の音速は、実用的には c=331.5+0.6t(t は気温℃)で求められる[3]。0℃で約331.5m/s、15℃で約340m/sとなり、気象庁の「約340m/s」は15℃前後を前提にした数字だと読める。
30℃では約349.5m/sで、0℃との差は18m/s(約5.4%)ほどである。ただしこの式は温度だけの近似で、湿度や気圧の影響は含まない。
媒質が変わると、さらに大きく変わる。水中は15℃で約1430m/s、室温の鉄やガラスは約5000m/s程度で[3]、空気中の約340m/sに対して、それぞれ約4.2倍、約15倍にあたる。固体は種類によって幅が大きく、約5000m/sは目安にすぎない。
では、これだけ速さの違う道がある中で、人の耳に実際に届く道は何本あるのか。
4. 耳に ついた おとは、どんな みちを とおるの?
4. 耳に着いた音は、どんな道を通って脳へ向かうのか
4. 気導の経路 ── 耳介から蝸牛神経まで、左右の耳に届く0.6ミリ秒の差
空気を わたって きた おとは、まず 耳の かたちの ところで あつめられます。そこから あなを とおって、うすい まくに ぶつかります。まくは「こまく」と いいます。
こまくは、あつさが 0.1ミリメートルぐらいしか ありません[5]。うすい まくが、おとで ふるえます。
その ふるえは、ちいさな 3つの ほねを とおって、おくの みずの ような ものの 入った ところへ つたわり、さいごに しんごうと なって のうに むかいます[4]。
この 耳の おくの はなしは、べつの 記じ「耳の おくは えきたいで いっぱい。くうきの おとは どうして きこえるの?」に くわしく かいて あります。
ここでは、まず「こういう みちが ある」と おぼえて おいて ください。
耳介から蝸牛まで
耳に着いた音は、まず耳介が集めます。音は外耳道を通って鼓膜まで運ばれ、鼓膜が振動します[4]。鼓膜は、厚さ0.1ミリメートルぐらいの薄い膜です[5]。
鼓膜の裏には、つち骨・きぬた骨・あぶみ骨という3つの小さな骨があり、振動を増幅して蝸牛の入り口へ伝えます[4][5]。蝸牛の中の液体と、その中の線毛が揺れて、信号が蝸牛神経を通って脳へ送られます[4]。
空気の音が液体の中へ入るとき、どれだけ損をするか、中耳がどう取り戻すかという細かい話は、別の記事「耳の奥は液体なのに、空気の音はどうやって聞こえているのでしょうか」が詳しく扱っています。
左右の耳に届く、ほんの少しの時間差
音が頭の片側から来ると、近い耳に先に届き、遠い耳には少し遅れて届きます。その時間差は最大でも約0.6ミリ秒といわれます[8]。0.6ミリ秒に音が進む距離は、340×0.0006で約20センチメートルです。頭の幅と同じくらいの距離に見えます。
この小さな差が、音の方向を探す手がかりのひとつです。ただし、低い音では時間のずれ、高い音では強さの差が手がかりになると説明されます[8]。
気導の標準的な経路は、耳介が集めた音波が外耳道を通って鼓膜へ入り、鼓膜の振動が耳小骨(つち骨・きぬた骨・あぶみ骨)で増幅され、卵円窓から蝸牛の外リンパへ伝わる。蝸牛内の液体と有毛細胞の線毛が揺れ、信号が蝸牛神経から脳へ送られる[4]。鼓膜は厚さ約0.1mmの薄い膜で、周囲が固定されている[5]。
耳が左右にあることも、音の道すじに関わる。音源が頭の片側にあるとき、両耳への到達時間のずれは最大で約0.6msとされる[8]。340m/s×0.0006s=約0.20mで、この値は頭の大きさに近い距離と読めるが、頭の大きさで決まる概算の上限であり、人ごとの正確な数値ではない。
音響生態学のハンドブックでは、この時間差は、低い音では位相の差、約1500Hz以上の高い音では強さの差が主な手がかりになると整理されている[8]。左右・上下の聞き分けは、別の記事「耳に型をはめると、音の上下が聞き分けにくくなる」が耳介の形から扱っている。
なぜ、空気の音を鼓膜と耳小骨でわざわざ受け渡す必要があるのか。内耳は液体で満たされ、空気から液体へ音が入るときは、そのまま入れず跳ね返される分が大きい(インピーダンスの不整合)。モンゴルスナネズミの中耳を調べた研究では、中耳がないと大きな不整合が生じると論じられ、中耳はその橋渡しをする部分と位置づけられている[9]。ただしこれは動物の数値であり、人の数値はそのまま同じとは言えない。
中耳〜蝸牛の細部も、別の記事に任せ、ここでは空気から耳に入るまでの道すじを主にする。では、この外耳道・鼓膜の道を通らない音は、本当にないのだろうか。
5. 耳の ほかに、もう1本 みちが あるの?
5. 耳を通らないもう1本の道 ── 自分の声が録音と違って聞こえるわけ
5. 骨導 ── 頭の骨を通る道と、録音の声に違和感が出る理由
じつは、あります。頭の ほねを とおる みちです。
音が あたまの ほねを ふるわせ、その ふるえが 耳の おくに つたわる ことが あります[6]。空気から 耳の あなを とおる みちとは、べつの みちです。
じぶんで はなす とき、こえは 空気を わたって 耳に はいる みちと、ほねを とおる みちの 両方で きこえて いると いわれます[7]。
ろくおんは、空気を わたって きた おとだけを きろくします[7]。だから、いつも きいている こえと ちがって きこえる ことが あるのです。
ただし、どう ちがって きこえるかは、人に よって ちがうかも しれません。
骨を通る道は、外耳道を通らない
音が頭蓋骨の振動を通って内耳に伝わることを、骨導(骨伝導)といいます。外耳道・鼓膜・耳小骨を通る通常の道は気導と呼ばれ、骨導は、外耳や中耳をほぼ通らない別の道すじです[6]。
仕組みは1つではなく、外耳道への放射や、耳小骨・リンパ液の慣性など、複数の要因が関わると説明されます[6]。
録音の声に戸惑う理由
自分で話すとき、私たちは気導音と骨導音の両方を聞いているとされます。いっぽう録音は、気導音だけを記録します。そのため、録音を聞くと、普段聞き慣れた声と違って感じるのだと説明されています[7]。
「低く聞こえる」「高く聞こえる」といった具体的な違い方は、資料によって言い方が分かれます。ここでは、そこまで言い切りません。自分の声が違って聞こえるのは、耳に届く道が1本増えるため、と考えると筋が通ります。
骨導は、音が頭蓋骨の振動を通して内耳に伝わる現象で、外耳道・鼓膜・耳小骨を通る気導とは別の道すじである。外耳・中耳をほぼ通らない。仕組みは、外耳道への放射、耳小骨やリンパ液の慣性など複数の要因が関わるとされ、1つに決めきれない[6]。
自分の声は、気導音と骨導音の両方を聞いている。録音は気導音だけを記録するので、録音を聞くと、普段とは違って聞こえる[7]。これは、骨導音が加わらないためと説明される。
この説明は、骨伝導ヘッドホンの研究を紹介する記事をもとにしている。
気導と骨導の2本の道があるという整理自体は、百科事典の記述で支えられる[6]。骨を通る道を、どうすれば自分で確かめられるだろうか。
6. じぶんの こえで ためして みよう
6. 自分の声で、2本の道を確かめてみる
6. 出口 ── 家で確かめる道すじと、読む資料
おうちの 人と いっしょに、できる ことが あります。
まず、スマートフォンの ろくおんの きのうで、じぶんの こえを ろくおんします。「あいうえお」でも、すきな うたでも いいです。
きいて みましょう。いつもと ちがって きこえる 人も、そう おもわない 人も います。どちらでも だいじょうぶです。
つぎは、「んー」と ハミングを して、そっと 耳を ふさいで みましょう。耳に ゆびを いれては いけません。てのひらで やさしく おおうだけです。
こえの ひびきかたが かわれば、ほねを とおる みちも つかっている かもしれません。
家にあるスマートフォンの録音機能を使って、2つのことを試せます。
1つ目は、自分の声の録音です。「あいうえお」でも、歌の一節でもかまいません。録音を聞き、いつも聞いている声と比べます。違って聞こえる人も、あまり変わらないと感じる人もいます。感じ方には個人差があると考えられます。
2つ目は、ハミングです。「んー」と声を出しながら、手のひらでそっと耳をおおいます。指を耳の穴に入れる必要はありません。声の響き方が変わるなら、耳をおおっても聞こえる道があることを、体で感じられます。
花火大会や、安全な室内から見る雷なら、光ってから音までの秒数を数えて、340をかけてみる手もあります。雷が鳴っているときは、必ず建物の中にいてください。
確かめるなら、スマートフォンの録音機能で自分の声を録り、聞いた印象を書き留める。違和感の有無には個人差があるので、結果は「人によって異なる」と読むのが妥当だ。ハミングしながら手のひらで耳をおおうと、耳をおおっても響きが残る感覚を試せる。耳に指や物を入れない。
花火や、屋内から見る雷なら、光から音までの秒数に340を掛けて、距離を見積もれる。気温が高い日ほど、実際の距離は見積もりより少し長いことがある。
資料としては、音速の式と媒質別の値は百科事典の「音速」の項[3]、耳の道すじはMSDマニュアル家庭版[4]、骨導の定義は「骨導」の項[6]が日本語で読める。両耳の時間差の資料[8]は英語だが、本文で使った0.6msの出どころとして確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:百科事典、気象庁、MSDマニュアル家庭版、研究紹介の記事、音響生態学のハンドブックを使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 日本大百科全書「音波」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/音波 (音波が疎密波であることについて)
- 気象庁 キッズ「雷の距離」。https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/a3_16.html (音が1秒に約340メートル進むことについて)
- 「音速」(コトバンク。世界大百科事典・日本大百科全書ほか)。https://kotobank.jp/word/音速 (気温による音速の式と、水・固体中の値について)
- MSDマニュアル家庭版「耳」。https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home (音が耳から脳へ伝わる道すじについて。サイトのトップから「耳」の項へ)
- 日本大百科全書「耳のしくみとはたらき」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/耳のしくみとはたらき-792069 (鼓膜と耳小骨について)
- 日本大百科全書「骨導」(コトバンク)。https://kotobank.jp/word/骨導-3242641 (骨導と気導について)
- ナゾロジー「骨伝導ヘッドホン」の研究を紹介する記事。https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/127957 (自分の声と録音の聞こえ方について。報道・紹介記事)
- SFU Handbook for Acoustic Ecology「Binaural Hearing」(英語)。https://www.sfu.ca/sonic-studio-webdav/cmns/Handbook/Binaural_Hearing.html (両耳に届く時間差について)
- モンゴルスナネズミの中耳に関する研究(PMC4718164。英語)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4718164 (空気から液体へ入る音の不整合と中耳の役割について。動物の研究)
なおした ところ
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