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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

台風の とき、うみの 水は どうして 高く なるの?

台風で海面が上がるのはなぜか ── 気圧と風、満潮、湾の形の重なり

高潮のしくみ ── 吸い上げ・吹き寄せ・満潮・湾の地形と、伊勢湾台風(1959)

分野:自然

台風が くると、うみの 水が いつもより 高く なる ことが あります。高潮たかしおと いいます。

雨が ふる わけでも ないのに、どうして 水が 高く なるのでしょうか。空と 風と 湾わんの 形を、じゅんばんに 見て いきます。

台風が近づくと、海の水面そのものが、いつもより高くなることがあります。雨で川があふれたのとは別の話で、海の側の水位が上がる現象です。

原因は1つではありません。空気の重さの変化、風、そして満潮や湾の形。この3つがどう重なるのかを、1959年の伊勢湾台風の場合と合わせて整理します。

台風や発達した低気圧が通るとき、潮位が大きく上がる現象を高潮という[1]。要因は、気圧低下による「吸い上げ」、強風による「吹き寄せ」、そこに満潮と湾の地形が重なる形で整理できる[1][2]。

各要因の大きさの目安と、満潮を外れていたのに湾奥で観測史上最高の潮位になった伊勢湾台風(1959)[3]、過去の最高を超えた2018年の台風21号[5]を、出典つきで見ていく。

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1. 台風の とき、うみで なにが おきる?

1. 高潮とは何か

1. 高潮の定義 ── 台風で潮位が上がる

うみの 水の 高さは、多くの 場所で、潮しおの ひきしおで 1日に 2回ほど 上がったり 下がったり します。これとは べつに、台風が くると、いつもより 水が 高く なる ことが あります。

その 水の 高さは、あとで 見る 伊勢湾台風いせわんたいふうの ときは、3メートルを こえました。

いったい なにが、うみの 水を おしあげるのでしょうか。じつは、おもな はたらきが 2つ あります。

海の水面は、多くの場所で、潮の満ち引きで1日に2回ほど上下します。台風や発達した低気圧が通るとき、この動きとは別に潮位が大きく上がることがあり、これを高潮と呼びます[1]。

あとで見る1959年の伊勢湾台風では、名古屋港で標高3.89mの潮位が観測されました[3]。大人の背丈を大きく超える高さです。何が海面をここまで押し上げたのでしょうか。主なはたらきは、次の2つです。

潮の満ち引き自体の仕組みは、別のメモで扱っています。

台風や発達した低気圧の通過に伴って潮位が大きく上昇する現象が高潮である[1]。天体の引力による潮汐(満ち引き)とは別の要因で、気象が海面を動かす。

その大きさの例として、伊勢湾台風(1959年9月26日)では名古屋港で標高(T.P.)3.89mの観測史上最高潮位が記録されている[3]。気象庁や国土交通省は、主な要因を「吸い上げ」と「吹き寄せ」の2つに分けて説明している[1][2]。潮汐そのものは別のメモで扱った。

2. そら から すい上げられる?

2. 1つめのはたらき ── 気圧が下がる「吸い上げ」

2. 吸い上げ効果 ── 1hPaの低下で約1cm

空気にも おもさが あります。うみの 水は、上の 空気に おされて います。台風の まんなかは、まわりより 気圧きあつが ひくく、その おす 力が よわく なります。

そうすると、おされて いた 水が、ふわっと 持ち上がります。これを「すい上げ」と よびます。

気圧きあつが 1ヘクトパスカル さがると、水は 1センチほど 上がると いわれて います。まわりより 50ヘクトパスカル ひくければ、50センチほどです。あくまで 目やすの 数です。

たとえば、水の 入った ふくろを 手で 上から おして います。手を すこし ゆるめると、ふくろの 水は 少し もり上がります。ただし、ほんとうの うみでは 手ではなく 空気が おして いるので、ふくろの ようすと 同じでは ありません。

空気にも重さがあり、海面は上から大気に押されています。台風の中心は周りより気圧が低いので、押される力が弱まり、その分だけ海面が持ち上がります。これが「吸い上げ効果」です[1]。

気象庁は、気圧が1hPa下がると潮位は約1cm上がると説明しています[1]。国土交通省の説明も同じ目安です[2]。たとえば、周りより50hPa低い台風の中心では、約50cm。あくまで「約」の目安で、厳密な固定値ではありません。

たとえ話をします。水を入れたビニール袋を手で押さえていて、手の力を少し抜くと、水が少し盛り上がります。ただし、本物の海を押しているのは手ではなく空気です。また、この効果だけなら数十cmで、後の伊勢湾台風の3m台には届きません。

気圧が1hPa低下すると、潮位は約1cm上昇するとされる[1]。国土交通省も同じ目安を示している[2]。周囲より50hPa低い中心なら、約50cmという計算になる(目安であり、厳密な固定値ではない)。

ここで大事なのは、この効果の大きさに限りがあることだ。伊勢湾台風の名古屋では最低海面気圧が958.2hPaだった[3]が、仮に周囲との差が50hPa前後だとしても吸い上げは50cm程度で、観測された3m台の高潮を説明するには足りない。残りは、次の吹き寄せなどによると考えられる。

3. 風が うみの 水を 岸に よせる

3. 2つめのはたらき ── 風が海水を岸に寄せる「吹き寄せ」

3. 吹き寄せ効果 ── 風速の2乗に比例

もう 1つは 風です。うみから 岸に むかって 強い 風が ふくと、水が 岸のほうへ おされて、岸の ちかくで 水が 高く なります。これを「ふきよせ」と よびます。

風の 強さと 水の 高さの かんけいは、ふしぎです。風の 速さが 2ばいに なると、水の 上がり方は 4ばいに なると いわれて います。

たとえば、おふろの 水を うちわで あおぐ と、あおいだ ほうから むこうの ふちへ 水が よって、そこだけ 少し 高く なります。ただし、ほんとうの 台風の 風は、もっと 強くて ひろい はんいに ふきます。

もう1つは風です。沖から海岸に向かって強い風が吹くと、海水が岸に吹き寄せられ、岸の近くで海面が上がります。これが「吹き寄せ効果」です[1]。

この効果による上昇は、風速の2乗に比例します。風速が2倍になると、海面の上昇は4倍になります[1]。たとえば風速20m/sが40m/sになれば、上がり方は4倍です。風の強さが、少し変わっただけでも大きな差になります。

たとえ話をします。お風呂の水をうちわで一方向にあおぐと、水が反対側のふちに寄って、そこだけ水位が少し上がります。ただし、台風の風は広い範囲に長く吹くので、規模はまるで違います。

沖から海岸へ向かう強風によって海水が岸に寄せられ、海面が上昇する。これが吹き寄せ効果で、上昇量は風速の2乗に比例する。風速が2倍なら海面上昇は4倍になる[1]。国土交通省も、湾口から湾奥に向かう強風が海水を湾奥に寄せると説明している[2]。

数字の桁で確かめると、風速が20m/sから40m/sに倍になれば、上昇量は2^2=4倍だ。吸い上げが気圧差に対して1次で効くのに対し、吹き寄せは風速に対して2次で効く。強い台風ほど、吹き寄せの寄与が大きくなりうる。

4. 湾わんの 形と、満潮まんちょうが かさなると?

4. 湾の形と満潮が重なると

4. 地形と満潮の重なり ── 湾奥で増幅される

おなじ 風でも、場所に よって 水の 上がり方は ちがいます。湾わんは、うみが りくに 入りこんだ 場所です。風が 湾わんの 入口から おくに むかって ふくと、水が おくに あつまって、行きどまりの ところが 高く なります。

とくに、湾わんが 長くて、水が 浅あさい ほど、水は 高く なりやすいと いわれて います。

そこに、満潮まんちょうが かさなる こと も あります。もともと 水が 高い ときに 高潮たかしおが くれば、もっと 高くなります。でも、満潮まんちょうと かさならなくても、大きな 高潮たかしおに なる ことが あります。

同じ強さの風でも、場所によって海面の上がり方は違います。風が吹いてくる方向に開いた湾や、遠浅の海では、地形が海面上昇を大きくします[1]。国土交通省は、風が強いほど、湾が長いほど、水深が浅いほど、吹き寄せが大きくなると説明します[2]。

もう1つは、満潮との重なりです。満潮のときに高潮が重なると、潮位はいっそう上がり、大きな被害が出やすくなります[1]。

ただし、満潮と重ならなければ安全、というわけではありません。次の伊勢湾台風では、満潮を外れていたのに、湾の奥で観測史上最高の潮位になりました。

遠浅の海や、風の吹いてくる方向に開いた湾では、地形が海面上昇を増幅させる[1]。国土交通省は、風速が大きいほど、湾が長いほど、水深が浅いほど吹き寄せが大きくなるとする[2]。

満潮と高潮が重なると潮位はさらに上がり、大災害につながりやすい[1]。ただし、これは高潮が大きくなる条件の1つにすぎない。次章の伊勢湾台風は、満潮時を外れていたにもかかわらず記録的な高潮となった。

5. まんちょうじゃ なくても、3メートルを こえた 伊勢湾台風いせわんたいふう

5. 1959年の伊勢湾台風 ── 満潮を外れても記録的な高潮

5. 伊勢湾台風(1959)── 湾口2m弱、湾奥3.89m

1959年9月26日、伊勢湾台風いせわんたいふうが やって きました。伊勢湾いせわんは、南に 口を 開けた 湾わんです。南から 強い 風が ふきこんで、水が おくへ おくへと よせられました。

湾わんの 入口の あたりでは、水は 2メートルに とどきません。でも、いちばん おくの 名古屋の 港みなとでは、3.89メートルの 高さが 記録きろくされました。観測かんそくを はじめてから、いちばん 高い 数字です。

しかも、この とき、満潮まんちょうでは ありませんでした。気圧きあつが 下がる ことと、風が 水を よせる ことが 重なって、こんなに 高く なったのです。

この 高潮たかしおで、たくさんの 人が なくなりました。全国で、なくなった 人と ゆくえが わからない 人を あわせて、5千人ぐらいです。しらべた ものに よって 少し ちがいます。また、りくの ひくい 土地では、水が ひくまで 長い あいだ かかりました。

1959年9月26日、伊勢湾台風が紀伊半島の潮岬の西に上陸しました。伊勢湾は南に大きく開いた湾で、南からの暴風による吹き寄せと、気圧低下による吸い上げが重なり、記録的な高潮になったと説明されています[3]。

湾口付近の潮位は2m弱でしたが、湾奥の名古屋港では標高3.89mと、観測史上最高を記録しました(21時35分)。しかも、満潮の時刻は外れていました[3]。満潮に重なったから高かった、という話ではない点が、この台風の特徴です。

名古屋の最低海面気圧は958.2hPa、最大風速は南南東37.0m/sでした[3]。前の章の目安で考えると、吸い上げだけでは説明しきれない高さです。湾の奥へ向かう強い風の効果が大きかったと考えられます。

この高潮は、伊勢湾の海面を1時間近く約2m持ち上げたと国土交通省は説明します[4]。人的被害は資料により5千人前後とされ、数字は出典で少し違います[4]。背後の低い土地では、水が引くまで年末近くまでかかりました[4]。

伊勢湾台風は1959年9月26日に潮岬の西に上陸した。南に開いた伊勢湾で、南からの暴風による吹き寄せと気圧低下による吸い上げが重なり、記録的な高潮となった[3]。

名古屋の最低海面気圧は958.2hPa、最大風速は南南東37.0m/s、伊良湖では最大風速45.4m/sだった。湾口付近の潮位は2m弱にとどまったが、満潮時を外れていたにもかかわらず、湾奥の名古屋港で標高3.89mの観測史上最高潮位(21時35分)を記録した[3]。3.89mは標高(T.P.)基準の値で、別の基準面の値とは比べられない。

国土交通省は、この高潮が伊勢湾全体の海面を1時間近くにわたり約2m上昇させたと説明する[4]。人的被害は、資料により全国で死者・行方不明者5千人前後(資料により5,012人、5,098人などの差がある)で、範囲や集計の違いによる[4]。背後の低平地の浸水は、排水が12月下旬までかかった[4]。

湾口2m弱に対し湾奥3.89m、という差は、前章の「湾が長く浅いほど吹き寄せが大きい」という説明に合う。ただし、吸い上げと吹き寄せの寄与の内訳は、この資料だけでは切り分けられない。

6. 2018年の 台風で、高潮たかしおの 記録きろくが 新しく なった

6. 2018年の台風21号 ── 大阪・神戸で高潮の記録が更新された

6. 2018年台風21号 ── 最高潮位の更新(大阪329cm・神戸233cm)

それから 60年ほど あとの 2018年にも、大きな 高潮たかしおが ありました。9月4日に 台風21ごうが 来て、おおさかの 港で 3メートル 29センチ、こうべで 2メートル 33センチが はかられました。

どちらも、それまでの いちばんを こえる 高さでした。台風の たびに、水の 高さは てんきの ちからで 大きく かわる ことが、これで わかります。

2018年9月4日、非常に強い勢力で徳島県南部に上陸した台風21号では、最高潮位が大阪で329cm、神戸で233cmとなり、それまでの最高を超えた場所がありました[5]。

伊勢湾台風から約60年がたっても、台風の進路や湾の形しだいで、過去の記録を上回る高潮が起こりうるということです。ただし、この台風で満潮とどう重なったかは、今回使った資料では確かめられていません。

2018年台風21号(9月4日、非常に強い勢力で徳島県南部に上陸)では、最高潮位が大阪329cm、神戸233cmと、過去の最高潮位を超える値が観測された[5]。

この例は、地形と風向の組み合わせによって過去の記録が更新されうることを示す。ただし、大阪湾での満潮時刻との関係や、吸い上げと吹き寄せの内訳は、今回参照した気象庁の速報には記載がなく、本稿では扱わない。

7. 天気図と 風を、見くらべて みよう

7. 気圧・風向を見て、水を寄せてみる

7. 出口 ── 吹き寄せを小さく再現する/原典を読む

おうちの 人と、台風の ニュースを 見る とき、天気図の 気圧きあつの 数字と、風の むきに 気を つけて みましょう。「気圧きあつが ひくい」と 「風が 海から 岸に むかって ふく」が そろうと、水は 高く なりやすいのです。

もう 1つ。おふろの 水を うちわで あおいで、はしの 水が 少し 高く なるかを 見て みましょう。あおぐ 強さを 2ばいに したら どう なるかも、ためせます。水を こぼさないよう、ゆかを ふく ぞうきんを よういして ください。

うみに 見に いくのは、あぶないので、やめましょう。

台風が近づくニュースで、天気図の中心気圧と風向きを見てみてください。「気圧が低い」「風が海から陸に向かって吹く」が重なり、そこに湾の形や満潮の時刻が加わる場所ほど、高潮に注意が要ります。

家でも試せます。洗面器やお風呂に水を張り、うちわで一方向にあおいでみてください。風上から反対側のふちへ水が寄り、そこだけ少し高くなります。あおぐ強さを変えると、高さがどう変わるかも見られます。水をこぼしてもいいように、床にぞうきんを敷いておきましょう。台風のときの海岸や河口には、近づかないでください。

原典を読むなら、気象庁の「高潮」のページ[1]と、国土交通省の「高潮はどうして起こるの?」[2]が日本語でまとまっています。

吹き寄せは、洗面器の水をうちわで一方向にあおぐだけでも小さく再現できる。風上から反対側のふちに水が寄り、あおぐ強さを変えると高さも変わる(水がこぼれるので床にぞうきんを敷く)。ただし、これは吹き寄せの向きを見るだけで、風速の2乗に比例するかを確かめる実験にはならない。台風中の海岸・河口には近づかない。

原典に当たるなら、気象庁の高潮解説[1]、国土交通省の高潮解説[2]と被害の解説[4]、名古屋地方気象台の伊勢湾台風の資料[3]、2018年の台風21号の速報[5]がある。伊勢湾台風の数値は、基準面や観測点、集計範囲で資料により表記が異なるので、出典ごとに単位と基準を確かめて読みたい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:気象庁の高潮の解説、国土交通省の高潮の解説と伊勢湾台風の解説、名古屋地方気象台の伊勢湾台風の資料、気象庁の台風21号の速報を使った。1hPaで約1cmなどの数は、いずれも目安である。

  1. 気象庁「潮汐・海面水位の知識 高潮」 https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/tide/knowledge/tide/takashio.html (高潮の定義、吸い上げ・吹き寄せ、満潮との重なり)
  2. 国土交通省 水管理・国土保全局「高潮はどうして起こるの?」 https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/01/index.html (2つの効果の裏付け、湾の形)
  3. 名古屋地方気象台「過去事例 伊勢湾台風」 https://www.jma-net.go.jp/nagoya/shosai/info/kakojirei/isewantaihu.pdf (伊勢湾台風の潮位・気圧・風速)
  4. 国土交通省 水管理・国土保全局「どのような高潮が起こったの?」 https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/kaigandukuri/takashiobousai/03/index.html (伊勢湾台風の被害と浸水の長さ)
  5. 気象庁「台風第21号による暴風・高潮等(速報)」 https://ds.data.jma.go.jp/stats/data/bosai/report/2018/20180911/20180911.html (2018年の最高潮位)

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