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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

いんげんは、さやでも 豆でも 食べられるのは どうして?

いんげんは、種からどう育って、若いさやや熟した豆になるのか

若いさやと熟した豆の分かれ道 ── いんげんは種の養分と根の細菌で育ち、花の約2週間後にさやになる

分野:生きもの

ふくしまけんの いわきしに、「おやこうこうまめ」と よばれる いんげんが あります。わかい さやでも、じゅくした 豆でも 食べられるので、「おやこうこう」と よばれるのだそうです[8]。

ひとつの 豆の 草が、どうして 野菜やさいにも 豆にも なるのでしょう。わかい さやは、花が さいて 2しゅうかんほどで、中の 豆が まだ 小さい うちに とります[1]。豆を 食べる ときは、さやが ちゃいろに かれるまで まってから とるのです[8]。種たねから さやが できるまで、いんげんが どう そだつのかが わかります。

福島県いわき市の在来作物に「親孝行豆」というインゲンがあります。若いさやでも、熟した種でも食べられるので、親孝行な豆と呼ばれるそうです。収穫は、若いさやが9月中旬、種が11月下旬です[8]。

同じ豆なのに、食べ方で収穫の時期が2か月ほどもずれるのはなぜでしょうか。若いさやは、花が咲き出して約2週間後から、中の豆が目立たないうちに収穫します[1]。豆をとるときは、さやが茶色に枯れるまで待つのです[8]。種が芽を出してから、つるを伸ばし、さやをつけるまでの育ちを知ると、その分かれ道が分かります。

福島県いわき市の在来作物「親孝行豆」は、若いさやでも熟した種でも食べられるため、そう呼ばれる。若いさやは9月中旬、種は11月下旬に収穫する[8]。同じ豆の草が、食べ方によって収穫を2か月余りもずらせるのはなぜか。野菜としてのさやは開花の約2週間後から、莢の中の豆が目立たないうちに摘み[1]、種をとるときは、さやが茶色に枯れるまで待つ[8]。つまり、同じ育ちのどこで収穫するかの差である。

種の中の養分、つるの伸び方、根に棲む細菌との協力、花から約2週間で食べごろになるさや、そして名前の由来をめぐる資料の食いちがいまで、育ちの流れに沿って読むと、その分かれ道が分かる。

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1. わかい さやと 豆は、おなじ もの なの?

1. 若いさやで食べる日と、熟した豆で食べる日は、何がちがうのか

1. 食べごろを決めるのは、豆の草がどこまで育ったか

お店で 見る さやいんげんは、さやの なかの 豆が まだ ちいさい うちに とった ものです。たねを 作る ときは、さやが 茶色く かれるまで まって、中の 豆を とりだします[8]。

わかい うちに とるのは、豆が めだたない うちが よいからです。とりおくれると、草に ふたんが かかって、とれる 数も へる、と たねを うる 会社は かいて います[1]。

おやこうこうまめの ように、りょうほう 食べられる ひんしゅでは、ちがいは どこで とるか です。では、その ちいさな 豆は、どう そだつのでしょう。たねから 見て いきましょう。

スーパーで見るさやいんげんは、さやの中の豆がまだ小さいうちに収穫したものです。種苗会社の栽培の手引きには、莢の中の豆が目立たないうちに収穫すること、取り遅れると株の負担が増えて収量も減ることが書かれています[1]。

一方、種をとるときは、茶色に枯れたさやを摘み取り、乾燥させてから中の豆を取り出します[8]。親孝行豆のように、若いさやと熟した豆の両方を食べられる品種では、どこで収穫するかによって、野菜のいんげんにも、乾いた豆のいんげんにもなるのです。

食べごろの差は、植物の育ちの途中のどこで収穫するか、という差だと読めます。では、小さな種は、その育ちをどう始めるのでしょうか。

食べごろの差は、品種の差というより、育ちのどの段階で収穫するかの差として読める。種苗会社の栽培手引きは、若いさやを、莢の中の豆が目立たないうちに収穫するよう勧め、取り遅れると株の負担が増えて収量が減ると述べる[1]。豆を太らせる仕事を株に続けさせるほど、次のさやをつける余力が減る、という筋道で理解できる。

これに対し、種を採る側の記録は逆の向きになる。いわき市の資料では、茶色に枯れたさやを摘み、乾燥させてから莢より豆を取り出して収穫する[8]。つまり「野菜のいんげん」と「豆のいんげん」は、種と株が別なのではなく、株についたさやの育ちのどこで収穫するかが違うだけである。ただし、これは親孝行豆のような、両方の食べ方ができる品種の話である。

では、さやの中の豆は、そもそもどこから来るのか。始まりは、乾いた1粒の種である。

2. ちいさな 種たねは、なにを たよりに 芽めを だすの?

2. 種は、自分の中の養分で芽を出す

2. 発芽 ── 子葉の養分を使い、子葉ごと地上へ出る

いんげんの 種たねを わると、中に ふくらんだ 2まいの ぶぶんが あります。ここには でんぷんが ふくまれて いて、芽めが でて そだつ ための 栄養えいように なります[4]。まるで、おべんとうを もって 生まれて くるようです。ただし ほんとうの おべんとうと ちがって、じぶんの からだの 一ぶです。

めずらしいのは、その おべんとうを、地面の 上まで もちあげる ことです。いんげんは、くきが のびて、2まいの ぶぶんを ふたばとして 地面の 上に だします。エンドウは 地面の 中に のこします[3]。

ところで 水を すいすぎても こまります。かわいた 種たねが 一気に 水を すうと、ふたばに なる ぶぶんに ひびが はいって、うまく 芽めが でない ことが あるそうです[1]。ちょうど よい あたたかさは、20どから 25どです[2]。

ふたばの 養分ようぶんを つかい きる まえに、自分で 栄養えいようを つくる ひつようが あります。つぎは、のびて いく つるの はなしです。

種の中に入っている「お弁当」

インゲンマメの種は、割ると中に大きくふくらんだ子葉が見えます。小学校の理科の教材によると、子葉にはでんぷんが含まれていて、発芽や成長の養分として使われます[4]。種は、お弁当を持って芽生えるようなものです。ただし、お弁当は別の容器ではなく、芽生えの体の一部です。

子葉ごと、地上へ出る

島根大学の実験テキストによると、インゲンマメは下胚軸という部分が伸びて出芽し、子葉が地表に出ます。エンドウやソラマメでは子葉が地中に残り、別の部分が伸びて芽を出します[3]。いんげんは、養分の入った子葉ごと、地上に押し上げるのです。

水と温度の条件

乾いた種が水を一気に吸うと、双葉になる部分に亀裂が入り、正常に発芽できないことがあると種苗会社は注意しています[1]。すべての種がそうなるわけではなく、条件によります。発芽の適温は20〜25℃です[2]。

子葉の養分は、いつまでも続きません。自力で育つための体が必要になります。それが、葉とつるです。

乾いた種の中には、芽生えを育てる養分が入っている。札幌市教育委員会などの小学校理科の教材では、インゲンマメの子葉にはでんぷんが含まれ、発芽や成長の養分として使われることが説明されている[4]。

発芽の様式も、豆の種類で違う。島根大学の作物学実験テキストは、インゲンマメでは下胚軸が伸長して出芽し、子葉が地表に出る(地上子葉型)と述べ、エンドウは子葉が地中に残り、上胚軸が伸びて出芽するとして対比している[3]。だからインゲンの芽生えでは、養分を蓄えた子葉が地表へ持ち上げられ、その場で養分が減っていく。

水の吸わせ方にも条件がある。乾いた種が水分を一気に吸収すると、双葉になる部分に亀裂が入り、正常に発芽できないことがある[1]。これは「浸した豆は必ず発芽しない」という意味ではなく、急な吸水が傷を生む場合がある、という条件つきの注意である。発芽適温は20〜25℃で、種苗会社の手引きとホームセンターの手引きは同じ数字を示している[1][2]。

子葉の養分は有限だから、芽生えは早く自力で光合成できる体をつくらなければならない。その体が、本葉とつるである。

3. つるは、いつから のびるの?

3. つるは、本葉が5枚ほどになると伸びはじめる

3. つるあり種とつるなし種 ── 草丈が収穫期間を左右する

いんげんには、つるが のびる なかまと、あまり のびない なかまが あります[2]。

つるが のびる なかまは、はっぱが 5まいくらいに なると、つるを のばしはじめます。ネットなどを よういして おくと よい そうです[1]。せたけは 180センチ いじょうに なります。大人の せの たかさより 大きい ことも あります。つるが のびない なかまは、50から 60センチです[1]。

つるが ながい ほうが、ながく とれます。つるが みじかい ほうは、とれる 日が みじかく なります[1]。いわきしの 白い いんげんは、3メートル いじょうに なる ことも ある そうです[8]。

つるを のばした 草は、土の 中でも はたらいて います。つぎは、根の はなしです。

インゲンには、つるが伸びる「つる有種」と、あまり伸びない「つる無種(矮性種)」があります[2]。種苗会社の資料では、つる有種は本葉が5枚前後になるとつるが伸びてくるので、早めにネットを準備するとされています[1]。

草丈は、つる有種で180cm以上、つる無種で50〜60cmです。そのため、つる有種はネットなどを使って育てますが、長く収穫を楽しめます。つる無種は収穫期間が短くなります[1]。つるが長い分、花もさやも長く作り続けられる、という見方ができます。

いわき市の資料には、白いんげんの苗が3m以上に育つ例も書かれています[8]。

つるの巻き方については、世界中のつる性植物の茎1485本を調べた研究があります。92%が右巻き(上から見て反時計回り)で、緯度や南北半球によらなかったと報告されています[11]。これはつる植物全体の割合で、インゲン1種の数字ではありません。

地上でつるを伸ばす草は、土の中でも別の仕事をしています。次は根を見てみます。

インゲンは、つるが伸びる「つる有種」と、つるが伸びにくい「つる無種(矮性種)」に分かれる[2]。種苗会社の資料によると、つる有種は本葉5枚前後でつるが伸び始めるので、早めにネットを準備する必要がある。草丈は180cm以上で、ネットなどを使う栽培になるが、長く収穫を楽しめる。つる無種は草丈50〜60cmと低く、収穫期間が短い[1]。

草丈の差が収穫期間に響く理由は、資料に直接書かれていないが、つるが伸び続ける限りその先で花とさやが作られ続ける、と読むと筋が通る。いわき市の在来作物の資料でも、白いんげんの苗が3m以上に育つ例が挙げられている[8]。

巻き付く向きについては、つる性植物の茎1485本を記録した研究で、92%が右巻き(上から見て反時計回り)だった。緯度や南北半球による違いはなかったという[11]。この数字はつる性植物全体のもので、インゲン1種について出した値ではない。インゲンのつるの巻き方向は、この記事の資料からは言えない。

ここまでは地上の話である。ところが、成長に必要な窒素を、マメ科の植物は土の中の根で、ほかの生きものの力を借りて手に入れている。

4. 根の ちいさな つぶは、なにを して いるの?

4. 根のこぶの中に棲む細菌が、空気中の窒素を植物の栄養に変える

4. 根粒と窒素固定 ── 鉄と酸素の条件までそろって働く共生

マメの なかまの 根には、「こんりゅう」という ちいさな つぶが できます。中には、細菌さいきんが すんで います。この 細菌さいきんは、空気に ふくまれる ちっそを、植物しょくぶつが つかえる かたちに かえて くれます[5]。

ちっそは、ひりょうにも はいって いる 大切な ものです。植物しょくぶつに ちっそを わたす かわりに、細菌さいきんは 根の 中という すみかを もらって います。おたがいに たすけあう、すてきな つきあいです。ただし、この 研究は いんげん だけの ものでは なく、マメの なかま全体の はなしです[6]。

この 細菌さいきんが はたらく ためには、てつも ひつようだと わかって きました。根の つぶに てつを あつめる ぶぶんが ある、という 研究が あります[5]。つぎは、いよいよ 花です。

マメ科の植物は、根に「根粒」という小さなこぶをつくります。中には根粒菌がすんでいて、空気中の窒素をアンモニアに変える「窒素固定」を行います[5]。理化学研究所の説明では、根粒菌はダイズなどのマメ科植物の根に感染し、窒素の栄養を宿主の植物に届けます[6]。

窒素は、植物が育つのに欠かせない栄養で、肥料にも含まれています。窒素肥料は、作ったり使ったりするときに温室効果ガスが出るなど、環境への影響があると理化学研究所は述べ、穀物が根粒菌と共生できれば肥料を減らせると期待されると説明しています[6]。マメの根の細菌は、肥料づくりの手間を減らすかもしれない研究テーマでもあるのです。

この働きには鉄も必要です。窒素固定の酵素が働くのに鉄が必要で、マメ科のミヤコグサを使った研究で、根粒に鉄を集めるIMAというペプチドが見つかりました(2024年)[5]。ミヤコグサでの結果で、インゲンで直接確かめたものではありません。

こうして根が栄養を整えると、地上では花がつき、その先にさやができます。

マメ科植物は根に根粒をつくり、その中に根粒菌をすまわせる。根粒菌は空気中の窒素をアンモニアに変える窒素固定を行い、宿主に窒素の栄養を供給する[5][6]。窒素は肥料の三要素の一つでもあり、理化学研究所は、窒素肥料の生産と使用が温室効果ガスの排出など生態系への悪影響を伴うため、穀物と根粒菌の共生が実現すれば肥料を減らせると期待している[6]。

ただし、この共生がうまく働くには条件がいる。窒素固定酵素ニトロゲナーゼは、働くために鉄を必要とする。筑波大・名古屋大・東京大の共同研究(2024年)は、マメ科のミヤコグサで、約50個のアミノ酸からなるIMAペプチドが根粒に鉄を集めることを示した[5]。また、この酵素は酸素に非常に弱いため、植物は酸素と結びつきやすいレグヘモグロビンというタンパク質を根粒の中に蓄える、という説明が学会要旨にある[7]。

注意したいのは、これらがインゲン自身で調べた結果ではない点だ。鉄の研究はミヤコグサ、理化学研究所の説明はダイズなどを例にしている。いずれもインゲンについての研究結果ではなく、マメ科の仲間に共通する性質として読む。

根が窒素を確保すれば、茎の先では花が咲く。その先で、冒頭の問いに戻る。

5. 花が さいてから、さやは どのくらいで できるの?

5. 花から約2週間で、若いさやが食べごろになる

5. 開花から約2週間の収穫と、30℃を超える暑さの壁

花が さきはじめてから 2しゅうかん くらいで、わかい さやが とれます[1]。1かげつ よりも ずっと みじかいのです。

つるが のびる なかまの さやは、ながさが 18センチ くらいに なったら、じゅんに とって いきます[2]。ただし、ひんしゅに よって ちがいます。いんげんは 20どくらいが すきで、30どを こえると、さやが つきにくく なる ことが あります[1]。

そこで、あつい じきに さやが とれる 時期が かさならない ように、まく 時期を きめます[1]。

「おやこうこう」な 豆は、わかい さやなら 9月ごろ、かわいた 豆なら 11月の おわりごろに とります[8]。とる 時期で、野菜やさいにも、豆にも なるのです。

種苗会社の手引きによると、インゲンは花が咲き出してから約2週間後から収穫できます。莢の中の豆が目立たないうちに収穫し、取り遅れると株の負担が増えて収量も減ります[1]。ホームセンターの手引きは、つる有種では子実が膨らみ、長さが18cm前後になったものから順に収穫すると書いています[2]。ただし収穫の大きさは品種で変わります。

暑さにも弱い性質があります。インゲンは20℃前後でよく育ちますが、30℃以上になると、さやがつきにくくなることがあります。このため、収穫期が暑い時期と重ならないように、種をまく時期を決めます[1]。

さて、最初の問いに戻ります。若いさやの収穫は花の約2週間後、豆を採るなら、さやが茶色に枯れる11月下旬まで待つ、というのが親孝行豆の例でした[8]。同じ豆の草が、若いさやの野菜にも、熟した豆にもなる分かれ道は、収穫を何日目に、どの段階で終えるかにありました。

開花から収穫までの目安は短い。種苗会社の手引きは、花が咲き出してから約2週間後に収穫でき、莢の中の豆が目立たないうちに摘むと述べる[1]。つる有種では子実が膨らみ、長さが18cm前後になったものから順に収穫する例がホームセンターの手引きにある。ただし収穫サイズは品種で異なり、12〜20cmの例もある[2]。

この時期の管理には、温度の壁がある。インゲンは20℃前後でよく生育するが、30℃以上になると莢がつきにくくなることがある[1]。そのため、収穫期が暑さに重ならないよう、種をまく時期を選ぶ。

ここで冒頭の問いに答えが出せる。若いさやで食べる場合は、花の約2週間後、豆が目立たないうちに収穫する。取り遅れると株の負担が増え、収量も減る[1]。熟した種で食べる場合は、親孝行豆の例のとおり、さやが茶色に枯れる11月下旬まで株につけ、乾燥させて豆を取り出す[8]。分かれ道は収穫の時期にあり、その時期を決めているのは、さやが育つ時間と、暑さや株の負担といった条件だった。

では、このいんげんの名前は、どこから来たのか。ここには、資料どうしの食いちがいがある。

6. いんげんの 名前は、だれが つけたの?

6. いんげんの名前の由来は、資料によって話が分かれる

6. 隠元禅師の伝承 ── インゲンマメかフジマメか

いんげんの ふるさとは、中央アメリカの あたりと いわれて います。メキシコの 南の ほうと する しりょうも あります[9]。

日本には、江戸えどじだいに はいって きたと いわれます。中国から きた おぼうさんの、いんげん ぜんじが もって きた、と いう しりょうが あります[9]。

ところが、べつの しりょうでは、ちがう はなしが でて きます。いんげん ぜんじが 1654ねんに もってきたのは、ふじまめという ほかの 豆の はなしだ、という せつ明です。かんさいでは ふじまめを「いんげんまめ」と よぶ ことも あり、まざりやすい そうです[10]。

だれが どの豆を さいしょに もって きたのか、はっきり 言える ことは、すくなくとも ここには ありません。

インゲンマメの原産地は、中央アメリカ付近(メキシコ南部)といわれます。マイナビ農業の記事によると、17世紀にヨーロッパへ伝わり、日本には江戸時代に、中国の僧・隠元禅師が持ち込んだとされます[9]。名前の「隠元」は、この禅師の名前に由来する、と説明されることが多い話です。

ところが、百科事典の見方は少し違います。日本大百科全書の「フジマメ」の項目では、隠元禅師が1654年(承応3)に中国から導入したという説は、フジマメについての伝承とされています。関西ではフジマメがインゲンマメと呼ばれるため、本物のインゲンマメと混同されやすいとも書かれています[10]。

つまり「隠元禅師がインゲンマメを伝えた」と言い切ることは、資料の上ではできません。名前の由来には、説がいくつかあると考えておくのが安全です。

インゲンマメの原産地は、中央アメリカ付近(メキシコ南部)とされる。マイナビ農業の記事は、17世紀にヨーロッパへ伝わり、日本には江戸時代に中国の僧・隠元禅師が持ち込んだと記す[9]。いわき市の資料も、原産地をメキシコから中南米と推定し、紀元前5000年には栽培されていたとしている[8]。

ここで食いちがいが出る。日本大百科全書の「フジマメ」の項は、隠元禅師が1654年(承応3)に中国から導入したという説を、フジマメについての伝承としている。関西ではフジマメがインゲンマメの名で呼ばれるため、真正のインゲンマメと混同されやすいという[10]。

つまり、「隠元禅師がインゲンマメを伝えた」と言い切れるかどうかは、資料によって分かれる。日本大百科全書の側は、混同されやすいことまで明記している。名前の由来を調べるときは、どの資料が、どの豆の話として書いているかを見分けることが要になる。

種から、根、つる、花、さやへ。いんげんの一生を一巡して、あとは、自分の目で確かめられる範囲に戻ってくる。

7. 台所で、さやと 豆を 見くらべて みよう

7. 台所で、さやの大きさと豆の大きさを見くらべる

7. 豆の吸水とさやの断面を、台所で確かめる

おうちに、かわいた 豆が あれば、水に ひとばん つけて みましょう。つけた 豆は、食べずに 見るだけに します。つける まえと あとで、大きさを ものさしで はかって みます。ふくらんだ 豆の かわに、ひびが ないか、よく 見て ください。

さやいんげんを 買う ことが あったら、さやを ひとつ わって みましょう。中の 豆は、どのくらいの 大きさでしょうか。わかい さやでは 豆が ちいさく、めだたない ことが 多い、と 手引きに あります[1]。ひんしゅに よって ちがうので、2、3本 くらべて みると おもしろいです。

わかい さやの 中の 豆は、いつか、あの かたい 豆に なるのでしょうか。

家に乾燥した豆があれば、水に一晩つけて、前後の大きさを定規で測ってみます。浸した豆は食べずに観察だけにします。皮にしわや傷がないか見ると、乾いた種が水を吸うときの様子を想像できます。ただし、傷が見えるかどうかは豆によって違うはずです。

さやいんげんを買う機会があれば、さやを1本割って、中の豆の大きさを見てみましょう。若いさやは、豆が目立たないうちに収穫するのが目安とされます[1]。数本を並べると、さやの長さや豆の大きさの違いも見えてきます。

もっと調べたくなったら、名古屋大学などの共同研究のプレスリリース[5]や、理化学研究所の植物共生研究チームのページ[6]に、根粒菌と窒素固定の研究の様子が日本語で書かれています。

家庭でできる確かめ方が二つある。一つは、乾燥した豆を一晩水に浸し、浸す前後の長さを定規で比べることだ。急な吸水が双葉になる部分に亀裂を生むことがある、という注意[1]を手がかりに、皮に傷が見えるものがあるかを観察できる。浸した豆は食べずに観察だけにする。傷の有無は豆の種類や古さにも左右されうるので、見えなくても結論は出さない。

もう一つは、さやいんげんのさやを割り、豆の大きさを測ることだ。若いさやは、豆が目立たないうちに収穫される[1]。数本を比べれば、さやの長さと豆の大きさがどう対応するかを、自分のデータとして集められる。品種で収穫サイズが違うことは資料にもある[2]。

根粒菌と窒素固定を、さらに詳しく知りたいときは、筑波大・名古屋大・東京大のプレスリリース[5]と、理化学研究所の植物共生研究チームのページ[6]がある。名前の由来は、日本大百科全書のフジマメの項[10]と、マイナビ農業の記事[9]を読み比べると、同じ話が資料ごとにどう違うかが見える。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:種苗会社・ホームセンターの栽培手引き、大学・公的機関の資料、百科事典、農業記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. トーホク「インゲン栽培方法」(種苗会社の資料)。https://www.tohokuseed.co.jp/uploads/Manual/contents_0_64a39ae5311bd.pdf (つるの有無、水・温度、収穫時期について)
  2. コメリ「インゲンの育て方」。https://www.komeri.com/contents/howto/html/04180.html (つる有種・つる無種、発芽温度、さやの大きさについて)
  3. 島根大学「作物学実験テキスト」。https://www.ipc.shimane-u.ac.jp/food/kobayasi/experiment%20text_5.pdf (発芽の様式について)
  4. 札幌市教育委員会の小学校理科の教材。https://www.city.sapporo.jp/kyoiku/shido/documents/1_5_4_8.pdf (子葉のでんぷんについて)
  5. 筑波大学・名古屋大学・東京大学 共同プレスリリース(2024年)。https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload_images/20240130_sci.pdf (根粒菌の窒素固定と鉄の供給について)
  6. 理化学研究所 植物共生研究チーム。https://www.riken.jp/research/labs/csrs/plant_symb/index.html (窒素固定と肥料について)
  7. 日本植物生理学会 年会要旨(J-STAGE)。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspp/2004/0/2004_0_571/_article/-char/ja (レグヘモグロビンについて)
  8. いわき市「在来作物と伝統・食・文化」。https://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1001000000754/simple/ingen2.pdf (親孝行豆、若いさやと種の収穫時期について)
  9. マイナビ農業の記事。https://agri.mynavi.jp/2018_01_27_17136 (原産地と日本への伝来について)
  10. コトバンク「フジマメ」(日本大百科全書・世界大百科事典)。https://kotobank.jp/word/フジマメ-865600 (隠元禅師の伝承とフジマメの混同について)
  11. Global Ecology and Biogeography「The global trend in plant twining direction」。https://researchonline.jcu.edu.au/2337 (つる性植物の巻き方向について)

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