1. タヌキは、どんな ところに くらして いるの?
1. 平地の森から市街地まで、タヌキの暮らし場所は広い
1. 里山から市街地まで ── 暮らし場所の幅と、夜の活動
タヌキは、にほんの ほとんどの ところに います。ただし、なんせいしょとうは のぞきます[1]。
すんで いる ところは、へいちや、むらに ちかい やまの もり、くさはらです。まちの なかにも います[1]。
ひるは、いわあなや、きの あなで やすみます。よるに なると、うごきはじめます[1]。
では、タヌキに すみやすい ところと、すくない ところは、どこなのでしょう。
環境省の解説によると、タヌキは南西諸島を除く日本全国に分布し、一年中姿を確認できます。すむ場所は、平地から里山・低山の森林や草地までです。市街地にも生息しています[1]。
昼は岩穴や木のうろ(洞)などで休み、夜になると活動を始めます[1]。夜に動くため、人の多い場所でも、人と顔を合わせにくいのかもしれません。
特定の環境にしばられない動物だと分かりました。では、日本の中で、タヌキが多い場所と少ない場所はあるのでしょうか。
環境省は、タヌキを南西諸島を除く日本全国に分布する在来種とし、生息環境を平地から里山・低山の森林や草地、さらに市街地まで挙げている。年間を通じて姿を確認できる動物でもある[1]。国立環境研究所の侵入生物データベースも、在来分布を「日本全土と周辺の島」、生息環境を森林と都市域としており、2つの資料で一致する[6]。
行動の面では、昼は岩穴や木の洞などで休み、夜に活動を始める[1]。夜行性であることは、人の活動時間と重なりにくく、市街地で暮らせる一因になりうる。ただしこれは行動の説明から導いた見方であり、都市での理由を直接調べた結果ではない。
分布が広いことは分かった。では、広い日本の中に、タヌキが少ない場所はあるのか。
2. タヌキが すくない ところや、にほんに もともと いない ところは?
2. 北海道と本州で別の亜種になり、深い山には少ない
2. 2亜種の分布と、情報が少ない地域 ── 「いない」と「少ない」を分ける
タヌキは、ほんしゅう・しこく・きゅうしゅうに ホンドタヌキが います。ほっかいどうには、エゾタヌキが います。ふたつは、すむ ばしょが はなれた なかまです[1]。
やくしまなどに いる タヌキは、ひとが もちこんだ ものと されて います[1]。
ぜんこくの ちょうさでは、おおゆきさんけいや ひだかさんみゃくなど、タヌキの じょうほうが すくない ところも ありました[3]。ふかい やまの おくは、すくなめ なのかもしれません。ただし 「すくない」は 「いない」と いう ことでは ありません。
日本のタヌキは、本州・四国・九州のホンドタヌキと、北海道のエゾタヌキという、地理的に隔てられた2つの亜種に分けられています[1]。屋久島などにいる個体は、人が持ち込んだ外来のものとされます[1]。国立環境研究所の資料でも、島根県隠岐の知夫里島と屋久島の個体群は、1980年代以降に入った外来個体群で、持ち込みの経路は分かっていないと整理されています[6]。
環境省生物多様性センターの全国調査では、沖縄県を除く広い範囲で生息情報が得られました。反対に、北海道中央部の大雪山系や日高山脈、宗谷地方、本州の奥羽山系や北アルプスなどでは、情報が少ないか、得られませんでした[3]。
「情報が少ない」は、「いない」と同じではありません。ただ、人里に近い低い土地に比べると、深い山の奥は暮らしやすい場所ではなさそうだ、と読み取れます。
タヌキが森から市街地まで広がれた理由は、食べ物にもありそうです。
環境省は、日本のタヌキを、地理的に隔絶されたホンドタヌキ(本州・四国・九州)とエゾタヌキ(北海道)の2亜種とする[1]。なお、亜種の分け方は資料によって扱いが分かれることがあり、ここでは環境省の整理に従う。島の個体群のうち、屋久島などの個体は人為的に持ち込まれた外来個体群とされ、国立環境研究所も隠岐の知夫里島と屋久島を1980年代以降に侵入した外来個体群と整理して、由来や経路は不明とする[6]。つまり、「日本のタヌキ」と言っても、島では在来と外来を区別して読む必要がある。
全国の分布調査(2018〜2021年度に実施、情報収集の対象は2010〜2021年度)では、沖縄県を除く広い範囲で生息情報が得られた。一方で、北海道中央部の大雪山系・日高山脈・宗谷地方、本州の奥羽山系の脊梁部や北アルプスでは、情報が少ないか得られなかった[3]。調査は情報の収集にもとづくため、情報が少ないことは、生息しないことの証明にはならない。
ここから「深い山より人里に近い低い土地に多い」と読むのは、調査結果への書き手の解釈である。では、人里の近くで暮らす力は、どこから来るのか。次は食べ物を見る。
3. タヌキは、なにを たべて いるの?
3. 「何でも食べる」から、場所をえらびすぎない
3. 雑食性と、ため糞の習性 ── 食べ物と場所の選び方
タヌキは、なんでも たべる どうぶつです。ミミズ、カエル、ヘビ、むし、くだものなどを たべます[1]。ほっかいどうの エゾタヌキは、ネズミや とりや たまご、さかなも たべると しょうかいされて います[2]。
もうひとつ、タヌキには かわった くせが あります。きまった ばしょに うんちを します。これを 「ためふん」と いいます。エゾタヌキでは、なんびきかで つかう ためふんの ばしょが あり、なかまの じょうほうこうかんの ばだと かんがえられて います[2]。
では、タヌキは まちの まんなかの こうきょで、じっさいに なにを たべて いるのでしょう。
タヌキは、決まったものだけを食べる動物ではありません。ミミズやカエル、ヘビのほか、昆虫や果実など、何でも食べる雑食性です[1]。札幌市円山動物園の紹介でも、エゾタヌキはネズミ、カエル、鳥とその卵、魚、昆虫、ミミズ、果実などを食べるとされています[2]。
もうひとつの特徴が、決まった場所に糞をする「ため糞」です[1]。エゾタヌキでは、数頭が一緒に使うため糞場があり、情報交換の場と考えられています[2]。「と考えられている」という段階で、そう決まったわけではありません。
ため糞は、食べ物の手がかりにもなります。では、東京の真ん中では、何を食べているのでしょうか。
タヌキは、ミミズ、カエル、ヘビ、昆虫、果実など何でも食べる雑食性である[1]。札幌市円山動物園の解説では、エゾタヌキの食べ物にネズミ、鳥とその卵、魚も挙がる[2]。食べられるものの幅が広いほど、ある場所で特定の餌が減っても、ほかのもので代わりにしやすい。これは雑食という性質から導いた見方である。
決まった場所に排泄するため糞も、タヌキの習性として挙げられる[1]。エゾタヌキでは、数頭が共同で使うため糞場があり、動物園は、これを情報交換の場と考えられるとしている[2]。この機能は「考えられている」段階の説明である。
ため糞は、研究者にとっては、タヌキの食事を後から調べられる資料でもある。皇居ではそれが実際に行われた。
4. こうきょの タヌキは、ためふんから なにが わかったの?
4. 皇居のため糞を調べると、果実や昆虫を食べていた
4. 皇居での再発見と、ため糞の分析 ── 都心の緑地での食性
むかし、とかいの ひろがりと ともに、タヌキは とうきょうの まんなかから すがたを けしたと いわれました。ところが、1990ねんだいの うしろごろから、こうきょで タヌキを みたと いう はなしが ふえて きました[5]。
そこで、こうきょの いきものを しらべる ちょうさが ありました。ためふんを あつめて しらべた けんきゅうでは、こうきょの なかの くだものや むしを たべて いる ことが わかりました[5]。
そのあとも、5ねんかん、まいしゅう にちようびに あたらしい ふんを あつめる ちょうさが つづきました[5]。タヌキは、こうきょの なかの しぜんを つかって いたのです。
では、まちの なかでは なにが タヌキを こまらせるのでしょう。
タヌキは都市化にともなって、都心から一時、姿を消したとされました。ところが、1990年代後半から、皇居でタヌキの目撃が増えてきたといいます[5]。国立科学博物館の皇居の生物相調査(第Ⅰ期は1996〜2000年)は、タヌキが定住している可能性を示し、第Ⅱ期(2009〜2013年度)では生態も調べられました[5]。
皇居で集めたため糞の分析では、皇居の中の果実や昆虫などを食べていることが示されました[5]。さらに2009〜2013年の5年間は、毎週日曜に新しい糞を採る長期調査が続けられました[5]。
「いなくなった」と言われた動物が、街の真ん中の緑地で、季節の果実や虫を食べながら暮らしていたわけです。これは「都市に住みはじめた」のではなく、「いなくなったとされた場所で、じつは暮らしていた」のかもしれません。目撃が増えた理由が、実際の回復なのか、調べる目が増えたためなのかは、この資料だけでは分かりません。
緑が残っていれば暮らせる、とは限りません。次は、都市ならではの壁を見ます。
都市化の進行とともに、タヌキは都心から一時姿を消したと考えられてきた。しかし1990年代後半から皇居での目撃が増え、国立科学博物館の皇居生物相調査の第Ⅰ期(1996〜2000年)が定住の可能性を示した。そこで第Ⅱ期(2009〜2013年度)では、タヌキの生態を直接調べる調査が行われている[5]。
食性の調査では、ため糞を採取して分析し、皇居内の果実や昆虫などを食べていることが示された[5]。後の長期調査では、5年間、毎週日曜の午後に新鮮な糞を採取している[5]。
注意したいのは、「消えた」が「完全にいなくなった」とは限らないことだ。目撃が増えたのが、実際の回復なのか、調べる目が増えた結果なのかは、この資料だけでは区別できない。いずれにせよ、皇居が、タヌキの暮らしを支える緑地として使われていたことは確かだ。では、その緑地は、周りの街とどうつながっているのか。
5. まちの なかで、タヌキの じゃまに なる ものは なに?
5. 都市の緑地を分ける道路が、タヌキの暮らしに影を落とす
5. 道路と遺伝子の交流 ── 皇居と赤坂御用地のタヌキ
とうきょうの まんなかにも、たくさんの タヌキが いると いわれます。ざつしょくで、ひとの たべのこしなども つかいながら、くらして きたと されます[4]。
けれども、こうえんや もりは、おおくの どうろで わけられて います。こうきょと あかさかごようちの タヌキは、いでんしの ちがいが ありました。どうろが、なかまとの こうりゅうを さまたげて いると かんがえられて います[4]。
ぜんこくの ちょうさでも、とうきょう・ちば・かながわ・あいち・おおさかの まわりで、タヌキの いる ばしょが ひろがる ようすが みられました[3]。ただし、これは 「かずが ふえた」と いう ことでは ありません。
北海道大学の紹介記事によると、都心にも多くのタヌキがいて、雑食で適応力が高く、人の出す残飯なども利用しながら都会に適応してきたとされます[4]。皇居で果実や昆虫を食べていたことを合わせると、都会では「自然のもの」と「人のそばのもの」の両方を使っている姿が見えてきます。
ただ、都市の林や公園は、多くの道路で隔てられています。皇居と赤坂御用地のタヌキの遺伝子には違いがあり、間にある多数の道路が、遺伝子の交流を妨げているからだと考えられています[4]。緑地どうしは近くても、タヌキにとっては、簡単には渡れない壁になるのかもしれません。
それでも、全国の調査では、東京都・千葉県・神奈川県・愛知県・大阪府といった大都市圏とその周辺で、分布が広がる傾向がみられました[3]。2000年代の調査と方法が一部ちがうため、これは「個体数が増えた」という意味にはなりません。
北海道大学の解説は、都心にも多くのタヌキが生息し、雑食で適応力が高く、人の残飯なども利用しながら都市に適応してきたとする[4]。ただし、残飯が主食だという意味ではない。皇居の分析では、果実や昆虫が食べ物として確認されている[5]。
一方、都市の林や公園は、多数の道路に隔てられている。皇居と赤坂御用地のタヌキは遺伝子に違いがあり、解説は、この間の道路が遺伝子の交流を妨げているためと考えている[4]。「考えられる」段階であり、道路が唯一の原因だとは言えない。それでも、緑地が残っていることと、個体どうしがつながっていることは別の条件だ、という見方につながる。
全国調査では、東京都・千葉県・神奈川県・愛知県・大阪府といった大都市圏とその周辺で、分布が拡大する傾向がみられた[3]。しかし、過去の調査と手法が一部異なるため、単純な比較は難しく、これを個体数の増加とは読めない。分布が広がったことと、数が増えたことは、別のことである。
では、同じタヌキは、寒さの厳しい場所では、暮らし方をどう変えるのか。
6. ほっかいどうの タヌキは、ふゆを どうして すごすの?
6. 北海道のエゾタヌキは、秋に体をふとらせて冬にそなえる
6. エゾタヌキの冬ごもり ── 体重の季節変化から見る暮らし方
ほっかいどうの エゾタヌキは、あきに からだに あぶらを ためます[2]。
ふゆごもりの まえには、からだの おもさが なつの 1.5ばいほどに なります[2]。
ここで 「とうみん」と おなじ ことだと かんがえるのは、まだ はやいです。どうぶつえんの しょうかいでは、「ふゆごもり」と かかれて います。くらしの しかたは、すむ ところに あわせて かわるのです。
北海道は、冬の寒さが厳しい場所です。札幌市円山動物園の紹介によると、エゾタヌキは秋に皮下脂肪を体にたくわえて、冬ごもりに備えます。冬ごもりの直前の体重は、夏の約1.5倍になります[2]。
ここで使われている言葉は「冬ごもり」です。冬眠と同じかどうかは、この資料だけでは言い切れません。
森でも市街地でも暮らせるタヌキは、場所によって、暮らし方も変えているようです。
もっと しりたく なったら
自分の町のタヌキの気配を探すには
タヌキの暮らしを、自分の町で確かめるには
おうちの ちかくで
おとなと いっしょに、ちかくの こうえんなどの みちを あるいて みましょう。タヌキは よるに うごくので、ひるまは すがたが 見えません。あしあとや ためふんが ないか、さがして みても いいです。ただし、うんちには さわらないで ください。さわったら、てを よく あらいます。
しらべる ときは
おうちの ひとや、としょかんの ひとに、タヌキの ほんを きいて みましょう。
家の近くでできること
公園などの道を、大人と一緒に歩いてみましょう。タヌキは夜に活動するので、昼間は姿を見かけにくい動物です。足跡や糞の跡などを探すことはできますが、糞には素手でさわらないでください。さわってしまったら、よく手を洗います。
調べるには
環境省の分布調査の報道発表には、タヌキの分布が広がる傾向や、情報が少ない地域が書かれています。図書館で、地域の自然を扱った本も探してみてください。
近くでの観察
公園など緑地がある場所の道を、大人と一緒に歩いて、足跡やため糞の痕跡がないか探すことができる。糞には病原体がいる場合があるため、素手でふれない。観察した場所が、周囲の道路でどう区切られているかを地図で見ると、道路の影響という見方を自分で考える手がかりになる。
資料を読むなら
環境省の分布調査の報道発表で、調査期間と手法を確かめるとよい。都市のタヌキの遺伝子の話は、北海道大学の紹介記事から入れる。皇居のため糞の分析は、国立科学博物館の研究報告の原文で、調べ方や結果の詳しい内容を確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
分布と生態は環境省・国立環境研究所・札幌市円山動物園の資料、都市と皇居の話は環境省の調査報道発表・北海道大学の解説・報道記事による。
- 環境省 ECOJIN クイズ「タヌキ」 https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/quiz/20210519.html (分布・亜種・暮らし場所・食べ物・ため糞)
- 札幌市円山動物園「エゾタヌキ」 https://www.city.sapporo.jp/zoo/b_f/b_06/db069.html (エゾタヌキの食べ物・ため糞場・冬ごもり)
- 環境省 報道発表「タヌキ等の分布調査」 https://www.env.go.jp/press/press_00614.html (全国の分布・情報が少ない地域・大都市圏の傾向)
- 北海道大学 like hokudai「都市のタヌキ」 https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/article/6160 (都心のタヌキと道路)
- 文春オンライン「天皇陛下の知られざるご研究」 https://bunshun.jp/articles/-/11014 (皇居のタヌキの目撃・ため糞調査)
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「タヌキ」 https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/10310e.html (在来分布・島の外来個体群)
なおした ところ
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