1. コイは、水の そこの どろに 口を つっこむ
1. 水底の砂や泥に、口先をさしこむ
1. 水底の餌をとるとき、砂泥ごと吸い込む
公園の 池で、コイが 水の そこの ほうを つついて いる ところを 見た ことが あるでしょうか。
ほっかいどうの しりょうでは、コイは 水の そこの えさを とる とき、口の さきを すなや どろの 中に 入れます。そして うわあごを のばして、すなや どろごと すいこむ と 書かれて います[1]。
すいこんだ あと、口の 中で えさと どろを わけます[2]。どろごと すいこむのは、すこし ふしぎです。では、コイは なにを さがして いるのでしょう。
2. なんでも 食べる さかな
2. 貝も、ミミズも、水草も食べる雑食の魚
2. 雑食性の内訳:貝・ミミズ・水草から昆虫・小魚まで
ながのけんの しりょうでは、コイは タニシなどの 貝、イトミミズ、水草を 食べると あります[2]。
ほかの しりょうでは、えびや かにの なかま、虫、小さな さかななども 食べると 書かれて います[4]。ほとんどの ものを 食べる、ざっしょくの さかなと いわれます。
やわらかい ミミズや 水草なら、歯が なくても すいこめそうです。でも、タニシのように かたい からを もつ 貝は、どうするのでしょう。
何でも食べる、といわれる理由
長野県水産試験場の「信州の魚たち」には、コイはタニシなどの貝類、イトミミズ、水草を食べる雑食性だと書かれています[2]。釣りの図鑑は、えさの例として甲殻類や昆虫、小魚まで挙げ、たいていのものは口にする魚だと紹介しています[4]。
動物も植物も食べるので雑食です。ただし、野生のコイが何をどれだけの割合で食べているのかを示す数字は、ここで使った資料にはありません。「何でも食べる」は、食べるものの幅が広いという意味で受け取るのがよさそうです。
水草や泥のミミズは、やわらかいので吸い込めそうです。では、貝殻はどうするのでしょうか。
長野県水産試験場の資料は、コイをタニシなどの貝類、イトミミズ、水草を食べる雑食性の魚とする[2]。釣り図鑑(本田技研工業)は、ミミズ・甲殻類・水草・貝類から昆虫・小魚までを挙げ、食べないものの方が少ない魚として扱っている[4]。
2つの資料で食べ物の例は少しずつ違うが、動物質と植物質の両方が並ぶ点は共通している。そのため「雑食」という言い方が使われる。一方で、胃の内容物を調べて「何をどれだけ食べるか」を割合で示した数値は、今回引いた資料には載っていない。したがって「主に何を食べるか」を、数字をつけて断定することはできない。
食べ物の中には、貝殻のように硬いものがある。歯のない口は、それをどう扱うのか。
3. 歯は、口では なく のどに ある
3. 歯は口ではなく、のどの奥にある
3. 咽頭歯:硬い餌をすりつぶす、のどの奥の歯
コイの 口の なかには、上にも 下にも 歯が ありません。かわりに、のどの おくの ほねに、歯が ならんで います。これは、人の おくばに あたります[3]。
タニシのような 貝は、この のどの 歯で かみくだいて 食べます。のどの 歯で、えさを すりつぶすのです[3]。
まえばが なくても、おくばだけで かたい ものを すりつぶす すがたを 思いうかべて みて ください。ただし、これは たとえ話です。コイの 歯は、口では なく、のどの ほねに ならんで います。
口に ひげも あります。上あごの うしろと 口の はしに、1対ずつ、ぜんぶで 4本です[3]。
のどにある歯
茨城県内水面水産試験場の資料には、コイの上あごと下あごには歯が無く、タニシなどの貝類は、のどにある咽頭歯でかみ砕いて食べるとあります[3]。咽頭歯は、のどの奥の骨に並ぶ歯です。長野県の資料では、人間でいえば奥歯にあたるところで餌をすりつぶす、と説明されています。
口の中で泥と餌を分け、のどの奥で硬いものを砕く。コイの食べ方は、口とのどで役目が分かれていると読めます。
口の周りには、上あごの後ろと口角に1対ずつ、合計4本の口ひげもあります[3]。ひげで餌を探しているのかどうかは、ここで使った資料には書かれていないので、この記事では触れません。
のどで砕いた餌は、そのあと体の中をどう進むのでしょうか。
茨城県内水面水産試験場の「いばらき魚顔帳」は、コイの上あごと下あごに歯がなく、タニシなどの貝類は咽頭歯でかみ砕いて食べると記している[3]。咽頭歯は、のどの奥にある咽頭骨に並ぶ歯で、長野県の資料はこれを人間の奥歯にあたるところと表現している。
前の章の内容とつなぐと、役割分担が見える。口は砂泥ごと吸い込んで餌を選り分ける道具で、硬い餌を砕くのはのどの奥の歯である。口には歯がないのに貝を食べられる理由は、のどに歯があるからだ。
口ひげは、上あご後方と口角に1対ずつある[3]。ただし、ひげで味や感触を感じて餌を探すという説明は、今回引いた日本語の公的資料では確認できなかったため、ここでは述べない。
のどの歯で砕かれた餌は、その先でどう処理されるのか。
4. 胃が ないから、ずっと 食べつづける
4. 胃のないからだは、いつ満腹になるのか
4. 胃をもたない消化管と、食べ続ける性質
コイには、胃が ありません。食べた ものは、そのまま 腸へ はいります[1]。
ほっかいどうの しりょうに よると、食道まで えさで いっぱいに ならない かぎり、おなかが いっぱいに なりません。そのため、一日じゅう 食べつづける せいしつが あると 書かれて います[1]。
胃が ない さかなは、コイだけでは ありません。コイの なかまには、ひろく ある とくちょうです。
いばらきけんの しりょうでは、コイは 1年で 20〜30センチ、2年で 50センチ ほどに なります[3]。30センチの じょうぎを 2本 ならべた ぐらいの 長さが、2年で 50センチです。
食べ物がそのまま腸に入る
北海道の魚類図鑑は、コイは胃をもたず、食べたものが直接腸の中に入るため、食道まで餌で満たされない限り満腹にならず、一日中餌を食べ続ける性質がある、と説明しています[1]。
この「胃がない」という特徴は、コイ科の魚に広く見られるもので、コイだけの特徴ではありません。そのため、「コイは貪欲な魚だ」と性格のように受け取るより、体のつくりと食べ方がそういう組み合わせになっていると考えるほうが、資料に近い読み方です。
1年で20〜30cm
茨城県の資料では、コイは1年で約20〜30cm、2年で約50cmになり、3年ほどで成熟するとされています[3]。20cmは30cm定規の3分の2ほどで、50cmは、その定規をほぼ2本つなげたくらいです。食べ続けるコイが速く育つ、という因果までは資料に書かれていませんが、成長の速さの目安にはなります。
こうして泥をかき分けながら一日じゅう食べるコイは、池にとってどんな存在なのでしょうか。
北海道の魚類図鑑によれば、コイは胃をもたず、食べたものが直接腸に入る。食道まで餌で満たされない限り満腹にならず、一日中餌を食べ続ける性質がある[1]。胃に食べ物をためて少しずつ送り出す体のつくりではないため、「満腹」の感覚が成り立つ条件が、胃のある動物とは違う。
胃がないことは、コイ科の魚に広い特徴で、コイだけのものではない。そのため、胃がないからコイは特別によく食べる、と言い切ることはできない。胃がないことだけで、コイがよく食べる理由を説明できるとは限らない。
成長の目安も、同じ資料群にある。茨城県の資料は、コイは1年で約20〜30cm、2年で約50cm、3年ほどで成熟するとしている[3]。20cmは30cm定規の約3分の2、50cmはほぼ2本ぶんの長さで、1年から2年で伸びる量は小さくない。ただし、食べ続けることがこの速さの原因だとする記述は、引いた資料にはない。
では、泥を吸い、一日中食べるコイの食べ方は、池の中でほかのものにどう響くのか。
5. 食べかたは、池の 水にも えいきょうする
5. 泥をかき混ぜる食べ方は、池の水に関わる
5. 底の堆積物をかき混ぜる摂食と、水質への影響
コイが 池の そこの どろを つついて かきまぜると、水が にごったり、水の 中の よごれが ふえたり する ことが あります。とちぎけんの しりょうは、水が よごれる ことや、水の 中の よごれを ふやすと のべて います[5]。
国立かんきょう研究所の データベースでも、水草や 小さな 生きものを 食べる ことと、そこの どろを まきあげて 水が よごれる ことが あげられて います[6]。
ただし、ここで 書かれて いるのは、コイが 人の 手で はなされた 池や みずうみで おこす ことです。コイは もともと 日本に いる さかなですが、いなかった 水べに 人が はなすと、「外来種」と よばれる ことが あります[5]。
底の泥をつつく影響
栃木県の外来種のページは、コイが在来の水生生物を食べるだけでなく、池底の泥などをつついてかき混ぜるため、水質の悪化や富栄養化をもたらすと述べています[5]。国立環境研究所の侵入生物データベースも、水草や無脊椎動物を食べる被害と、底の泥を巻き上げて水質が悪くなり、栄養塩が増えることを挙げています[6]。
食べるために泥を吸い込み、選り分けるあの動きが、池の水をかき混ぜることにもなる、という読み方ができます。
「外来種」と呼ばれるのは、どんなとき?
コイは、もともと日本にいる在来種です。ただ、古くから各地で放流され、明治以降は海外産のコイも放流されました。そのため、もともとコイがいなかった水域では、人が放したコイは外来種として扱われます[5]。「コイは外来種」と一言でまとめることはできず、在来のものと、人が放したものがある、という点が大切です。
ここまでは資料の説明です。では、実際にコイを取り除いた池では、何が起きたのでしょうか。
栃木県の外来種のページは、コイが在来の水生生物を摂食するだけでなく、池底の堆積物をつついて撹拌することで、水質の悪化や富栄養化をもたらすと記している[5]。国立環境研究所の侵入生物データベースも、水草や無脊椎動物の捕食と、底泥の巻き上げによる水質悪化・栄養塩の増加を、被害として挙げる[6]。前の章の「泥ごと吸い込む」食べ方が、底の泥を動かすことにもなる、と読める。
ここで注意したいのは、この影響が語られる場面である。コイは日本在来の魚だが、古くから各地で放流され、明治以降は海外産のコイも放流された。そのため、もともとコイがいなかった水域に人が放したコイは外来種になり、生態系に大きな影響を及ぼしうるとされる[5]。「コイは外来種」と一括りにはできず、在来のコイと、人が放流・導入したコイを分けて考える必要がある。
資料が示しているのは、コイが水質や水生生物に影響を与えうるという説明である。では、実際にコイを取り除いた池を調べると、何が起きていたのか。
6. コイを とりのぞいた 池で おきたこと
6. 池を干してコイを取り除いたら、水生昆虫が6種から36種に増えた
6. ため池でコイを駆除した後の経過:水生昆虫6種から36種へ
ひょうごけんの 西の ほうに ある ため池で、おもしろい 調べが ありました。2000年より 前から コイが いた 池の 水を ぬいて、コイを とりのぞいたのです[7]。
とりのぞく 前に いた 水の 虫は、6しゅるいだけ でした。1年ほど あとの 2023年12月までに、ぜんぶで 36しゅるいに ふえました。2023年6月には、タガメの たまごが 2つ みつかって います[7]。
ただし、これは 1つの 池の けっかです。どの 池でも 同じに なるとは かぎりません。また、虫が ふえた りゆうが コイだけと いうことは、いえません。調べた 人たちは、水草を つかう 虫や、どろに もぐる 虫が、コイの えいきょうを うけやすい ようだと 考えて います[7]。
6種から36種へ
兵庫県の人と自然の博物館の報告に、兵庫県西部のため池の調査が載っています。2000年以前からコイがいた池を2022年11月に干し上げてコイを取り除いたところ、水生昆虫は取り除く前の6種から、2023年12月までに合計36種に増えました。2023年6月には、タガメの卵塊が2個確認されています[7]。36÷6で、種類の数は6倍になった計算です。
この結果を、どこまで読めるか
この調査は、1か所の池の経過です。どの池でも同じ結果になるとは書けません。コイがいた池には水草も見られませんでした。報告書は、コイが水生昆虫に与える影響を数字で調べた研究がこれまでなかったとしたうえで、水草を使う種や、水底に潜る種がコイの影響を受けやすいことが示唆された、と書いています[7]。「示唆された」とは、そう考えられる、という強さの言い方で、コイだけが原因だと決めた言い方ではありません。
泥をつついて食べるコイの食べ方と、池の虫の数。この2つが関係していそうだ、というところまでは、読めそうです。では、自分の近くの池では、何を見ればよいのでしょうか。
人と自然の博物館の研究報告(渡辺ほか)は、兵庫県西部のため池で、2000年以前からコイがいた池を2022年11月に干し上げてコイを駆除し、その後の水生昆虫の変化を記録している。水生昆虫は、駆除前の6種から2023年12月までに合計36種へ増え、2023年6月にはタガメの卵塊が2個確認された[7]。36÷6で、種数は6倍になった計算になる。
ただし、この結果の読み方には条件がつく。調べたのは1か所の池の経過で、どの池でも同じ結果になるとは言えない。コイがいた池には水生植物が皆無だった。報告書は、コイの侵入が水生昆虫に与える影響を定量的に評価した研究はこれまでなかったとし、水生植物を利用する種や水底に潜る種が、コイの影響を受けやすいことが示唆されたとまとめる[7]。「示唆された」は、そう考えられるという強さで、コイだけが原因だと断定した表現ではない。
第5章のように、コイは底の泥をつついて攪拌し、水草や無脊椎動物を食べるとされる。その説明と、水草を使う虫や泥に潜る虫が影響を受けやすいという示唆は、方向が重なる。重なるからといって、原因を確定できたわけではない。確かめるには、コイのいる池・いない池を条件をそろえて比べる調査が要る。
では、こうした話を、自分の近くの池で確かめるには、何から始められるか。
7. 池の コイを、見るだけ 見て みよう
7. 池のへりから、コイの食べ方を見る
7. 池の観察から原典へ:口の動き・泥・水草を見る
池の コイを 見る ときは、水に 近づきすぎず、おとなの 人と いっしょに 行きましょう。見るだけで、さわったり 水に 入ったり しません。えさを あげて よいかは、その 池の きまりに したがって ください。
見る ところは、3つです。コイが 水の そこの ほうで 口を うごかして いるか。まわりの 水が にごって いるか。池の ふちに 水草が あるか。
ノートに 見た ことを 書いて おけば、ほかの 池と くらべる ときに 役に 立ちます。つぎに、さいしょの ほっかいどうや いばらきけんの ページを 読むと、口や のどの しくみが 絵の ように わかって きます。
池のへりで見るもの
公園の池や、近所のため池に行くことがあれば、水に近づきすぎないようにして、大人と一緒にコイを見てみましょう。水に入ったり、手を伸ばしたりはしません。餌やりがよいかどうかは、その池のきまりに従います。
見るのは3つです。コイが水底近くで口を動かしているか、そのあたりの水が濁っているか、池の縁に水草があるか。コイの食べ方と池の様子の関係を、自分の目で確かめる手がかりになります。池ごとに違いがあるはずなので、見た池の名前と日付をメモしておくと、別の池と比べられます。
原典を開いてみる
口の動きと泥の動きは、北海道と茨城県の魚類図鑑、長野県の「信州の魚たち」に説明があります。池を干してコイを取り除いたあとの変化は、人と自然の博物館の報告にあります。どれもインターネットで読めます。池でコイの口を見て、気になった動きの説明が見つかるか、探してみるのもおもしろそうです。
観察は、池の縁から、大人と一緒に行う。水に入ったり手を伸ばしたりはしない。餌やりの可否はその池のきまりに従う。見る対象は3つで、コイが水底近くで口を動かしているか、周囲の水が濁っているか、岸近くに水草があるか。第5・6章の説明と、見えるものが結びつくかを確かめる。1か所で見たことは一例なので、複数の池を比べて、日付と一緒に記録するとよい。
原典は、北海道の魚類図鑑(口の使い方・胃のない体)、茨城県内水面水産試験場の「いばらき魚顔帳」(咽頭歯・口ひげ・成長)、長野県水産試験場の「信州の魚たち」(餌の例)、栃木県の外来種のページ(在来と外来の整理)、人と自然の博物館の研究報告(ため池の調査)である。栃木県のページと博物館の報告を読み比べると、「コイは池に影響しうる」という説明と、実際に池で起きた変化がどう重なるかが見えてくる。
水温と食べる量の関係や、コイが冬にどう過ごすかは、ここでは扱っていない。水草を減らす影響の大きさとあわせて、別の資料で調べる余地がある。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。数字や名称は、元の資料でも確かめてください。
- 北海道 魚類図鑑「コイ」 https://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/gid/fis007.html (泥ごと吸い込む食べ方・胃のないからだ)
- 長野県水産試験場「信州の魚たち コイ」 https://www.pref.nagano.lg.jp/suisan/joho/sakanatachi/koi.html (食べるものの例・口の中で泥と餌を分けること)
- 茨城県内水面水産試験場「いばらき魚顔帳 コイ」 https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/naisuishi/gyogancho/documents/037_koi.pdf (咽頭歯・口ひげ・成長)
- 本田技研工業「釣り図鑑 コイ」 https://www.honda.co.jp/fishing/picture-book/koi/ (食べるものの例)
- 栃木県「外来種 コイ」 https://www.pref.tochigi.lg.jp/d04/gairaishu/koi.html (池への影響・在来と外来の整理)
- 国立環境研究所 侵入生物データベース「Cyprinus carpio」 https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/50550e.html (水草・無脊椎動物への影響、底泥の巻き上げ)
- 渡辺ほか「『池の水ぜんぶぬく』の科学的検証」兵庫県立人と自然の博物館 共生19 https://hitohaku.jp/publication/book/kyousei19-p057.pdf (ため池でコイを取り除いた後の水生昆虫の変化)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。