1. アメンボは、どれくらい 軽いの?
1. 体長1cm、重さ約0.01gの虫
1. 体長約1cm・約10ダイン ── 「軽さ」という前提条件
アメンボの 大きさは 1センチメートルくらいです。体重は 0.01グラムほどと ほうこくされて います[1]。
ある 子ども向けの 本では、10ぴき あわせても 1グラムに ならない ことが 多い、と 書かれて います[2]。
1円玉は 1グラムです。アメンボは、1円玉の 100ぶんの 1ほどの 軽さです。この 軽さが、水の 上に 立つ 手がかりの 1つです。
2. 水の 上に 立つ ときに、水は どう なるの?
2. 水面は「へこんで」体を支える
2. 水面の曲率と表面張力 ── 押しくぼめられた水面
水の 表面は、できるだけ 小さく なろうと します。うすい ゴムの まくが ぎゅっと ちぢもうと するのに にて います。これを ひょうめん ちょうりょくと いいます。
アメンボが 水面を おすと、水面は すこし へこみます。へこんだ 水面が もとに もどろうと する 力が、体を ささえて いると 考えられて います[1]。
ただし 本当の 水は ゴムでは ありません。たとえは、あくまで イメージです。
3. 池の そこに、まるい かげが ある?
3. 池の底に映る、丸い影と明るい輪
3. 水底の影 ── くぼみが光を曲げる
晴れた 日に、アメンボの いる 池の そこを 見ると、まるい かげが 見えることが あります。かげの まわりには、明るい わも できます[3]。
これは、あしが 水面を おして へこませた ところで、光が まがるからです。かげは、水面の へこみが 光を まげて できた ものです。
かげの 大きさは、体が 大きい ほど、重い ほど、大きく なりやすいと ほうこくされて います[3]。
日光の下でアメンボが池にいると、池の底に脚の丸い影や、半紡錘形の影ができ、そのまわりに明るい輪が見えることがあります[3]。水面がへこんだ場所で光が曲がるために、こうなるとされています。
清華大学の報告では、影の大きさは、アメンボの体の大きさと重さが大きいほど大きくなる、という関係がありました[3]。つまり、池の底の影は、水面のへこみを目に見える形にしたものです。
Zhengらは、池の底に、丸い、あるいは半紡錘形の黒い影と、その外側の明るい輪ができることを記す。水面が押しくぼめられて光の進み方がゆがむためで、影の大きさは体の大きさ・重さと正の関係にあった[3]。
この影は、支える力を測る手がかりにもなっている(前章)。ただし、いずれも査読前の報告で、種や環境で結果が変わりうる点には注意が必要である。
4. あしは、なぜ ぬれないの?
4. 毛と溝と油 ── 水をはじく脚
4. 微小剛毛とナノ溝 ── 階層構造による超撥水
水面に へこみが できても、あしが ぬれて しまうと、水に ひきこまれて しまいます。アメンボの あしは、水を はじく しくみを もって います。
あしには、こまかい 剛毛が、びっしり はえて います。この 毛には 油が ついて いて、水を はじきます[2]。
毛と 毛の あいだには 空気が たまり、あしが 水に ふれる ところが 少なく なる、と 書かれて います[5]。
あしの 先の つめは、水面の まくに ささって、すべりにくく して いると いわれます[2]。
脚をぬれにくくしているのは、油だけではありません。2004年、Gao と Jiang は、アメンボの脚に、向きのそろった細かい毛(微小剛毛)があり、その表面にナノメートル級の細かい溝があることを報告しました。ロウだけで説明できると考えられていたのに対し、毛と溝の形も撥水に大きく関わる、というのが主な主張です[4]。
毛のすきまには空気がたまり、脚と水が直接ふれる面積が小さくなります。京都大学の解説は、剛毛と油、ナノの溝、空気の組み合わせで超撥水になると説明します[5]。子ども向けの解説では、脚先のつめが水面の膜にささって、すべりにくくしているとも書かれています[2]。
Gao & Jiang(2004)は、Gerris remigis の脚で、向きのそろった微小剛毛とその表面のナノ溝という階層構造が、従来考えられていたロウよりも撥水に大きく寄与すると報告した[4]。この論文は検索で得た要旨のみを確認しており、毛の太さや溝の幅などの数値は扱わない。
Fengらは、脚に水滴を置いたときの接触角を約167.6±4.4度と報告した(要旨のみ確認)[6]。ほぼ球のまま転がる状態で、超撥水にあたる。剛毛のすきまに空気が保たれ、水と脚の接触面積が小さくなるという説明は、京都大学の解説に見られる。同解説の「体重の60倍」という数字は根拠が不明なので採らない[5]。脚先のつめが水面に刺さることも解説されている[2]。
5. あし 1本で、どれくらい ささえられる?
5. 脚1本が支える力は体重の何倍か
5. 脚1本あたりの最大支持力 ── 約152ダインという値
ある 研究では、アメンボの あし 1本が ささえられる 力は、体重の 15ばいほどに なる、と いわれて います[4]。
ただし、べつの 研究者は 「体重の 数ばい」と まとめて いて、ばいの 言い方は、そろって いません[3]。
体重の 15ばいなら、あし 1本でも、体を ささえられそうな 数字です。ただ、これは 1本が 水面で ささえられる 「さいだい」の 力の 話です。
6. どうやって、前に すすむの?
6. 波を作れない赤ちゃんアメンボは、どう進むのか
6. デニーのパラドックスを、2003年の研究はどう説明したか
むかしは、アメンボは 水面に 波を つくり、その 波に おされて すすむ、と 考えられて いました。
でも、赤ちゃんの アメンボは、あしが おそくて 波を つくれません。それでも、前に すすみます。この なぞは 「デニーの パラドックス」と よばれました[1]。
2003年、アメリカの 研究者たちが、ビデオで アメンボを ゆっくり 見ました。すると、こぐ あしが 水の 中に、小さな うずを のこして いました[1]。
アメンボは、波では なく、この うずで 前に すすむ、と わかりました。
従来は、アメンボが水面の波に運動量を渡して進む、と考えられていました。この考えだと、脚が遅くて波を作れない赤ちゃんアメンボは進めないはずで、「デニーのパラドックス」と呼ばれる謎になっていました[1]。
2003年、MITのHu・Chan・Bushは、高速度ビデオと粒子の追跡で、アメンボが主に、こぐ脚が水中に残す半球状の渦で進むことを示しました。渦の半径は約0.4cmで、体重約0.01gのアメンボの特徴的な速さは約100cm/s、つまり1秒に1mほどとされています[1]。体長が約1cmなので、1秒に体長の約100倍進む目安です。
この結果は、MITの研究室のページでも「波ではなく渦」と紹介され、水面を進む小さなロボットの開発につながりました[8]。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
今日 できること
池や 水たまりの 近くで、アメンボを さがして みましょう。水面が 晴れて いれば、そこに 丸い かげが 見えるかも しれません。かげは、あしが 水面を おした あとです。水に 落ちない よう、岸から 少し はなれて 見て ください。
おうちで するなら、水を はった おおきな おさらに、クリップを そっと のせて みましょう。ゆっくり おくと、水面が すこし へこんで、うく ことが あります。うまく いかなくても ふしぎでは ありません。
もっと しらべたい とき
図書館で 「アメンボ」「ひょうめん ちょうりょく」の 本を さがして みましょう。
今日できること
晴れた日に、池や水路の岸から、アメンボの脚の下にできる影を探してみてください。影の形が丸いか、まわりに明るい輪があるかを見るだけで、水面のへこみを観察できます。水辺では、岸から身を乗り出さないようにしてください。
家でできる実験として、水を張った大きめの皿に、クリップを水面に平らにそっと置いてみる方法があります。置き方でうまくいくかどうかが変わり、うまく浮けば水面がへこんでいるのが見えるかもしれません。
調べる手がかり
図書館やインターネットで、「アメンボ」「表面張力」について日本語で書かれた解説を探し、この記事の説明と同じことが書いてあるか、くらべてみてください。もう1つの手がかりは、家の皿とクリップです。クリップの置き方を変えて、浮く場合と沈む場合を記録すると、水面の支え方のちがいを自分の目で確かめられます。
今日できること
晴れた日の池で、アメンボの脚の下にできる影と、まわりの明るい輪を観察する。影の形を観察し、報告された写真や図と見比べる[3]。水辺では転落に注意する。
皿に水を張り、クリップを水面にそっと置く簡単な観察もできる。浮いた場合、水面がへこんで見えるか確かめる。
資料を読むなら
日本語で読めるものとして、京都大学の解説[5]やGakkenの解説[2]がある。そこから、Gao & Jiang(2004)、Feng ら(2007)の要旨など、参考にした情報源の原典へ進むとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。数値の一部は要旨のみの確認で、その旨を本文に書いています。
- Hu, D. L., Chan, B. & Bush, J. W. M. (2003) The hydrodynamics of water strider locomotion. Nature 424:663. https://hoogle.gatech.edu/Publications/Hu03.pdf (体の大きさ、支える力、渦による推進)
- Gakken キッズネット 科学なぜなぜ110番 アメンボの解説 https://kids.gakken.co.jp/kagaku/kagaku110/science0186/ (軽さ、毛の油、脚先のつめ)
- Zheng, Q. ほか 清華大学 arXiv:1601.00724(プレプリント) https://arxiv.org/pdf/1601.00724 (脚の影、支える力、最大支持力の言い方)
- Gao, X. & Jiang, L. (2004) Water-repellent legs of water striders. Nature 432:36. https://www.nature.com/articles/432036a (毛とナノの溝、最大支持力。要旨のみ確認)
- 京都大学 エコ「バイオスクープ file 22」 https://eco.kyoto-u.ac.jp/?p=9161 (剛毛・油・溝・空気による超撥水の説明)
- Feng, X.-Q. ほか (2007) Langmuir 23:4892. https://pubs.acs.org/doi/10.1021/la063039b (接触角。要旨のみ確認)
- アマナ NATURE & SCIENCE「アメンボ」 https://nature-and-science.jp/amenbo/ (脚を折り曲げて広く水にふれる説明)
- MIT Bush研究室 Water strider locomotion https://thales.mit.edu/bush/index.php/2003/04/14/water-strider-locomotion-paradox-lost/ (渦による推進の紹介)
なおした ところ
更新履歴
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