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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

すいかの なかは、どうして 赤いの?

すいかの中身はなぜ赤いのか ── トマトと同じ色素と、果肉が淡かった祖先

スイカの中身は、なぜ赤いのか ── リコピンをためる酵素と、栽培化の研究

分野:自然

すいかを きると、まっ赤な なかみが でてきます。この 赤は、トマトの 赤と おなじ 色素しきそだと いわれて います[1]。ところが、すいかの むかしの なかまは、もっと うすい 色だったと 考えられて います[1]。

赤い 色は、なにが つくって いるのでしょう。むかしの すいかは、どんな 色だったのでしょう。この メモを 読むと、赤と 白と 黄色を わける しくみと、すいかの ふるい ようすが 分かります。

夏の食卓に出てくるすいかの赤は、トマトと同じ色素の赤だといわれます[1]。ところが、いまの赤いすいかは、果肉の色が淡い祖先から選ばれて育てられてきたものだと、研究では報告されています[1]。

赤い色をつくっているのは何で、色の違うすいかは何が違うのでしょうか。赤・白・黄を分ける酵素の研究と、古代エジプトの壁画、祖先に近いとされるスーダンのメロンの話から、赤の来た道が分かります。

栽培スイカの赤い果肉は、リコピンが果肉の細胞にたまったものである。この赤い果肉のスイカは、果肉の淡い祖先から選抜され、栽培化されてきたと報告されている[1]。

赤を決めるのは色素の有無ではなく、リコピンをβ-カロテンに変える酵素ClLCYBの量である。この仕組みと、2021年の起源の研究(ナイル川流域の古代の記録を含む)から、赤が栽培種でどう固定されたかが分かる。

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1. 赤い 色は、なにで できて いるの?

1. 赤い色をつくっているのは、トマトと同じ色素

1. スイカの果肉を赤くするリコピン

すいかの 赤い ところには、リコピンと いう 赤い 色素しきそが たまって います[1]。リコピンは、トマトの 赤い 色にも ふくまれて いる 色素しきそです[6]。

すいかの 赤は、あとから ぬった 色では ありません。たべる ところを つくる ちいさな 部屋、つまり 細胞さいぼうの なかに、リコピンが ためられて いるのです。

では、すいかは はじめから 赤かったのでしょうか。

切った断面の赤は、細胞の中の色

すいかを切ると、断面がまっ赤に見えます。この赤は、果肉の細胞の中にリコピンという色素がたまったものです[1]。後から塗ったものでも、皮の色が染みたものでもなく、果肉の細胞にリコピンがたまるため、果肉が赤く見えます。

リコピンは、トマトの赤にも含まれる色素として知られています[6]。ただし、どちらにどれだけ多く入っているかは、品種や熟し方で変わるといわれ、単純には比べられません。

ここで気になるのは、赤が最初からすいかの色だったのか、という点です。

栽培スイカの赤い果肉は、リコピンが果肉の細胞に蓄積した結果である。Plant Physiology誌の研究(2020年)は、この赤い果肉のスイカが、果肉の色が淡い祖先から選抜され栽培化されてきたと位置づけている[1]。つまり赤は、スイカという植物が最初から持っていた標準の色ではなく、栽培の過程で選ばれ、広がった色として扱われている。

リコピンはトマトの赤にも含まれる色素で、スイカのほうが多いと書く一般向けの記事もある[6]。しかし、品種や熟度で値が変わるため、この記事では「同じ種類の赤い色素」という範囲にとどめる。

では、祖先の果肉はどんな色だったのか。そして、赤と、そうでない色を分けるものは何か。次の章からこの2つを順に考える。

2. むかしの すいかは、赤く なかったの?

2. 野生に近いすいかの中身は、赤くなかったのか

2. 淡い祖先と、いまも続く色の多様さ

すいかの むかしの なかまは、なかみの 色が うすかったと 考えられて います[1]。

いまでも、すいかの なかまには、赤く ない ものが います。たとえば、なかみが 黄色い すいかです。「オレンジハート」と いう 名前の ものが あります[5]。

では、色を わけて いる ものは なんでしょう。

淡い色の祖先と、いまの黄色いすいか

赤い果肉のすいかは、果肉の色が淡い祖先から選ばれて栽培化されてきたと報告されています[1]。野生や半野生のすいかの果肉は白で、カロテノイドという色素があまりたまらないという報告もあります[4]。ただし、この点は検索で見える要約によるもので、一つの報告として受け取るのが安全です。

いまの店先にも、赤くないすいかがあります。果肉が黄色い「オレンジハート」「黄太郎」などの品種があります[5]。

赤、白、黄。すいかの果肉の色が分かれているなら、その違いをつくる部品が体の中にありそうです。次の章では、そのひとつが見つかった研究を見ます。

祖先の果肉の色について、Zhangら(2020年)は、赤い果肉のスイカが淡い果肉の祖先から選抜・栽培化されてきたと述べている[1]。野生・半野生のスイカの果肉が白く、カロテノイドの蓄積が少ないという報告もあるが[4]、これは検索結果の要約で確認した内容にとどまるため、「とされる」程度の強さで扱う。

現在の栽培品種にも、赤以外の果肉がある。「オレンジハート」「黄太郎」など、果肉が黄色い品種がある[5]。

赤・白・黄と色が分かれているなら、色素そのものを持つかどうかよりも、ためる量を調節する仕組みが違う可能性が出てくる。それを実際に調べた研究が、次の章の主題である。

3. 赤い 色を ためる 「スイッチ」は?

3. 赤・白・黄を分ける酵素 ── 「次に回す係」が少ないと赤がたまる

3. ClLCYBの量が果肉色を決める ── 211系統の解析

けんきゅうしゃが しらべて みつけたのは、リコピンを べつの ものに かえる 酵素こうそです。なまえは ClLCYB と いいます。この 酵素こうそは、リコピンを β-カロテンと いう ものに かえます[1]。

たとえば、工場で 赤い にもつが ベルトコンベアに のって きて、つぎの 係の 人が べつの はこに つめかえて いくと 思って ください。係の 人が たくさん いれば、赤い にもつは すぐに なくなります。係の 人が すくないと、赤い にもつが たまって いきます。ほんとうの 酵素こうそは、人のように 考えて はたらく のでは なく、ものを べつの ものに かえる はたらきを します。

すいかも おなじです。この 酵素こうそが すくない ほど、リコピンが かわらずに たまり、赤く なります[1]。ただし、ほんとうの 体の 中は、もっと いろいろな しくみが あります。

211 この すいかを しらべると、この 酵素こうその つくりが 3 つの がたに わかれて いました。それが 赤、白、黄色の すいかに あたります[1]。

リコピンを「次に回す」酵素

赤い色を決める遺伝子のひとつは、リコピンβ-シクラーゼ(ClLCYB)という酵素をつくる遺伝子です。この酵素は、リコピンをβ-カロテンに変えます[1]。

工場のベルトコンベアにたとえてみましょう。赤い荷物(リコピン)が流れてきて、次の係(酵素)が別の箱(β-カロテン)に詰め替えます。係が多ければ荷物は残りませんし、係が少なければ赤い荷物がたまります。ただし酵素は、人のように考えて働くのではなく、ある物質を別の物質に変えるものです。研究では、この酵素の量が少ないほどリコピンがたまり、果肉が赤くなると報告されています[1]。この説明の元になった研究を紹介した記事でも、酵素を働きにくくすると果肉が淡い黄色から赤に変わったと書かれています[2]。

211の系統で見つかった3つの型

研究者は211の系統を調べ、この遺伝子にアミノ酸の入れかわる変異をもつ3つの型を見つけました。それが赤・白・黄の果肉に対応し、栽培の過程で固定されていたと報告されています[1]。ここで注意したいのは、酵素の「遺伝子」ではなく、できた「酵素の量」とリコピンのたまり方が逆の関係にあると示された点です[1]。「この遺伝子があるから赤い」と短く言い切ることはできません。

これで赤の「しくみ」の一端は分かりました。では、この赤いすいかは、いつごろ、どこで食べられるようになったのでしょうか。

果肉の赤は、リコピンβ-シクラーゼ(ClLCYB)の働きと関係している。この酵素はリコピンをβ-カロテンに変える。そのため、酵素の量が少ないほど、リコピンが変換されずに果肉に残り、赤くなる[1]。ClLCYBの働きを抑えると果肉が淡い黄色から赤に変わったという説明もあり、突然変異で酵素の量が減ったことがリコピンの蓄積につながったとされる[2]。

では、自然の集団でこの違いはどう分かれているのか。Zhangらは211の系統を解析し、アミノ酸置換を伴う変異をもつ3つのハプロタイプを見いだした。これらは栽培化の過程で固定され、赤・白・黄の果肉色に対応していた[1]。

注意すべきは、相関が見られたのが遺伝子の発現量ではなく、ClLCYBのタンパク質の量とリコピン蓄積の間(逆相関)だったという点である[1]。したがって、「この遺伝子が赤を作る」と単純化するのは正確ではない。酵素の量が下がることで、色素が変換の途中で止まり、たまると理解するほうが近い。

この研究が示したのは、赤が「ある部品の量の低下」で説明できるということで、なぜ赤が選ばれたのかまでは示していない。その問いは、次の章の起源の研究とあわせて読む必要がある。

4. むかしの 人も、赤い すいかを 食べて いたの?

4. 祖先に近いのはスーダンのメロン ── 赤はいつ選ばれたのか

4. 起源の研究 ── 2019年のプレプリントと2021年のPNAS論文

エジプトの かべに かかれた えを しらべた けんきゅうが あります。それによると、ナイル川の まわりでは、いまから やく 4360 年 まえまでに、すいかが 食べられて いた かもしれません[3]。

2019 年には、3560 年 まえの はかから 出た 葉を しらべて、「そのころ すでに 赤い すいかが 育てられて いたかも」と いう 考えが 出されました[7]。でも、これは まだ ほかの 学者が 見る まえの ろんぶんでした。

べつに、2021 年の ろんぶんでは、すいかの もとに ちかいのは、スーダンなどに ある コルドファンメロンだと されました[3]。この ろんぶんは、赤い 色が 栽培さいばいされた すいかで えらばれて ひろまった ことも のべて います[3]。

ですから、「すいかは エジプトの 生まれ」と 言いきる ことは できません。

2019年のプレプリントと、2021年のPNAS論文

エジプトの古い墓から出た約3560年前の葉のゲノムを調べ、そのころのエジプトで、リコピンに関わる変異をもつ栽培スイカが育てられていた可能性がある、という研究が2019年に出ました[7]。ただしこれは、他の研究者の審査を受ける前のプレプリントでした。

別の研究として、2021年のPNAS論文は、栽培スイカの祖先に近いのは、スーダンなどにあるコルドファンメロンだとされ、エジプトの壁画から、ナイル川流域では約4360年前までに食べられていた可能性があると述べています[3]。エジプトが起源だと言い切れるわけではありません。

赤は、栽培種で選ばれて広まった

同じ論文は、赤い果肉の色に関わる型が栽培されたスイカで選ばれ、広く固定されたと報告しています。苦みがなくなるための遺伝的な素地は祖先にもあったこと、甘さは時間をかけて少しずつ増したことも述べています[3]。

では、なぜ赤が広がったのか。色と味の関係などを、人が意識して選んだのかどうかは、今回の資料からは言えません。

2019年のプレプリントは、約3560年前のエジプトの墓から出た葉のゲノム解析をもとに、リコピンに関わる変異をもつ栽培スイカが当時すでにエジプトで育てられていた可能性を示した[7]。ただし、プレプリントは査読前の報告であり、単独で断定するべきではない。

これとは別に、2021年のPNAS論文(Rennerら)は、栽培スイカの祖先に近いのはスーダンなどに見られるコルドファンメロンであるとし、エジプトの壁画の証拠から、ナイル川流域では約4360年前までに食べられていた可能性があると述べる[3]。この論文は、エジプトを起源と言い切れるとは述べていない。

さらに、この論文の要旨は、苦みの喪失の遺伝的基盤は祖先にすでに存在したこと、赤い果肉の色に関わる型が栽培スイカで選ばれ広く固定されたこと、甘さは時間をかけて徐々に増したことを挙げる[3]。

一方で、なぜ赤が選ばれたのか、たとえば甘さなど他の性質と結びついていたのかを支える資料は、この記事で使った範囲にはない。ここは言い切らず、問いとして残しておく。

5. 赤の つづきを、どこで 見つける?

5. 色の話の続きを、身近なものから探す

5. 色の話の続きを読むための手がかり

家で くらべて みよう

おとなに トマトを 半分に きって もらい、すいかの 赤い 色と 見くらべて みましょう。ちがう やさいと くだものでも、赤い 色の もとが おなじ ものだと いわれて います。

くだものやさんや スーパーで、赤くない すいかを 見かけたら、「酵素こうそが たくさん あるのかな」と 考えて みましょう。ただし、いろいろな 理由が あるので、ひとつの 答えには ならないかも しれません。

見くらべて考えてみる

大人に半分に切ってもらったトマトとすいかを並べて、赤の色合いを見くらべてみてください。どちらも赤く見えますが、色素の量は品種や熟し方で変わるといわれます。

赤くないすいか(果肉が黄色いものなど)を見かけたら、前の章の酵素の話を思い出してみると、色の違いのひとつの理由が見えてきます。ただし、実際の品種ごとの違いにはほかの要素もからむため、ひとつの答えに決めつけない方がよいでしょう。

資料を読むなら

赤い果肉の仕組みはZhangら(2020年)、起源の話はRennerら(2021年)の論文が土台です。どちらも、出典欄のリンクから探せます。

確かめられる範囲と、残る問い

リコピンの蓄積とClLCYBの量の逆相関はZhangら(2020年)の要旨に基づき、起源と固定の議論はRennerら(2021年)の要旨に基づく。どちらも英語の要旨で読める。一方、成分表の具体的な数値やトマトとの比較は、原典に当たらなければ数字を使えない。

「なぜ赤が広がったか」は、この記事で使った資料では答えが出ていない。味、見た目、栽培のしやすさなど、どの性質がどう結びついたのかは、論文の本文や他の研究を読むことで見えてくる可能性がある。自分でその点を確かめるときは、「どの品種を調べたか」「どの数値を測ったか」を、まず確認するとよい。

資料を読むなら

英語の要旨が読めれば、Zhangら(2020年)とRennerら(2021年)の2本から始めるのがよい。日本語では、一般向けにまとめた記事が複数あるが、論文の主張をそのまま写しているとは限らないので、元の要旨と見比べると違いが見える。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文の参照番号は、下のリストの番号に対応します。野生スイカの果肉の色とトマトとの比較は、一般向けの記事や要約に基づくため、強さをおさえて書いています。

  1. Zhang et al. 2020, Plant Physiology(要旨・Europe PMC) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/pmid/32321841 (赤い果肉・ClLCYB・211系統の解析)
  2. Plantae: How Cultivated Watermelon Derived its Red Flesh https://plantae.org/how-cultivated-watermelon-derived-its-red-flesh/ (上の研究の紹介。酵素を働きにくくすると赤くなる点)
  3. Renner et al. 2021, PNAS https://doi.org/10.1073/pnas.2101486118 (祖先・赤の固定・壁画の年代。要旨に基づく)
  4. Frontiers in Genetics 2023 https://www.frontiersin.org/journals/genetics/articles/10.3389/fgene.2023.1256627/epub (野生スイカの果肉の色。要約の範囲)
  5. macaroni「黄色いスイカ」 https://macaro-ni.jp/99183 (黄色い品種。一般向け記事)
  6. ふるなび「スイカ」の記事 https://furunavi.jp/discovery/?p=6211 (スイカとトマトのリコピン。一般向け記事)
  7. Renner et al. 2019, bioRxiv(プレプリント) https://www.biorxiv.org/content/10.1101/642785v1 (エジプトの墓の葉。査読前)

なおした ところ

更新履歴

更新履歴(改版の記録)

  •  初版を公開。
  •  安全のための注意書きを直した(5章のトマトを切る観察)。理由: 包丁は子どもではなく大人に切ってもらうと分かるようにするため。
  •  中学生向けの題名を、日常の疑問が先に来る形に見直した。

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