1. マグロ 1ぽんの 値段は、どれくらいで きまるの?
1. 5億円のマグロは、わずか数秒で買い手が決まる
1. 5億円超の落札も、3〜5秒の短い競争で決まる
市場の 朝は はやいです。とよす市場では、マグロの せりが 朝 5時半ごろに はじまると いわれます。はじまりは 鐘の 音で つたえられます[4]。
はじまる 前、買う 人たちは 魚を 見て まわります。これを 下見と いいます。そして せりが はじまると、1ぽんの ねだんが 3〜5秒ほどで きまる、と 見学ガイドには 書いて あります。ストップウォッチで 4秒を はかって みると、とても 短いと わかります。
2026年の 1月5日の はじめての せりでは、青森県の 大間で とれた クロマグロ(243キロ)が 5おく1030まん円に なりました。1キロで やく210まん円です。これは お正月の はじめの せりの、とくべつな ねだんです。ふだんの ねだんでは ありません[5]。
こんな 短い 間に、どうやって いちばん 高い ねだんを 見つけるのでしょう。そこで 出て くるのが、指の サインです。
豊洲市場のマグロのせりは、朝5時半ごろ、鐘の音を合図に始まります。それより前に、仲卸業者などが並んだマグロを見て回り、買いたいものに目星をつけます[4]。
始まってしまえば、1本の値段が決まるまでは3〜5秒ほど、というのが見学ガイドの目安です。ストップウォッチで4秒を計ると、どれほど短いか実感できます。ここでは、まばたきを数回する間に買い手が決まるわけです。
2026年の初競りでは、大間産クロマグロ243キロが、すしチェーンの喜代村に5億1030万円で落札されました。記録が残る1999年以降で最高額だと報じられています[5]。5億1030万円を243キロで割ると、1キロあたり約210万円です。ただし、新年最初のせりでつく特別な値段なので、ふだんの相場ではありません。
それにしても、こんな短い時間で、どうやって「いちばん高い値をつけた人」を見分けるのでしょうか。その手がかりが、指のサインです。
豊洲市場のマグロのせりは朝5時半ごろに始まる。鐘の音が開始を知らせ、それ以前に仲卸業者などが下見をして、どの個体に値をつけるかを決めておく[4]。東京都の説明でも、水産物のせりは振鈴を合図に、下見をしていた買い手がいっせいにせり台へ並び、魚の種類ごとに数か所へ分かれて行われ、数秒で終わる[1]。
せり前の下見で買い手が品物をよく見ておく点は、数秒の勝負を支える準備と読める。1本あたり3〜5秒という所要時間は見学ガイドの目安であり、場面によって前後する。
2026年1月5日の初競りでは、大間産クロマグロ(243キロ)が喜代村に5億1030万円で落札された。1999年以降の記録で最高額、前回最高は2019年の3億3360万円である[5]。5億1030万円÷243キロで約210万円だが、これは新年最初のせりでつく縁起のよい特別な値であり、日常の相場として読んではいけない。
数秒で、しかも複数の買い手の中から最高値を一人に絞る。この条件で、なぜ声ではなく指が使われるのか。
2. どうして 声じゃなくて、指なの?
2. 声ではなく指を使うのは、片手で1〜9を示せるから
2. 指のサイン(手やり)が選ばれる二つの理由と、市場による違い
せりでは、せり人が 前に 立ちます。買う 人たちは、ほしい 品物の ねだんや 数を、指で しめします。これを 「手やり」と いいます[1]。せり人は、たくさんの 指を 見て、いちばん 高い ねだんを しめした 人を えらびます。
指を 使う わけは、いくつか あります。手の 形を きめておくと、かたてで 1から 9まで ぜんぶ あらわせます。それに、数字の 見まちがいも しにくく なります。大きな 声で 言うと、だれが いちばん 高い ねだんなのか わかりにくく なる、とも いわれます[2]。
2けた、3けたの ねだんは、どうするのでしょう。東京の 市場では、おなじ 数字が ならぶときは 手を 左右に ふり、ちがう 数字が ならぶときは 手の 形を くみあわせます。0が あるときは「ゼロ」と 言ってから つぎの 数字を 出します[3]。ただし、これは 市場に よって ちがいます。まつもとしでは、2000円なら「2」を 出して 「せん」の くらいを 口で 言います[2]。
指で しめす ねだんは、買う 人が きめた 本当の ねだんです。ところが、指の サインが つかえない 品物も あります。そのときは、どうするのでしょう。
せりとは、売り手である卸売業者のせり人が、卸売場で多くの買い手に競争で値をつけさせ、最高値をつけた人に売る取引です[1]。このとき、買い手が買いたい品物の値段や数量を指で示すのが「手やり」です。せり人は、いくつもの指のサインを見渡し、最も高い値を示した人を指名します。
なぜ指なのか。松本市の説明では、理由は二つです。一つは、手の形を決めておけば、片手で1から9までの数字をすべて表せること。もう一つは、数字の見間違いをしにくくすることです。大声で値段を言うと、誰が最高値なのか分かりにくくなるため、とも説明されています[2]。数秒で決まる場では、短い動作で正確に伝わることが大切なのでしょう。
2桁以上の値段には、約束事があります。東京都の説明では、同じ数字が並ぶとき(11や22)は手を左右に振り、違う数字が並ぶとき(12や13)は手の形を組み合わせ、0を含むときは「ゼロ」と声に出してから次の数字を示します[3]。松本市ではゼロ専用の形はなく、2000円なら「2」を示して「千」の位を口で言い、101や202の真ん中のゼロは人さし指で反時計回りに円を描きます[2]。同じ「手やり」でも、細かい約束は市場によって違うわけです。
なお、手やりは、仲卸などが値段を仲間うちで伝える隠語「符牒」とは別のものです。東京都は、公正な取引のために、符牒を使わないよう指導しています[3]。禁止されているのは符牒であって、手やりではありません。
ところが、すべての品物がこの方式で売られるわけではありません。
せりは、東京都の定義では、卸売業者のせり人が卸売場で、公開の方法により多くの買い手に競争で値をつけさせ、最高値の人に売る取引方法である[1]。値段は、買い手が指で示す「手やり」で伝えられることがある。せり人は複数の指のサインから、最も高い値を示した人を指名する。
この方式の理由として、松本市は二つを挙げる。片手で1から9の数字をすべて表せることと、数字の見間違いをしにくくすることだ。さらに、大声で値段を言うと、誰が最高値なのか分かりにくくなるためとも説明している[2]。ただし、この資料に「声だと不正が起きやすい」という説明はないため、そうした理由づけは根拠がない。
桁数の表し方は、市場によって細部が違う。東京都の資料では、同じ数字が並ぶ場合(11、22)は手やりを左右に振り、異なる数字が並ぶ場合(12、13)は手やりを組み合わせ、0を含む場合は「ゼロ」と言ってから次の数字を示す[3]。一方、松本市にはゼロ専用の手やりがなく、2000円なら「2」を示して「千」の位を口頭で言い、101や202の中央のゼロは人さし指で反時計回りに円を描く[2]。つまり、「全国共通の指の言葉」があるわけではない。
混同しやすいのは「符牒」である。仲卸などが値段を示す隠語で、取扱部類や地域でも異なる。東京都は、公正な取引の確保のため、符牒を使わないよう指導している[3]。手やりは、せりの場で値段と数量を指で示すものとして別に紹介されており、指導の対象は符牒の側である。
では、指のサインが使えない品物は、どのように値段が決まるのか。
3. 品物に よって、せりの やり方は ちがうの?
3. 魚・野菜・肉・花で、せりのやり方が分かれる
3. 品目で変わる上げ・下げ・入札・機械せり
せりには、大きく 2つの 方向が あります。ねだんが 上がっていく 「上げ」と、高い ねだんから 下がっていく 「下げ」です[6]。
たかまつしの 市場では、魚は 下げの せりで、いちばん 先に 手を あげた 人が 買います。はやく きまる かわりに、だれが 先だったかを 見きわめるのが むずかしい、と しょうかいされています。やさいと くだものは、紙に ねだんを 書いて 出す やり方です。いちばん 高い 人が 買い、おなじ ねだんなら じゃんけんで きめると いいます[6]。
東京の 市場では、お肉は きかいを 使った せりが あります。ボタンを おしつづけると、画面の ねだんが 上がっていきます[1]。花は、高い ねだんから 下がる きかいの せりが ほとんどです[1]。市場や 品物に よって、やり方は ちがうのです。
せりには、値段が上がっていく「せり上げ」と、高い値から下がっていく「せり下げ」があります。高松市の紹介では、水産部はせり下げで、最初に手を挙げた人が落札します。決まるのが速い一方で、誰が先に手を挙げたかの判定が難しいことが課題として挙げられています。青果部は入札で、買い手が黒板に希望価格を書き、最高値の人が落札します。同額ならじゃんけんです。花き部は、高松ではせり上げです[6]。
東京都の説明では、野菜や果物には固定せり(見本せり)と移動せり(現物せり)があります。枝肉は機械せりで、ボタンを押し続けると表示のせり値が上がっていきます。花きはほとんどが機械せりで、高い値から下げていくせり下げです。買い手は希望の値でボタンを押し、最初に押した時点で決まります[1]。
このように、同じ「せり」でも市場や品目で方式は違います。花の方式が高松市ではせり上げ、東京ではせり下げと違うように、一つの市場の説明を全国に当てはめることはできません。
花で使われる「値段が下がる」方式は、じつは海を越えて生まれたといわれます。
東京都は、卸売市場の価格を、需要と供給のバランスなどで決まるものとし、売買の方法をせり売・入札・相対取引の三つに分ける。入札は、買い手が単価などを紙に書いて渡し、最高値の人が買う方法である[9]。
せりの中にも種類がある。高松市の紹介では、水産部はせり下げで、最初に手を挙げた人が落札する。取引が速い反面、誰が先かの判定が難しい。青果部は入札で、黒板に希望価格を書き、最高値が落札する。同額ならじゃんけんで決める。花き部はせり上げである[6]。
東京都の説明では、野菜・果物は固定せり(見本せり)と移動せり(現物せり)があり、枝肉は機械せりで、ボタンを押し続けると表示のせり値が上がる。花きはほとんどが機械せりで、高い値から下げる下げぜり方式をとる。買い手は希望の値でボタンを押し、最初に押した時点で決まる[1]。
ここから分かるのは、方式が品目や市場で変わることだ。花のせりも、東京では下げ、高松では上げと、市場によって方式が異なる。
下げぜりは「オランダ式オークション」とも呼ばれる。その由来を見る。
4. 花の せりに ある、ねだんが 下がる 時計とは?
4. 値段が下がっていく時計は、オランダで公平さのために使われた
4. オークションクロックは、声の競争を「ボタンの先着」に置きかえた
下げぜりは、「オランダ式」とも よばれます。オランダの チューリップの 球根の 市場が はじまりと いわれます[7]。
オランダの はくぶつかん De Locht には、1908ねんに つくられた せりの 時計が あります。時計の はりは、高い ねだんから ひくい ねだんへ 動きます。買いたい 人は、声で 「わたしの!」と さけぶ かわりに、ボタンを おします。いちばん 先に おした 人が、そのとき 時計が 指している ねだんで 買います[8]。
この 時計が できる 前は、高い ほうから 声に 出して ねだんを 読み上げ、いちばん 先に 「わたしの!」と 言った 人が 買っていました。時計の ほうが 「より こうへいな やり方」と 考えられた、と はくぶつかんは せつめいして います[8]。 日本の 花の せりにも、こうした ボタンの きかいが 多く つかわれて います[1]。
せり下げは「オランダ式オークション」とも呼ばれ、オランダのチューリップ球根の市場が起源とされています。オランダの花の市場では、大きなオークションクロックを使った取引が今も行われていると紹介されています[7]。
オランダの野外博物館De Lochtが紹介する1908年製の時計では、針が高い価格から低い価格へ動きます。買いたい人は、声で「私の」と叫ぶ代わりに、ボタンを押します。最初に押した人が、そのとき時計が示している価格で買います。
時計の前の方式は、競売人が高い価格から順に読み上げ、最初に「私の」と声を上げた人が買う、というものでした。時計はこれより「公平な方法」とみなされた、と博物館は説明しています[8]。ただし、これは1台の博物館の説明で、オランダ全体でいつ時計が広まったのかは、この資料からは分かりません。
日本の花きの市場にも、ボタンを押す機械せりは多くあります[1]。声でも指でもなく「押した順」で決める点で、手やりとは違う方向の工夫です。
ここまで見ると、せりは市場の主役のように思えます。ところが、取引の数字を見ると意外な姿が出てきます。
せり下げは「オランダ式オークション」とも呼ばれ、起源はオランダのチューリップ球根市場とされる。ただしこの由来を伝えるのは日本語の解説記事であり、細かい年代は、この資料からは分からない。オランダの花き市場で大型のクロックによる取引が今も行われると紹介されている[7]。
一次資料としては、オランダの野外博物館De Lochtの説明がある。1908年製のオークションクロックでは、針が高い価格から低い価格へ動き、買い手は声で「私の」と叫ぶ代わりにボタンを押す。最初に押した人が、そのときに時計が示す価格で買う。それ以前は、価格を高い方から読み上げ、最初に「私の」と声を上げた人が買う方式で、時計は「より公平な方法」と見なされた[8]。
注目すべきは、競争の合図が「声」から「ボタンを押す順序」に移ったことだ。ここから、日本で花きに機械せりが多いことも読み取れる。ただし、これは博物館の1台についての説明で、オランダ全体の導入年を示すものではなく、日本の機械せりがオランダ由来かどうかも資料からは分からない。
こうして見ると、せりは精巧な工夫の積み重ねに見える。では、市場での取引は、どれくらいがせりなのか。
6. 4秒を はかって、さげぜりごっこを してみよう
6. 4秒を計って、下げぜりごっこをしてみる
6. 数秒の競争を体験し、市場の公式情報で方式を調べる
まず、ストップウォッチ(スマホでも ふつうの 時計でも)で、4秒を はかります。この 長さで マグロ 1ぽんの ねだんが きまると 思うと、おどろきます。
つぎは、ごっこ遊びです。紙に 100、90、80…と 数字を 書きます。1まいずつ めくって いき、いちばん 先に 「買う!」と 言った 人が、その 数字で 買ったことに します。ほんとうに お金は 使いません。
すんだら、考えて みましょう。先に 言った人は、どうして 先に 言えたのでしょう。待った 人は、何を 気にしていたのでしょう。さいごに、近くの 市場の ホームページで、やり方を しらべて みても いいですね。
まず、ストップウォッチで4秒を計ってみましょう。この間にマグロ1本の値段が決まることがある、と思うと、せりの速さが実感できます。
次に、下げぜりごっこです。紙に100、90、80…と書いてめくっていき、最初に「買う」と言った人が、そのとき見えている数字で買ったことにします。本当のお金は使いません。早く言えば得をしそうですが、高いうちに言うと損をします。時計の値が下がるのを待つ人と、先に押す人の、駆け引きが分かります。
家の近くの市場や市場の公式サイトに、せりのやり方の説明があるかもしれません。説明を見つけたら、水産・青果・花きでどの方式かを読み比べてみてください。見学の可否や時間は市場ごとに違うので、公式の案内で確かめましょう。
体験としては、まずストップウォッチで4秒を計り、これを3〜5秒の目安と比べるとよい。次に、100から10ずつ下げた数字の紙をめくり、最初に「買う」と言った人がその値で買うという下げぜりごっこを、複数人でする。本当のお金は使わない。
先に言うほど確実に買えるが高くつき、待つほど安くなるが他人に取られる。この緊張は、東京都や高松市の資料に書かれた「最初に手を挙げる・押す」方式の核心と同じである[6][1]。
調べるなら、近くの中央卸売市場の公式サイトや、農林水産省の「卸売市場をめぐる情勢」を読むとよい。品目別の方式や、せりと相対の割合がどう書かれているかを、自分で確認できる。見学の可否などは市場ごとに違うため、公式の案内を見る。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
市場や品目によって方式は異なるため、ここで挙げた例は、すべての市場に当てはまるとは限りません。
- 東京都中央卸売市場「せりのしくみ」 https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/shikumi/44931 (せりの定義、手やり、水産・野菜・肉・花きの方式)
- 松本市「市場よくある質問(セリについて)」(2024年10月1日更新) https://www.city.matsumoto.nagano.jp/soshiki/72/1040.html (手やりを使う理由、桁の表し方)
- 東京都中央卸売市場「取引符牒(符丁)を教えてください」 https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/shikumi/44934 (桁の表し方、符牒と手やりの違い)
- nippon.com「豊洲市場マグロのせり見学ガイド」 https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900090/ (せりの開始時刻と、1本3〜5秒の目安)
- 秋田魁新報(共同通信)「大間マグロ初競り5億円」(2026年1月5日) https://www.sakigake.jp/news/article/20260105CO0009/ (2026年初競りの落札額)
- 高松市「セリの仕組みを知ろう」 https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/smph/kurashi/kurashi/shisetsu/chuoichiba/kengaku/jiyukenkyu/seri.html (上げ・下げ・入札の違い)
- yousakana.jp 魚の記事(せり下げの由来) https://yousakana.jp/?p=28659 (オランダ式オークションの由来。二次資料)
- De Locht「Auctioning with the auction clock」(英語) https://delocht.nl/activiteiten/auctioning-with-the-auction-clock/?lang=en (オークションクロックの仕組み。海外の一次資料)
- 東京都中央卸売市場「価格はどうやって決まるのですか」 https://www.shijou.metro.tokyo.lg.jp/inquiry/faq/shikumi/44930 (せり売・入札・相対取引)
- 農林水産省「卸売市場をめぐる情勢」 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sijyo/info/attach/pdf/index-220.pdf (取引に占める相対・せり入札の割合)
なおした ところ
更新履歴
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