1. ぬれた 服が つめたいのは、水の せいだけ?
1. ぬれた服が冷たいのは、水が冷たいからだけでしょうか
1. 水の温度が同じでも、乾く服は冷たい ── 分子が出ていくこと
ぬれた 服は、ほうっておくと すこしずつ かわきます。かわく とき、水は どこかへ きえて しまうのでは ありません。とても 小さな つぶ(分子)に なって、空気の 中へ とび出して いきます[1]。これを 蒸発と いいます。
この とび出す とき、水の つぶは ねつを いっしょに もって いきます[2]。ねつを うばわれた 服は、ひんやり するのだと 考えられます。かわく ことが、服を ひやして いるのかもしれません。
ただし、ぬれた 服を 着て つめたく 感じる わけを、ねつの 話だけで 言いきることは できません。ここでは「水が 蒸発する とき、まわりの ねつを うばう」ことから、考えて います。では、それは どれくらい おおきな ねつなのでしょう。
水が乾くとき、水は消えてなくなるわけではありません。気象庁の説明では、水の表面に近いところで、一部の水の分子が少しずつ外へ飛び出していきます。これが蒸発です[1]。洗濯物でいえば、服の繊維にしみこんだ水の分子が、少しずつ空気中へ出ていくことになります。
このとき、液体の水が同じ温度の気体(水蒸気)になるために、熱が必要になります。この熱を蒸発熱(気化熱)と呼び、水は蒸発するときに周りから熱を吸収します[2]。ぬれた服の場合、蒸発熱の説明から考えると、その熱の出どころは服や空気、そして服に触れている体でしょう。そのため、乾いていく服はひんやり感じられると考えられます。
ただし、ぬれた服を着たときの冷たさについて、気化熱だけで説明した資料を、今回は直接たしかめていません。ここでは、水が蒸発すると周りの熱を奪うという説明から、そう考えています。では、その熱は、どれくらい大きいのでしょうか。
ぬれた服を着ていると、水の温度が気温と同じでも、乾いていく間は冷たく感じることがある。この冷たさの正体として有力なのが、蒸発に伴う熱の移動だ。
蒸発は、水の表面に近いところで一部の分子が少しずつ外へ飛び出す現象で、水が沸騰するほど熱くなくても、常温で起こる[1]。洗濯物の場合、繊維の間に残った水の分子が、少しずつ空気中へ出ていく。分子が液体から気体へ移るには、同じ温度のままでも熱を吸収する必要があり、この熱量が蒸発熱(気化熱)と呼ばれる[2]。水が蒸発するときは、周りから熱を奪う。その熱の出どころは、服と、服に触れている空気や体と考えるのが自然だ。
ただし、ここは推論を含む。気化熱の説明は確かな資料があるが、「ぬれた服を着たときの冷たさの理由」を気化熱として直接述べた公的資料は、この調べでは手元にない。したがって、乾く服が冷たいのは、蒸発熱が周りの熱を奪うためと考えられる、という強さにとどめる。では、その熱は、実際にどれほどの大きさなのか。
2. 打ち水で すずしく なるのも、おなじ わけ?
2. 打ち水で涼しくなるのも、同じ蒸発の働きなのでしょうか
2. 洗濯物の外にも例がある ── 打ち水が体感温度を下げる
あつい 日に 地面に 水を まく「打ち水」を 見た ことは ありますか。まいた 水が 蒸発する とき、地面の ねつを うばうので、すずしく 感じます[3]。
かんきょうしょうの しりょうには、昼でも 気温は あまり 下がらなくても、体で 感じる 暑さは 1.5度 ほど 下がると 書かれて います[3]。ぬれた 服が ひんやりするのも、打ち水と おなじ ことが、服の 上で おきて いるのです。
それでは、水が すこし 出て いくだけで、どれほどの ねつが うばわれる のでしょうか。
夏の道に水をまく打ち水は、日本では身近な暑さ対策です。環境省の資料では、地面にまいた水が蒸発するとき、地面の熱を奪って温度が下がり、涼しく感じられるとされています[3]。日中は気温そのものが下がらなくても、体感温度は約1.5℃下がるという説明も載っています[3]。
洗濯物が乾くときに起きていることと、打ち水が涼しいことは、どちらも水が蒸発するときに熱を奪う働きから説明できます。ぬれた服が冷たいのは、服の上で小さな打ち水が起きているようなものだ、と考えると分かりやすいでしょう。
では、水が蒸発するときに奪う熱は、数字にするとどれくらいでしょうか。自分で計算してみます。
蒸発が周りを冷やす例は、洗濯物以外にもある。打ち水がそうだ。環境省の資料は、地面にまいた水が蒸発するときに地面の熱を奪い、温度が下がって涼しく感じる、と説明している[3]。日中は気温が下がらなくても、体感温度は約1.5℃下がるとされる点も、同じ資料に書かれている[3]。
「体感温度が下がる」という言い方に注意したい。温度計の数字そのものが下がるのではなく、人が感じる暑さが下がるという意味だ。蒸発の効果は、周りの熱が水の分子に持ち去られることで、どちらの場合も同じ原理で説明できるが、洗濯物の冷たさをこの数字で直接見積もることはできない。
では、蒸発が持ち去る熱は、数字ではどれほどになるのか。蒸発熱の数値から、ぬれた服の水で何が起きうるかを、自分で計算して確かめる。
3. すこしの 水が、どれだけ ひやせるの?
3. 水1gが蒸発すると、水約590gを1℃冷やせる熱が出ていく
3. 蒸発熱の数値から検算する ── 水1gは約590gの水を1℃冷やす熱を持ち去る
水が 蒸発する とき、水 1グラムが うばう ねつは、とても 大きい ことが 分かって います[4]。水 1グラムは、スプーン 1ぱいよりも ずっと すこしの りょうです。
この ねつは、水 およそ 590グラムの 温度を 1度 下げる ほどの 大きさです。コップ 3ばいぶん ちかい 水を 1度 ひやす ねつを、たった 1グラムの 水が もって いくのです。これは 計算で 出した 数字で、本当の 服では まわりから ねつが 入って くるので、そのまま ひえる わけでは ありません。
では、この ひやす はたらきの 大きさは、いつも おなじなのでしょうか。かわく はやさを きめるのは、なんでしょう。
工学の数表によると、水が蒸発するときに必要な熱は、1kgあたり、20℃で約2453.5kJ、25℃で約2441.7kJです。100℃の約2256.4kJより大きな値です[4]。つまり、洗濯物が乾く室温の近くでは、沸騰しているお湯が蒸発するときより、水1gあたりに多くの熱が要ることになります。
この数字を、1gあたりに直してみます。20℃の値は約2453.5Jで、1gあたり約2.45kJです。一方、水の温度を1℃上げるのに必要な熱は、水1gあたり約4.18Jとして計算できます(理科で習う値を使った目安です)。2453.5を4.18で割ると約587になります。水1gが蒸発すると、水約590gの温度を1℃下げるほどの熱が出ていく計算になります。
この計算は、周りから熱がまったく入ってこないと仮定した単純な見積もりです。実際の洗濯物では、空気や体からも熱が入るので、そのまま590gが冷えるわけではありません。それでも、ほんの少しの水が出ていくだけで、大きな熱が動くことは伝わります。では、この蒸発の速さは何で決まるのでしょうか。
蒸発熱の値は、工学系の数表では、水1kgあたり0℃で約2500.9kJ、20℃で約2453.5kJ、25℃で約2441.7kJ、100℃で約2256.4kJとなっている[4]。温度が高いほど小さくなる傾向があり、洗濯物が乾く室温付近では、100℃の沸騰時より水1gあたりに要る熱が大きい。出典は工学の数表なので、ここでは「1gあたり約2.4kJ」程度の目安として使う。
この熱が、水の温度なら何℃分に当たるかを計算する。水1gを1℃上げるのに必要な熱を約4.18Jとすると(理科で習う値を使った計算用の目安)、20℃の2453.5Jは、2453.5÷4.18で約587。つまり、水1gが蒸発するときの熱は、水約590gを1℃下げる熱に相当する。100gの水なら約5.9℃下げる計算になる。ついでに、100℃の2256.4Jで同じ計算をすると約540になり、室温のほうが約9%大きい。
この数字は、周りから熱が入らない、という理想化の上での話だ。実際には空気も体も熱を補うので、服がそのまま何℃も下がるわけではない。それでも、ごく少量の水が出ていくだけで、大きな熱が持ち去られることは確かめられる。では、この蒸発の速さを決めるのは何か。温度、湿度、風、そして気温が氷点下になった場合を順に見ていく。
4. かわく はやさは、なにで きまるの?
4. 乾く速さは、温度・湿度・風のどれで決まるのでしょうか
4. 乾く速さを決める3つの条件 ── 温度・湿度・風
かわく はやさは、おもに 3つで きまると いわれて います。まず 温度です。あたたかい ほど 水の つぶは はげしく うごいて、蒸発しやすく なります[1]。
つぎに 湿度です。空気が かわいて いると、水の つぶが 入りこむ すきまが 多くて、蒸発が はやく なります[1]。気温が 高くても 湿度が 高いと、水の にげばが なくて かわきにくい のです[5]。
さいごは 風です。風は、服の 近くに ある 水の つぶを ふき はらって、まわりの 湿度を 下げます[6]。ですから、風の ある 日は せんたくものが よく かわきます。
それでは、とても さむい 冬の 日は どうでしょう。水が こおってしまったら、もう かわかないのでしょうか。
乾く速さには、おもに3つの条件が関わるとされます。1つめは温度です。温度が高いほど水の分子の動きは激しくなり、蒸発は速くなります[1]。
2つめは湿度です。空気が乾いていると、水の分子が入りこめるすき間が多いため、蒸発は速くなります[1]。気温が上がっても湿度が高いと、水分の逃げ場がなくて乾きにくくなるとも説明されています[5]。
3つめは風です。風は、水面の上にある水蒸気を吹き払い、近くの空気の湿度を下げます。そのため、水の分子が液体へ戻る割合が減り、蒸発が進みます[6]。
この3つのうち、気温は低くても、湿度が低く風があれば乾きます。反対に、気温が高くても湿度が高いと、乾きにくくなります。では、気温が0℃を下回って、水が凍ってしまった場合はどうなるのでしょうか。
乾く速さには、おもに3つの条件が関わる。温度が高いほど分子の運動は激しく、蒸発は速い。空気が乾いているほど、分子が入りこむ余地が大きく、蒸発は速い[1]。風は、液面の上に溜まった水蒸気を吹き払い、近くの空気の湿度を下げることで、分子が液体へ戻る割合を減らす[6]。
湿度については、気温が上がっても湿度が高ければ水分の逃げ場がなくなって乾きにくい、と家電メーカーの解説にもある[5]。ここで注意したいのは、空気が含める水蒸気の量が、温度に強く左右される点だ。暖かい空気ほど多く含めるため、同じ水蒸気量でも、気温が低いと相対湿度は高くなる[7]。逆に言えば、気温と相対湿度のどちらがより効くかは場合による。
では、気温が0℃を下回り、服の水が凍ったらどうなるのか。氷になった水は、もう出ていく先を失うのだろうか。
5. こおった せんたくものは、かわくの?
5. 氷点下で凍った洗濯物は、本当に乾くのでしょうか
5. 氷のまま乾く ── 昇華という近道
さむい 日、外に ほした せんたくものが、カチカチに こおる ことが あります。でも、気象庁の せつめいでは、0度より ひくくても、水の つぶは ねつを もって いるので、空気の 中へ とび出す ことが あります[1]。氷から 水の つぶが 直せつ とび出す ことを、昇華と いいます[1]。
カナダの かがくかんの しりょうには、さむくて 空気が かわいて いれば、こおらずに 水が 直せつ 水蒸気に なる ことも ある、と あります[8]。ですから、こおった せんたくものも、じかんを かければ かわきます。
ただし、とても ゆっくりです。さむくても 空気が いっぱいに なって いなければ かわきますが、ほす 意味が ないほど おそい ことも ある、とも いわれて います[7]。
冬の朝、外に干した洗濯物がカチカチに凍っていることがあります。それでも乾く、と気象庁の説明から読みとれます。0℃以下でも水の分子は熱をもっているので、一部は空気中へ飛び出します。氷から直接飛び出すこの現象が、昇華です[1]。
カナダの科学館の資料には、寒くて空気が十分に乾いていれば、氷にならず、水が気体の水蒸気へ直接変わることがある、と書かれています[8]。そのため、凍った洗濯物も、時間をかければ乾いていくのです[8]。
ただし、この乾き方はとてもゆっくりです。ケンブリッジ大学の科学番組の解説では、寒くても空気が水蒸気でいっぱいになっていなければ洗濯物は乾くが、干す意味がないほど遅いこともある、と述べられています[7]。何時間で乾くかという具体的な数字は、今回の資料にはありません。
ここまでを読んで、同じ水が蒸発することと昇華することの根っこは、水の分子が少しずつ空気中へ出ていくことだと分かります。では、この知識を、ふだんの暮らしの中でどう確かめればよいでしょうか。
氷点下では、水が氷になってしまい、出ていく先がなくなると思いがちだ。ところが気象庁の説明によれば、0℃以下でも水の分子は熱を持っており、氷からも一部の分子は空気中へ飛び出す。これが昇華だ[1]。
干し場の話になると、カナダのScience Worldの資料が、寒くて空気が十分に乾いていれば、水が氷にならずに直接水蒸気へ昇華することがある、と述べている[8]。凍った洗濯物も、時間をかければ乾いていく。ただし、速さは別問題だ。ケンブリッジ大学の科学番組は、寒くても空気が飽和していなければ洗濯物は乾くが、極めてゆっくりで、干す価値がないほど遅いこともある、と説明する[7]。乾く速さは「ゼロか、そうでないか」ではなく、「ゆっくり進む」ものだ。
つまり、蒸発も昇華も、水の分子が空気中へ出ていくという点では同じだ。違うのは、出ていく元が液体の水か、氷か、という点にある。乾くことは、水が消えるのではなく、分子が空気へ移ることだと言い換えられる。では、この見方を、家にあるものでどう確かめるか。
水の おもさを はかって みよう
水がどこへ行くのか、台所のはかりで数えてみる
水の行き先を、重さの変化で数える
ぬらした ハンカチを かたく しぼって、台所の はかりに のせて みましょう。そのまま 10分ごとに 重さを はかって、ノートに 書きます。すこしずつ 軽く なって いけば、水が 空気へ 出て いった しょうこです。
つぎに、ハンカチを 2まい ようい して、同じ へやに おきます。1まいだけ うちわで 風を あてて、同じように はかって みましょう。風を あてた ほうが、軽く なる はやさが ちがうかもしれません。ぬれた ハンカチを 手で さわって、ひんやり するかも たしかめて みてください。
台所のはかりを使えば、水の行き先を数字で追うことができます。ぬらしたハンカチを固く絞り、はかりにのせて重さを記録します。10分おきに測れば、水が空気中へ出ていくにつれて、重さが少しずつ減るはずです。
次に、同じハンカチを2枚用意し、同じ部屋に置いて、1枚だけうちわで風を当てます。風を当てたほうが減り方が速ければ、風の影響が見えてくるかもしれません。乾く途中のハンカチに触れて、ひんやり感があるかどうかも確かめてみてください。
参考にした資料のうち、気象庁の説明は蒸発と昇華の基本を、環境省の資料は打ち水の働きを、工学の数表は蒸発熱の数字を、科学館や科学番組の解説は凍った洗濯物の乾き方を、それぞれ補っています。気になったところは、原典を開いて確かめてみてください。
確かめ方は簡単だ。ぬらしたハンカチを固く絞り、台所のはかりで重さを測る。10分おきに記録すれば、水が分子として空気中へ出ていくにつれて重さが減る様子が、数字の列として残る。同じ部屋に2枚並べ、1枚だけうちわで風を当てて測れば、風の影響の差が見えるかもしれない。
もうひとつ検算できる。減った重さ(g)に約2.4kJをかければ、その間に水が持ち去った熱の目安になる。ただし、実際には空気や周りからも熱が入るため、あくまで目安で、本文の仮定(周囲から熱が入らない)とあわせて読むこと。
ハンカチを触って、乾く途中でひんやりするかも確かめたい。10分ごとの重さの記録と、触ったときの感じを並べて書いておくと、変化の様子が見比べられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[番号]は、この一覧の番号と対応しています。英語の資料は、日本語の資料で支えきれなかった部分を補うために使いました。
- 気象庁「気象の質問:どうして水は水蒸気に変わるの?」。 https://www.jma.go.jp/jma/kids/kids/faq/b1_09.html (蒸発が水の分子の飛び出しであること、温度と湿度の影響、0℃以下でも分子が出ていく昇華の説明は同ページによる)
- コトバンク「蒸発熱」(世界大百科事典ほか)。 https://kotobank.jp/word/蒸発熱 (蒸発熱〈気化熱〉の定義として挙げた)
- 環境省「エコジン 打ち水」。 https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/action/20230809.html (打ち水が地面の熱を奪って涼しく感じること、体感温度が約1.5℃下がるとされることは同ページによる)
- Engineering ToolBox「Water – Heat of Vaporization vs. Temperature」。 https://www.engineeringtoolbox.com/water-properties-d_1573.html (水の蒸発熱が温度ごとにどれだけかという数値は同ページによる。この数値をもとにした590gなどの数字は、このメモで自分で計算した)
- パナソニック「部屋干し」の解説。 https://panasonic.jp/life/air/170105.html (気温が高くても湿度が高いと乾きにくいという説明として挙げた)
- Physics Van(イリノイ大学)。 https://van.physics.illinois.edu/qa/listing.php?id=1471 (風が液面の上の水蒸気を吹き払い、近くの空気の湿度を下げることは同ページによる)
- The Naked Scientists(ケンブリッジ大学の科学番組)。 https://www.thenakedscientists.com/node/188793 (寒くても洗濯物は乾くがとてもゆっくりなこと、暖かい空気ほど多く水蒸気を含めることは同ページによる)
- Science World(カナダ)「Frozen Laundry Race」。 https://www.scienceworld.ca/resource/frozen-laundry-race/ (寒くて乾いていれば、氷にならず水が直接水蒸気になることもあるという説明は同ページによる)
なおした ところ
更新履歴
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