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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

うみを 見た ことの ない 子ガメは、どうして およぐ むきが わかるの?

海を見たことのない子ガメは、なぜ地球の磁場で泳ぐ向きを変えるのか:動物の「磁気の感覚」をめぐる実験と論争

孵化直後のアカウミガメは、磁場の差に応じて泳ぐ向きを変えるのか:動物の磁気感覚と、まだ分からない仕組み

分野:生きもの

すなはまで うまれた ばかりの ウミガメの子は、まだ 海を 見た ことが ありません。それなのに、ちきゅうの じばの ちがいで、およぐ むきを かえる という じっけんが あります[1]。

じばは 目に 見えないのに、どうぶつは どうやって つかうのでしょう。この メモを 読むと、ウミガメ、サケ、が、ウシの はなしと、まだ 分かって いない ことが 分かります。

砂浜でふ化したばかりのアカウミガメの子は、海を一度も見ていないのに、地球の磁場のちがいに応じて泳ぐ向きを変える、という実験があります[1]。磁場は目にも見えず、においもありません。

動物は、その見えない力を、いったい何のために、どうやって使っているのでしょうか。この記事を読むと、ウミガメ・サケ・ガの実験と、ウシの向きをめぐる論争、そして感じる仕組みがまだ決着していない理由が分かります。

ふ化したばかりで海に出たことのないアカウミガメの子が、大西洋の少なくとも8か所の磁場の条件で、それぞれ泳ぐ向きを変えた。この反応には生まれつきの部分があると考えられている[1]。磁場は見えず、においもない。動物はそれを方位と位置のどちらに、どこまで使っているのか。

この記事を読むと、ウミガメ・サケ・ガの実験、ウシの南北そろいをめぐる報告と追試の食いちがい、磁気の受容器が確定していない理由が、確かなことと仮説を分けて分かる。

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1. 海を 見た ことが ない 子ガメは、どうして およぐ むきを かえるの?

1. 海を見たことのない子ガメが、なぜ泳ぐ向きを変えるのか

1. 海を知らない孵化直後のアカウミガメが、磁場の差で泳ぐ向きを変えるのはなぜか

すなはまで うまれた アカウミガメの子は、すぐに 海へ むかいます。そして ひろい 大西洋を、ながい たびに 出ます。

けんきゅうする 人たちは、うまれたての 子ガメに、大西洋の いろいろな 場所と おなじ じばを あじわわせました。すると 子ガメは、少なくとも 8か所の じばで、およぐ むきを かえました[1]。

子ガメは、まだ 海に 出た ことが ありません。だから この はんのうには、うまれつきの ぶぶんが あると 考えられて います[1]。

およぐ むきは、あたたかい 海の ながれの ぐるっと まわる 中に、とどまりやすい むきでした[1]。

では、じばの なにを 見て、むきや 場所を 知るのでしょう。

実験では、ふ化したての子ガメに、大西洋のいろいろな場所の磁場を再現した環境を用意しました。すると子ガメは、少なくとも8か所の磁場の条件で、それぞれ泳ぐ向きを変えました[1]。8か所というのは実験で試した数で、ウミガメが8つしか見分けられないという意味ではありません。

海に出たことのない個体でも反応するので、この「磁気の地図」には生まれつきの部分があると考えられています[1]。しかも反応の向きは、北大西洋の暖かい海流がぐるりと回る環の中にとどまるのに、都合のよい向きでした[1]。

ここで疑問が出ます。磁場の何を手がかりにすれば、向きだけでなく、場所まで分かるのでしょうか。

実験の対象は、ふ化直後で海を経験していないアカウミガメの子である。大西洋で互いに遠く離れた少なくとも8か所の磁場の条件を再現すると、子ガメはそれぞれの条件で泳ぐ向きを変えた[1]。ただし8は試した条件の数であり、見分けられる磁場の上限ではない。

海を経験していない個体が反応するのだから、少なくとも磁気地図の一部は経験によらず、遺伝的に備わっていると考えられている[1]。しかも反応の向きは、北大西洋の暖かい海流が環をなす亜熱帯環流の中に子ガメをとどめるのに都合のよい向きだった。流れに運ばれる旅で、環の外へ出ないための手がかりになる可能性がある。

報道には、場所ごとの具体的な向きを挙げたものもあるが、本稿では原論文で確かめた範囲にとどめる。では、磁場のどんな性質が、方位だけでなく場所の手がかりになりうるのか。次にそこを見る。

2. じばで「むき」と「場所」が 分かるの?

2. 磁場は「向き」と「場所」の、どちらの手がかりになるのか

2. 磁場の伏角と強さは、方位だけでなく「場所」の手がかりにもなりうるか

どうぶつが じばを つかう ひとつ目の ほうほうは、「コンパス」です。どちらが きたかを 知る ために つかいます。

ふたつ目は、「ちず」です。いま どこに いるかを 知る ために つかいます。

ちきゅうの じばは、場所に よって、強さと、じめんに たいする かたむきが ちがいます。この かたむきの ことを、ふっかくと いいます。

ふっかくと 強さは、場所に よって かわります。くみあわせれば 場所の めじるしに なるかもしれない、という かせつが あります[2]。

べつの じっけんでは、子ガメを 2つの じばの 水そうに 同じ 時間ずつ おき、かたほうでだけ えさを あげました。すると 子ガメは、えさと むすびついた じばを おぼえ、その じばに ちかづくと はんのうした と しょうかい されて います[9]。

磁場の使い道は、大きく2つに分けられます。1つは北を知る「コンパス」、もう1つは今いる場所を知る「地図」です。

地球の磁場には、場所によって変わる性質が2つあります。磁力線が地面と交わる角度(伏角)と、磁場の強さです。どちらも場所によって変わるので、組み合わせれば位置の手がかりになりうる、とする総説があります[2]。ただし、これは仮説として提案されたもので、確定した事実ではありません。

地図が学習で身につく可能性を示す実験もあります。アカウミガメの子を、場所の磁気の特徴を再現した2つの水槽に同じ時間ずつ入れ、片方でだけ餌を与えました。すると、餌と結びついた磁場を覚え、その磁場に近づくと反応した、と紹介されています[9]。この結果から、磁気地図を受けとる仕組みは、磁気コンパスとは別のものだろうと推定されています。

では、いちど磁場を覚えたら、それを何年も後に使う動物はいるのでしょうか。川へ帰るサケがその候補です。

磁場の利用は、方位を知る磁気コンパスと、位置を知る磁気地図に分けて考えられる。位置の手がかりになるのは、磁力線が地面と交わる角度(伏角)と磁場の強さである。伏角も強さも場所によって変わるため、組み合わせれば2つの値の組が場所の目印になりうる、とされる[2]。ただしこれは地磁気インプリンティング仮説という提案で、確定した事実ではない。

地図が学習される可能性を示す実験もある。アカウミガメの子を、場所の磁気の特徴を再現した2つの水槽に同じ時間ずつ入れ、一方でのみ餌を与えると、子ガメは餌と結びついた磁場を覚え、その磁場に近づくと反応した[9]。ここから、磁気地図の受容はコンパスとは別の仕組みだと推定されたが、推定にとどまる。

前の章の生まれつきの反応と、この学習の結果は、矛盾するのではなく、地図が生まれつきの部分と経験で更新される部分の両方をもつ可能性を示すように読める。では、長い旅のあとに生まれた場所へ戻る動物は、この地図をどう使うのか。サケの例を見る。

3. サケは 生まれた 川の じばを おぼえて いるの?

3. サケは生まれた川の磁場を覚えて帰るのか

3. サケの川への回帰経路は、地磁気の強さのずれと相関するか

サケは、川で うまれて 海へ 出て、大きく なると 川に もどります。もどる とちゅうの 道は、ひとつでは ありません。

ある けんきゅうでは、太平洋の ベニザケの 56年ぶんの さかなを とった きろくを しらべました。フレーザー川へ もどる とき、バンクーバー島の きたを まわるか、みなみを まわるかが、その 年の じばの ずれと かんけいして いました[3]。

ただし、じばだけで きまる わけでは ありません。海の 水温も かんけいして いました[3]。

サケが 川を 出る わかい ころに じばを「きろく」し、大きく なってから その じばに ちかい 場所を めざす、という かせつが あります。川の ちかくに 来たら、においなどの べつの てがかりに かわると 考えられて います[3]。

北太平洋のベニザケは、フレーザー川へ戻るとき、バンクーバー島の北を回る道と南を回る道のどちらかを通ります。研究者は、56年分の漁獲データと、その年の地磁気の強さのずれを重ねてみました[3]。

すると、どちらの道を通るかのばらつきのうち、磁場の変化で説明できる部分は約16%、海面水温で説明できる部分は約22%、両者の相互作用がさらに約28%を説明しました[3]。いずれにせよ、これは相関であって、磁場だけで道が決まるとは言えません。

こうした結果から、サケは川を出る若い時期に磁場を「記録」し、おとなになって戻るときにその磁場に近い場所をめざす、という仮説が出されています[3]。故郷の川の近く(50〜100km)に来てからは、においなど別の手がかりに切りかわると考えられています。「記録」は研究者の比喩で、実際の記憶の仕組みは分かっていません。

サケは海を泳ぎます。では、夜の空を飛ぶ昆虫は、磁場をどう使うのでしょうか。

北太平洋のベニザケがフレーザー川へ戻る経路は、バンクーバー島の北回りと南回りに分かれる。56年分の漁獲データを使った解析では、この選択のばらつきのうち、その年の地磁気の強さのずれで説明できたのは約16%、海面水温では約22%、両者の相互作用がさらに約28%を説明した[3]。

この結果は相関であり、磁場が経路を決めると証明したわけではない。残りの7割余りは、この解析では説明されていない。そこで提案されたのが、サケが川を出る若魚のころに磁場を「記録」し、成長して戻るときにその磁場に近い場所をめざす、という仮説である[3][2]。故郷の川から50〜100km以内に来ると、においなど別の手がかりに切り替わると考えられている。「記録」は比喩で、実際の記憶の仕組みは分かっていない。

では、このような磁気の利用は、水中の大型動物に限られるのか。夜に1,000km以上を飛ぶ昆虫の例を見る。

4. 夜に とぶ が も、じばを つかうの?

4. 夜に長い距離を飛ぶガも、磁場を使っているのか

4. 夜に1,000km以上を渡るガは、磁場と視覚の目印をどう組み合わせるか

オーストラリアに、ボゴングガという が が います。まいとし 春に、なん十おくひきも が、1,000km いじょうも はなれた 高い 山の すずしい ほらあなへ むかいます[4]。

けんきゅうする 人たちは、そとに おいた とぶ ようすを しらべる そうちで、ガの むきを しらべました。すると、じばと 目に 見える めじるしの りょうほうを つかって、とぶ むきを きめて いました。

2つを わざと ずらすと、ガは 数分で むきが わからなく なりました[4]。夜に わたる こんちゅうで、じばを つかって むきを きめる ことを、はっきり しめした さいしょの れいと されて います[4]。

オーストラリアのボゴングガは、毎年春に、数十億匹が1,000km以上を移動して、高山の涼しい洞穴へ向かいます[4]。1,000kmというのは移動の全体の長さで、1匹が1回で飛ぶ距離とは限りません。

研究者は、屋外に置いた飛行シミュレーターで、ガが飛ぼうとする向きを調べました。ガは、地磁気と、目に見える目印の両方を使って向きを決めていました。2つのずれを大きくすると、ガは数分で向きを失いました[4]。

夜に渡る昆虫で、地磁気を使って飛ぶ向きを決めていることを確かに示した最初の例と、論文の紹介では述べられています[4]。磁場だけでも目印だけでもなく、2つを重ねて使うらしい、という点がおもしろいところです。

ここまでの動物は、移動する生きものでした。では、動かずに草を食べる牛は、磁場とどう関係するのでしょうか。

オーストラリアのボゴングガ(Agrotis infusa)は、毎年春に数十億匹が1,000km以上を移動し、高山の涼しい洞穴へ向かう[4]。1,000kmは移動の全体の距離で、1匹が1回に飛ぶ距離とは限らない。

屋外の飛行シミュレーターを使った実験では、ガは地磁気と視覚の目印を併用して飛ぶ向きを決めており、両者をずらすと数分で向きを失った[4]。これは、夜に渡る昆虫が地磁気で飛ぶ向きを決めることの、初めての確かな実証とされる[4]。

注目点は、磁場が単独の道しるべではなく、視覚の目印と組み合わせて使われる点にある。2つの手がかりが食いちがうと、ガは向きを決められなくなった。ウミガメやサケでも、磁場のあとに別の手がかりが使われる(前の章)。では、渡りをしない牛も磁場の影響を受けるのか。次の論争を見る。

5. うしは みなみきたを むいて 草を 食べるの?

5. ウシは南北を向いて草を食べるのか:報告と追試で意見が割れた

5. ウシの南北そろいは報告されたが、追試で再現されたのか

2008年に、せかいの うしと しかを しらべた 研究が 出ました[5]。うし 8,510頭と、チェコの しか 2,974頭です。

草を 食べたり、休んだり して いる とき、体が みなみきたの むきに そろいやすい、と ほうこく されました[5]。かぜや 太陽の むきでは、せつめいが つかなかった そうです。

ただし、ぜんぶの うしが きたを 向く わけでは ありません。みんなの ようすを あわせた けいこうです。

そのあと、ヨーロッパの うしを しらべ なおした 人たちは、おなじ けいこうを 見つけられませんでした[6]。もとの 研究者は、「つかえる データだけで しらべれば、みなみきたの けいこうは 出る」と はんろんしました。いまも ろんそうは つづいて います[6]。

2008年、世界6大陸の308牧場のウシ8,510頭と、チェコの241地点のアカシカ・ノロジカ2,974頭について、体の向きを調べた報告が出ました[5]。草を食べたり休んだりしているとき、体の軸が地磁気の南北にそろいやすい、というのです。偶然とは考えにくい確率(P<0.00001)で、風や太陽の向きでは説明がつかなかった、とされました[5]。磁北と地理上の北のずれが大きい場所では、磁北のほうが向きをよく予測した、とも書かれています。

これは、すべてのウシが北を向くという話ではなく、群れ全体の傾向です。衛星写真では、頭が北か南かの区別も難しいと述べられています。

ところが2011年、欧州のウシを衛星写真で調べ直したHertらは、同じ向きの傾向を再現できなかったと報告しました[6]。これに対して元の研究者らは、Hertらのデータは解像度や傾斜、送電線の影響などで質に問題があり、使えるデータで分析し直せば南北の傾向は出る、と反論しました[6]。この論争は、決着していません。

ウシが本当に磁場を感じているのかは、まだ分かりません。では、動物はそもそも磁場をどこで感じるのでしょうか。

2008年にBegallらは、世界6大陸の308牧場のウシ8,510頭と、チェコの241地点のアカシカ・ノロジカ2,974頭(合わせて1万頭以上)について、草を食べたり休んだりしているときの体の向きを調べた。体の軸は地磁気の南北にそろう傾向があり、確率はP<0.00001で、風や太陽の向きでは説明がつかないとした[5]。磁北と地理上の北のずれが大きい場所では、磁北のほうが向きをよく予測した。ただしこれは集団の傾向で、個体がみな北を向くのではない。シカの頭は北向きの傾向があるとされるが、衛星写真では北と南の区別は難しい。

では、他の研究者が同じ結果を得たのか。2011年にHertらは、欧州の牛の群れの衛星写真で、同じ向きの傾向を再現できなかったと報告した[6]。元の研究者らは、Hertらのデータは解像度・傾斜・送電線などの影響で質に問題があり、使えるデータで再分析すれば南北の傾向は出ると反論した[6]。

論争の核心は、同じ現象を別の解像度のデータで見て、見えるかどうかである。決着しないままだが、一度の報告だけを信じず、追試で確かめる科学の流れを、そのまま見せている。では、磁場を感じる側の仕組みは分かっているのか。

6. どうぶつは からだの どこで じばを 感じるの?

6. 磁気はどこで感じるのか:目の中のたんぱく質という有力な説

6. 磁気受容体は特定されたか:伏角コンパス、クリプトクロム、ラジカル対仮説

どこで じばを 感じて いるのかは、まだ はっきり しません。わたりどりでは、目の 中の「クリプトクロム」という たんぱくしつが、ゆうりょくな こうほと されて います[7]。

わたりどりの じばの コンパスは、「どちらが きたか」では なく、「じめんに たいする かたむき」で むきを きめる そうです[7]。はたらく ためには、しがいせんから みどりまでの みじかい 波長の 光が いります。

ゆうりょくな せつは、光で 目の 中に 小さな はんのうが おこり、それが じばの えいきょうを うける、と いうものです[8]。ただし、しょうこは 目で 見た ものでは なく、まわりから 分かった ことです。ほんとうに ここで 感じて いるかは、きまって いません。

磁気を感じる器官は、まだ見つかっていません。渡り鳥では、目の中のクリプトクロム(Cry1a)というたんぱく質が有力な候補ですが、受容体として確定したわけではありません[7]。

鳥の磁気コンパスは、磁場が北向きか南向きかという「極性」ではなく、磁力線が地面と交わる角度(伏角)で北を決める「伏角コンパス」です[7]。はたらくには、紫外線から緑(565nm)までの短い波長の光が必要とされます。

有力な説は、光で目のたんぱく質の中に「ラジカル対」という化学反応が起き、それが磁場の影響を受ける、というものです[8]。弱い高周波の磁場で鳥の向きが乱れる実験が、最も強い、ただし間接的な証拠とされています。直接見つかった証拠ではない、という点がだいじです。

磁気受容器の場所と仕組みは、確定していない。渡り鳥の磁気コンパスは、磁場の極性ではなく磁力線の地面に対する傾き(伏角)から北を決める「伏角コンパス」で、紫外線から緑(565nm)までの短い波長の光を必要とする。目の中のクリプトクロム(Cry1a)が有力候補だが、受容体としては確定していない[7]。

有力な仮説は、光で目のたんぱく質に生じる「ラジカル対」の反応が磁場の影響を受けるというものである。決め手になるのは、低い無線周波数の振動磁場で鳥の方位が乱れる実験で、最も強いが間接的な証拠にとどまる[8]。「間接的」とは、反応が起きる場面を直接見たのではなく、乱れ方から推し量った、という意味である。

ここまでの実験は、ウミガメは泳ぐ向き、サケは遡上経路、ガは飛ぶ向き、ウシは体の向きという、行動の結果から磁気の利用を推定してきた。受容器が分からない以上、どの実験も「磁場に反応した」ことは示せても、「どの器官が」は答えられない。この余白が、いまも研究が続く理由である。

7. じしゃくの はりで ちきゅうの じばを さわって みよう

7. 方位磁石の針で、地球の磁場に一度ふれてみる

7. 原典で確かめる:試した条件と、結論の強さを読む

ほういじしんを 1つ もって、そとに 出て みましょう。はりは いつも おなじ ほうこうを さします。それが、ちきゅうの じばの むきです。

つぎに、はりを ゆっくり てつの もの(スチールの つくえや れいぞうこ)に ちかづけて みましょう。はりが ふれるのが 見えます。じばは、まわりの ものに ずれやすい、と 分かります。

どうぶつは、こんな じばを どうやって 感じて いるのでしょう。それは まだ なぞです。

方位磁石を持って外に出て、針の向きを確かめてみてください。針が指しているのは、地球の磁場の向きです。

次に、針をゆっくりスチールの机や冷蔵庫の近くへ動かしてみます。針の向きがずれることが見えるはずです。見えない磁場は、身のまわりの鉄の物で簡単に乱されることが分かります。

針を近づける物をかえて、針がずれ始める距離をくらべてみるのもおもしろいです。鉄のフライパン、アルミ箔、木のしゃもじでは、針の動き方がちがうでしょうか。動物の実験でも、「何をかえたら、反応がどう変わったか」を見くらべて、磁場の効果を確かめています。

この記事の事実は、出典の英語の要旨と報道に依っている。確かさには段階がある。ウミガメの磁場への反応とボゴングガの実験は実験室や飛行シミュレーターの結果、サケは漁獲データの相関、ウシは集団の統計と追試の論争、受容体はまだ仮説である。

原典に当たるときは、①何を実験で試したか(8か所、56年分、数十億匹の移動など)、②結論をどの強さで述べているか、③反論が出ているか、の3点を見ると、報道との差が分かる。

手元で試せる最も簡単な入口は、方位磁石の針を鉄のそばに近づけると針がずれること、つまり磁場が身のまわりのもので乱されることを確かめる体験である。近づける物を鉄のフライパン、アルミ箔、木のしゃもじとかえ、針がずれ始める距離を比べれば、「条件を1つかえて反応を見る」という、動物の実験と同じ考え方を試せる。

上の3点で読むための原典は、出典欄の URL から開ける。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った資料です。数字や実験条件は、各ページの要旨や記事で確かめられます。

  1. SICB, Inherited Magnetic Map in Hatchling Loggerhead Sea Turtles https://sicb.org/?p=24078 (子ガメの磁場への反応)
  2. Lohmann ほか, 2008, Geomagnetic imprinting(PMC)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2614721/ (伏角・強さと地磁気インプリンティング仮説)
  3. Oregon State University news, 2013, 磁場とサケ https://news.oregonstate.edu/news/osu-study-salmon-may-use-magnetic-field-navigational-aid (56年分の漁獲データ)
  4. Dreyer ほか, 2018, Current Biology(Macquarie University 研究者データベースの要旨)https://researchers.mq.edu.au/en/publications/the-earths-magnetic-field-and-visual-landmarks-steer-migratory-fl/ (ボゴングガの飛行実験)
  5. Begall ほか, 2008, PNAS(PMC)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2533210 (ウシ・シカの向き)
  6. Physics World, Beef over magnetic cows keeps https://physicsworld.com/a/beef-over-magnetic-cows-keeps/ (追試と反論の紹介)
  7. Wiltschko & Wiltschko, Sensing Magnetic Directions in Birds(PMC)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4264356 (伏角コンパス・クリプトクロム)
  8. Hore & Mouritsen, 2016, Radical-Pair Mechanism(PubMed)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27216936/ (ラジカル対仮説)
  9. Nature Research Highlights(ネイチャーアジア)https://www.natureasia.com/ja-jp/life-sci/research/15163 (磁場と餌を結びつけた実験)

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