1. さしみの なかに、どんな むしが いるの?
1. 刺身の中の白い糸は、どんな虫なのか
1. 体長2〜3cmの幼虫 ── 刺身に潜む寄生虫と、食中毒での位置
アニサキスの ようちゅうは、ながさ 2〜3センチ、はばは 1ミリに ならない ほそさで、しろい いとのように みえます[2]。めで みつけられる おおきさです。
おとなの アニサキスは、クジラや アザラシのような、うみの ほにゅうるいの おなかに すんで います[1]。さかなの なかに いるのは、その こどもの ようちゅうです。
ひとの おなかに はいると、しょくじの あと すう じかんで、おなかが はげしく いたく なる ことが あります[1]。2024ねんの しょくちゅうどくでは、いちばん おおい げんいんが アニサキスで、300けん あまり ありました[5]。
ここで、いちばん さきに こたえを いいます。れいとうと かねつが、たしかな ほうほうです。では、いつも たべて いる しょうゆや わさびは、どうなのでしょう。
厚生労働省の広報によると、アニサキスの幼虫は体長2〜3センチ、幅0.5〜1ミリで、白い糸のような姿をしており、肉眼で見えます[2]。成虫はクジラやアザラシなど海にすむほ乳類の消化管にいて、魚介類にいるのはその幼虫です[1]。
人が幼虫のいる魚を生で食べると、数時間後に激しい上腹部の痛みや吐き気が出ることがある、と国の感染症情報は説明しています[1]。2024年の食中毒1,037件のうち、最も多かった原因がアニサキスで、群馬県の資料では330件、全体の約3割にあたります[5]。厚生労働省の広報には、患者数337名という記載もあります。ここでは「300件あまり」と受け止めておきます。
題名の問いへの答えの要点を先に言うと、冷凍すると幼虫は感染する力を失い、加熱でも死にます。具体的な条件はあとの章で見ます。その前に、なぜ冷凍が大事なのかを知るために、台所でよく使うものが効くかどうかを見てみましょう。
刺身に潜むアニサキス幼虫は、体長2〜3cm、幅0.5〜1mmの白い糸状で、肉眼で確認できる[2]。終宿主はクジラやアザラシなどの海生哺乳類で、成虫はその消化管に寄生する。魚介類に見つかるのは第3期幼虫である[1]。
人が生食すると、数時間後に激しい上腹部痛・悪心・嘔吐をもって発症する胃アニサキス症が特徴で、腸に入る場合はまれに腸閉塞を併発する[1]。2024年の食中毒は1,037件で、最多の原因がアニサキスだった。群馬県の資料は330件とし、割合は計算上約32%になる[5]。ただし厚生労働省の広報には、件数ではなく患者数337名という記載もある。本記事では「300件あまり」にとどめる。
題名の問いの答えの要点は、冷凍と加熱が確かな方法である、という点だ。条件の細かさ(温度・時間・中心温度)は後の章で扱う。まず、なぜ「冷凍」が前面に出るのかを、家庭で使う調味料が効かないという事実から見る。
2. おすや しょうゆや わさびは、きかないの?
2. 酢・塩・しょうゆ・わさびは、幼虫を止められない
2. 一般的な料理の処理は、なぜ当てにならないのか
さしみには、しょうゆと わさびを つけます。しめさばには、おすを つかいます。これで しんだ ことに なれば、あんしんですね。
ところが、こうせいろうどうしょうの しりょうには、おすで しょりしても、しおづけに しても、しょうゆや わさびを つけても、アニサキスの ようちゅうは しなないと かいて あります[2]。
つまり、わさびを たっぷり つけたからといって、あんしんには なりません。きく ほうほうは、つぎの しょうで みる、ひやす ことと あたためる ことです。
刺身にはしょうゆとわさびを付けます。しめさばには酢を使います。どれも「殺菌しそうな」ものばかりです。
けれど厚生労働省は、食酢での処理、塩漬け、しょうゆやわさびを付けても、アニサキスの幼虫は死滅しないとしています[2]。ここでいう処理は、一般的な料理で使う程度のものです。薬品のような強い条件を試した話ではありません。
つまり、いつもの味付けで虫を退治できるとは考えないほうがよい、ということです。では、確かな方法といわれる冷凍は、どのくらいの条件なのでしょうか。
刺身の薬味やしめさばの酢は、殺菌のイメージが強い。しかし厚生労働省の広報は、食酢での処理、塩漬け、しょうゆやわさびを付けても、アニサキス幼虫は死滅しないとしている[2]。ここで想定されているのは、あくまで一般的な料理で使う程度の処理だ。
その結果、「味付けや締め方で安全になる」という直感は成り立たない。だからこそ、効果が示されている方法である冷凍と加熱に目が向く。次に、その条件が具体的にどう書かれているかを見る。
3. れいとうは、なんど・なんじかん ひやせば いいの?
3. 冷凍の条件は「−20℃で24時間以上」。欧州の資料には別の温度と時間もある
3. −20℃・24時間以上 ── 日本の基準と、欧州資料に見える温度と時間の関係
こくの しりょうでは、−20ど(マイナス 20ど)で 24じかん いじょう ひやすと、ようちゅうは かんせんする ちからを なくす とされて います[1][2]。
ポイントは、「−20どに なった しゅんかんに しぬ」のでは ない ことです。24じかん いじょう、ずっと ひやしつづける ことが たいせつです。
あたためる ほうは、70ど いじょうなら すぐに、60どなら 1ぷんで しぬと されます[2]。
ヨーロッパの しりょうには、−15どなら 96じかん いじょう、−35どなら 15じかん という かきかたも あります[4]。つまり、さむいほど みじかい じかんで よい、という ことです。ただし、にほんの きじゅんは −20どで 24じかんです。
では、いえの れいとうこでも、おなじ ことが できるのでしょうか。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)は、−20℃で24時間以上の冷凍で、アニサキス幼虫は感染性を失うとしています[1]。厚生労働省の広報も同じ条件を挙げ、加熱の場合は70℃以上なら瞬時、60℃なら1分で死滅するとしています[2]。愛知県の資料も同じ数字で、国と自治体の複数の資料が一致しています[3]。
大事なのは、「−20℃になれば終わり」ではなく、24時間以上という長さが条件に入っていることです。
欧州食品安全機関(EFSA)の脚注には、幼虫を不活化する冷凍として、−15℃で96時間以上、−20℃で24時間、−35℃で15時間という例が並んでいます[4]。温度が低いほど、短い時間で足りるという関係です。ただし、これは欧州の資料に書かれた別の条件の併記で、日本の基準は−20℃・24時間以上です。日本の家庭では、国の示す条件を目安にします。
では、その「−20℃・24時間」は、家の冷凍庫でも守れるのでしょうか。
冷凍の条件は、国立健康危機管理研究機構が−20℃で24時間以上とし[1]、厚生労働省の広報も同じ数字を挙げる。加熱は、70℃以上なら瞬時、60℃なら1分で死滅する[2]。愛知県の資料も一致しており[3]、国と自治体で数字がそろっている。
ここで誤解しやすいのは、「−20℃で即死する」という読み方だ。条件には24時間以上という時間が入っており、温度と時間はセットである。
このセットの関係は、欧州食品安全機関(EFSA)の資料にも見える。脚注には、−15℃で96時間以上、−20℃で24時間、−35℃で15時間が併記されている[4]。温度が低いほど必要な時間は短い。ただし、これは日本の基準とは別の資料に載った値で、そのまま日本の家庭の目安に置きかえることはできない。日本で参照すべきは、国の示す−20℃・24時間以上である。
なお、なぜ低温で幼虫の感染性が失われるのか、細胞や組織のどこが壊れるのかを説明した公的な資料は、今回の材料には含まれていない。仕組みを推測で書くことはしない。では、条件が分かった次の問題は、その条件を実際の魚で満たせているか、である。
4. れいとうこの ひょうじだけで、あんしん?
4. 表示温度だけでなく、魚の深部まで冷えているかに注意する
4. 表示温度と中心温度 ── 深部の幼虫に冷凍・加熱が届いているか
アニサキスは、さかなの おもてだけで なく、からだの ふかい ところに いる ことも あります。
あいちけんの しりょうは、さかなが おおきい ときなどは、ふかい ところに いる アニサキスにも、れいとうや かねつが とどいて いるのか、ちゅういが ひつようだと しています[3]。
つまり、れいとうこの ひょうじが −20どでも、さかなの ふかい ところまで ちゃんと ひえて いるかに、ちゅういが ひつようです。おおきな さかなの かたまりは、まんなかが ひえるのに じかんが かかります。
では、あたらしい さかななら、なにも しなくても だいじょうぶ なのでしょうか。
冷凍は、虫のいる深い場所まで冷たさが届いていて初めて意味を持ちます。愛知県の資料は、魚体が大きい場合など、深部にいるアニサキスに加熱や冷凍ができているのか、注意が必要だと述べています[3]。
大きな魚の切り身や、かたまりは、表面が先に冷え、中心はあとから冷えます。冷凍庫の温度表示が−20℃でも、魚の深いところまで冷凍が届いているかは別の話です。表示温度だけで安全とは言えない、というのが資料からいえることです。
では、新鮮な魚を選べば、そもそも身の中にいないのではないか、という疑問にも答えておきます。
冷凍や加熱は、虫のいる場所にその温度が届いて初めて意味を持つ。愛知県の資料は、魚体が大きい場合など、深部にいるアニサキスに対してこのような加熱・冷凍ができているのか、注意が必要だと述べる[3]。
ここから導ける注意点は2つある。1つは、冷凍庫の表示温度は庫内の温度であり、魚の中心温度そのものではないこと。もう1つは、−20℃・24時間以上という条件が深部の幼虫にまで届いているかを、かたまりが大きいほど気にする必要があること。ただし、資料は具体的な厚さごとの所要時間までは示していない。
その結果、「冷凍庫に入れたから安全」と数字だけで考えることはできない。もう1つ、「鮮度が良ければ身にいない」という見方も、次の章で見るように、そのままでは成り立たない。
5. あたらしい さかなでも、きを つけるの?
5. 新鮮でも、身にいないとは言い切れない
5. 鮮度と寄生部位 ── 内臓から筋肉への移動と、生きた魚の筋肉にいる幼虫
アニサキスは、さかなが いきて いる ときは、おもに ないぞうに いると いわれます。さかなが しんで じかんが たつと、みの ほうへ うつる ことが あると しられて います[3]。
だから、さかなの ないぞうを はやく とるのは、たいせつな くふうです。
けれども、いきて いるうちから みに いる ことも あります。ですから、あたらしい さかなでも、「みに いない」とは いえません。
愛知県の資料には、魚の鮮度が落ちると、幼虫が内臓から筋肉(身)に移動することが知られている、とあります[3]。そのため、獲れてからなるべく早く内臓を取ることは、有効な工夫の一つです。
ただし、生きているうちから筋肉にいる場合もあります。「新鮮だから身にはいない」とは言い切れません。冷凍は、条件が魚の深部まで届いていれば、鮮度に関係なく幼虫の感染性を失わせる、一つの決め手になります。
愛知県の資料は、鮮度が落ちると幼虫が内臓から筋肉に移動することが知られている、と述べる[3]。これが、釣った魚の内臓を早く取るという工夫の背景である。
しかし、生きている間から筋肉に幼虫がいる場合もあるため、鮮度の良さだけで安全とは言えない。移動が起こるかどうかは個体や条件で変わるので、「新鮮なら身にいない」を判断の根拠にはできない。
以上をまとめると、確かな予防として国の資料が挙げるのは、−20℃・24時間以上の冷凍と、70℃以上または60℃1分の加熱であり、調味料や鮮度は決め手にならない。ただし、冷凍も深部まで届いているか、という注意がつく。
6. おうちの れいとうこと パックの ラベルを みて みよう
6. 冷凍庫の温度表示と、刺身のラベルを見てみる
6. 条件を自分の台所に当てはめる ── 表示・厚さ・時間の読み方
おうちの ひとと いっしょに、れいとうこの おんどひょうじが あるか、みて みましょう。あれば、なんどに なって いるか、よんで みます。
おみせで かった さしみの パックは、ラベルを みて みましょう。「れいとう」や「ようしょく」など、かいて ある ことばを、メモして みます。
おおきな さかなを ひやす ときは、まんなかまで ひえるのに じかんが かかる ことを、おもいだして みましょう。もしも おなかが とても いたく なったら、すぐに おとなに つたえます。
家の冷凍庫に温度表示があれば、何℃と出ているかを見てみましょう。表示があっても、魚の中心がその温度になるまでには時間がかかります。厚みのあるかたまりと、薄い切り身では、中心が冷えるまでの時間が違うはずです。
お店の刺身や魚のパックは、ラベルに「冷凍」「解凍」「養殖」などの表示があるかを見て、メモしてみましょう。ラベルの表示が何を意味するかまでは、この記事では扱っていません。
もっと詳しく読みたいときは、厚生労働省の広報[2]とJIHSの解説[1]が日本語で読めます。食べたあとに激しい腹痛が出たときは、早めに大人に伝えて、医療機関に相談してください。
この記事の条件を台所に当てはめるなら、確かめる軸は3つある。冷凍庫の表示温度が−20℃以下か。魚の中心までその温度に届くか。24時間以上保てるか。表示温度だけでは、中心まで届くかと、保てているかは分からない。かたまりの厚さによって所要時間が変わると考えておくのが安全だ。
資料を読み比べるのも手がかりになる。JIHSの解説[1]は症状と冷凍の条件、厚生労働省の広報[2]は調味料が効かないことと加熱条件、愛知県の資料[3]は深部への注意と鮮度の話、EFSAの資料[4]は温度と時間の関係を示す。軸がそれぞれ違うので、並べて読むと全体像ができる。
家庭用冷凍庫の標準的な設定温度や、冷凍による味・食感の変化は、今回の資料では扱っていない。ここは、気になった人が自分で調べる入口として残る。体に不調を感じたときは、自己判断せず医療機関に相談してほしい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:国と自治体の資料を主に使い、欧州の資料は温度と時間の関係の例として補助的に使った。何に使ったかは、それぞれの項目に書いている。
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報「アニサキス症とは」。https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/anisakis/010/anisakis-intro.html (冷凍条件、症状、成虫の宿主について)
- 厚生労働省 食中毒予防「アニサキスによる食中毒を予防しましょう」。https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/44.html (幼虫の大きさ、調味料が効かないこと、冷凍・加熱の条件について)
- 愛知県 アニサキス症について。https://www.pref.aichi.jp/soshiki/konan-hc/anisakis.html (条件の突き合わせ、深部への注意、鮮度と身への移動について)
- EFSA(欧州食品安全機関)EFSA evaluates parasites in fish(プレスリリース)。https://www.efsa.europa.eu/bg/press/news/biohaz100414 (欧州の資料にある冷凍の温度と時間の例。日本の基準とは別)
- 群馬県 食の安全(厚生労働省食中毒統計の引用)。https://www.pref.gunma.jp/site/shokunoanzen/8597.html (2024年の食中毒件数について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
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