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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

チンアナゴは、巣穴すあなから ほとんど 出ないのに、どうやって ごはんを たべるの?

チンアナゴは巣穴からほとんど出ないのに、どうやって食べ物にありつくのか

巣穴から出ないチンアナゴは、何を、どのように食べているのか ── 動物プランクトンと流れの強さ

分野:生きもの

チンアナゴは、砂すなの 巣穴すあなから からだを ゆらゆら 出して います。でも ほとんど 巣穴すあなから 出ないと いわれて います[2]。

では、ごはんは どうして いるのでしょう。じつは、ながれて くる ちいさな 動物どうぶつプランクトンを まって、たべて います。ながれが つよい ときは からだを ちぢめて まげる ことが、実験じっけんで わかりました[3]。そのわけが わかります。

チンアナゴは、砂地の巣穴から体を伸ばして揺れている魚です。水族館の解説では、ほとんど巣穴から出ないとされています[2]。泳いで餌を探しに行かないなら、どうやって食べているのでしょうか。

答えは、流れてくる動物プランクトンを待ち受けて食べる、です。流れが強くなると体を短く曲げて巣穴の奥へ引き、それでも食べ続けることが、2022年の水路実験で報告されました[3]。この記事では、その食べ方の工夫が分かります。

チンアナゴ(Heteroconger hassi)は、砂地の巣穴に尾の側を埋め、上半身だけを出して暮らす。成魚は動物プランクトンを食べるとされ[1]、ほとんど巣穴から出ない[2]。獲物を追えない魚は、流れに運ばれてくる餌とどう付き合っているのか。

2022年に沖縄科学技術大学院大学(OIST)の石川らが、水路で流速と餌の数を変えて調べた。流れが強いほど体を短く曲げて抗力を減らしつつ、食べる回数を保つことが分かった[3]。この記事では、その実験の結果と、条件・限界が分かる。

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1. チンアナゴは、巣穴すあなから なにを まって いるの?

1. 巣穴から出ない魚は、流れてくる動物プランクトンを待っている

1. 追わずに待つ食べ方 ── 流れに顔を向ける動物プランクトン食

チンアナゴの ごはんは、動物どうぶつプランクトンです[1]。うみの なかを ながれて くる、とても ちいさな いきものです。

チンアナゴは、ながれて くる ほうへ かおを むけて、からだを のばします。そして、くる ものを さがして たべます[2]。おいかけなくても、ごはんの ほうから ながれて きて くれるのです。

あぶないと かんじると、巣穴すあなに ぜんぶ ひっこめます[2]。巣穴すあなは、おなじ すなちに たくさん ならんで いて、1つの むれに 数百ぴきも いる ことが あります[1]。

でも、うみの ながれは いつも おなじでは ありません。つよい ながれの ときは、どうするのでしょう。

チンアナゴが食べているのは、動物プランクトンです[1]。海の中を流れにのって漂う、ごく小さな動物のことです。

水族館の解説によると、チンアナゴは巣穴から体を伸ばし、流れてくる方向に顔を向けて、食べられるプランクトンを探します。ほとんど巣穴から出ることはなく、危険を感じると全身を巣穴に引っこめます[2]。獲物を追いかけず、流れが運んできてくれるものを待つ、という食べ方です。

巣穴のある砂地の斜面には、最大で数百匹が群れ(コロニー)をつくっていることがあります。最大の全長は45cm、すむ水深は1〜50mで、分布は紅海や東アフリカから、北は琉球列島や小笠原諸島までです[1]。

ここで気になることがあります。待つだけの食べ方は、流れが強くなったときに困らないのでしょうか。体を長く出したままでは、流れに押されてしまいそうです。

FishBaseは、チンアナゴの成魚が動物プランクトンを食べると記す[1]。ただし、野外の胃の内容物まで調べた分析は今回の資料には出てこないため、食べ物は「動物プランクトン」というまとまりまでしか言えない(かいあし類などの具体的な種類は書かない)。

食べ方は待ち伏せ型である。水族館の解説では、巣穴から体を伸ばして流れの方向に顔を向け、動物プランクトンを探す。ほとんど巣穴から出ず、危険を感じると全身を引っこめる[2]。群れは最大で数百匹、最大全長は45cm、水深は1〜50mで、「15m以深」はよく見られる深さの目安にすぎず固定値ではない。分布は紅海・東アフリカから、北は琉球・小笠原諸島に及ぶ[1]。

獲物を追い回さず、流れてくる餌を待つ食べ方なので、餌の量は流れに左右される。流れが強すぎれば、体を出していること自体が不利になるはずだ。では、実際に流速を変えるとどうなるのか。その実験が次の話である。

2. ながれの つよさを かえると、たべかたは どうなるの?

2. 水路にチンアナゴを入れ、流れの強さと餌の数を変えてみた

2. 水路実験の設計 ── 5匹の個体、餌の密度、流速の三つの条件

うみの ながれを じゆうに かえる ことは できません。そこで、研究けんきゅうする 人たちは、みずの ながれを つくれる ほそながい みずの みち(すいろ)に、チンアナゴを いれました[3]。

2022年の 実験じっけんで、つかったのは 5ひきです。ごはんは、ブラインシュリンプという ちいさな えびの こどもでした[3]。うみで たべる ものとは ちがいます。この 5ひきの けっかが、ぜんぶの チンアナゴに あてはまるとは かぎりません。

まず わかったのは、ながれて くる ごはんが ふえると、たべる かいすうも ほぼ おなじ わりあいで ふえた ことです[3]。

では、ながれが つよく なったら、どうでしょう。

野外のチンアナゴは、人が観察しにくい魚です。そこで、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の石川らは、水槽の中に水の流れをつくれる水路を用意しました。全長18.0〜30.5cmの5匹を入れ、流す餌の数と流れの速さを変えて、食べる様子を調べたのです。OISTは、飼育下でこうした実験をしたのは初めてだと説明しています[3][4]。

餌には、ブラインシュリンプという小さなエビの幼生(約0.59mm)が使われました[3]。野外の餌そのものではないので、結果は「海で何を食べるか」ではなく、「流れの中でどう食べるか」を表すものです。

1つめの結果は単純でした。流れてくる餌が増えると、食べる回数もほぼ比例して増えました[3]。

面白くなるのは、流れを速くしたときです。

野外では観察しにくいため、石川らは水路を用いた飼育下の実験を行った。使われた個体は5匹(全長18.0〜30.5cm)で、餌はブラインシュリンプ幼生(約0.59mm)である。OISTは、この種の飼育下の摂食実験としては初めてだと述べる[3][4]。

この設計には限界がある。個体数が5匹と少ないこと、餌が実験用の幼生であること、流速が水槽の水路での値であることから、結果をそのまま海の流れの強さや野外の餌の種類に当てはめることはできない。分かるのは、条件を変えたときの食べ方の傾向である。

最初の傾向として、餌の密度が上がると摂食回数はほぼ直線的に増えた[3]。餌が多ければ多いほど食べる、という素直な関係だ。では、もう一つの条件である流速を上げると、この関係は保たれるのか。

3. ながれが つよいと、からだを どうする?

3. 流れが強くなると、体を短くして曲げた

3. 流速0.25 m/s で何が変わるか ── 体を短くし曲げて抗力を減らす

ながれの はやさを 0.10から 0.20メートル(まいびょう)まで あげても、たべる かいすうは おちませんでした。0.25メートルに すると、はじめて へりました[3]。

そのあいだ、チンアナゴは からだを どうして いたのでしょう。ながれが つよいほど、巣穴すあなの そとに だす からだを みじかく しました。そして からだを まげました[3]。

これは、つよい かぜの 日に、かさを すぼめて からだに ひきよせるのと ちょっと にて います。ただし、チンアナゴの ほうは ごはんを たべる ために、あたまを だして います。

けんきゅうでは、みじかく して まげると、ながれに おされる ちからを、まっすぐ ながい ときより 56.8%も へらせると 見つもられました[3]。これは はかった 数ではなく、けいさんで 見つもった 数です。

ここで ふしぎです。からだを ちぢめて、ごはんは とどくのでしょうか。

流れの速さを0.10 m/sから0.20 m/sまで上げても、食べる回数は落ちませんでした。0.25 m/sまで上げると、0.10 m/sのときより減りました[3]。この値は水槽の水路での数字で、海の流れの強さそのものではありません。

その間、チンアナゴは体を変えていました。流れが強いほど、巣穴の外に出す体は短くなりました[3]。長い体を出したままだと、強い流れに押される力(抗力)が大きくなるからです。

研究チームは、体を短くしたことと曲げたことの効果を推定しました。短くし、さらに曲げることで、流れから受ける抗力を、まっすぐ長いままの場合より約56.8%減らせると見積もられています。内訳は、短くした分が約28.4%、曲げた分が約40.0%です[3]。28.4と40.0を足しても56.8にならないのは、2つの効果が重なっているためです。これは実測の値ではなく、推定です。

体を縮めても、餌は食べられるのでしょうか。

流速0.10〜0.20 m/sでは摂食回数は落ちず、0.25 m/sで0.10 m/sより減った[3]。注意したいのは、この値が水路の中のものであり、海の流れの強さそのものではない点だ。減り始める境目が0.20と0.25の間にあることも、この条件、この5匹での話である。

流速が上がるにつれ、巣穴の外に出す体の長さは短くなった[3]。流れの中に突き出た細長い体は、流速が上がるほど押されやすく、抗力がかさむ。そのため体を引っこめれば、受ける力は小さくなる。

抗力の見積もりでは、体を短くし、曲げることで、同じ流れの中でまっすぐ長い体のままの場合より約56.8%小さくなると推定された。内訳は、短縮による減少が約28.4%、曲げによる減少が約40.0%である[3]。28.4と40.0を足しても56.8にならないのは、2つの効果が重なる推定だからである。実測値ではなく推定値であることも、読むときの条件になる。

では、体を引いたぶん、餌をとらえる力は落ちないのか。次の章では、そこを見る。

4. ちぢめても、どうして たべられるの?

4. 体を引いても食べられるのは、突く距離を短くするから

4. 突く距離は短くなる ── 泳ぐ魚と比べて、幅広い流速で食べられる理由

ながれが つよく なると、チンアナゴは 巣穴すあなの おくへ からだを ひきます。そして、ちかくを とおる ごはんを ねらいます[4]。

ごはんを つつく きょりは みじかく なります。でも、つつく はやさは かわりません。つつくと うまく いく わりあいも、ながれの つよさで かわりませんでした[3]。

「もっと はやく つつく」のではなく、つつく きょりが みじかく なるのです。

OISTの はっぴょうでは、およぎまわる プランクトンたべの さかなは、まいびょう 0.15メートルくらいが たべやすいと いわれて います。チンアナゴは 0.2メートルに ちかくても たべる かいすうが かわりませんでした。研究けんきゅうする 人は、巣穴すあなに ひっこむ やりかたが あるからだと 考えて います[4]。

流れが強くなると、チンアナゴは巣穴の奥へ体を引き、そこから近くを通る餌を狙います。餌に向かって突く距離は短くなりますが、突く速さや、餌に反応する距離は変わらず、成功率にも流速の影響は見られませんでした[4]。「もっと速く突く」のではなく、突く距離が短くなる、という変わり方です。

OISTの発表では、自由に泳ぎ回る動物プランクトン食の魚は、食べる回数のピークがおよそ秒速0.15mだといわれます。チンアナゴは秒速0.2m近くまで食べ方が保たれ、より幅広い流速で食べられると説明されています。その理由として、研究者は巣穴にひっこむ戦略を挙げています[4]。ただし、これは発表上の比較で、すべての泳ぐ魚よりチンアナゴが強いと言えるわけではありません。

泳ぎながら餌をとる魚は、流れの中で体を保つ必要がありますが、チンアナゴは巣穴という避難所を持ち、そこに引っこめます。体の大半を砂の中に置く暮らしが、流れの中での食べ方に結びついているようです。

流れが強まると、チンアナゴは巣穴の奥に体を引き、近くを通る餌に狙いを絞る。突く距離は短くなるが、突く速さや反応する距離は変わらず、成功率にも流速の影響は見られなかった[4]。「速く突く」のではなく、突く距離が短くなるという変化である。

OISTの発表は、自由遊泳する動物プランクトン食の魚の摂食のピークを秒速約0.15 mとし、チンアナゴでは約0.2 m/sに近いところまで摂食が保たれると比べている。その理由として研究者が挙げるのは、巣穴にひっこむ戦略だ[4]。この比較は報道発表の要約であり、「泳ぐ魚より強い」と断定するのは行きすぎである。比べられている魚の種類や実験の条件が、チンアナゴの実験と同じとは限らない。

泳ぎながら餌をとる魚は、流れの中で体を保つ必要がある。これに対しチンアナゴは、巣穴を避難所にして、ほぼ動かずに、体の出し方を変えるだけで流れに対応する。巣穴は、砂に穴を掘って作るものだと水族館は説明している[2]。身を守る場所が、食べる場所も兼ねていると読める。

5. すいぞくかんで、チンアナゴの むきを みて みよう

5. 水族館で、顔の向きと体の長さを見てみよう

5. 観察の手がかり ── 向き・長さ・曲がりと、一次資料の読み方

すいぞくかんに いったら、チンアナゴを じっと みて みましょう。

みんな おなじ むきを むいて いるでしょうか。すいそうの みずが ながれて くる ほうを むいて いるかも しれません。からだを だして いる ながさは、みんな おなじでしょうか。ひとりが 巣穴すあなに もぐったら、まわりは どうなるでしょう。

チンアナゴは もともと けいかいしんが つよく、すぐ 砂すなに もぐる いきものです[5]。ちかづきすぎず、そっと みて あげてください。

おうちでは、すいぞくかんの しゃしんや どうがを みながら、かおの むきと、からだを だして いる ながさを くらべて みましょう。

水族館に行ったら、チンアナゴの「向き」と「出している長さ」を見てみましょう。

まず、顔が同じ方向を向いているか。次に、その向きと水槽の水の流れが合っているか。そして、体を出している長さが、チンアナゴごとに違うか。この実験で分かった食べ方が、水槽の中でも見えるかどうかは、観察しないと分かりません。ただ、見る手がかりにはなります。

チンアナゴは本来、警戒心が強く、すぐに砂にもぐります[5]。近づきすぎず、静かに見ると長く観察できそうです。水族館の写真や動画でも、顔の向きと体の出し方は見比べられます。

この水路実験は5匹のものなので、野外でも同じなのかは、これからの調査で分かっていくことです。

水族館で試せる観察は、顔の向き、体を出している長さ、曲がり具合の三つである。水槽の流れの向きと顔の向きが合っているか、流れの強い場所で体が短いか、を見る。ただし水槽の流れは水路実験の条件とは違うため、一致しなくても結論は動かない。見えたものを手がかりに、実験の結果を思い出すための観察だ。

チンアナゴは本来、繊細で警戒心が強く、すぐ砂に潜る生きものだと、水族館側の発表は説明している[5]。

一次資料としては、石川らのJournal of Experimental Biology(2022)の論文[3]が最も詳しい。ここで紹介した抗力の数値(56.8%など)は要旨と結果の範囲で、考察の部分は読んでいない。野外の餌の内容や、他の海域の個体群で同じことが成り立つかは、この実験からは言えない。そこが次に調べたくなる問いである。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:データベース、水族館の解説、研究論文、研究機関の発表を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. FishBase「Heteroconger hassi」。https://fishbase.se/summary/12619 (食べ物、群れの大きさ、大きさ、分布について)
  2. Florida Aquarium「Garden eel」。https://www.flaquarium.org/explore/habitats/shorelines/garden-eel/ (流れに顔を向ける食べ方、巣穴の使い方について。水族館の解説)
  3. Ishikawa et al.「Effects of prey density and flow speed on plankton feeding by garden eels」Journal of Experimental Biology 225(8)(2022年)。https://journals.biologists.com/jeb/article/225/8/jeb243655/275099/Effects-of-prey-density-and-flow-speed-on-plankton (水路実験の条件と結果、抗力の推定について。論文)
  4. ScienceDaily(OIST発表の転載、2022年7月20日)。https://sciencedaily.com/releases/2022/07/220720150538.htm (突き方と、泳ぐ魚との比較について。研究機関の発表)
  5. ナゾロジー(すみだ水族館の発表をもとにした記事)。https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/58230 (水族館での飼育の様子について)

なおした ところ

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