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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

あひるは、どんな ところで くらして いるの?

あひるは、どんな場所で暮らしているの? 野生のマガモの冬の湖から田んぼまで

飼いあひるとマガモはいつ分かれた? ── 家畜化の通説より古いゲノム研究と、湖沼から人里の池・水田へ、アイガモまでの暮らし

分野:生きもの

まっ白な あひると、くびの みどりいろの マガモ。ぜんぜん ちがう とりに 見えますが、あひるの からだの もとに なって いる ちからは、マガモと ほとんど おなじだと いわれて います[2]。

では、マガモは どこで くらして いて、あひるは どうして 人の そばの 水べに すむように なったのでしょう。この きじを 読むと、あひるの すみかと、田んぼで はたらく あひるの ことが わかります。

白いあひるは、野生のマガモと見た目がまるで違います。ところが、遺伝子の上ではマガモとほとんど変わらず、マガモと交配もできる、と野鳥の解説で説明されています[2]。

冬の湖にやってくる野鳥が、どうして人のそばの池や田んぼで暮らすようになったのでしょうか。この記事を読むと、あひるのすみかが水辺に決まっている理由と、田んぼで働くアイガモの話が分かります。

白いあひるは、遺伝子の上では野生のマガモとほとんど変わらず、マガモと交配が可能だと説明される[2]。見た目も暮らしぶりも違うのに、なぜそうなるのか。さらに、ゲノム解析では、飼いあひるとマガモが分かれた時期が、通説の家畜化の時期よりずっと古いという結果も報告されている[3]。

では、あひるはどんな環境で暮らす鳥で、その環境は人との関わりでどう変わってきたのか。祖先の生息環境、家畜化の通説と新しい研究、水に浮く体の工夫、水田で働くアイガモまで、各資料が支える範囲が分かる。

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1. あひるの せんぞは、どんな 水べに いた とり?

1. あひるの先祖のマガモは、冬の湖にやってくる鳥だった

1. 祖先のマガモは、北半球の湖沼で水面の餌を食べる鳥だった

あひるは、マガモという 野生の とりを、人が かって、てなずけた ものだと いわれて います[1]。ただし、バリケンという あひるは べつです。

マガモは、きたの ほうの せかいに ひろく います。日本には、冬に なると 湖や 池に とんで きます[2]。水の 上で、くさの たねなどを よく たべます[2]。

つまり あひるの いえは、もともと マガモが すんでいた 水べだったのです。では、人は いつごろ、この とりを そばに おいたのでしょう。

あひるは、野生のマガモを人が飼いならして家禽にしたものとされています。ただしバリケンは別です[1]。

マガモは北半球に広く分布する鳥です。日本では冬鳥として湖や沼に飛来しますが、北日本などで子育てをする個体もいます。水面で餌をとり、水草の種子などの植物をよく食べます[2]。

あひるの故郷は、遠い国の特別な場所ではありません。身近な池や沼にやってくる野鳥と、同じ水辺です。白いあひるも、遺伝子の上ではマガモとほとんど変わらず、交配できる、と説明されています[2]。

では、人はいつごろ、この鳥を自分たちの近くで飼うようになったのでしょうか。

あひるは、マガモを家畜化したものとされる。ただしバリケンは例外で、別の種に由来する[1]。したがってあひるの「暮らす場所」を考えるには、まず祖先マガモの生息環境を見ておく必要がある。

マガモは北半球に広く分布し、日本では冬鳥として湖沼に飛来する。北日本などで繁殖する個体もいる。水面で採食し、水草の種子などの植物質をよく食べる[2]。すなわち、水があり、水面で植物質の餌が得られる場所が、この鳥の暮らしの条件である。

この解説では、白いあひるも遺伝子の上ではマガモとほとんど変わらず、交配が可能だと述べられている[2]。生物学では交配して子孫を残せるものを同じ種とみなす、という説明も添えられているが、これは一つの解説の記述であり、あひる全体に一般化するときはバリケンのような例外に注意が要る。

水辺の条件は、人里の池や水田にも当てはまる。ではこの鳥は、いつ、どこで人のそばに来たのか。

2. いつから 人の そばで くらすように なったの?

2. 人のそばの池や田んぼで飼われるようになったのは、いつごろ?

2. 家畜化の時期と場所 ── 辞典の通説と、ゲノム解析が示す複雑さ

あひるを かい はじめたのは、中国が いちばん 古いと いう せつが あります。ヨーロッパでも、いまから 2000年ほど 前に かわれて いたと いう せつが あります[1]。にわとりより あたらしいようです。

日本では、平安じだいの おわりごろに かって いた きろくが あります[1]。えどじだいには、本にも かいかたが のりました[1]。

ところが、ちかごろの けんきゅうでは、「もっと ずっと 古い ときに わかれた かも しれない」という 話も 出て います[3]。まだ、なぞは のこって います。

辞典の説明では、あひるの家畜化は中国が最も古いという説があり、ヨーロッパでも紀元前後に飼いならされたとされます。ただし、それを裏づける考古学の資料は多くありません。ニワトリより新しく、古代インドやギリシア、エジプトには家畜化の史実がないとも書かれています[1]。

日本では、平安時代末期ごろに飼育していた記録があります。江戸時代の1697年に出た農書『農業全書』にも、飼い方が記されています[1]。

ところが、2021年に発表された飼いあひるのゲノム研究(118個体)は、通説とは少し違う姿を示しました。飼いあひるがマガモと分かれた時期は約3.8万年前、中国のカルガモと分かれた時期は約5.4万年前と推定され、想定されてきた家畜化の時期(約1000〜2500年前)よりずっと古かったのです[3]。

この研究は、飼いあひるの祖先がまだ分かっていない野生の集団かもしれない、と報告しています[3]。通説が間違いと決まったわけではなく、研究が進むほど話が複雑になっている、というのが今の姿です。

家畜化の時期は、辞典類では次のように説明される。中国で最も早く家畜化されたという説があるが、考古学的な資料は不足している。ヨーロッパでも紀元前後に馴化された。ニワトリより新しく、古代インド・ギリシア・エジプトに家畜化の史実はない[1]。日本では平安時代末期ごろの飼育記録があり、宮崎安貞の『農業全書』(1697)に飼育法が書かれている[1]。

これに対し、Zoological Research(2021)の飼いあひる118個体のゲノム解析は、別の見方を示した。飼いあひるがマガモと分かれた時期は約3.8万年前、中国のカルガモ(Chinese spot-billed duck)と分かれた時期は約5.4万年前と推定され、想定される家畜化の時期(約1000〜2500年前)をかなり超えている。著者らは、祖先が未解明の野生集団である可能性に触れている[3]。

ここで注意したいのは、この数字が「人が飼い始めた時期」ではなく、遺伝子の違いから推定した「集団が分かれた時期」だという点である。両者はもともと別の量なので、矛盾とは限らない。通説を否定するのではなく、研究が進むほど祖先の話が複雑になっていると読むのが、資料に忠実である。

いずれにせよ、人のそばで飼われるうちに、あひるは姿を変えていった。何がどう変わったのか。

3. 人の そばで くらして、なにが かわった?

3. 人に選ばれて、あひるの体は何が変わったのか

3. 人為選択の痕跡 ── 白い羽と体の大きさに関わる遺伝子(ペキンアヒル)

あひるは、とぶ ちからを うしなったと いわれて います[1]。マガモのように、とおくの 湖まで わたって いく ことは ありません。

中国の ペキンアヒルでは、何ひゃく年も、人が すきな あひるを えらんで ふやして きたと かんがえられて います[4]。まっ白な 羽と、大きな からだには、人が えらんで そだてた ことが かかわって いると かんがえられて います。

その けんきゅうでは、白い 羽や からだの 大きさに かかわる 遺伝子いでんしが 見つかった と ほうこく されて います[4]。人の そばで くらす うちに、あひるは 人に あわせて かわって いったのです。

あひるは、飛ぶ力を失ったとされています[1]。野生のマガモのように、季節ごとに遠くの湖へ渡る暮らしとは、別の暮らしになっています。

変わったのは飛ぶ力だけではありません。2018年にNature Communicationsに出た研究は、マガモ40羽、中国の在来種のあひる12種36羽、ペキンアヒル30羽のゲノムを比べました。ペキンアヒルでは数百年にわたって人が選ぶ育て方が続き、白い羽には「MITF」という遺伝子の変異、体の大きさや餌の使われ方には「IGF2BP1」という遺伝子の働きが関わる可能性が示されました[4]。

研究では、白い羽に遺伝子の変異が関わる可能性が示されています。ただし、遺伝子だけで羽の色や体の大きさがすべて決まるとは言えません。

こうして姿を変えても、あひるの暮らしの舞台は水辺のままです。水に浮いて長く過ごしても、なぜ冷えないのでしょうか。

辞典は、あひるが飛翔力を失ったと述べる[1]。野生マガモの季節移動のような広い行動範囲は、あひるでは必要がなくなる。その代わり、人が選ぶ形質が体に現れる。

Nature Communications(2018)は、マガモ40羽、中国在来のあひる12品種36羽、ペキンアヒル30羽のゲノムを比較した。ペキンアヒルでは数百年にわたる人為選択が行われ、白い羽毛にはMITF(エムアイティーエフ)遺伝子の変異、体の大きさや飼料効率にはIGF2BP1遺伝子の持続的な発現が関わる可能性が示された[4]。

この読み方には限界がある。「可能性が示された」とあるとおり、遺伝子と形質の関係は断定されておらず、ここに挙げた遺伝子が羽の色や体格のすべてを決めるとも読めない。白い羽がなぜ残ったのかという因果も、ここでは扱わない。

姿が変わっても、あひるの暮らしの舞台は水辺のままである。水に浮いて過ごす体は、どんな工夫でできているのか。

4. 水に ういても、どうして ひえないの?

4. 冷たい水に浮いても、あひるの体が冷えにくい理由

4. 水辺で体温を保つ工夫 ── 尾脂腺の脂による撥水と、足の熱交換

あひるや カモの おしりの ほうには、「びしせん」と いう あぶらを だす ところが あります[5]。

とりは、この あぶらを くちばしで からだじゅうの 羽に ぬります。これが 「はづくろい」です。あぶらを ぬった 羽は 水を はじくので、つめたい 水の 上でも、からだが ひえにくく なります[5]。

あしにも くふうが あります。つめたい 水に つかる あしには、からだの あたたかさが にげにくい しくみが あると いわれます[5]。

水の 中でも あたたかい。だから 池や 田んぼで すごせるのです。

カモの仲間は、尾の付け根にある尾脂腺という器官から出る脂を、くちばしで全身の羽に塗ります。これが羽づくろいです。脂を塗った羽は水をはじき、冷たい水の上でも体が冷えにくくなる、とカモ観察の解説で紹介されています[5]。

冷たい水に浸かる足にも工夫があります。同じ解説では、足には熱交換をする器官があり、体温が逃げにくくなっていると説明されています[5]。冷たい水に長くいても平気そうなのは、足の仕組みのおかげでもあるわけです。

羽づくろいをしているあひるを見かけたら、くちばしが尾のほうに回っていないか、よく見てみましょう。

水に浮いて暮らす体は、人間にも使える特技になりました。それが田んぼでの仕事です。

カモ類は、尾の付け根の尾脂腺から分泌される脂をくちばしで全身に塗る(羽づくろい)。脂で羽が撥水するため、冷たい水の上でも体が冷えにくい[5]。冷水にさらされる足には熱交換を行う器官があり、体温が逃げにくいとも説明される[5]。

ただし、これは一般向けのカモ観察の解説に基づく。言えるのは、羽の脂による撥水と足の仕組みが、水辺での体温維持に関わると説明されている、というところまでである。

この体の工夫があるから、水があって餌が得られる場所なら、池でも水田でも暮らせる。祖先マガモの条件(水と、水面で得られる植物質の餌)に合う場所は、人が作った水辺にも広がっていた。その一つが水田である。

5. 田んぼで はたらく あひるが いるって ほんとう?

5. 田んぼで働くアイガモは、あひるとマガモの子ども

5. 水田でのアイガモ農法 ── 雑種を使った除草・害虫防除と、その広がり

アイガモは、マガモと あひるの あいだに うまれた こです。人が かけあわせて つくりました[6]。

この アイガモを、田んぼに はなします。アイガモは、田んぼの くさや、いねを たべる 虫を たべて くれます。農薬を へらして 米を つくる ほうほうの ひとつです[6]。

ひなは 田うえの あとに はなして、いねの ほが みのる ころには 田んぼから あげます。ほを たべて しまうからです[6]。

水に ういて、あるきまわる とりが、田んぼの おてつだいを して いるのです。

アイガモは、マガモとあひるを交配させた雑種で、人が作った鳥です。水田に放して雑草や害虫を食べさせ、農薬に頼らずに稲を育てる農法に使われます。これを合鴨農法と呼びます[6]。

ひなは田植えのあとに放し、稲穂が実るころに引き上げます。稲穂を食べてしまうからです[6]。

この方法は、1985年ごろ、富山県の農家が実用的な除草法として確立し、報道で全国に知られたと紹介されています。1990年には各地の人が集まる懇談会が開かれ、広まったとされます[6]。農家の人が、鳥の暮らしを田んぼに合わせて考えた工夫です。

水があり、草や虫が食べ物になる田んぼは、マガモの祖先が好む水辺の条件によく合います。あひるが暮らす場所が、働く場所にもなったのです。

アイガモはマガモとあひるの交配種で、人為的に作られた雑種である。水田に放して雑草や害虫を食べさせ、農薬を減らす有機農業の方法を合鴨農法という。ひなを田植え後に放し、稲穂が実るころに引き揚げるのは、成長した鳥が稲穂を食べてしまうためである[6]。

ここで、祖先マガモの生息条件(水、水面で得られる植物質の餌)が活きている。水田は水があり、雑草も虫も餌になるので、マガモ由来の鳥に合う環境といえる。ただし、これは資料が直接述べる因果ではなく、これまでの章の内容を重ねた筆者の読みである。

普及の経緯について、同じ資料は次のように述べる。1985年ごろ、富山県の農家が実用的なアイガモ除草法を確立し、報道で全国に知られた。1990年3月の第一回合鴨除草懇談会を経て各地へ広がった[6]。この経緯は単一のまとめ項目に基づくため、年や人名を引用する際は一次資料での確認が望ましい。

家畜化の通説からゲノム解析の新しい見方まで、あひるの祖先の話にはまだ分からないことがある。一方で、水辺という「家」は一貫している。この点は、身近な池で自分の目で確かめられる。

もっと しりたく なったら

池のあひるを見に行く前に

あひるの暮らしを確かめる観察と資料

おうちで

かみに クレヨンを ぬって、水を ちょんと たらして みましょう。ぬった ところは、水が まるく なって はじかれます。あひるの 羽の あぶらも、水を はじく ことに やくだって います。ただし、あひるの 羽と クレヨンの しくみが おなじ という わけでは ありません。

池や こうえんで

あひるが 羽の おしりの ほうを くちばしで つついて いたら、あぶらを ぬって いるのかも しれません。ちかづきすぎず、すこし はなれて 見ましょう。さわったら、手を よく あらいます。

しらべる ときは

この 記じの 下に ある 本や サイトを、おうちの 人と 見て みましょう。

家でできること

紙にクレヨンを塗り、水を一滴たらしてみましょう。塗った部分で、水滴が丸くなる様子を見てみましょう。あひるの羽が脂で水をはじく様子を思い浮かべる手がかりになりますが、羽の仕組みそのものとは別のものです。

池や公園で

あひるやカモが、尾のあたりをくちばしでつついていたら、羽づくろいかもしれません。近づきすぎずに離れて観察し、水辺では足元に気をつけます。さわったときは、手をよく洗いましょう。

調べるには

日本のカモの解説は、野鳥図鑑のサイトにあります。図書館で、カモやあひるが載っている鳥の図鑑を開き、マガモとあひるの体つきや暮らす場所の説明を読み比べてみましょう。図鑑によって書き方が違うところが見つかるかもしれません。

池や公園での観察

あひるが羽づくろいをする様子を観察し、尾の付け根にくちばしを回しているか、羽を整える時間はどれくらいかを記録する。近づきすぎず、水辺での転落に注意し、観察後は手を洗う。

家での手軽な確認

紙にクレヨンを塗り、水滴を落として弾く様子を見る。羽の撥水を連想する手がかりになるが、仕組みが同じとは限らない。

資料を読むなら

Zoological Research(2021)とNature Communications(2018)は、いずれも要旨から読める。「分かれた時期」と「家畜化の時期」の違い、「可能性が示された」という表現の強さに注目すると、研究の結論をどこまで言い切れるかを自分で判断する練習になる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

あひるの由来と家畜化は辞典の解説、遺伝子の話は研究論文とその紹介、体の工夫はカモ観察の解説、アイガモは百科事典サイトによる。論文は要旨にもとづく。

  1. コトバンク「アヒル」(日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典・世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%83%92%E3%83%AB (マガモ由来・家畜化の時期・日本での記録)
  2. キヤノン 野鳥の森「マガモ」 http://global.canon/ja/bird-branch/photo-gallery/magamo/index.html (マガモの分布・食べ物・あひるとの関係)
  3. Zoological Research (2021) 飼いあひるのゲノム研究 https://www.zoores.ac.cn/en/article/doi/10.24272/j.issn.2095-8137.2020.133 (分かれた時期の推定)
  4. Nature Asia 研究ハイライト(Nature Communications 2018年7月18日) https://www.natureasia.com/ja-jp/life-sci/research/12602 (ペキンアヒルの人為選択と遺伝子)
  5. BE-PAL「カモ観察で知っておきたい6つの基本」 https://www.bepal.net/archives/220341 (尾脂腺・羽づくろい・足の熱交換)
  6. Weblio辞書「合鴨農法」 https://www.weblio.jp/content/%E5%90%88%E9%B4%A8%E8%BE%B2%E6%B3%95 (アイガモ農法・普及の経緯)

なおした ところ

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