1. 1りょうは、いまの いくらなの?
1. 同じ1両が、8万円にも41万円にもなる
1. 物差しで変わる1両の換算額 ── 米価では約8万円、賃金では約41万円
えどじだいの お金の 1りょうは、こばんの 1まいです。これを いまの 円に すると いくらに なるのか、しらべた ひとが います。
かへいはくぶつかんの せつめいでは、18せいきの 1りょうを こめの ねだんで はかると 8まん円くらい、だいくさんの おきゅうりょうで はかると 41まん円くらいです[1]。5ばいも ちがいます。
これは まちがいでは ありません。「なにと くらべるか」が ちがうのです。ものさしを かえると、おなじ ものでも、はかった ときの かずが かわる ようなものです。
では、こめで はかると、どう なるのでしょう。
2. こめで はかると、1りょうは どのくらい?
2. 米の物差しは、わかりやすいが「便宜的」
2. 米の物差し ── 1石=1両の目安と、その限界
えどじだいの なかごろから あとは、こめ 150キログラムくらいの「1こく」が、1りょうの めやすだったと いわれます[7]。
いま、こめ 1キログラムが 500円だと すると、150×500で 7まん5000円です。かへいはくぶつかんの 8まん円に ちかい かずです。
こめは まいにち たべる ものなので、ものさしに しやすいのです。ただ、こめの ねだんは ときによって かわります。500円と おく ところから、すでに 「だいたい」の はなしです。
では、そばで かぞえたら どうでしょう。
江戸時代の中ごろ以降は、米1石(約150キログラム)が1両の目安だったといわれます[7]。今の米を1キログラム500円と置くと、150×500で7万5000円です。貨幣博物館の約8万円と近い値になります。
米は毎日食べるものなので、物差しにしやすいのです。国立国会図書館のガイドは、米価を基準にする方法を、正確な値は出せないが便宜的な換算方法の一つ、と位置づけています[2]。米の値段は時期によって動きますし、今の米を1キログラムいくらと置くかでも結果が変わります。
一方、大工の賃金で測った約41万円は、「働いた時間」を軸にした値です。米は食べものの値段、賃金は人の働きの値段で、測っているものが違います。このほかに、身近な食べ物でも数えられます。江戸の人が立ち食いした、そばです。
江戸中期以降は米1石(約150kg)が1両だったといわれ[7]、現代の米を1kg 500円とすれば150×500で7万5000円になる。貨幣博物館の約8万円とほぼ重なる。
米は日々の消費量が大きく、値段の記録も多いので、軸にしやすい。それでも国立国会図書館のガイドは、米価を基準にする方法を「正確な値は出せないが便宜的な方法の一つ」と位置づける[2]。米価は年によって上下し、現代側の米の値段をいくらと置くかでも結果が動くため、7万5000円という数字には、それ自体に幅がある。
これに対し、賃金による約41万円は、米ではなく「人の働きに対する対価」を軸にしている。食べ物の値段と労働の値段という別々のものを測っているので、同じ1両が別の金額になる。では、庶民の食べ物としてもっと身近なそばを軸にするとどうなるか。
3. かけそばで かぞえると、1りょうは なんばい?
3. かけそばで数えると、1両は250杯
3. かけそばの物差し ── 16文が100年以上続いたことの意味
えどの そばは、1ぱい 16文でした。1りょうは 4000文と いわれるので、4000÷16で、1りょうは そば 250はい ぶんです[3][7]。
いまの かけそば 1ぱいを 450円から 480円と かんがえると、250はいぶんの ねだんは 11まん2500円から 12まん円です。こめの 8まん円ちかくより、すこし おおきい かずです。
そばの ねだんは、1744ねんから 1860ねんまで、100ねん いじょうも 16文だった、という せつめいも あります[6]。
ものさしが 3つ そろいました。ところで、この「1りょう=4000文」は、いつも ほんとうだったのでしょうか。
江戸時代、そばの代金は1杯16文でした。1両は銭4000文が基本の関係とされるので、4000÷16で、1両はそば250杯分です[3][7]。今のかけそば1杯を、ここでは450〜480円と仮に置くと、250杯で11万2500円〜12万円になります。同じ資料の中でも、1杯を450円とするか480円とするかで、答えが揺れています[7]。
そばは、1744年から1860年まで、100年以上も16文の時代が続いたといわれます[6]。長いあいだ値段が変わらなかったので、時代をまたぐ物差しにしやすい品物です。
これで、1両は米で約7〜8万円、そばで約11〜12万円、大工の賃金で約41万円と、3つの物差しが並びました。ところが、まだ疑ってみる点があります。この計算の出発点、「1両は4000文」は、江戸時代を通じて本当に同じだったのでしょうか。
二八そば1杯は16文で、1744年(延享1)から1860年(万延1)まで100年以上16文の時代が続いたという[6]。1両を銭4000文とすれば、4000÷16で250杯になる[3][7]。現代のかけそば1杯を450〜480円と仮に置くと、250杯で11万2500円〜12万円である。引用元の記事自身も、1杯を450円とする箇所と480円とする箇所があり、現代側の置き方で幅が出る。
値段が長く動かない品物は、時代をまたぐ軸に向く。実際、そばの16文は100年以上のあいだ記録されている。ただし、この軸には前提が一つある。「1両=4000文」という換算が、その間も変わらなかったことである。
この前提は、実際にはどうだったのか。
4. 小判を ぜにに かえたら、4000文もらえたの?
4. 小判を銭に替えると、いつも4000文だったのか
4. 公定相場と実際の両替 ── 「1両=4000文」のずれ
ふつうの 人が まちで かいものを する ときは、ぜにを つかいました。こばんを もっている 人は、りょうがえやに もっていって、ぜにに かえて もらいます[5]。
ばくふは、1りょうを ぜに 4000文と きめていました[4]。でも、りょうがえやで こばんを ぜにに かえる ときの 文の かずは、じっさいには はげしく かわったと いわれます[4]。
ぜにに かえる ときの かずが うごくと、1りょうで かえる そばの ぱいすうも かわります。ものさしだけでなく、「1りょうが なん文か」も うごくのです。
江戸の庶民は、買い物には銭を使いました。小判を持っている人は、両替商に頼んで銭に替えてもらいます。両替商は、金・銀・銭の三貨の交換や、為替、預金、貸付などを扱う商人で、金銀貨を交換する本両替のほか、金銀貨を銭に替えて手数料をとる銭両替がありました[5]。
では、小判1枚で何文もらえたのか。小判1枚は1両=4分=16朱で、銭は1000文が1貫、基本の関係は1両=4貫文(4000文)とされます[3]。幕府は、金1両を銀50匁(のちに60匁)、または銭4000文と交換する決まりを作りました。しかし、実際に交換するときの割合は大きく動いたといいます。元禄13年(1700)に銀60匁へ改められたものの、公定相場は名ばかりになったとされます[4]。
たとえば1両が4000文より多い文数に替わる日があれば、同じ16文のそばでも、1両で食べられる杯数は250杯より増えます。逆に少なければ減ります。
物差しの違い(約5倍)に加えて、1両そのものが何文だったかも動いたのです。では、結局「1両はいくら」と聞かれたら、どう考えればよいのでしょうか。
庶民の買い物は銭で行われ、金貨の小判を銭にするには両替商を通した。両替商は金銀銭三貨の交換のほか為替・預金・貸付を扱い、金銀貨を交換する本両替と、金銀貨を銭に替えて手数料をとる銭両替があった[5]。
基本の関係は、小判1枚=1両=4分=16朱、銭は1000文が1貫で、1両=銭4000文(4貫文)である[3]。ところが、幕府は金1両を銀50匁(のちに60匁)や銭4貫文と交換する決まりを作ったが、両替商が実際に交換するときの割合は大きく動き、元禄13年(1700)に銀60匁へ改めた後も、公定の決まりどおりにはならなかったとされる[4]。すなわち、4000文は「幕府が定めた値」であって、いつも小判1枚から4000文が戻ったとは限らない。
この揺れは、そばの軸にも響く。1両が替わる文数が4000文より多ければ、16文のそばで割った杯数は250杯より増え、少なければ減る。たとえば仮に5000文なら、5000÷16で312.5杯になる。文数の置き方ひとつで、そば換算の1両は動く。
米・賃金という軸の違い(約5倍)に、1両が何文かという揺れが重なる。物差しによる差と、1両を何文に替えられるかという揺れがある。では、どう「1両の値段」を言えばよいか。
5. 「1りょうは いくら?」と きかれたら?
5. 「1両はいくら?」には、まず「何と比べて?」と返す
5. 換算値の読み方 ── 軸・時期・単位を添えて言う
ここまでで、わかった ことが あります。1りょうは、こめなら 8まん円くらい、そばなら 11まん2500円から 12まん円くらい、だいくさんの おきゅうりょうなら 41まん円くらい でした[1]。
どれが ただしい、では ありません。たべものの ねだんを くらべたいのか、はたらく ひとの くらしを くらべたいのかで、えらぶ ものさしが かわります。
だから 「1りょうは いくら?」と きかれたら、「なにと くらべて? いつの はなし?」と かえすと いいのです。
ここまでの数字を並べると、1両は、米で約7〜8万円、そばで約11〜12万円、大工の賃金で約41万円です[1][7]。そのうえ、1両が何文に替わるかも、公定の4000文から動きました。
ですから、「1両は何円」と言うときは、少なくとも「何を物差しにしたか」と「いつの話か」を添える必要があります。食べ物の値段の感覚を知りたいなら米やそば、働く人の暮らしぶりを知りたいなら賃金、というように、知りたいことで物差しを選ぶのがよさそうです。
ある本に「1両は8万円」とあり、別の本に「1両は41万円」とあっても、どちらかが誤りとは限りません。注に物差しが書いてあるか、探してみる価値があります。
物差しは米・そば・大工の賃金の3つである。米では、現代の米を1kg500円と置くと約7万5000円、貨幣博物館の米価換算では約8万円となる。そばでは約11万2500円〜12万円(現代のそば1杯を450〜480円とした場合)、大工の賃金では約41万円である[1][7]。これに、1両が何文に替わるかという揺れ(公定は4000文だが、実際の相場は大きく動いた)が重なる[4]。
したがって「1両=○円」という一行の数字は、軸(米・賃金・そば)、時期(18世紀か幕末か)、1両の文数、現代側の置き方(米1kgやそば1杯の値段)の4つの選択の結果である。数字を引用するときは、少なくとも軸と時期を添えるのが望ましい。
食べ物の物価感覚を知りたいなら米やそば、暮らしの豊かさや働きの対価を知りたいなら賃金、と目的で軸を使い分けることになる。なお大工の賃金換算(約41万円)の具体的な日当や年収の数字は、貨幣博物館の資料そのものにあたって見る価値がある[1]。
6. いえの ちかくの そばで、1りょうを けいさん してみよう
6. 近所のそば屋の値段で、1両を計算し直してみる
6. 手元の値段で、1両の換算を検算する
やってみよう。ちかくの おそばやさんや しょくどうで、かけそば(または うどん)の ねだんを みて みましょう。おうちの 人に きいても いいです。
その ねだんに、250を かけて みます。これが、1りょう=4000文、そば16文の ときの 「いまの お金」です。うどんの ねだんを つかうときは、そばとは べつの ものさしに なります。
おみせに よって、ねだんが ちがいます。ちがうと、1りょうの ねだんも かわります。「ものさしで こたえが かわる」ことが、じぶんの けいさんでも たしかめられます。
もっと しりたく なったら、かへいはくぶつかんの ホームページに ある 「よくある しつもん」を、おうちの 人と よんで みましょう。
家の近くのそば屋やうどん屋で、かけそば(またはかけうどん)の値段を見てみましょう。家の人に聞いてもかまいません。
その値段に250をかけると、1両=4000文、そば16文の場合の「今の円」になります。店によって値段が違うので、答えも変わります。物差しの置き方で結果が動くことを、自分の手で確かめられます。
もっと知りたくなったら、日本銀行金融研究所の貨幣博物館のよくある質問のページで、1両の換算の説明に当たってみてください。大工の賃金換算(約41万円)が、どんな数字から出ているのかを追うと、物差しの中身が見えてきます[1]。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の数字は、公的機関の解説と辞典・事典の記述、および紹介記事を比べて使いました。倍率や杯数は、出典の数字から自分で計算した値です。
- 日本銀行金融研究所 貨幣博物館 FAQhttps://www.imes.boj.or.jp/cm/history/historyfaq/ (1両の米価換算約8万円・大工賃金換算約41万円)
- 国立国会図書館 リサーチ・ナビhttps://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/humanities/post_101127 (換算が難しい理由、米価基準は便宜的)
- 三菱UFJ銀行 貨幣博物館 展示解説 https://www.bk.mufg.jp/currency_museum/exhibit/japan/index.html (1両=4分=16朱=銭4000文)
- コトバンク「両」(大辞泉・日本大百科全書) https://kotobank.jp/word/%E4%B8%A1-149894 (公定相場と実際の変動)
- コトバンク「両替商」(マイペディア・旺文社日本史事典) https://kotobank.jp/word/%E4%B8%A1%E6%9B%BF%E5%95%86-149924 (本両替と銭両替)
- コトバンク「ソバ」(世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/%E3%81%9D%E3%81%B0-794698 (そば16文が続いた期間)
- ファイナンシャルフィールドhttps://financial-field.com/living/entry-261842 (米1石=1両、かけそば250杯分)
なおした ところ
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