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ヒヨコの 骨ほねは、きみと 殻からの どっちで できるの?

ヒヨコは黄身から殻へ、カルシウムを使い分ける?

ヒヨコの骨は何でできるのか ── 卵黄から卵殻へ移るカルシウム源

分野:生きもの

卵たまごの きみ(きいろい ぶぶん)には、ヒヨコの 骨ほねに なる カルシウムが たっぷり…と おもっていませんか。じつは、骨ほねの もとの おもな ざいりょうは、きみでは なくて、殻からだと いわれています。

えっ、あの うすい 殻からが? では、きみは なにを しているのでしょう。卵たまごの 中の カルシウムの ゆくえと、わたしたちの 骨ほねとの つながりが わかります。

「卵の黄身には、ヒヨコの骨になるカルシウムがつまっている」と思っている人は多いかもしれません。ところが、食品成分表を見ると黄身のカルシウムはそれほど多くなく、ニワトリの胚の研究では、骨づくりは主に殻のカルシウムに頼ると報告されています。

殻は、黄身1個ぶんの100倍近いカルシウムを持っている計算になります。では、黄身は何のためにあるのでしょうか。この記事では、ヒヨコが卵の中で2つの「カルシウムの貯金」をどう使い分けるのか、黄身が運ぶものは何か、それが人の骨とどうつながるのかが分かります。

卵黄にはカルシウムが豊富で、それがヒヨコの骨になる ── そう考えがちだが、日本食品標準成分表(八訂)の卵黄(生)は、可食部100gあたりカルシウム140mgにとどまる。黄身1個を16〜18gと仮定して計算すると22〜25mg程度で、卵殻1個がもつ約2.21gの1%前後にすぎない。

では、ヒヨコの骨は何を材料にできるのか。卵黄は何の役目を果たしているのか。成分表、ニワトリ胚の研究、厚生労働省の資料から、卵の中の2つのカルシウム源の使い分けと、卵黄に含まれるビタミンDが人の骨にもかかわる点までが分かる。

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1. きみには カルシウムが たくさん あるの?

1. 黄身のカルシウムは、思ったほど多くない

1. 卵黄のカルシウムは「豊富」と言えるのか

卵たまごを わると、きいろい きみが でてきます。いかにも えいようが つまって いそうです。

でも、くにの しらべでは、きみ 100グラムに カルシウムは 140ミリグラム。卵たまごぜんぶを まぜた ばあいは 46ミリグラムです[1][2]。きみの 1こぶんは 100グラムも ないので、カルシウムは もっと すこしで、22〜25ミリグラムくらいです。

では、ヒヨコの 骨ほねは、どこから カルシウムを もらうのでしょう。

卵を割ると出てくる黄身は、いかにも栄養がぎっしり詰まっていそうです。ところが、文部科学省の食品成分データベースによると、卵黄(生)のカルシウムは可食部100gあたり140mgです[1]。全卵(生)では、八訂で100gあたり46mgとされています[2]。成分表は改訂のたびに数値が変わるので、ここでは八訂の値です。

黄身1個は100gよりずっと軽いので、1個ぶんのカルシウムはさらに少なくなります。黄身1個を16〜18gと仮定して計算すると、およそ22〜25mgです。ヒヨコの骨になるカルシウムが別のところにあるのなら、どこでしょうか。

卵黄は栄養の塊という印象が強いが、カルシウムに限れば事情が違う。文部科学省の食品成分データベースでは、卵黄(生)は可食部100gあたりカルシウム140mg、リン540mg、ビタミンD 12.0μgである[1]。全卵(生)のカルシウムは、八訂で100gあたり46mgと、七訂の51mgから改訂されている[2]。成分表は版によって数値が動くため、比較には版をそろえる必要がある。

卵黄1個を16〜18gと仮定する(この重さは本記事の計算上の仮定である)と、1個ぶんのカルシウムは22〜25mgにしかならない。胚の骨が必要とするカルシウムをここだけで賄うのは難しそうだ。では残りはどこから来るのか。

2. 殻からの カルシウムは どれくらい?

2. 薄い殻に、黄身の100倍近いカルシウムがある

2. 卵殻1個に約2.21g ── 卵黄との桁違いの差

あの うすい 殻からには、1こで 2グラムいじょうの カルシウムが はいって います[3]。殻からの ほとんど(95パーセントぐらい)は、たんさんカルシウムと いう ものです[6]。

きみの 1こぶんと くらべると、殻からの ほうが、およそ 100ばい ちかくも おおい けいさんに なります(けいさんの めやすです)。

この たくさんの カルシウムを、ヒヨコは いつ つかうのでしょう。

今度は殻を見てみましょう。ニワトリの胚の研究をまとめた論文によると、卵殻にはカルシウムが1個あたり約2.21g含まれていて、胚にとってのカルシウムのおもな供給源です[3]。殻の成分は約95%が炭酸カルシウムだと説明されています[6]。

2.21gは2210mgです。黄身1個ぶんの22〜25mgと比べると、約90〜100倍になります。この倍率は、黄身の重さを仮定して出した計算の目安です。もう少し正確に知りたいときは、成分表で黄身の重さを調べてみてください。

こんなに差があるなら、ヒヨコは殻のカルシウムもしっかり使うはずです。それはいつごろなのでしょうか。

卵殻に目を移すと、状況は一変する。ニワトリ胚の研究をまとめた総説では、卵殻は1個あたり約2.21gのカルシウムを含み、胚のカルシウムの主要な供給源とされている[3]。殻の約95%は炭酸カルシウムで、有機物は3.5%ほどと説明される[6]。

2.21gは2210mgである。卵黄1個ぶんの22〜25mg(前章の仮定による)と比べると、約90〜100倍に相当する。ただしこれは、卵黄の重さを仮定して出した概算にすぎず、実際の卵では黄身の大きさに個体差がある。いずれにせよ、桁が違う。この大きな「貯金」を胚がどの時期に引き出すのかが、次の問いになる。

3. ヒヨコは、きみと 殻からを いつ つかうの?

3. ヒヨコは「2つの貯金箱」を順番に使う

3. 前半は卵黄、後半は卵殻 ── カルシウム源の切りかわり

ヒヨコは、2つの カルシウムを じゅんばんに つかう と、けんきゅうで いわれて います[5]。さいしょは きみ、そのあとが 殻からです。

たまごを あたためて 11日めごろから、殻からが すこしずつ とけはじめ、カルシウムが ヒヨコへ はこばれます[3][4]。

ふでばこの えんぴつを、まえの ほうから つかって、なくなったら よびの えんぴつを つかうような ものです。ただし 本当は、はんぶんずつと いう わけでは ありません。

ヒヨコの胚は、必要なカルシウムを卵の中にある2つの供給源から取り出す、と報告されています。まず黄身、あとから殻のカルシウムを使います[5]。前半は黄身の貯金、後半は殻の貯金を使う、と考えるとイメージしやすいでしょう。ただしこれは使う順番の話で、前半と後半がちょうど半分ずつという意味ではありません。

殻が溶け出すのは、卵を温め始めて11日目ごろからです[3]。溶けたカルシウムは、胚を包む「絨毛尿膜(じゅうもうにょうまく)」という膜を通って胚に運ばれます[4]。この膜は、殻と胚をつなぐ搬入口のはたらきをします。

そのころ骨はどうなっているのでしょう。

胚はどの時期にどこからカルシウムを得るのか。ニワトリ胚の研究では、胚は卵の外にある二つの供給源、すなわちまず卵黄、次に卵殻からカルシウムを動員するとされる[5]。前半が卵黄、後半が卵殻という使い分けである。ただし、この論文の要旨からは何日目に何割という配分までは読み取れず、ここでも割合は書かない。

卵殻の溶出が始まるのは孵卵11日目ごろで[3]、溶け出したミネラルは絨毛尿膜(CAM)を通じて胚へ運ばれる。骨格の石灰化は主に卵殻に頼るというのが、ニワトリ胚の研究の整理である[4]。同じ総説は、胚の骨格が孵卵11〜15日目で胚全体のカルシウムの80%超、孵化時で75%を占めると述べている[3]。ただしこれは、胚の中で骨がもつカルシウムの割合であり、殻から80%もらうという意味ではない。

4. それなら、きみは なにを して いるの?

4. 黄身が運ぶのは、カルシウム以外のもの

4. 卵黄の役割 ── リンとビタミンDを供給する

きみは、カルシウムの かわりに、骨ほねづくりを たすける ものを もっています。「リン」と「ビタミンD」です。おやどりが 卵たまごに いれて くれて いて、おもに きみに ふくまれる と いわれます[6]。

けんきゅうの しけんでは、ビタミンDが あると きみの カルシウムが つかわれやすく なり、ビタミンKが あると 殻からの カルシウムが ヒヨコへ はこばれやすい、と わかりました[5]。ただ、ふつうの 卵たまごの 中でも おなじとは、いいきれません。

ビタミンDは、にんげんの 骨ほねにも だいじな もの です。

では黄身の役目は何なのでしょう。ニワトリの卵についての論文では、親鳥は殻のカルシウムのほかに、リン、微量のミネラル、ビタミンDを卵に入れていて、このうちリン・微量ミネラル・ビタミンDは主に黄身から来ると、論文の要旨で説明されています[6]。成分表でも、卵黄100gあたりのリンは540mg、ビタミンDは12.0μgと、カルシウムの140mgよりずっと目立ちます[1]。

胚を培養して調べた研究では、ビタミンD3が黄身のカルシウムの動員を促し、ビタミンKが殻のカルシウムを胚へ運ぶ膜のはたらきに欠かせない、という結果が報告されています[5]。これは培養した胚での結果で、生きた卵のすべてで同じとは言い切れません。骨をかたくするカルシウムの主な供給源は殻で、黄身はリンやビタミンDなど、骨づくりを助けるものを届ける役目を持っているようです。

人の骨にも、ビタミンDがかかわります。

卵黄の役割を整理すると、親鳥は卵殻のカルシウムに加えて、リン、微量ミネラル、ビタミンDを卵に入れ、リン・微量ミネラル・ビタミンDは主に卵黄に由来する、とニワトリの卵についての論文は述べる[6]。成分表の卵黄100gあたり、リン540mg、ビタミンD 12.0μgという値も、この説明と整合する[1]。カルシウム140mgと比べて、リンの割合が高い点が目を引く。

ビタミンについては、培養系の実験で、ビタミンD3が卵黄のカルシウム動員を刺激し、ビタミンKは絨毛尿膜が卵殻カルシウムを輸送する能力に不可欠だったと報告されている[5]。ただしこれは培養した胚での結果であり、生きた卵すべてで同じ仕組みが働くとまでは言えない。骨の石灰化を主に支えるカルシウム源は卵殻であり、卵黄はリンやビタミンDを供給し、ビタミンD3が卵黄カルシウムの動員を促す、というのが資料から言える範囲である。

5. ビタミンDは、にんげんの 骨ほねにも やくに たつの?

5. 黄身のビタミンDは、人の骨にもかかわる

5. ビタミンDと腸のカルシウム吸収 ── 卵黄から人の骨へ

にんげんの からだでも、ビタミンDは、たべた カルシウムを 小さな ちょう(おなかの 中)から からだに とりこむ ときに ひつようです[7]。

こどもの ときに ビタミンDが ひどく たりないと、骨ほねが じゅうぶんに かたく ならず、かたちが かわる ことが あります[8]。ビタミンDは、きみにも ふくまれて います[8]。

ただし、卵たまごを たべれば かならず ふせげる、という はなしでは ありません。ビタミンDが たりなく なる わけは ほかにも あります。

人でも、ビタミンDは骨の話に欠かせません。厚生労働省の統合医療情報発信サイトによると、ビタミンDは、腸でカルシウムが能動輸送で吸収され、血中のカルシウム濃度が保たれるために必要です[7]。カルシウムをたくさん食べても、ビタミンDが足りなければ体に取り込みにくくなるわけです。

子どものビタミンD欠乏は「くる病」として現れ、骨が十分にミネラル化されず、骨格の変形が起こることがあります[8]。同じ資料の注には、ビタミンDは卵黄に含まれていると書かれています。ただし、くる病の原因はビタミンDの欠乏だけではないので、卵を食べれば防げるという話ではありません。

それでも、ヒヨコが黄身から骨づくりの助っ人を受け取るように、人もビタミンDの助けを借りてカルシウムを使っている、という共通点は見えてきます。

このしくみは、人の骨にも関係する。厚生労働省の統合医療情報発信サイト(e-JIM)は、ビタミンDは、カルシウムが腸内で能動輸送によって吸収され、血中のカルシウム濃度が適切に保たれるために必要である、と説明する[7]。つまり、カルシウムをとる量だけでなく、ビタミンDもカルシウムの吸収にかかわる。

子どものビタミンD欠乏は、くる病として現れ、骨組織が適切にミネラル化されず、軟骨や骨格の変形が起こる。同じ資料の注には、ビタミンDは卵黄に含まれると記されている[8]。ただしくる病の原因はビタミンD欠乏だけに限らず、卵を食べれば防げるとは言えない。ここで言えるのは、ヒヨコの骨づくりでも人の骨でも、ビタミンDがカルシウムの動きを助ける点が共通するということである。

じぶんでも しらべてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

自分でも調べてみたくなったら

卵たまごを わったら、つぎは 殻からの うちがわを、ようく 見てみましょう。うすい まくが ついています。てを きれいに あらって、殻からの かけらを ゆびで さわってみると、かるいのに かたい ことが わかります。

おうちの人と いっしょに、パソコンで「しょくひん せいぶん データベース」を ひらくと、ほかの たべものの カルシウムの りょうを しらべられます。ぎゅうにゅうや ちいさな さかなと、卵たまごを くらべても おもしろいです。

卵を割ったら、殻の内側を観察してみましょう。うすい膜がはりついていて、その外側が白っぽく硬い殻です。手を洗ってから殻のかけらを持つと、軽いのに意外と硬いことが分かります。殻が割れたときのかけらの形も、見比べると面白いです。

もうひとつは、文部科学省の食品成分データベースを開いて、卵黄・卵白・全卵のカルシウム、リン、ビタミンDの数字を並べてみることです。牛乳や小魚など、ほかの食品と比べると、カルシウムの「どこに多いか」が見えてきます。成分表は改訂で値が変わるので、版もあわせて確認してください。

さらに知りたい人は、参考にした情報源の論文や、厚生労働省のビタミンDのページを直接読んでみてください。黄身のカルシウムをどれくらい使うかは、まだ分かっていないことが残っています。

身近にできることは二つある。ひとつは、割った卵の殻の内側を観察すること。薄い膜と、その外側の硬い殻の層を見比べると、「殻がカルシウムの貯金箱である」という説明が、手ざわりをもって理解しやすくなる。もうひとつは、文部科学省の食品成分データベースで、卵黄・卵白・全卵のカルシウム・リン・ビタミンDを並べ、牛乳や小魚の値と比べること。成分表は版ごとに数値が違うので、版を明記して比較するとよい。

原典に当たるなら、ニワトリ胚のカルシウム動員を扱った論文(Frontiers in Physiology 2022、Poultry Science 2022)と、Tuan & Ono(1986)の要旨が出発点になる。卵黄のカルシウムをどれくらい使うかは、まだ分かっていないことが残る。その点を扱った研究を探してみると、このテーマの先がさらに広がるだろう。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

卵黄と殻のカルシウムの量は、成分表と論文の値から計算した目安です。ヒヨコの胚の研究は、おもに論文の要旨にもとづいています。

  1. 文部科学省「食品成分データベース」卵類/鶏卵/卵黄/生。 https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=12_12010_7 (卵黄のカルシウム・リン・ビタミンDの量)
  2. 日本養鶏協会「日本食品標準成分表2020年版(八訂)資料」。 https://www.jpa.or.jp/keiran_root/pdf/20201225_01.pdf (全卵のカルシウム量と七訂からの変更)
  3. Halgrain ほか「Frontiers in Physiology」2022年。 https://www.frontiersin.org/journals/physiology/articles/10.3389/fphys.2022.838013/full (卵殻のカルシウム量、溶出の時期、骨格のカルシウムの割合)
  4. Halgrain ほか「Poultry Science」2022年。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34959155/ (骨格の石灰化は主に卵殻に頼ること、絨毛尿膜を通る輸送)
  5. Tuan & Ono「Development」97巻、1986年。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3794604/ (卵黄と卵殻の順番、ビタミンDとKのはたらき。要旨にもとづく)
  6. Halgrain ほか「Poultry Science」2022年(INRAE HAL版)。 https://hal.inrae.fr/hal-03457283v1 (卵黄から来るリン・ビタミンD、卵殻の成分。要旨にもとづく)
  7. 厚生労働省 統合医療情報発信サイト e-JIM「カルシウム」。 https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c03/01.html (ビタミンDとカルシウムの吸収)
  8. 厚生労働省 統合医療情報発信サイト e-JIM「ビタミンDの欠乏」。 https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c03/17.html (くる病とビタミンDが卵黄に含まれること)

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