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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

魚は 水の 中で、においや 味を どこで かんじるの?

魚は水の中で、においや味をどこで感じているの?

魚は水中で、においと味をどの器官で、どう使い分けて感じているのか

分野:生きもの

ナマズの なかまには、ひげだけでなく 体の 表面でも 味を かんじる ものが います。サケは、生まれた 川の 水の「におい」を おぼえて いると いう 研究も あります。

どうして 水の 中では、こんな ふしぎな ことが 起きるのでしょう。魚は、水に とけた ものを、鼻の 穴あなと、口や ひげや 体の 表面で うけとって います。この 記事では、そのことが わかります。

ナマズの仲間には、ひげだけでなく体の表面全体で味を感じるものがいます。サケは、生まれた川の水に含まれるアミノ酸の組み合わせを、においとして覚えているという研究もあります。

水の中で暮らす魚は、においと味をどう受け取っているのでしょうか。鼻の穴と、口だけでなくひげや体の表面にもある味蕾が主役です。サケの仲間には、子どものころに生まれた川のアミノ酸の組み合わせを覚え、海から戻るときの手がかりにするものがいる、と報告されています。この記事で、そのしくみが分かります。

ナマズ類は体の表面全体で味を感じ、サケ類の一部は母川水に溶けているアミノ酸の組成を記憶して帰るとされる。水中では、においも味も「水に溶けた物質」を受け取る感覚になる。

では魚は、嗅覚器と味蕾をどう使い分け、何を読み取っているのか。鼻孔の構造、口外の味蕾、サケ類の母川の記銘、傷ついた仲間が出す警報物質の研究から、その答えと、まだ議論が残る点が分かる。

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1. 水の 中では、においも 味も「とけた もの」

1. 水の中では、においも味も「溶けたもの」

1. 水中では、嗅覚と味覚の境目があいまいになる

目の 前に、おいしそうな カレーの なべが あるとします。においは 空気に のって 鼻まで とどき、味は 口に 入れてから わかります。

でも、水の 中は ちがいます。魚の まわりには、空気では なく 水が あります。においの もとに なる ものも、味の もとに なる ものも、水に とけて 流れて きます[3]。

そのため 魚は、鼻でも 水に とけた ものを かんじます。人には においの しない アミノ酸さんが、魚では 味を かんじる ところと、においを かんじる ところの りょうほうを しげきすると 説明せつめいされて います[3]。

においを うけとる 鼻の ところと、味を うけとる ところは、べつべつに あります。

陸の動物は、空気中を漂う物質をにおいとして、水に溶けた物質を味として感じます。ところが水の中では、においのもとも味のもとも、水に溶けた形で届きます。

魚の場合、まわりの水が鼻の穴にも出入りするので、嗅覚器も水に溶けた物質を感じます。人には無臭のアミノ酸が、魚では味覚器と嗅覚器の両方を刺激する、という例もあります[3]。

においを受け取る嗅覚器(嗅上皮)と、味を受け取る味覚器(味蕾)は、別々の場所にあります。では、その二つは、体のどこにあるのでしょうか。

陸上の動物は、気体中の分子を嗅覚、液体に溶けた分子を味覚で受け取って区別する。水中では事情が変わる。周囲の水が嗅覚器にも出入りするため、嗅覚器もまた水溶性の物質を検出する。

境目があいまいになる例として、人には無臭のアミノ酸が、魚では味覚器と嗅覚器の両方を刺激する[3]。嗅覚器(嗅上皮)と味覚器(味蕾)は、それぞれ別に存在する。なお、細部は種によって異なりうる。

では、受容器官はどこにあるのか。次の節から、鼻孔、口外の味蕾の順に見ていく。

2. 魚の 鼻の 穴あなは、水の 通り道

2. 魚の鼻の穴は、息ではなく水の通り道

2. 前鼻孔と後鼻孔 ── 水を通して嗅ぐ構造

魚の 顔を よく 見ると、目の 前に 小さな 穴あなが あります。これが 鼻の 穴あなです。多くの 魚では、前と うしろに 1つずつ、あわせて 2つ あります[1]。

この 穴あなは、人の 鼻と ちがって、口とは つながって いません。ほとんどの 魚では、穴あなの 中が 1本の くだに なって いて、前の 穴あなから 入った 水が、うしろの 穴あなから 出て いくと 説明せつめいされます[1]。

水が 通る とき、穴あなの 中の 細ぼうが、水に とけた ものを つかまえます。それを 神経しんけいで 脳のうへ おくります[2]。

鼻の よさは、魚に よって ちがいます。サメは、においを うけとる ものが 大きい ほうだと いわれます。フグの なかまには、鼻が 小さく、おもに 目で えさを さがす ものも います[2]。

魚の鼻の穴は、息をするためのものではありません。多くの種で、吻(口先)の前後に前鼻孔と後鼻孔の二つがあり、皮膚の下でつながったU字型の管になっています。口の中とは通じていません[1]。一般的な説明では、前の穴から入った水が後ろの穴から出ていきます。ただし、すべての魚が同じ向きとは限りません。

水が通る間に、穴の中にある嗅上皮の嗅細胞が、水に溶けた化学物質を受け取ります。その信号は嗅神経を通って、脳の嗅球へ送られます[2]。

感度は魚によって大きくちがいます。サメは受容体や嗅覚に関わる脳の領域が大きい傾向があります。一方、フグの一部は嗅覚器が小さく、主に視覚でえさを探します[2]。魚の暮らしによって、鼻にたよる度合いが変わるのです。

では、味のほうはどうでしょう。魚の味は、口の中だけの話ではありません。

多くの種で、魚の鼻孔は吻の前後に前鼻孔・後鼻孔の2つがあり、皮下で連結したU字型の管をなし、口腔には通じない。水は前鼻孔から入り後鼻孔から出ると説明されるが、全種共通とまでは言えない[1]。

この管の中の嗅上皮にある嗅細胞が、水に溶けた化学物質を受容し、嗅神経が信号を嗅球へ送る[2]。陸の動物のように息を吸い込む必要がなく、水の流れそのものが試料を運んでくる点が構造上の特徴だ。

感度は種で異なる。サメは嗅覚関連の受容体や脳領域が大きい傾向にある一方、フグの一部は嗅覚器が小さく、主に視覚で餌を探す[2]。つまり嗅覚への依存度は、生息環境や採餌方法に応じて変わる。

嗅覚器だけでは、水中の化学情報の半分しか見ていない。次に、味蕾が体のどこにあるかを確かめる。

3. 味は、口の 中だけ では ない

3. 味を感じる場所は、口の外にもある

3. 口外の味蕾 ── ひげ・体表・ひれ

人は 味を 舌したで かんじます。魚は、口の 中にも 味を かんじる ところが ありますが、それだけでは ありません。くちびる、ひげ、魚に よっては 皮ふや ひれにも あります[2]。

チョウザメは、ひげで えものを さがします。タラの 一部は、ひれにも 味を かんじる ところが あります[2]。

とくに、水の 底そこに すむ 魚は、味の しくみが 多い ことが 多いと いわれます。にごった 水の 底そこでは 目で 見えにくいので、その ためだと 考えられて います[2]。

ひげは、ふれた ものの 味を すぐ たしかめられる、むき出しの 味見係の ようです。ただし、ひげの 味が 魚に とって どんな 感じなのかは、人には 分かりません。

ひげや体表の味蕾

魚の味蕾は、口の中だけにあるのではありません。唇、ひげ(触鬚)、種によっては皮膚やひれにもあります[2]。チョウザメはひげの味蕾で獲物を探し、タラの一部はひれに味蕾があります[2]。

なぜ底の魚に多いのか

水の底にすむ魚は、味の構造が多い傾向があります。濁った水では目が使いにくいため、と考えられています[2]。多くの魚の仲間(真骨魚類)では、味蕾がひげなど口の外の体表にもあるという報告があります[4]。

鼻の嗅覚器は水に溶けた物質を受け取り、ひげや体表の味蕾は、近くの物質を受け取ります。ただし、この使い分けは資料の説明を私がまとめた見方で、すべての魚に当てはまるとは限りません。

味蕾は口腔内にとどまらず、唇・ひげ(触鬚)・種によっては皮膚やひれにも分布する[2]。チョウザメはひげの味蕾で獲物を探し、タラの一部はひれに味蕾をもつ。底生魚で味覚の構造が多い傾向は、濁った水中では視覚が使いにくいためと考えられている[2]。

真骨魚類の味蕾が触鬚を含む口外の体表に分布するという報告があり、ギギやゼブラフィッシュではひげの前方側に多く、後方や側面には少ないという[4]。ひげは進行方向に向いた「先端」であり、前方側に味蕾が多いことは、対象物に最初に触れる面で化学情報を集める構造として筋が通る。ただしこの解釈は筆者の推論で、資料が因果まで述べているわけではない。

種ごとの細部は資料によって異なりうるが、ここで紹介した魚では、ひげや体表にも味蕾がある。では、体のほぼ全体が味蕾におおわれた魚はどうなるのか。

4. ナマズの なかまは、体じゅうで あじわう

4. ナマズの仲間は、体じゅうで味わう

4. アメリカナマズ類の体表味覚と、ゴンズイのひげのセンサー

体じゅうに 味を かんじる ところが ある 魚が います。アメリカナマズの なかまです。体の 表面が ほとんど 味を かんじる ところで おおわれ、いちばん 多い ところは ひげだと 説明せつめいされます[5]。

その 数は、約やく68まん、10まん こえ、など 資料しりょうに よって ちがいます。そのため、この 記事では 数を 1つに 決めません[5]。

アメリカナマズは、ふつうの アミノ酸さんの ほとんどを、味で かんじ分けられると 報告ほうこくされて います[6]。

日本の 海に いる ゴンズイ(ナマズの なかま)の ひげには、水の すっぱさの わずかな ちがいを かんじる 仕くみが あると 2014年に 報告ほうこくされました。いきを する ゴカイが 出す 二さん化たんそで 水が 少し すっぱく なる ことを 手がかりに、くらやみでも かくれた ゴカイを 見つけたと いいます[7]。これは 味とは べつの センサーです。

体の表面全体が味蕾

アメリカナマズの仲間では、体全体が味蕾におおわれ、密度が最も高いのはひげだと説明されます[5]。ただし総数は、約68万個、10万個超など資料によって大きく食い違います。そのため、数は断定しません。ひげの皮膚で1平方ミリあたり約25個という例も、ブルヘッドという一例です[5]。

どんな味を感じるのか

アメリカナマズは、ふつうのアミノ酸のほとんどを味覚で検出できると報告されています。サケ類が反応するのは、プロリンやアラニンなど少数のアミノ酸が中心です。キニーネなどのアルカロイドにも、味覚が敏感です[6]。

味ではないセンサー

海のナマズの仲間のゴンズイは、ひげに水の酸性度(pH)のわずかな低下を感じるセンサーをもつと、2014年6月6日号の科学誌Scienceで報告されました。呼吸で二酸化炭素を出すゴカイが隠れていると、その周りの水がわずかに酸性に傾きます。ゴンズイはそれを手がかりに、暗闇でもゴカイを見つけました[7]。これは味覚とは別の化学センサーとして扱われています。

アメリカナマズ類では体全体が味蕾におおわれ、密度が最も高いのはひげとされる。総数は「約68万」「10万超」など資料間で食い違うため、数は断定しない。ブルヘッド(ナマズ類)のひげの皮膚で約25個/mm²という報告も一例にすぎない[5]。

感知できる物質の幅も広い。アメリカナマズは、ほぼすべての一般的なアミノ酸を味覚で検出できると報告されている。サケ類の味覚が反応するのは、プロリン・アラニンなど少数のアミノ酸が中心であり、種によって「味わえる世界」の広さが異なる。アルカロイド(キニーネなど)にも敏感だ[6]。

2014年6月6日号のScienceでは、Caprioらが、ナマズ目の海水魚ゴンズイのひげに水のpHの小さな低下を感じるセンサーがあると報告した。ゴカイは呼吸でCO₂を出して周囲の水をわずかに酸性にし、ゴンズイは暗闇でも隠れたゴカイを見つけた[7]。ただしこれは味覚ではなく、別の化学センサーとして扱われる点に注意が要る。

ゴンズイの話は報道(NBC News)経由の紹介なので、原典の論文にもあたりたくなる。次は、においを「記憶」に使うと報告された魚の話に進む。

5. サケの なかまは、生まれた 川の においを おぼえて いる?

5. サケの仲間は、生まれた川のにおいを覚えているのか

5. サケ類の母川記銘 ── 溶存遊離アミノ酸と鼻をふさぐ実験

サケの なかまには、海で 大きく なって、生まれた 川に もどる ものが います。その 道しるべの ひとつが「におい」だと 考えられて います。

北海道大学などの 研究では、シロザケや サクラマスなどの 子どもの 魚は、川を 下る ころ、生まれた 川に とけて いる アミノ酸さんの 組み合わせを おぼえ、大きく なってから、そのにおいを たよりに 川を えらぶと 報告ほうこくされました。ただし、カラフトマスは えらびませんでした[8]。サケの 仲間なかまでも、同じでは ない ところが おもしろい点です。

むかし、アーサー・ハスラーという 研究者が、「サケは 川の においを おぼえて もどる」と 考えました。1953年の 実験じっけんでは、鼻の 穴あなを ふさがれた サケ 70ひきのうち 28ひきが ちがう わかれた 川に 入りました。ふさがれなかった 73びきのうち ちがう わかれた 川に 入ったのは 8ひきでした[10]。割合わりあいにすると、およそ 40%と 11%です。

北海道大学などの研究によると、シロザケ、サクラマス、ベニザケ(ヒメマス)は、川を下る稚魚のころに、母川に固有の「溶存遊離アミノ酸」の組成を、川の水のにおい成分として記憶し、成熟後に嗅覚でそれを見分けて母川を選ぶとされます。カラフトマスは選びませんでした[8]。

このアミノ酸は、主に川底のバイオフィルム(付着した微生物の集まり)が作ると考えられています。流域・季節・年による変動が小さい組成があるとされ、それが川の「名札」の役目を果たしているのかもしれません[8]。ただし「記憶する」という言い方は研究報告の表現で、サケの頭の中で何が起きているかまでは、まだ分かっていません。

鼻をふさがれたサケ

アーサー・ハスラーは1946年ごろ、サケは川のにおいを覚えて帰るという仮説を立てました。1953年のIssaquah Creekでの野外実験では、鼻の穴をふさがれたサケ70匹のうち28匹が違う支流に入りました。ふさがれなかった73匹で違う支流に入ったのは8匹です[10]。割合に直すと、およそ40%と11%で、鼻をふさぐと道をまちがえる割合が高くなりました。

北海道大学の科研費研究(2006〜2008年度)の成果概要は、シロザケ・サクラマス・ベニザケ(ヒメマス)が降河する稚魚期に、母川固有の溶存遊離アミノ酸(DFAA)の組成を母川水のにおい成分として記銘し、成熟期に嗅覚でそれを識別して母川を選択する、と報告する。カラフトマスは選択しなかった[8]。サケ類全体に一般化できない点に注意が要る。

DFAAは主に河床のバイオフィルムが生成すると考えられ、流域・季節・年による変動が小さい組成が存在する[8]。変動が小さいことは、数年後に同じ川へ帰る際の手がかりになりうる条件だ。ただし「記憶」は研究報告の表現で、神経機構は示されていない。

この仮説の源流は、ハスラーが1946年ごろ立てた「サケは川のにおいを覚えて帰る」という考えにある。1953年のIssaquah Creekの野外実験では、鼻孔をふさがれたサケ70匹中28匹(40%)が異なる支流に入り、ふさがれなかった73匹では8匹(約11%)だった[10]。1968年からはA. スコルツと、幼魚に人工化学物質を短時間嗅がせ、18か月後に同じ物質を流した湖へ呼び寄せる実験を行ったと紹介されている[10]。ただしBYUの解説は一般向けで、化学物質名や詳しい数値までは載っていない。

6. きずついた 仲間なかまの においで、みんなが にげる

6. 傷ついた仲間のにおいで、みんなが逃げる

6. 警報物質シュレックシュトフ ── 化学と野外での議論

においは、えさや 川を 見つける だけでは ありません。仲間なかまに 危険きけんを 知らせる ことも あります。

ヨーロッパの ミノーという 小さな 魚が けがを すると、皮ふから 出る ものに 気づいた 仲間なかまが、にげたり、じっと かたまったり します。この ものは「けいほうぶっしつ」と よばれ、ドイツ語で きょうふの ものと いう 意味の「シュレックシュトフ」と 名づけられました。カール・フォン・フリッシュが 1938年に 報告ほうこくしました[11]。仲間なかまは、においで これを 感じます。

2012年には、ゼブラフィッシュの 研究で、ねばねばした ねんえきの 中の 糖とうに にた コンドロイチンが、はたらく 成分せいぶんだと 示しめされました。これを こわしたり 中和したりすると、仲間なかまを こわがらせる 力が なくなりました[11]。

ただし、野生の ミノーでは、皮ふの エキスで 行動が かわらなかった 研究も あります。自然しぜんの 中での はたらきには、まだ 話し合いが つづいて います[12]。

においは、えさや川を見つけるためだけのものではありません。コイ科の小魚のミノー(ヨーロッパに多い種類)が傷つくと、皮膚から出る物質に仲間が反応して、逃げたり動きを止めたりします。この物質は、ドイツ語で「恐怖の物質」を意味するシュレックシュトフ(警報物質)と呼ばれ、カール・フォン・フリッシュが1938年に報告しました。仲間は嗅覚でこれを感じます[11]。

長い間、成分ははっきりしませんでした。2012年のCurrent Biologyの研究は、ゼブラフィッシュで、粘液にある糖に似た分子コンドロイチンが有効成分だと示しました。分解したり抗体で中和したりすると、怖がらせる力が消えました。コンドロイチンだけでも警戒行動が出ますが、薄めない皮膚抽出液よりは弱いと報告されています。嗅球のある領域(crypt cell)が反応します[11]。

一方、野生のミノーでは、皮膚抽出液で行動が変わらなかった研究もあります。自然の中でどう働くかは、議論が続いています[12]。「必ず逃げる」とは言えないのです。

警報物質(Schreckstoff、ドイツ語で「恐怖の物質」)は、コイ科の小魚ミノーが傷つくと皮膚から放出され、仲間が嗅覚で感じて逃避や凍結の行動を示す物質で、カール・フォン・フリッシュが1938年に報告した。ウグイやコイの仲間と同一視はできず、欧州のミノーでの報告である[11]。

成分は長く未確定だったが、2012年のCurrent Biologyは、ゼブラフィッシュで粘液中の糖様分子コンドロイチン(グリコサミノグリカン)が有効成分だと示した。分解や抗体による中和で怖がらせる力が消え、コンドロイチン単独でも警戒行動は出るが、希釈しない皮膚抽出液より弱い。嗅球のcrypt cellを含む領域が反応する[11]。コンドロイチンだけでは抽出液の効果を再現しきれないため、他の成分も寄与する可能性が残る。

野外では、野生のミノーで皮膚抽出液が行動を変えなかった研究もあり、自然界での機能には議論がある[12]。実験室の水槽と川では、水の流れや薄まり方が異なる。ここまでの話を、身近な場所で確かめる手がかりを、最後の節で考える。

7. 魚の どこが はたらくか、見て みよう

7. えさに近づく魚の動きを見てみよう

7. 観察の手がかりと、読みたい資料

もし おうちで 魚を かって いるか、水族館や 池に 行く ときは、魚が えさに ちかづく 様子を 見て みましょう。えさを 見つけるのに、まず 顔を むけるのか、ひげや 口で さぐるのか、見る だけで かまいません。

ひげの ある 魚なら、ひげで 底そこを ふれて 歩くように 動くのか、それとも あまり 使わないのか、見て みます。水そうの 水に 手や 食べものを 入れて 実験じっけんするのは、魚の 体に よくないので しないで ください。

見て 分かった ことは、「見えたこと」と「そう 感じた 理由の 予想」を 分けて メモしましょう。予想が 合っているかどうかは、そのときの 魚や 水に よって ちがいます。

魚を飼っている家なら、水槽の魚がえさに近づく様子を観察してみましょう。魚が、まずえさのほうへ顔を向けるのか、それともひげや口先で探るのか。ひげのある魚なら、底をひげでなぞるように動くかも見ます。観察するだけで十分です。水に手や食べ物を入れて試すのは、魚の体に負担がかかるのでやめてください。

水族館や池でも、同じように見られます。見えたことと、そう動く理由の予想とを分けてメモしておくと、あとで資料と比べやすくなります。予想がはずれることも大切な発見です。

本文で出てきた研究のうち、サケの母川の記憶は科研費の成果概要[8]が、サケの仲間のほかに、魚が危険を知らせる方法がないかも、図鑑や図書館の本で調べてみると、おもしろい発見があるかもしれません。

観察するなら、飼育している魚や水族館の魚で、えさへの接近のしかたを見る。顔を向けてから近づくのか、ひげや口先で触れて探るのか、底をなぞるのか。「見えた行動」と「感覚器の推測」を分けて記録する。水槽に手や食べ物を入れて試すのは、魚の負担になるため避ける。

この記事の主な出典のうち、日本語で原典に近いのは、サケの記銘を扱う科研費の成果概要[8]と北海道大学の公開講座資料[9]だ。ハスラーの実験の経緯は[10]、警報物質の化学は[11]が英語で読める。

残る問いも多い。ナマズ類の味蕾の総数は資料間で食い違い、サケの記憶の神経機構や、野外での警報物質の働きは、まだ議論が続いている。味蕾の総数に資料ごとの差がある理由も、調べてみたくなる点だ。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:下の資料のうち、英語のものは一般向けの解説が中心で、細かい数値は確かめられる範囲にとどめた。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. 魚類(Wikipedia)。https://ja.wikipedia.org/wiki/魚類 (鼻孔の構造について。二次資料)
  2. FISHBIO「Sense and Sensibility: The Five Senses of Fish Perception」。https://fishbio.com/sense-and-sensibility-the-five-senses-of-fish-perception/ (嗅覚器と、口の外の味蕾について)
  3. Olfaction(Wikipedia)。https://en.wikipedia.org/wiki/Olfaction (水中での嗅覚と味覚のちがいについて。二次資料)
  4. 鹿児島大学リポジトリ(論文要旨)。https://ir.kagoshima-u.ac.jp/records/16767/export/json (ひげと体表の味蕾について)
  5. Mental Floss「Can Fish Taste?」。https://www.mentalfloss.com/animals/fish/can-fish-taste (ナマズ類の体表の味蕾について。数は資料で食い違う)
  6. Gustatory Detection of Tetrodotoxin and Saxitoxin(PMC)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3229235/ (アメリカナマズのアミノ酸への味覚について)
  7. NBC News(Live Science配信)。https://www.nbcnews.com/news/amp/wbna55340303 (ゴンズイのひげのpHセンサーの報告について。報道)
  8. 科研費 KAKEN 基盤研究A(北海道大学、2006〜2008年度)。https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18208017 (サケ類の母川のアミノ酸の記憶について)
  9. 北海道大学 公開講座資料(2015年)。https://www.ees.hokudai.ac.jp/ees/wp-content/uploads/2022/06/2015text_4.pdf (サケ類の母川回帰についての公開講座資料)
  10. BYU Life Sciences「No Place Like Home」。https://lifesciences.byu.edu/magazine/no-place-like-home (ハスラーの実験について。一般向け記事)
  11. Scientific American「Fish Schreckstoff」。https://www.scientificamerican.com/article/fish-schreckstoff/ (警報物質について。一般向け記事)
  12. Magurran ほか、野生のミノーの警報物質についての研究(JSTOR)。https://www.jstor.org/stable/50401 (野外のミノーで皮膚抽出液の効果が見られなかった例について)

なおした ところ

更新履歴

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