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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

きつねは どうして、きたの うみの そばにも まちの こうえんにも いるの?

キツネは、北極海の岸辺にも砂漠に近い土地にも街の公園にもいるのはなぜか

アカギツネは北半球のほぼ全域に分布する ── 食べ物・巣穴・人との距離から広い暮らしを読む

分野:生きもの

きつねは、きたの うみの きしの ちかくから、たかさ 4500メートルの たかい ところ、さらに まちの こうえんにまで すんで います[1]。おなじ 1しゅるいの きつねが、です。

ポーランドの まち ワルシャワの みどりの ある ところでは、きつねの いる ばしょが 40ねんで 21パーセントから 93パーセントに ふえました。どうして そんなに いろいろな ところで くらせるのでしょう。たべものの えらびかたと、あなの ほりかた、そして 人との きょりが てがかりに なります。

北極海の岸辺にも、標高4500mの高地にも、半砂漠にも、そして街の中にも、同じアカギツネという1つの種が暮らしています[1]。寒さも食べ物も、まるで違う場所です。

ワルシャワの緑地では、キツネのいた場所が約40年で21%から93%に増えました。なぜ、そんなに広い範囲で暮らせるのでしょうか。食べ物、巣穴、人との距離という3つの手がかりを追うと、街へ広がる動きまで見えてくるのでしょうか。

アカギツネは北半球のほぼ全域に分布し、北は北極海の沿岸に達する。生息する高さも、低地から標高4500mの高地にまで及び、半砂漠から都市の中までを含む[1]。1つの種が、これほど性質の異なる環境に暮らしている。ワルシャワの緑地では、キツネのいた割合が約40年で21%から93%に増えた。

広い分布の背後には何があるのか。食べ物・巣穴・人との距離という手がかりと、ワルシャワや札幌に見られる街への進出を、辞典と研究論文をつきあわせて読むと分かる。

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1. きつねは、せかいの どこまで ひろがって いるの?

1. 同じ1種が、北極海の沿岸から半砂漠まで暮らしている

1. 北極海の沿岸から標高4500mまで ── 分布の広さと「世界一」と言わない理由

きつねの なかまの ひとつ、アカギツネは、せかいの きたの はんぶんに ひろく すんで います[3]。きたは、ほっきょくかいの きしの ちかくまで。ヨーロッパ、アジア、きた アメリカ、きた アフリカにも います[1]。

たかさも いろいろです。ひくい ところから、たかさ 4500メートルの たかい ところまで。さばくに ちかい ところも、くさの はらも、もりも、むらの ちかくも、まちの なかも、すみかに なります[1]。

どうぶつの なかでも、オオカミと ならんで、とても ひろく ひろがって いる なかまの ひとつと いわれます。ただし「せかい一」とは いいきれません。

では どうして、こんなに いろいろな ところで くらせるのでしょう。てがかりは 3つ あります。なんでも たべる ことと、あなを じぶんで ほれる ことと、人の ちかくにも いる ことが ある こと。1つずつ みて みましょう。

キツネ(アカギツネ)の分布を地図にすると、北アフリカ、ヨーロッパ、アジア、北アメリカにまたがり、北は北極海の沿岸にまで達します[1]。英語版Wikipediaも、北半球のほぼ全域にいると書き、国際自然保護連合(IUCN)の評価を引いて「軽度懸念」にあたると紹介しています[3]。IUCNの原典ではなく、百科事典を経由した情報です。哺乳類のなかでは、オオカミと並んで、もっとも分布の広いものの一つとされます[1]。ただし「世界一」と言い切れる資料ではないので、ここでは「一つ」にとどめます。

広いのは、北と南の幅だけではありません。低地から標高4500mの高地まで、半砂漠、草原、森林など、さまざまな環境に分布し、村落の近くや都市にも暮らすとされます[1]。

北極海のそばと半砂漠では、気温も、手に入る食べ物も大きく違うと考えられます。それでも同じ1種が暮らせるのはなぜでしょうか。資料からは、食べ物をあまり選ばないこと、巣穴を自分で掘れること、人家の近くにいる例もあることの3つが手がかりとして読み取れます。次の章からは、まず日本のキツネに目を向け、その3つを順に確かめていきます。

キツネという動物を、雪原の写真で思い浮かべる人は多いだろう。ところが分布を地図にすると、北アフリカ、ヨーロッパ、アジア、北アメリカにまたがり、北は北極海の沿岸に達する[1]。英語版の百科事典は、北半球のほぼ全域にいると記し、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「軽度懸念」にあたるとする[3]。ただしこの評価は原典のページを開けず、百科事典を経由した情報である。哺乳類のなかでオオカミと並び、もっとも分布の広いものの一つとされる[1]が、「世界一」と言い切れる根拠は資料にない。

広いのは緯度だけではない。低地から標高4500mの高地まで、半砂漠地帯から草原、森林に至るさまざまな環境に分布し、村落の近くや都市にも暮らす[1]。北極海の沿岸と半砂漠では、気温も、手に入る食物の種類も大きく異なると考えられる。それでも1つの種が暮らしていける。

資料から読み取れる手がかりは、食物をあまり選ばないこと、巣穴を自分で掘れること、人の生活圏にも暮らす例があることの3つである。ただし、辞典はこれらを「広い分布の理由」と断定して書いているわけではない。複数の記述を並べて、つなげて考えた読み方であることは、先に断っておく。次章ではまず、日本にいる2つの亜種を見る。

2. にほんの きつねは、どんな ところに いるの?

2. 日本には北海道と本州以南で2つの亜種がいる

2. 日本のキタキツネとホンドギツネ ── 平地から高山帯、人家のそばまで

にほんの きつねは、アカギツネの 2つの なかま、「あしゅ」に わかれます。ほっかいどうに いるのが キタキツネ、本州・四国・九州に いるのが ホンドギツネです[1]。

どんな ところに いるのでしょうか。たいらな ところから、たかさ 1800メートルくらいの 山まで、おおく います。もっと たかい 山の うえの ほうにも すんで います[2]。

おどろくのは、人の いえの ちかくにも、わりあい おおいと いわれる ことです[2]。きつねは、山おくに ひっそり いる どうぶつ、とは かぎらないのです。

日本では、北海道に分布するキタキツネと、本州・四国・九州に分布するホンドギツネが、亜種として分かれています[1]。亜種というのは、同じ種のなかで、すむ地域ごとにまとまった仲間のことです。日本にもともといるキツネは、この2つとされます。

すみかとして多いのは、平地から標高1800mくらいまでの山地です。ただ、高山帯にもすみ、人家の付近にも比較的多い、と世界大百科事典は書いています[2]。

山奥の動物というイメージがあると、「人家の近くに多い」という記述には少し驚きます。ここに、広い分布を読み解くヒントがありそうです。人の近くを避けないのだとすれば、都市の中までキツネが入りこめることと、つながってきます。ただ、そのためにはまず、巣と食べ物の話を見ておく必要があります。

日本のアカギツネは、北海道(および樺太、南千島)にすむキタキツネと、本州・四国・九州にすむホンドギツネの2亜種に分かれる[1]。亜種とは、同じ種のなかで、すむ地域ごとに特徴のまとまった集団のことである。日本には他のキツネ属は自然には分布しないとされる。

では日本のキツネは、どんな場所にいるのか。世界大百科事典は、ふつう平地から標高1800mくらいまでの山地に多く、高山帯にもすみ、人家付近にも比較的多いとする[2]。第1章の「村落の近くや都市にも暮らす」という記述と同じ方向を向いている。

「キツネは山奥の動物」という印象とは、少しずれている。むしろ、人の生活圏を避けないという性質が日本の記述にも表れていると読める。この点は第6章の札幌の例で、研究者の説明とつながる。その前に、暮らしの土台である食べ物と巣穴を確かめておこう。

3. なにを たべて、どこに すむの?

3. なんでも食べて、巣穴は自分で掘る ── 場所を選ばない暮らし方

3. 雑食と巣穴と行動圏 ── 暮らす場所を選ばない条件を資料から読む

きつねは、なんでも たべる どうぶつです。ねずみや うさぎの ような 小さな どうぶつを おおく たべます。ほかにも、むし、さかな、かえる、とり、とりの たまご、くだものも たべます[1]。

すむ ところの あなは、じぶんで ほります。つちが やわらかくて、水が たまりにくい ななめの ところに、ひくい きなどに おおわれた 場所を えらびます[1]。あなの 入り口は ふつう いくつか あって、19こも あった れいも あります。

アナグマや うさぎの あなを つかう こともあります[1]。じぶんで ほれて、かりる ことも できるのです。

ごはんの えらびかたが ゆるい 子は、どこの いえの ごはんでも たべられます。きつねも、ごはんを えらばない ぶん、いろいろな ところで くらせるのかも しれません。ただし ほんとうは、それだけが りゆうと きまった わけでは ありません。

あるきまわる ひろさは、じしょに よって すうじが ちがいます。1キロメートル 四ほうくらい、という ものも、2〜3キロメートル 四ほうから 7キロメートル 四ほうと いう ものも あります[1][2]。えさの おおさで、ずいぶん かわります。

食べ物をほとんど選ばない

キツネは雑食性で、ノネズミやウサギなどの小型の哺乳類を多く食べます。そのほか、昆虫、魚、カエル、鳥とその卵、果実も食べます[1]。特定の食べ物だけに頼っていないので、その土地で手に入るものを食べて暮らしを組み立てられると考えられます。

巣穴は自分で掘る

巣穴は、土がやわらかく水はけのよい斜面で、低木などに覆われた場所に自分で掘ります。入口は普通は数個で、19個もあった例が報告されています[1]。アナグマやアナウサギの巣穴を使うこともあります。自分で掘れて、借りることもできる、という融通のきく巣づくりです。

歩きまわる広さ

餌を探して歩く範囲を行動圏といいます。日本大百科全書は、約100ヘクタール(一辺が約1kmの四角ほど)またはそれ以下とし[1]、世界大百科事典は2〜3km四方から7km四方程度としています[2]。辞典ごとに数字が違うのは、餌の量などで大きく変わるからだと考えられます。

好き嫌いの少ない人は、どこの家のごはんでも食べられます。キツネも、食べ物を選ばないぶん、土地ごとの暮らしに合わせやすいのかもしれません。ただし本当は、これだけが理由と決まったわけではありません。

キツネは雑食性で、ノネズミやウサギなどの小型哺乳類を多く食べる一方、昆虫、魚、カエル、鳥とその卵、果実や液果も食べる[1]。1種類の獲物に頼らず、その土地で手に入る食物を使い分けられる。北極海沿岸と半砂漠で、食べるものがまったく異なっていても暮らしが成り立つことと整合する。ただし、これはこの記述から導いた解釈であり、資料が分布の広さの理由として明示しているわけではない。

巣穴は、土がやわらかく水はけのよい斜面の、低木などが覆いになる場所に、自分で掘る。入口はふつう数個で、19個の例がある。アナグマやアナウサギの巣穴を使う場合もある[1]。この融通のきく巣づくりは、土地が変わっても生かしやすい条件だと考えられる。

行動圏は、日本大百科全書では約100ヘクタール(一辺が約1kmの四角に相当)またはそれ以下[1]、世界大百科事典では2〜3km四方から7km四方程度とされる[2]。面積に直すと、前者は約100ha、後者は約400〜900haから約4900haで、数十倍の幅がある。辞典のあいだで数字が割れる以上、1つの数字を「キツネの行動圏」と決めることはできない。餌の量などで大きく変わる、という説明のほうが実態に近い。

では、こうした暮らし方は、人が持ちこんだ先でも通用するのか。次章で、その例を見る。

4. 人が つれて いった さきでも、ふえるの?

4. 人が持ちこんだオーストラリアで、大陸の4分の3まで広がった

4. オーストラリアへの導入 ── 持ちこまれた先で分布を広げた例と、その限界

オーストラリアには、もともと きつねは いませんでした。1850ねんだい ごろ、人が もちこんだ と いわれます(しりょうに よって、ねんだいに ちがいが あります)[4]。

いまでは、大きな りくちの 4ぶんの 3ほど(76パーセント)に ひろがって います。ただし、あつい きたの ほうには いません[4]。

もともと その土地に いた どうぶつを たべる ので、「がいらいしゅ」として こまって います。きつねの くらしの うまさが、よその 土地では もんだいにも なる のです。

北半球のキツネが、南半球のオーストラリアにもいます。もともとはいなかった土地に、人が持ちこんだものです。時期は1850年代ごろとされますが、資料によって年代に差があります[4]。

オーストラリアの資料では、現在は大陸の約76%に広がっているとされます。4分の3ほどです。ただし、熱帯の北部にはいません[4]。どこまででも広がれるわけではない、ということも分かります。

もとからいる動物を食べてしまうため、外来種として問題になっています[4]。広い土地で暮らせる力は、持ちこまれた先では別の困りごとにもなります。キツネが悪いわけではなく、人が動物を運んだことで起きた問題です。

キツネ属は、オーストラリアには自然分布していなかった。人が持ちこんだとされ、導入は1850年代ごろとされるが、資料によって年代に差がある[4]。

導入先では、大陸の約76%にまで広がった。割合で言えば、ほぼ4分の3である。ただし熱帯の北部にはいない[4]。この「北部にはいない」という点は、キツネにも暮らせない場所があることを示している。第1章の「さまざまな環境」は、世界のどこでも暮らせるという意味ではない。

在来の動物を食べる外来種として、問題視されている[4]。広い環境で暮らせる性質は、元の分布域では自然な暮らしの一部だが、導入先では在来の生態系への圧力になる。人が動物を運んだことで起きた問題であって、キツネ自身に非があるわけではない。この記述は州政府の資料に基づく。

ここまでは、人が運んだ先の話だった。では人が運ばなくても、キツネは自分で人間の街へ入っていくのか。

5. まちの みどりの ある ところにも、ふえて いるの?

5. 街へも広がっている ── ワルシャワの緑地では21%から93%へ

5. 都市への定着 ── ワルシャワの緑地と英国の都市に見る広がり方と、その読み方の注意

ポーランドの まち、ワルシャワで、きつねが いる みどりの ある ところを しらべた けんきゅうが あります。1976〜78ねんに きつねが いたのは、しらべた ところの 21パーセント。それが 2016〜19ねんには 93パーセントでした[6]。4ばい あまりに ふえた ことに なります。

りゆうは、はっきりとは わかって いません。きつねの びょうきを ふせぐ ワクチンの たいさくや、川に そって みどりが つながって いる ことが かんけいした のでは、と かんがえられて います[6]。

イギリスの まちでも、きつねは 1930ねんだいに、みなみの ほうで はじめて すみついた と ほうこく されました。2012ねんの しらべでは、あまり いないと よそうされた まちの 91パーセントから、「みた」という ほうこくが ありました[5]。

ただし これは「みた」という ほうこくで、かずを かぞえた わけでは ありません。ワルシャワでも、あなは まちの なかより、もりで おおく みつかりました[6]。

街へ広がる動きは、すでにいくつかの国で調べられています。ポーランドのワルシャワでは、調べた緑地のうちキツネがいた場所の割合が、1976〜78年の21%から、2016〜19年には93%に増えました[6]。4倍あまりです。1970年代は目撃が少なく、密度も低かったと記録されています。

増えた理由は、はっきりしていません。狂犬病のワクチン対策や、ヴィスワ川沿いに緑がつながっていることが関係したのではないかと考えられています[6]。また、巣穴の多くは森で見つかり、住宅地ではありませんでした。街の「緑」を使っているのであって、住宅の真ん中にいるわけではないのです。

英国でも、都市での定住が最初に報告されたのは1930年代の南イングランドでした。2012年の調査では、1987年の時点でキツネが少ないと予測されていた都市の91%から目撃報告があり、北部や東部の都市へも広がっていました[5]。理由は「はっきりしない」とされています。

なお、これは目撃報告の割合で、個体数を数えたものではありません。「91%の都市にいる」と「91%の都市で見かけられた」は、同じではありません。

街への進出は、実際に数字で追える。ポーランドのワルシャワでは、調べた緑地のうちキツネが定着していた割合が1976〜78年に21%、2016〜19年に93%と報告されている[6]。比率にして約4.4倍である。1970年代は目撃が少なく、密度も低かった。

増加の背景として、狂犬病ワクチン対策と、ヴィスワ川沿いの緑の回廊が関係した可能性が論じられている[6]。原因を1つに絞った結論ではない点に注意したい。さらに、巣穴の多くは森で見つかり、住宅地では少なかった。つまり「緑地を利用している」のであって、住宅街そのものに暮らしの中心を移したと読むのは行きすぎである。

英国では、都市での定住の最初の報告は1930年代の南イングランドである。2012年の調査では、1987年に「少ない、または不在」と予測された都市の91%から、キツネの目撃報告が寄せられた。北部と東部の都市にも広がっていた[5]。広がった理由は、論文でも「はっきりしない」とされる。

数字の読み方にも注意が要る。英国の91%は、目撃報告が寄せられた都市の割合で、個体数ではない。ワルシャワの93%は、調べた緑地のうちキツネが確認された割合で、これも密度を示さない。2つとも「いる場所が増えた」ことは示すが、「数が増えた」とは別の話である。

では、日本の街ではどうなのか。次章で、札幌の公園を例にする。

6. さっぽろの こうえんで、なぜ 子そだてを するの?

6. 札幌の公園で子育てするのは、街が好きだからなのか

6. 札幌の公園での子育て ── 「人の生活圏が好き」という研究者の見方と、その裏側

さっぽろの こうえんで、キタキツネが 子そだてを する ことが あります。ほっかいどう大学の けんきゅうしゃは、きつねは もともと 山おくよりも、人の くらしの ちかくに ある ところを このむ、と せつめいします[7]。

てきの 少ない こうえんは、子そだてに とても よい 場所だ、と いう のです。ひろく すめる りゆうの 3つめ、「人の ちかくにも いる ことが ある」が、ここに でて きます。

いっぽうで、人に なれる きつねが ふえたり、ふんから うつる びょうき(エキノコックス)が しんぱいされたり して います[7]。やせいの どうぶつです。さわったり えさを あげたり せず、とおくから 見まもりましょう。

北海道の札幌では、キタキツネが公園で子育てをします。北海道大学の研究者は、キツネは元来、奥山よりも人の生活圏に近い場所を好み、外敵の少ない公園は絶好の子育て環境だと説明しています[7]。

この見方は、第2章の「人家の付近にも比較的多い」という記述とつながります。キツネが「街に来た」のではなく、もともと人の近くが嫌いではない動物が、暮らしやすい場所を選んでいる、という見方です。これは一人の研究者の説明で、すべての街に当てはまるとは限りません。

その一方で、人慣れが進んだり、ふんを介してうつるエキノコックスが心配されたりしています[7]。広く暮らせるキツネが、人の暮らしに近づくと、人との距離のとりかたが課題になります。野生の動物なので、近づきすぎず、餌を与えず、離れて見守るのが基本です。

北海道の札幌では、公園でキタキツネが子育てをする。北海道大学の研究者は、キツネは元来、奥山よりも人の生活圏に近い場所を好むとし、外敵の少ない公園は絶好の子育て環境だと説明している[7]。

この説明は、第2章の「人家付近にも比較的多い」という辞典の記述と整合する。「街に出てきた」というより、もともと人の近くを避けない動物が、都合のよい場所を選んでいる、という読み方である。ただし、これは研究者個人の見方である。都市進出がいつ始まったかは、この資料からは分からない。

同じ記事は、人慣れの進行と、ふんを介したエキノコックスへの懸念にも触れている[7]。広い環境で暮らせる動物が人の近くへ入ってくることは、その動物にとっても人にとっても、距離のとりかたが問われることを意味する。野生動物には近づかず、餌を与えない、という基本がここから導かれる。

ここまでの流れをまとめると、食べ物を選ばず、巣穴を自分で掘り、人の近くを避けない、という3つの条件が、北極海沿岸から街の公園までの広がりと結びついて見える。ただし、これは辞典・論文・新聞記事を並べた読み方で、因果を証明した結果ではない。

7. 1キロメートル 四ほうを、あるいて みよう

7. 地図とふだんの道で、キツネの行動圏を実感してみる

7. 辞典の数字を自分の足で確かめる ── 行動圏の読み比べ

おとなと いっしょに、いえの ちかくの ちずを ひらいて みましょう。いえを まんなかに して、1つの へんが 1キロメートルの 四かくを かきます。

この 四かくの なかを、きつねは えさを さがして あるきまわる ことが あります。あるくと、おとなで 15ふんくらいが めやすです。

じしょに よって、すうじは ちがいます。コトバンクで「キツネ」を ひいて、2つの じしょの すうじを くらべて みても いいでしょう。もし こうえんで きつねを みたら、ちかづかず、とおくから そっと みて ください。

行動圏の数字を、自分の暮らす場所で実感してみましょう。家の近くの地図で、家を中心に、一辺が1kmの四角を描いてみます。約100ヘクタールとは、この広さです。大人が歩くと、1kmは15分ほどが目安です。

次に、辞典のもう一つの数字、2〜3km四方で描いてみます。1km四方と比べて、地図の上でどれくらい広がるのか。「辞典ごとに数字が違う」とは、こういう差のことです。

コトバンクで「キツネ」を引くと、日本大百科全書と世界大百科事典の記述が並んで読めます。数字がどう違うか、見比べてみてください。公園などでキツネを見かけたら、近づかず、餌を与えず、遠くから観察してください。

行動圏の数字は、辞典によってこれだけ違う。約100ヘクタールとは一辺1kmの四角で、2〜3km四方は400〜900ha、7km四方は約4900haにあたる。計算は自分で確かめられる(1km=1000m、1ha=100m×100m=10000㎡)。

家の近くの地図に、1km四方と2〜3km四方の四角を描いてみると、数字の幅が実感として分かる。大人の徒歩で1kmは15分ほどが目安である。辞典のあいだで数字が割れていることは、キツネの行動圏が餌の量などの条件で大きく変わる、という説明と読み合わせられる。

読み比べの材料は、コトバンクで「キツネ」を引くと、日本大百科全書[1]と世界大百科事典[2]が並んで出てくる。2つの辞典の数字を、地図の上の四角の大きさで比べるだけでも、「辞典ごとに数字が違う」ことが日本語だけで確かめられる。

残された問いもある。キタキツネが都市へ入ってくる時期や仕組みには、まだ分からない部分が多い。自分の住む町で、キツネが目撃された場所や季節を調べてみると、次の問いが見つかるかもしれない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

出典について:辞典・百科事典、研究論文、政府関係の資料、新聞記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. コトバンク「キツネ」(日本大百科全書ほか)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%8D-48037 (分布、環境、日本の亜種、食べ物、巣穴、行動圏について。辞典)
  2. コトバンク「キツネ」(改訂新版 世界大百科事典)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%AD%E3%83%84%E3%83%8D-51104 (日本での分布の高さ、人家付近、行動圏について。事典)
  3. Wikipedia「Red fox」(IUCNレッドリストを引用)。https://en.wikipedia.org/wiki/Red_fox (北半球での分布と保全状況について。百科事典)
  4. PestSmart「European red fox」。https://pestsmart.org.au/toolkit-resource/european-red-fox/ (オーストラリアへの導入と分布について。オーストラリア政府関係の資料)
  5. 英国の都市のアカギツネ分布に関する研究(PLoS ONE)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4053368/ (英国の都市での目撃報告の広がりについて。研究論文)
  6. ワルシャワにおけるアカギツネの定着(1976〜2019年)に関する研究。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8260808/ (ワルシャワの緑地での割合の変化について。研究論文)
  7. 北海道新聞「キタキツネ、進む都会志向?」。https://www.hokkaido-np.co.jp/article/675296 (札幌の公園での子育てと研究者の説明について。新聞記事)

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