1. バナナは ずっと おなじ ねだん だったの?
1. 東京の値札の表 ── 55年動かなかったバナナ
1. 小売価格の長期表 ── 動かなかったバナナと、動き続けたみかん・りんご
東京の おみせの ねだんを、1キロあたりで しらべた ひょうが ある[1]。
- バナナは、1964ねんに 228円。2019ねんに 255円。
- みかんは、159円から 686円。
- りんごは、111円から 537円。
1964ねんは、バナナが いちばん たかかった。それが 55ねんの あいだ ほとんど うごかず、みかんと りんごに ぬかれた。
ところが 2025ねんの バナナは 353円。2020ねんの 259円から あがった[1]。みかんは 704円から 991円、りんごは 683円から 909円に なった。
この 5ねんで、ものの ねだん ぜんぶを あわせた ものさし(しょうひしゃ ぶっか しすう)は、およそ 12% あがった[2]。3つの くだものは、それより ずっと たくさん あがっている。バナナだけが うごかなかったのは、なぜだろう。まず、ねだんが なにで きまるのかを 見て みよう。
総務省統計局の小売物価統計調査は、東京都区部の店で、決まった銘柄の値段を毎月調べている。バナナ、みかん、りんごの1キログラムあたりの年平均は、日本バナナ輸入組合の「バナナ大学」が1964年から一つの表にまとめている[1]。抜き出すと、こうなる。
| 年 | バナナ | みかん | りんご |
|---|---|---|---|
| 1964 | 228 | 159 | 111 |
| 1990 | 247 | 552 | 502 |
| 2019 | 255 | 686 | 537 |
| 2025 | 353 | 991 | 909 |
1964年は、バナナが3つの中でいちばん高かった。それが2019年までの55年で、バナナは1.1倍、みかんは4.3倍、りんごは4.8倍になった(調べる銘柄が入れかわった年をふくむ数字だ)。1972年から2019年まで、バナナはずっと139円から286円のあいだにおさまっている[1]。
動きが変わったのは2020年からだ。2020年から2025年で、バナナは259円から353円(約36%増)、みかんは704円から991円(約41%増)、りんごは683円から909円(約33%増)。同じ5年で、消費者物価指数の総合は、2020年を100として111.9になった。約12%の上昇だ[2]。3つの果物は、物価全体より大きく上がっている。バナナだけが動かなかったのはなぜか。まず、値段が何で決まるのかから見ていく。
日本バナナ輸入組合の「バナナ大学」は、総務省統計局「小売物価統計調査報告」の東京都区部の年平均を、バナナ・りんご・みかんの3品目について1964年から一つの表にまとめている(単位は円/kg)[1]。そこから8年分を抜き出す。
| 年 | バナナ | みかん | りんご |
|---|---|---|---|
| 1964 | 228 | 159 | 111 |
| 1975 | 179 | 256 | 304 |
| 1990 | 247 | 552 | 502 |
| 2000 | 232 | 573 | 501 |
| 2010 | 226 | 561 | 456 |
| 2019 | 255 | 686 | 537 |
| 2020 | 259 | 704 | 683 |
| 2025 | 353 | 991 | 909 |
1964年は、バナナがみかんの1.4倍、りんごの2倍の値段だった。1975年には、りんごとみかんがバナナを抜いている。1964年から2019年までの倍率は、バナナが約1.1倍、みかんが約4.3倍、りんごが約4.8倍である(調べる銘柄の変更をふくむ。後の注意を参照)。1972年から2019年の48年間、バナナの年平均は139円から286円の範囲におさまった[1]。
2020年から2025年は様子が違う。バナナは約36%、みかんは約41%、りんごは約33%上がった。同じ期間に、全国の消費者物価指数(総合、2020年=100)は111.9まで、約12%の上昇だった[2]。この5年、3つの果物はいずれも物価全体を大きく上回って上がっている。
読むときの注意もある。東京の年平均であり、収穫の年と暦の年はずれる。りんごは調べる銘柄が時期によって「国光」「ふじ」「つがる」と入れかわっているので、同じ品種を追った線ではない。それでもバナナの列の平らさは、ほかの2つと並べると際立つ。この差の原因を探るため、まず値段を動かす基本の力である、市場に来る量から見ていく。
2. ねだんは、なにで きまるの?
2. 値段を動かす一番大きなもの ── 市場に来る量
2. 卸売市場の数字 ── 量が9%減った年に、値段は13%上がった
みかんが 10こ しか ないのに、ほしい 人が 12人 いたら、どうなるだろう。みかんは すぐに なくなって、おみせは ねだんを あげても うれる ように なる。
もちろん じっさいの ねだんは、市場や おみせの じじょうも あわさって きまる。でも、はいって くる りょうが へると ねだんが あがりやすい、という うごきは、数字にも でている。
2024ねんは、日本の 市場に はいった くだものの りょうが、まえの 年より 9% へった。ところが、1キロの ねだんの へいきんは 13% あがって 480円に なった[3]。
みかんの とれた りょうは、2024ねんに 18% へって、つぎの 年に 17% ふえた[4][5]。2017ねんにも、みかんが すくなくて、ねだんが きゅうに あがった、と つたえられて いる[12]。この りょうは、なにで ふえたり へったり するのだろう。
果物が店に並ぶ前に通ることの多い卸売市場について、農林水産省は取引の量と値段を毎年まとめている。2024年(令和6年)の結果では、果実の卸売数量は234万トンで、前の年より9%減った。減ったのは、主にみかんとりんごだ。一方、卸売価格は1キログラムあたり480円と、13%上がった[3]。
量が9%減ると、値段は13%上がった。食べたい量はすぐには変わらないので、品物が少なくなると、高い値段でも売れやすくなる。これが、量が少し減っただけで値段が大きく動く理由の一つだ。ただし平均の値段には、高い果物と安い果物の割合の変化も混ざるので、「9対13」がそのまま量と値段の関係というわけではない。
みかんで見ると、2024年産の収穫量は55万9,600トンで、前の年より18%減った。次の2025年産は65万6,300トンで、17%増えた[4][5]。2017年産は74万1,300トンで、農林水産省が見込んでいた適正生産量の87万トンを大きく下回り、需要の多い年末から価格が急騰した、とnippon.comは伝えている[12]。
もっと長い目で見ると、国産果実の卸売数量は、2016年(平成28年)の239万トンから2025年(令和7年)の182万トンへ、約24%減った。同じ期間に卸売価格は、1キログラム375円から536円へ、約43%上がっている。農林水産省の「果樹をめぐる情勢」(令和8年5月)にもとづく数字を、農業情報メディアが紹介している[6]。では、その量は、何で増えたり減ったりするのだろうか。
農林水産省の青果物卸売市場調査は、全国の卸売市場での取引の数量・金額・価格を集計している。2024年(令和6年)の果実は、卸売数量が234万トンで前年比9%減、主にみかんとりんごの減少によるものだった。卸売価額は1兆1,226億円で3%増、卸売価格は1キログラムあたり480円で13%上昇した[3]。
数量が9%減って価格が13%上がり、金額は3%増えた。食べたい量がすぐには変わらないなら、品薄になったとき、高い値段でも売れやすくなる。傷みやすい生鮮食品では、数量の変化より価格の変化のほうが大きくなりやすい(第5章でもう一度触れる)。ただし全体の平均価格は、単価の高い品目・品種の割合でも変わるので、「9%と13%」を量と価格の比例関係として読むことはできない。
単品の例がみかんだ。2024年産(令和6年産)の収穫量は55万9,600トンで前年産より12万2,000トン(18%)減った。2025年産は65万6,300トンで、9万6,700トン(17%)増えている[4][5]。2017年産は74万1,300トンで、農林水産省が見込んでいた適正生産量87万トンを大きく下回り、需要の多い年末から価格が急騰したと、nippon.comが伝えている[12]。
10年という長さでは、国産果実の卸売数量は2016年の239万トンから2025年の182万トンへ約24%減り、卸売価格は1キログラム375円から536円へ約43%上がった。この数字は農林水産省「果樹をめぐる情勢」(令和8年5月)にもとづくとして農業情報メディアが紹介しているもので、同記事は原因を、人口減による需要の減少を上回るペースで生産量が減ったことと、シャインマスカットのように単価の高い品種への転換に求めている[6]。では、その数量は何で増減するのか。まず天気から見る。
3. てんきは、くだものの なにを かえるの?
3. 木の数は同じでも ── 天気が変えるのは「1本あたりの実り」
3. 結果樹面積と10a当たり収量 ── 天気は面積ではなく、単位面積あたりの実りを動かす
みかんばたけの ひろさは、1ねんで 3%ぐらいしか かわらない。でも、とれた りょうは 18%も へった。どうしてだろう。
2024ねんの なつは、とても あつかった。あつさで、みが おちたり、ひに やけて だめに なったり した[4]。木は おなじ 数だけ あるのに、とれる みが へったのだ。
つぎの 年は、あきに あめが ふって、みが おおきく そだった。みかんの りょうは、17% もどった[5]。
ももも おなじだ。2025ねんは あつくて あめが すくなく、みが ちいさく なって、8% へった[7]。でも、りゆうは てんきだけでは ない。きの ほうにも、りゆうが ある。
2024年産のみかんは、実のなる木のある面積(結果樹面積)が3万4,500ヘクタールで、前の年から3%しか減っていない。それなのに、収穫量は18%減った。10アールあたりの収穫量が、前の年より310キログラム少ない1,620キログラム(16%減)になったからだ[4]。
農林水産省は理由を、夏の高温で落果や日焼け果が出たことと説明している[4]。落果は実が育つ途中で落ちること、日焼け果は強い日差しで皮が傷んだ実のことだ。
2025年産は逆に、10アールあたりの収穫量が1,940キログラムと、前の年を20%上回った。「秋の降雨により肥大が進み、高温で作柄が悪かった前年産を上回った」ためで、面積は2%減っている[5]。
もも(2025年産)は、収穫量が10万600トンで前の年より8%減った。実が大きくなる時期の高温と少雨で、小玉が多かったためだ[7]。木の数がほとんど同じでも、天気しだいで実りは1年で2割近く動く。ただ、天気だけでは説明しきれない。木の側にも、実りを動かすリズムがある。
2024年産(令和6年産)のみかんは、結果樹面積が3万4,500ヘクタールで、前年産から900ヘクタール(3%)減った。しかし収穫量は18%減った。10a当たり収量が1,620kgで、前年産を310kg(16%)下回ったためである。農林水産省は「夏期の高温により落果や日焼け果が発生したこと等による」と説明している[4]。
2025年産は10a当たり収量が1,940kgと前年産を320kg(20%)上回った。理由は「秋の降雨により肥大が進み、高温で作柄が悪かった前年産を上回った」ことで、面積(栽培面積3万5,600ha、結果樹面積3万3,800ha)はいずれも2%減っている[5]。
もも(2025年産)は、収穫量が10万600tで前年産より9,100t(8%)減り、10a当たり収量は1,100kgで90kg(8%)下回った。農林水産省は「果実肥大期の高温・少雨により小玉傾向となったこと等による」と説明している[7]。
収穫量は「面積×10a当たり収量」でほぼ決まる。この2年のみかんは面積が2〜3%しか動いていないので、増減の大部分は10a当たり収量、つまり同じ広さの畑からの実りが動いた結果である。天気が果物の値段に響くのは、畑の広さではなく、この部分を通してだ。ただし、収穫量を動かすのは天気だけではない。木そのものにも周期がある。
4. きにも「おもて」と「うら」が あるの?
4. 木の中のリズム ── 実が多かった年の、次の年
4. 隔年結果 ── 豊作の翌年が不作になる性質
みかんの きには、たくさん なる 年と、あまり ならない 年が かわりばんこに くる ことが ある。表年と 裏年と いう[9]。
たくさん みを つけた 年は、きが つかれて、つぎの 年の はなが すくなくなる。みが すくない 年は、きに ちからが のこるので、つぎの 年に たくさん さく。
たとえば、きの 中に おこづかいが あるとしよう。みに つかいすぎた 年は、つぎの 年の はなの ぶんが たりなくなる。ただし 本当は、木の 中に さいふが あるわけでは ない。
だから のうかの 人は、みが ちいさい うちに、わざと へらすことも ある[9]。では、ねだんが たかいと わかったら、みかんを すぐに ふやせるのだろうか。
みかんやりんごの木には、実が多くなる年と少ない年が、ほぼ交互に来る性質がある。実の多い年を表年、少ない年を裏年といい、この性質を隔年結果という[8]。
愛媛県の説明では、実がたくさんなった年は、養分が実を大きくするために使われて木が疲れ、翌年の花芽の分化が抑えられて、次の年は不作になる。反対に実が少ない年は、糖分や栄養が枝の成長と花芽づくりに回るので、翌年は豊作になる[9]。
実のなる木を、養分を貯金するものにたとえてみよう。実に使いすぎた年は、翌年の花の分が足りなくなる。ただし本当は、木の中に貯金箱があるわけではなく、養分の配分が変わっているのだ。
農家は、表年のうちに、枝を切って花芽を減らす剪定や、実が小さいうちに数を減らす摘果を強める。わざと実を減らして、翌年の不作をゆるめるのだ[9]。この性質は、全国の産地に一斉に豊作と不作をもたらすとされる[8]。温州みかんでは、栽培技術の向上で、この傾向は全国的にゆるやかになってきたという[8]。では、値段が上がったとき、生産を増やして応えられるのだろうか。
かんきつ類やりんごなどでは、収穫量が豊作の年(表年)と不作の年(裏年)にほぼ交互に振れる。愛媛県はこの性質を「隔年結果」と呼んでいる[8]。
仕組みとして愛媛県は、豊作の年には養分が果実の肥大に使われ、木の疲弊と花芽の分化抑制が起こって翌年が不作になり、不作の年には糖分と栄養が枝の成長と花芽形成に向かって翌年が豊作になる、と説明している。対策は、表年の剪定で花芽を減らすことと、果実が小さい段階での摘果の強化である[9]。
この性質は全国の産地に一斉に豊作と不作をもたらすとされる[8]。温州みかんでは、栽培技術の向上などで全国的に傾向が緩和されつつある一方、異常気象が重なると隔年結果が増幅されることがある、とも記されている[8][9]。
愛媛県は、自県の令和6年産について、うら年傾向だったことに、日焼け果の多発やカメムシ、鳥獣の被害が重なって収穫量が大きく減った、と書いている[8]。全国の2024年産でも、猛暑と木のリズムの両方が関わった可能性があるが、割合は今回の統計からは分けられない。農林水産省が理由に挙げているのは、夏の高温である[4]。では、値段が上がったとき、生産を増やして応えられるのか。
5. ねだんが たかい ときに、すぐ ふやせないの?
5. 果物は作り直せない ── 5年、10年という時間
5. 果樹の時間と野菜の時間 ── 供給が値段に追いつかない理由
みかんの なえぎを はたけに うえてから、みが なり はじめるまでに、ふつうは 5ねんぐらい かかる。はやい ものでは 3ねんぐらいだ。たくさん なるまでは 10ねんぐらいだ[10][9]。
だから ねだんが たかい 年に あわてて なえぎを うえても、まにあわない。
キャベツなどの やさいは、くだものの きより、そだてる 時間が ずっと みじかい。それでも ねだんは おおきく うごく。2025ねんの 12月の キャベツは、1ねんまえの 12月の はんぶん いかの ねだんだった[2]。
みかんの とれる りょうは、いちばん おおかった 1975ねんの 5ぶんの 1 いかに へった[12]。では、ずっと おなじ ねだんだった バナナは、なにが ちがうのだろう。
農林水産省のこども向けの回答では、みかんの苗木を畑に植えてから、5年くらいで実ができ始め、10年くらいでたくさん実るようになる[10]。愛媛県は、早いものでは3年目ごろから収穫できるとしている[9]。値段が高い年に苗木を増やしても、その木が実るのは何年も先になる。
野菜は種まきから収穫までが果樹よりずっと短い。それでも、農林水産省の担当課が農畜産業振興機構(ALIC)の『野菜情報』に書いた解説は、野菜は天候で生産量や品質が大きく左右され、保存しにくくて出荷量を調整しにくいので、市場に来る量の多い少ないで値段が乱高下しやすいと述べている[11]。2025年12月の消費者物価指数では、生鮮野菜が前の年の同じ月より7.1%下がり、そのうちキャベツは54.7%下がって、前の年の同じ月の値段の半分以下だった[2]。
木の数そのものも減っている。温州みかんの収穫量は、1975年(昭和50年)の366万5000トンが最高で、2017年には74万1,300トンと、その約5分の1だった。nippon.comは、生産者の高齢化や後継者不足で廃園になるみかん園が増えていると伝えている[12]。2025年産(65万6,300トン)も、1975年の約5.6分の1だ[5]。
国産果実は、人口が減って食べる量が減る以上のペースで、作られる量が減ってきた。それが値段を押し上げている、と農業情報メディアは整理している[6]。では、ずっと動かなかったバナナは、何が違うのか。
農林水産省のこども向けの回答では、みかんの苗木を畑に植えて5年ほどで実がつき始め、10年ほどでたくさん実る[10]。愛媛県のQ&Aは、早いものでは3年生ごろに花がつき収穫できるとしている[9]。値段が上がっても、供給を増やす手段は数年先にしか効かない。
野菜は栽培期間が果樹よりずっと短いが、それでも安定しない。ALICの『野菜情報』2024年8月号に載った農林水産省(農産局園芸作物課)の解説は、野菜は天候などで生産量や品質が大きく左右され、保存性に乏しくて出荷量を調整しにくいため、卸売市場への供給量の多寡で価格が乱高下しやすいと述べる[11]。総務省の消費者物価指数(2025年12月、前年同月比)では、生鮮野菜が7.1%下落し、キャベツは54.7%下がって前年同月の価格の半分以下になった[2]。
供給の側の長期変化もある。温州みかんの収穫量は1975年産の366万5000トンが最高で、2017年産は74万1,300トンと約5分の1になった。nippon.comの記事(2018年)は、生産者の高齢化、後継者不足、労働力不足による廃園を理由に挙げている[12]。2025年産の65万6,300トンは、1975年産の約5.6分の1にあたる[5]。
第2章の国産果実の数字(卸売数量が約24%減、卸売価格が約43%増)と合わせると、需要が減る以上に供給が縮んでいるという農業情報メディアの見立てと重なる[6]。この見立てが当てはまりにくかったのが、バナナである。
6. バナナは、どうして かわらなかったの?
6. バナナはなぜ動かなかったのか ── 熱帯の畑と海の道
6. 輸入バナナの供給構造 ── 通年収穫・保冷船・追熟、そして近年の値上がり
バナナは 1ねんじゅう、いつでも とれる。「しゅん」が ない くだものだ[13]。みかんは 1ねんに 1かい。バナナは まいにち すこしずつ とどく ようなものだ。ただし 本当は、バナナも てんきや びょうきで とれない ことは ある。
バナナは あおい うちに とって、ふねで はこぶ。ひえた ふねの 中は 13〜14どで、日本まで 3日から 3しゅうかん かかる。日本に ついたら、へやで 3〜4日 やすませて、きいろく する[14]。
日本で たべる バナナは、ほとんど がいこくの もの。2025ねんは、およそ 106万トンが はいってきた[13]。
バナナの ねだんは、1964ねんの 228円から、1972ねんには 139円まで さがった。フィリピンから たくさん はいって きて、あまったからだと つたえられて いる[16]。
おみせの ほうも、バナナの ねだんは あげにくい。ある やおやさんは「ちょっとでも たかくすると かわれなく なる くだもの」と はなしている[16]。
でも、2022ねんに フィリピンの せいふが、日本の おみせに「ねあげを して ほしい」と たのんだ、と つたえられた[16]。そのあと バナナの ねだんは あがって いる。
バナナは季節に関係なく一年中栽培・収穫できるので、特別な旬がない[13]。畑に植えてからおよそ9か月で収穫になる。みかんは1年に1回、日本の夏の天気を受けて実る。バナナは毎日少しずつ届く水道の水のようなものだ。ただし本当は、バナナの産地でも台風や強風は困りごとで、バナナ大学は「台風や強風がない土地」が適していると書いている[14]。
バナナは青くて硬いうちに収穫され、13〜14℃に保たれた保冷船で、産地によって3日〜3週間かけて日本に来る。日本ではムロと呼ばれる部屋で3〜4日かけて追熟させ、黄色くなってから店に並ぶ[14]。
国産バナナは、2024年でわずか18トンだ。一方、2025年の輸入量は約106万トンで、輸入果物の約6割を占める[13]。輸入先は、フィリピンが74.5%、エクアドルが8.9%、メキシコが5.3%、ベトナムが4.4%だった。フィリピンの割合は、2018年の約84%より下がっている[15]。産地が分かれていると、一か所の天気の影響を受けにくくなると考えられる。
バナナの値段は、1964年の228円から、1972年には139円まで下がった。日経ビジネスは、1963年の輸入自由化を機にフィリピンが日本向けの大量生産の体制を整え、供給が余ったためと書いている[16]。量が増えれば値段が下がる、という動きの逆向きの例だ。
値段が動かなかったのは、店の事情もある。八百屋の店主は「ちょっとでも高くすると買われなくなる果物」と話している[16]。バナナは、店が値上げしにくい果物だったわけだ。
それでも2022年6月、フィリピン政府が日本の小売業界に販売価格の引き上げを求めたと報じられた。理由は、供給網の混乱などで、バナナの生産や輸送にかかるコストが上がっていることだった[16]。輸入品は、外国のお金と円の交換の割合(為替)でも日本での値段が変わる。バナナの年平均は、2021年の248円から、2022年に265円、2023年に314円、2024年に338円、2025年に353円と上がってきた[1]。
バナナ大学によると、バナナは季節に関係なく一年中栽培・収穫でき、旬がない。国内での栽培は2024年で18トン(FAOSTAT)にとどまり、2025年の輸入量は1,059,793トン、輸入果物の約6割を占める[13]。苗の植え付けから約9か月で収穫でき、必要な条件は年間2,500mmの降雨と平均気温26〜27℃、「台風や強風がない土地」とされる[14]。(バナナが木ではなく草であることは、別のメモに書いた。)
収穫は、まだ青くて硬いうちに行う。13〜14℃に保たれた保冷船で、産地により3日〜3週間かけて運び、日本のムロと呼ばれる部屋で3〜4日かけて追熟させてから店頭に出る[14]。収穫の時期を選ばず、傷みにくい青い状態で運べることが、供給の時期を分けやすい仕組みだと考えられる。
2025年の輸入先は、財務省貿易統計を基にした表で、フィリピン74.48%、エクアドル8.90%、メキシコ5.28%、ベトナム4.36%、カンボジア3.34%の順だった。フィリピンは2018年の約83.6%から下がり、調達先が分かれてきている[15]。
1964年の228円から1972年の139円への下落については、日経ビジネスが、1963年の輸入自由化を機にフィリピンが日本市場向けの大量生産体制を整え、供給過剰になったと書いている[16]。数量が増えて価格が下がる、第2章とは逆向きの動きである。
価格が動かなかった理由として考えられるのは、供給の平らさのほかに、売る側の事情である。日経ビジネス(2022年6月)は、八百屋の店主の「ちょっとでも高くすると買われなくなる果物」という言葉を紹介し、店が値上げしにくい商品だったと伝える[16]。
流れが変わったのは近年だ。同誌は、2022年6月にフィリピン政府が日本の小売業界へ販売価格の引き上げを求めたと報じている。理由は、供給網の混乱などで、バナナの生産や輸送にかかるコストが上がっていることである[16]。バナナの年平均は2021年の248円から、2022年265円、2023年314円、2024年338円、2025年353円と4年続けて上がった[1]。輸入品なので、為替の影響も受ける。国産のみかんは日本の夏の天気と木のリズムで、輸入のバナナは熱帯の農園と海の輸送費で動く。値段を動かす場所が、日本の畑の中と、海の向こうで違うのだ。
7. つぎは じぶんで しらべて みよう
7. 自分でも調べてみたくなったら
7. 自分でも調べてみたくなったら
おうちの 人と いっしょに、スーパーの くだもの うりばへ いってみよう。くだものの ラベルには、どこで とれたかが かいて ある。
- バナナは、どこの くにから きたのかな。いま おいしい くだものは、どこの けんかな。
- ふたつの ねだんを、「1ふくろ」「1ふさ」の まま メモして、1しゅうかん たって もういちど 見よう。どっちが かわったかな。
スーパーの果物売り場に行くと、果物のラベルには産地が書いてある。
- バナナと、いま旬の国産の果物を1つずつ選んで、産地を読む。バナナはどの国から来ているか。第6章の輸入先の割合と合うだろうか。
- 値段は「1袋」「1房」などの単位のまま書き留めて、1〜2週間後にもう一度見る。動いたのは、バナナと旬の果物のどちらか。
- もっと長い期間を見たいときは、農林水産省の食品価格動向調査(果樹)が使える。りんご、みかん、バナナ、ぶどう、日本なし、ももの6品目を、全国470店舗の量販店で月に1回、2023年10月から調べている[17]。
まず売り場で、バナナと旬の国産果物の産地ラベルを読み、バナナの産地が第6章の輸入先の割合と合うかを見る。そのうえで、統計を使う方法が2つある。
- 出典[1]のバナナ大学のPDFには、第1章で抜き出した8年分ではなく、1964年から毎年の表がある。そこから3つの果物の値段の前年比(%)を計算し、総務省統計局の消費者物価指数の前年比と並べる。物価全体より大きく動いた年はいつか。バナナが物価全体を下回り続けた期間はあるか。
- 農林水産省の食品価格動向調査(果樹)は、6品目を全国470店舗の量販店で月に1回、2023年10月から調べている[17]。数か月分を折れ線にして、バナナの平らさと、旬のある果物の上下を比べる。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:総務省統計局と農林水産省の統計、愛媛県の解説、農林水産省のこども向け回答、バナナ大学(日本バナナ輸入組合)、農畜産業振興機構、日経ビジネス、nippon.com、農業情報メディアを使いました。値段は東京都区部の年平均(円/kg)などで、店や年によって違います。
- 総務省統計局「小売物価統計調査報告」(東京都区部)を、バナナ大学(日本バナナ輸入組合)が表にまとめた「バナナの価格推移」。 https://www.banana.co.jp/database/statistics/docs/03kouribukka.pdf (バナナ・りんご・みかんの1964〜2025年の年平均価格。銘柄は時期により改正)
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)12月分及び2025年(令和7年)平均」(令和8年1月23日公表)。 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01toukei08_01000335.html (2025年平均の総合指数111.9、2025年12月の生鮮野菜前年同月比−7.1%・キャベツ−54.7%)
- 農林水産省「青果物卸売市場調査(令和6年年間計及び月別結果)」。 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/seika_orosi/r6/index.html (果実の卸売数量234万トン・前年比9%減、卸売価額1兆1,226億円・3%増、卸売価格480円/kg・13%上昇)
- 農林水産省「令和6年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量」。 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/pdf/syukaku_mikan_24.pdf 同じ公表内容を載せた、みんなの農業広場「令和6年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量」。 https://www.jeinou.com/topics/2025/05/27/162500.html (結果樹面積3万4,500ha・3%減、10a当たり収量1,620kg、収穫量55万9,600t・18%減、夏期の高温による落果・日焼け果)
- 農林水産省「令和7年産みかんの栽培面積、結果樹面積、収穫量及び出荷量、その他かんきつ類の栽培面積」(令和8年5月公表)。 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kazyu/pdf/syukaku_mikan_25.pdf 同じ公表内容を載せた、みんなの農業広場の記事。 https://www.jeinou.com/topics/2026/05/28/131000.html (栽培面積3万5,600ha、結果樹面積3万3,800ha、10a当たり収量1,940kg・20%増、収穫量65万6,300t・17%増、秋の降雨による肥大)
- 農業情報メディア「果物はなぜ高い?値上がりの理由と価格変動の仕組みをデータで解説」。 https://agri-ja.net/articles/why-fruit-prices-high (国産果実の卸売数量239万t→182万t、卸売価格375円→536円/kg、原因の整理。同記事は、農林水産省「果樹をめぐる情勢」令和8年5月にもとづく数字として紹介している)
- 農林水産省「令和7年産もも、すももの栽培面積、結果樹面積、収穫量及び出荷量」。 https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/sakumotu/sakkyou_kajyu/momo/r7/index.html (ももの収穫量10万600t・8%減、10a当たり収量1,100kg、高温・少雨による小玉傾向)
- 愛媛県農産園芸課「かんきつ類の統計」。 https://www.pref.ehime.jp/page/11418.html (隔年結果の呼び方、全国の産地に一斉に豊作と不作をもたらすこと、近年は傾向が緩和、愛媛県の令和6年産がうら年傾向に日焼け果などが重なって大きく減ったこと)
- 愛媛県「かんきつ類Q&A(栽培編)」。 https://www.pref.ehime.jp/h35500/kankitsu/kankitsuqa_ansc.html (隔年結果の仕組みと、剪定・摘果による対策、早いものでは3年生ごろから収穫できること)
- 農林水産省「みかんは、種から実になるまで何年かかりますか。」(こどもそうだん室)。 https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0006/17.html (苗木を植えて5年ほどで実がつき始め、10年ほどでたくさん実る)
- 農畜産業振興機構(ALIC)「野菜価格安定制度について」(野菜情報 2024年8月号、農林水産省 農産局 園芸作物課 価格班)。 https://vegetable.alic.go.jp/yasaijoho/senmon/2408_chosa2.html (野菜の価格が乱高下しやすい理由:天候による生産量・品質の変動、保存性の乏しさ、出荷量の調整のむずかしさ)
- nippon.com「温州ミカンの収穫量は最盛期の5分の1:高齢化による廃園など影響」(2018年6月11日、出典は農林水産省)。 https://www.nippon.com/ja/features/h00212/ (1975年産366万5000t、2017年産74万1,300t・適正生産量87万tを下回って年末から価格が急騰、生産者の高齢化と廃園)
- バナナ大学(日本バナナ輸入組合)「バナナの貿易学」。 https://www.banana.co.jp/basic-knowledge/trade/ (2025年輸入量1,059,793トン、輸入果物の約6割、国内栽培18トン(2024年、FAOSTAT)、一年中収穫できること)
- バナナ大学「輸入過程全体」。 https://www.banana.co.jp/basic-knowledge/import-process/ (植え付けから約9か月で収穫、青いまま収穫、13〜14℃の保冷船、追熟3〜4日)
- バナナ大学「国別バナナの輸入量」(財務省貿易統計より)。 https://www.banana.co.jp/database/statistics/docs/01bouekitoukei.pdf (2018年と2025年の国別輸入量、2025年の輸入割合)
- 日経ビジネス「[新連載:値上げウオッチ]価格は20年変わらず バナナの悲鳴」(2022年6月22日)。 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00469/062000001/ (八百屋の店主の言葉、1972年ごろの値下がりの説明、2022年6月のフィリピン政府による販売価格引き上げの要望)
- 農林水産省「食品価格動向調査(果樹)」。 https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/kouri/kouri/kajyu.html (りんご・みかん・バナナ・ぶどう・日本なし・ももの6品目、月1回、全国470店舗、令和5年10月から)
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