1. ぎんなんを うえたら、いつ 花が さくの?
1. ぎんなんを植えたら、花がつくまで何年かかるのか
1. 実生の開花年数と、雄か雌かが分からない待ち時間
ぎんなんは、いちょうの たねです。小さな たねが 大きな 木に なって 花を つけるまでは、赤ちゃんが 大人に なるまでのように、とても 長い 時間が かかります。
アメリカの じゅもくえんでは、大人に なる 前の 20年から 30年ほど、いちょうの えだは まばらな ことが 多いと せつめいして います[4]。ある 県の しりょうには、おすの 木で 17年から 20年ほどと 書いて あります[5]。年の かずには、はばが あるのです。
もうひとつ、まって いる あいだに ふしぎな ことが あります。いちょうは、おすの 木と めすの 木が べつべつです。ぎんなんが なるのは、めすの 木だけです[1]。そして、花が つく 前は、見た 目では おすか めすか 分けにくいと いわれます[5]。アメリカの ある じゅもくえんでは、たねから 育てた いちょうは、おすと めすが 半分ずつくらいに なると せつめいして います[6]。
では、やっと 花が つく ときは、えだの どこに つくのでしょう。
種から育てた木は、20〜30年ほど枝がまばら
ぎんなんは、植物学では果実ではなく種子です。1kgで約900個とされるので、1個は1gちょっと、1円玉1枚ぶんほどの重さだと計算できます[2]。
この小さな種から育った木は、すぐには花をつけません。米国のホールデン樹木園は、性的に成熟する前の20〜30年間、イチョウは枝がまばらなことが多いと説明しています[4]。岡山県の資料には、種から育てた雄の木は開花まで17〜20年ほどかかるといわれる、という記述があります[5]。
年数に幅があり、成長の速さも土壌でかなり変わるとされるので[4]、「何年で必ず」とは言えなさそうです。
雄か雌かは、咲くまで分けにくい
イチョウは雌雄異株で、雄花と雌花は別の木につきます。ぎんなんがなるのは雌の木だけです[1]。花がつく前は、外見で雌雄を見分けにくいとされます[5]。米国のアーノルド樹木園は、同園で種から育てたイチョウは雄と雌がおよそ半々になると説明しています[6]。
この説明どおりなら、ぎんなんを1粒植えて育てた木が実をつける雌になる見込みは、半分ほどです。20年待って雄だった、ということも、ふつうにありえます。では、待ちに待った花は、枝のどこにつくのでしょうか。
ぎんなんは、植物学的には果実ではなく種子である。1kgあたりの個数は約900個とされ、1個はおよそ1.1gの計算になる[2]。実生(種から育てた木)が花をつけるまでの時間が、この木の最初の関門になる。
ホールデン樹木園は、性的に成熟する前の20〜30年間、イチョウは枝がまばらなことが多いと説明している[4]。岡山県の資料には、実生の雄木は開花までに17〜20年ほどかかるといわれる、という記述がある[5]。20年あまりの幅が出る一因として、成長の速さは土壌によってかなり変わる、という指摘がある[4]。日本大百科全書は「成長は早く、病虫害は少ない」と書くが[3]、成長の早さと花がつく時期は、別々に書かれている。
待たされる理由はもう1つある。イチョウは雌雄異株で、ぎんなんがなるのは雌の木だけである[1]。しかも花がつく前は、外見で雌雄を見分けにくいとされる[5]。アーノルド樹木園の説明では、同園で種から育てたイチョウは雄と雌がおよそ半々になる[6]。この比がほかでも当てはまるなら、1本の実生が雌である見込みは半分ほどで、20年待って雄だったという結果も、普通にありうる。では、ようやく咲く花は、枝のどこにつくのか。
2. 花は、えだの どこに さくの?
2. 花をつけるのは、葉が束になった「短枝」
2. 花をつけるのは「短枝」── 枝が2種類に分かれている
いちょうの えだには、2しゅるい あります。ひとつは、ぐんぐん のびる 長枝。もうひとつは、あまり のびない 短枝です[2]。
短えだには、数まいの 葉が、たばのように あつまって つきます[3]。おすの 花も めすの 花も、この 短えだに つきます[2]。
葉の 形も ちがいます。長えだの 葉は きれこみが 多く、短えだの 葉は ふちが なみうつ くらいと いう せつめいが あります[4]。いちょうの 木の 下で、ふたつの 葉を 見くらべられます。
花を つけるのは、あの 葉が たばに なった 短い えだです。では、おすの 木の 花粉は、どうやって めすの 木に とどくのでしょう。
枝には2種類ある
イチョウの枝は、長枝と短枝に分けられます。長枝は節と節の間が離れていて、葉の間隔も広く、ややジグザグに伸びます。短枝は節の間が短く込み入っていて、1年に数枚しか葉をつけず、葉が束のように集まります[2][3]。
雄の花も雌の花も、この短枝につきます[2]。20年以上かけて枝を広げた木が花をつけるのは、背を伸ばす長枝ではなく、毎年少しずつ葉を出す短枝の上です。
同じ木で、葉の形がちがう
米国のホールデン樹木園は、長枝の葉の多くは切れこみが多く、数の多い短枝の葉は縁が波打つ程度だと説明しています[4]。イチョウの葉といえば、真ん中が割れた扇形を思い浮かべますが、同じ木でも、切れこみの深い葉と、浅い葉が混じることになります。
切られても、芽を出す
イチョウは萌芽力が強く、強い剪定にも耐えるとされます[2]。街路樹として刈りこまれても、毎年葉を出せる理由のひとつは、短枝などから新しい葉を出し直せることだと考えられます。では、短枝についた花から、どのようにぎんなんが実るのでしょうか。
イチョウの枝は、長枝と短枝に分けられる。長枝は節と節の間が離れ、葉の間隔も広く、やや折れ曲がるように伸びる。短枝は節間が短く込み入っていて、1年に数枚しか葉をつけず、数枚の葉が密に束生する[2][3]。雄の花も雌の花も、この短枝につく[2]。したがって、20年以上枝を広げてきた木が花をつけるのは、背を伸ばす長枝ではなく、毎年少しずつ葉を出す短枝の上である。
短枝と長枝では、葉の形もちがう。ホールデン樹木園は、長枝の葉の多くは切れこみが多く、数の多い短枝の葉は縁が波打つ程度だと説明する[4]。扇形の真ん中が割れた葉を思い浮かべがちだが、同じ木の中で、切れこみの深い葉と浅い葉を見分けられることになる。
イチョウは萌芽力が強く、強い剪定にも耐える[2]。刈りこまれた街路樹が毎年葉を出し直せる背景には、短枝や新しい芽から春の葉が出るしくみがあると考えられる。では、短枝についた花からぎんなんが実るまでに、何が起きているのか。
3. 花粉は 風に のって、なにが およぐの?
3. 風に運ばれた花粉から、泳ぐ精子が見つかった
3. 風が運んだ花粉から泳ぎ出る精子 ── 平瀬作五郎の発見
おすの 木の 花粉は、風に はこばれて、めすの 花の 先に つきます[2]。ここから 先が ふしぎです。花粉から、およぐ 精子が 出て きます。9月ごろ、この 精子が はたらいて、たねが できる もとに なると いわれます[2]。
この およぐ 精子を、たねを つくる 植物では はじめて 見つけたのは、日本の 人です。東京の 大学に いた 平瀬作五郎が、1896年に 発表しました[2]。
はじめ、平瀬さんは、ぎんなんの 中に 見えた ものを 虫だと 考えたと つたえられて います。池野成一郎さんが、精子だと 見ぬいたそうです[2]。
しらべた 木は、東京の 小石川しょくぶつえんの まん中あたりに ある、大きな いちょうです。まわりの 長さは 4.9m、300さいほどと 考えられて います[7]。
では、そうして 大きくなった いちょうは、年を とると どう なるのでしょう。
花粉の先で起きること
イチョウは風媒花です。雄の花の花粉は風で運ばれ、雌の花の胚珠の先にある、受粉滴という小さな液の粒につきます[2]。ここから先に、イチョウの変わった点があります。花粉管から、自由に動く精子が出るのです。ソテツも同じです。受精は9月ごろ、この精子によって行われ、種子は秋に落ちます[2][1]。
平瀬作五郎の発見
この泳ぐ精子を、種子植物として初めて見つけたのが、帝国大学の平瀬作五郎です。論文「いてふノ精虫ニ就テ」は、1896年に『植物学雑誌』に載りました[2]。発見を1895年とする記述もあり、資料でちがうので、ここでは発表の年を書いています。
同じ1896年には、池野成一郎がソテツでも精子を見つけています。平瀬は最初、ぎんなんの中に見えたものを寄生虫と考え、池野が精子だと見抜いたと伝えられます[2]。
小石川植物園の大イチョウ
研究材料となった木は、東京大学小石川植物園のほぼ中央にある大イチョウです。幹周りは4.9m、推定樹齢は300歳とされます[7]。幹周りを円周とみなして直径を出すと、4.9÷3.14で、約1.6mです。
では、そうして実を結んだ木は、年をとると、どうなるのでしょうか。
イチョウは風媒花で、雄の花の花粉は風で遠くへ運ばれ、雌の胚珠の先にある受粉滴につく[2]。ここから先に、この木の変わった点がある。花粉管から、鞭毛をもち自由に動く精子が出るのである。ソテツにも共通する。受精が行われるのは9月ごろで、種子は秋に落ちる[2][1]。
この精子を、種子植物として初めて見つけたのが、帝国大学の平瀬作五郎である。論文「いてふノ精虫ニ就テ」は、1896年10月20日付の『植物学雑誌』第10巻第116号に載った[2]。発見を1895年とする記述もあり、資料で食いちがうため、ここでは発表の年を書く。同じ1896年に、池野成一郎がソテツでも精子を見つけている。平瀬は最初、ぎんなんの中に見えたものを寄生虫と考え、池野が精子だと見抜いたと伝えられる[2]。
研究に使われた木が、東京大学小石川植物園のほぼ中央にある大イチョウで、幹周り4.9m、推定樹齢は300歳とされる[7]。幹周りを円周とみなすと、直径は4.9÷3.14で約1.6mになる。ただし300歳は推定値である。受精を終えた種子は、また何十年もかけて育つ。では、育ち続けた木は、老木になるとどうなるのか。
4. ふるい いちょうの みきから 下がる ものは、なに?
4. 年をとったイチョウの幹から垂れる「乳」とは何か
4. 老木の幹から垂れる「乳」は、何からできるのか
とても 年を とった いちょうの みきや 大きな えだからは、えんすいの 形を した ものが 下がる ことが あります。これを「乳」と いいます[2][1]。
乳の もとは、うまく 育たなかった 短えだなどだと いわれます[2]。2ばんめの 章で 見た、花を つける 短い えだの なかまです。
せんだい市の「苦竹の いちょう」は、高さが やく32m、みきの まわりが やく8m。1000年ほどと 考えられて います[8]。太い 乳が たくさん 下がり、いちばん 太い ものは、下の 先が 地面の 中まで とどいて、はしらの ように なって います[8]。
青森県の 北金ヶ沢の いちょうは、高さ 31m、みきの まわりは 22mです。下がった ものが 地面に ついて、みきの 一部に なり、みきが 太く なったと せつめいされて います[9]。
ひょろっと した わかい 木が、花を つけ、年を とって、みきから 乳を 下げる ように なる。いちょうは、そんなに 長い 時間を かけて 大きく なります。
老木の幹から垂れる突起
老木になると、幹や大枝から、円錐形の気根のような突起が垂れ下がることがあります。これを「イチョウの乳」(乳根・乳柱)と呼びます。若いうちから乳をつくる木は「チチイチョウ」と呼ばれます[2][1]。
乳は、不定芽や、発育を妨げられた短枝に由来するとされます[2]。もしそうなら、第2章の短枝の仲間が、長い年月のあとで姿を変えたものです。
支柱のような乳、幹の一部になる乳
仙台市の「苦竹のイチョウ」は、高さ約32m、根元の周囲約8mで、推定樹齢は約1,000年です。太い乳柱が多数垂れ下がり、最も太い北側のものは周囲約1.6m、直径にして約50cmで、下端は地中に達し、支柱のような形をしています[8]。
青森県の「北金ヶ沢のイチョウ」は、樹高31m、目通り幹周22mです。多数の気根が垂れ下がり、地面に着いて幹の一部となって、幹周が大きくなったと説明されています[9]。幹の周りを一周すると、25mプールの長さに近い距離です。
イチョウの高さは、一般には20〜30mほどで、大きなものは約45mに達します[3]。
老木になると、幹や大枝から円錐形の気根状の突起が垂れ下がることがあり、これを「イチョウの乳」(乳根・乳柱)という。若いうちから乳をつくる木は「チチイチョウ」と呼ばれる[2][1]。乳は、不定芽や、発育を妨げられた短枝に由来するとされる[2]。この説明どおりなら、第2章の短枝の延長に乳がある。
仙台市の「苦竹のイチョウ」は、高さ約32m、根元の周囲約8m、推定樹齢約1,000年である。乳柱が多数垂れ下がり、最も太い北側のものは、周囲約1.6m(直径約50cmの計算)に達し、下端は地中にまで及んで、支柱のような形をしている[8]。
青森県の「北金ヶ沢のイチョウ」は、樹高31m、目通り幹周22mで、国の天然記念物に指定されている(2004年)。多数の気根が垂れ下がり、地面に着いて幹の一部となったために幹周が大きくなった、と説明される[9]。イチョウの高さは一般には20〜30mほど、大きなもので約45mとされ[3]、この2本は、巨木の部類に入る。乳が地面に達して幹の一部になるなら、1本の木が、時間をかけて自分の支えを増やしていく姿ともいえる。
5. 公園の いちょうで、短枝を さがして みよう
5. 公園のイチョウで、短枝と葉の形を探す
5. 観察の手がかりと、資料の読み方
こうえんや 道ばたの いちょうを、おうちの 人と 見に いって みましょう。えだの ところどころに、葉が たばに なって ついて いる ところが あります。それが 短えだです。
短えだの 葉と、のびて いる えだの 葉を、見くらべます。切れこみが ふかい 葉は、どちらの えだに ついて いましたか。ノートに 書いて おきます。
秋に ぎんなんが 落ちて いる 木は、めすの 木です。ぎんなんは、さわらずに 見るだけに します。
とても ふるい 木が ちかくに あれば、みきから 下がる 乳が ないか、さがして みます。
公園や並木のイチョウで、枝に葉が束になってついている場所を探してみます。それが短枝です。長く伸びた枝の葉と見くらべて、切れこみの深さがちがうかどうかを、ノートに書いておきます。
秋にぎんなんが落ちている木は雌の木です。落ちたぎんなんには触れずに、見るだけにします。近くに年をとった大きな木があれば、幹から垂れる乳がないか、見上げてみます。
平瀬作五郎の論文を実際に見るなら、『植物学雑誌』第10巻第116号(1896年)が原典です。小石川植物園の大イチョウは、東京大学の特集ページ[7]で紹介されています。苦竹のイチョウは宮城県[8]、北金ヶ沢のイチョウは文化庁のデータベース[9]で、大きさなどが読めます。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:辞典・大学・公的機関・植物園の資料を使った。何に使ったかは、各項目の最後に書いている。
- コトバンク「銀杏」(大辞泉・日本国語大辞典ほか)。https://kotobank.jp/word/%E9%8A%80%E6%9D%8F (雌雄異株・乳・受精の時期について)
- Wikipedia「イチョウ」。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6 (短枝・長枝、精子の発見、乳、種子について。補助として使用)
- コトバンク「イチョウ」(日本大百科全書)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6-761754 (短枝の葉、成長、大きさについて)
- The Holden Arboretum, Ginkgo biloba nature profile。http://www.holdenfg.org/nature-profiles/ginko-biloba (成熟までの年数、葉の形、成長の速さについて)
- 岡山県 イチョウ関連資料(PDF)。https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/321303.pdf (開花までの年数、雌雄の見分けについて)
- Arnold Arboretum, Stop and smell the ginkgoes。https://arboretum.harvard.edu/stories/stop-and-smell-the-ginkgoes/ (種から育てた木の雌雄の割合について)
- 東京大学大学院理学系研究科 特集「日本の近代植物学発祥の地」。https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/rigakuru/feature/GzVMRLy5/ (小石川植物園の大イチョウについて)
- 宮城県 苦竹のイチョウ(天然記念物)。https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/bunkazai/08nigatake-ityou.html (苦竹のイチョウの大きさと乳柱について)
- 文化庁 国指定文化財等データベース「北金ヶ沢のイチョウ」。https://online.bunka.go.jp/db/heritages/detail/164571 (北金ヶ沢のイチョウの大きさと気根について)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。