1. はこんだ にくは、だれの ごはん?
1. 狩ってきた肉は、だれの食べ物か
1. 肉団子の行き先 ── 狩りの獲物は幼虫の餌になる
スズメバチの はたらきバチは、ハエや ほかの 昆虫を つかまえます。そして、からだの やわらかい ところを かみくだいて、小さな だんご(にくだんご)に します。
この だんごを たべて そだつのは、巣の 中の 幼虫です[1]。はたらきバチが とって きた えものは、じぶんの ごはんと いうより、幼虫の ごはんなのです。
えものの しゅるいは、ハチの なかまに よって ちがいます。ふつうは ほかの 昆虫ですが、ときには、あたらしい どうぶつの しがいの にくの おおい ところも だんごに する と いわれます[2]。
2. おとなの ごはんは、幼虫の だす えきたい
2. 大人の主な食べ物は、幼虫が出す透明な液体
2. 成虫の主食 ── 終齢幼虫の唾液腺から出る栄養液
おとなの ハチが おもに たべるのは、にくでは ありません。幼虫の くちから でる、すきとおった えきたいです[2]。
この えきたいは、幼虫の だえきの ような ものを つくる ところで つくられます。おおきく そだった 幼虫ほど、この ところが よく はったつして います[2]。
えいようが たっぷり ある ので、おとなの ハチは、これで げんきに とびまわれる のです[1]。
ただし、おとなの ハチが にくを ぜんぜん たべない と まで は、いいきれません。ここでは「おもに」と いう ことに して おきます。
成虫の餌は「幼虫の唾液腺」から出る
百科事典の説明では、成虫の餌は主に、終齢幼虫の大きく発達した唾液腺から分泌される栄養液です[2]。フマキラーの解説も、幼虫の体から出る栄養価の高い分泌液を、成虫の重要な栄養源としています[1]。
肉を運ぶのは大人、肉を食べて育つのは幼虫。そして大人が飛び回るための力になるのは、その幼虫が体の中でつくり直した液です。固形の肉をそのまま食べるより、栄養がすぐ使える形になっているとも考えられます。ただし、この理由づけは資料に書かれた説明ではなく、ここでの推測です。
また、成虫は肉を一切食べないと言い切れるかどうかは、資料によって書き方に幅があります。この記事では「主に」と書くことにします。
3. にくだんごと えきたいを こうかん
3. 肉団子と液体を交換する ── 巣を回す食べ物のやりとり
3. 栄養交換 ── 獲物と分泌液が往復する巣の中の流れ
はたらきバチは、えものを 巣に はこんで、幼虫に わたします。すると、おれいの ように、幼虫の えきたいを もらえます。それを のんで、また かりに でかけます[3]。
この たべものの やりとりは、むずかしい ことばで「えいよう交換」と よばれます[3]。
おとなが にくだんごを とどける。幼虫が そだつ。そだった 幼虫が えきたいを だす。その えきたいで、おとなが また かりに いける。ぐるっと まわって いるのです。
ただし、おとなの ハチが 「おれい」を かんがえて いる わけでは ありません。ハチの からだの しくみの はなしです。
運ぶ側ともらう側が入れかわらない交換
成虫は獲物をつかまえて幼虫に与え、お返しに幼虫の分泌液をもらい、またエサを探しに出かける。巣の中では、この往復が続いています[3]。このような食べ物のやりとりは「栄養交換」と呼ばれます。
流れを書き出すと、肉団子が幼虫へ、液が成虫へ、という二方向です。幼虫は動けませんが、幼虫の分泌液は成虫の活動を支えています。
この循環は、狩りに出る成虫が元気でないと、幼虫の餌が減る形でつながっています。人が見ているのは「肉を食べるハチ」ですが、巣の中では食べ物と力が行き来しています。ただし、これも解説資料の説明を整理した見方で、すべての種・時期に当てはまるとは限りません。
みんなのハチ駆除屋さんの解説は、成虫が獲物を捕らえて幼虫に与え、その幼虫の分泌液を受け取り、再び獲物を探しに出かける、と述べる[3]。この食べ物のやりとりが栄養交換と呼ばれる。
この構造では、獲物(固形のタンパク源)は成虫から幼虫へ、栄養液は幼虫から成虫へと、逆向きに流れる。そのため、幼虫は成虫に餌を運ばせるだけの存在ではなく、成虫の活動を支える栄養源でもある、と読める。ただし「幼虫が餌を与える」という言い方は擬人的で、資料が述べているのは分泌液を成虫が口にするという事実までである。
なお、これらは駆除業者と百科事典の解説にもとづく。種や季節による違いの有無は、この記事の範囲では分からない。
4. 樹液や はなの みつは、おやつ?
4. 樹液や花の蜜は、どんな役目か
4. 樹液・花の蜜の位置づけ ── 補助的なエネルギー源
おとなの ハチは、樹液を すったり、はなの みつを なめたり も します[1]。
ただし、ミツバチの ように、みつを 巣に もちかえる ことは ありません[1]。じぶんが のむ ぶん だけです。
幼虫の えきたいに えいようが たりない ときなどは、樹液や みつが ちからに なる と いわれます[3]。
つまり、おとなの ごはんは、幼虫の えきたいが いちばん。樹液や みつは、たりない ときの たすけ。と おぼえて おくと よさそうです。
5. オオスズメバチは、どうなの?
5. 大きなオオスズメバチも、大人は液体が中心か
5. オオスズメバチは甲虫を肉団子にし、ミツバチの巣を集団で襲う
いちばん おおきな オオスズメバチも、おとなは 樹液や はなの みつと、幼虫の えきたいを くちに する と いわれます[5]。つよそうな みためからは、いがいです。
そして 幼虫には、おおきな こうちゅうなどを、からごと かみくだいた だんごを あたえます[5]。
また、オオスズメバチは、ミツバチの 巣を みんなで おそって、幼虫や さなぎを にくだんごに して はこぶ ことが あります[4]。これは、スズメバチの なかまでは めずらしい やり方だそうです。
ハチを みかけたら、ちかづかないで おくのが あんぜんです。
殻ごとかみ砕く肉団子
日本で最大級のオオスズメバチも、成虫は花の蜜や樹液と、幼虫の分泌液を口にする、と解説されています[5]。見た目は猛々しくても、基本の食べ物の流れは同じです。幼虫には、大型の甲虫などを殻ごとかみ砕いた肉団子を与えます[5]。
ミツバチの巣を集団で襲うこともある
Wikipediaの解説によると、オオスズメバチは、ミツバチなど社会性の蜂の巣を集団で襲い、大量の幼虫やさなぎを肉団子にして運ぶことがあります。スズメバチ類としては例外的な行動だそうです[4]。幼虫の数が多い巣ほど、必要な肉団子の量が増えると考えられますが、その理由づけはここでの推測です。
ハチを見かけたときは、近づかず、静かに離れるのが安全です。
オオスズメバチについて、tenki.jpの解説は、成虫は花蜜・樹液と幼虫の分泌液のみを口にするとし、幼虫には大型の甲虫などを殻ごとかみ砕いた肉団子を与えるとする[5]。成虫の食べ物の構造は、前章までの一般的な説明と一致する。
ただし幼虫の側の需要は大きい。百科事典「オオスズメバチ」は、巨大なコロニーを形成する社会性の蜂の巣を襲撃し、大量の幼虫・蛹を肉団子にして運ぶことがあり、スズメバチ類としては例外的に集団で襲撃するとする[4]。獲物を捕らえる際の行動は種で変わるが、成虫の食べ物が幼虫の分泌液に支えられる点は共通する、と整理できる。
ただし「全種で同じ」とまでは言い切れない。種によって餌の与え方が異なる例があるともいわれる。
6. 幼虫の えきたいから うまれた なまえ
6. 幼虫の液と、栄養ドリンクの名前
6. VAAMの名前の由来 ── 17種類のアミノ酸の発見
スーパーなどで みかける ある のみものの なまえ「VAAM(ヴァーム)」は、スズメバチと かかわりが あります。
この なまえは、スズメバチの せいたいを しらべて いて みつかった、17しゅるいの アミノ酸に ちなんで つけられた と、かいしゃは せつめいして います[6]。
ただし、幼虫の えきたいを のむと、にんげんが つよく なる わけでは ありません。なまえの ゆらいの はなしです。
VAAMという名前
明治の公式説明では、VAAMはVespa Amino Acid Mixture(スズメバチのアミノ酸混合物)の頭文字からできた名前です。スズメバチの生態研究の結果、脂肪の代謝に関わる17種類のアミノ酸が見つかったことから生まれた、と説明されています[6]。
ただし、これは企業の製品説明です。幼虫の液そのものが人の持久力を上げる、という意味ではありません。スズメバチの暮らしの研究が、身近な商品の名前にまで残っている、という話として読むのがよさそうです。
明治の公式説明では、VAAM(Vespa Amino Acid Mixture)は、スズメバチの生態研究の結果、脂肪の代謝に関係する17種類のアミノ酸が発見されたことで生まれた名前だとされる[6]。幼虫の分泌液が成虫の運動を支えるという生態の知見が、のちに栄養科学の研究へつながった、という流れだ。
ただし、これは企業による製品説明であり、幼虫の液が人の持久力を高めるという意味には読めない。名前の由来と製品の効果は別の話だ。
7. こんど、きに なる ことは?
7. 大人と幼虫のごはんが違う生きものは、ほかにもいるのか
7. 出口 ── 成虫の消化と、種ごとの違いという未解決の問い
おとなの スズメバチは、幼虫の えきたいを もらい、にくだんごを おくります。スズメバチは、「にくを たべる ハチ」と いうより、「たべものを こうかんする ハチ」なのかも しれません。
おとなと こどもで、ごはんが ちがう いきものは、ほかにも います。ちょうの あおむしと せいちゅうは、どうでしょう。おうちの ひとと、ずかんで しらべて みましょう。
ただし、スズメバチを つかまえたり、巣に ちかづいたり して、たしかめようと しては いけません。
スズメバチの大人は、肉を運び、液をもらい、樹液や蜜で足りないところを補う。そう整理すると、「肉食の蜂」というイメージは、少し変わって見えます。
では、成虫は固形の肉をどこまで消化できるのか。種によって、働きバチと雄で、依存の強さは同じなのか。この点は、今回読めた資料からは言い切れません。ここは、論文を読めば深められる「まだ残っている問い」です。
身の回りでは、チョウの幼虫(あおむし)と成虫が、まったく違うものを食べている例が調べやすいでしょう。図鑑で一種類のチョウを選び、幼虫と成虫が何を食べるかを一つずつ書いてみてください。観察のために、ハチやその巣に近づいてはいけません。
この記事で確かな足場にできたのは、獲物の肉団子が幼虫に、幼虫の栄養液が成虫に、という往復の構図と、樹液・蜜が補助的な位置にあるという整理だ。一方で、成虫が固形物をどこまで消化できるか、働きバチと雄、種や季節で依存の強さが異なるかは、次に調べたい問いとして残る。
調べを進めるなら、成虫の消化器官のつくりや、栄養交換(trophallaxis)を扱う昆虫学の論文を探すとよい。日本語の解説は、一次資料を読む前の見取り図として使える。観察のためにハチや巣に近づくのは危険なので、文献と図鑑で進めるのが安全だ。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:一般向けの解説と百科事典、企業の製品説明を使った。公的機関の資料や論文の本文は確かめられていない。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- フマキラー For your LIFE「スズメバチの生態と食性」。https://fumakilla.jp/foryourlife/525/ (幼虫の餌・成虫の栄養源・樹液や蜜の扱いについて)
- Wikipedia「スズメバチ」。https://ja.wikipedia.org/wiki/スズメバチ (獲物の種類と成虫の餌について。二次資料)
- みんなのハチ駆除屋さん「スズメバチの生態」。https://minhachi.jp/knowledge/suzumebachi-ecology.html (栄養交換と樹液・蜜の役目について。駆除業者の解説)
- Wikipedia「オオスズメバチ」。https://ja.wikipedia.org/wiki/オオスズメバチ (ミツバチの巣の集団襲撃について。二次資料)
- tenki.jp 解説コラム「オオスズメバチ」(2021年9月1日)。https://tenki.jp/suppl/kous4/2021/09/01/30594.html (オオスズメバチ成虫の食べ物と肉団子について)
- 明治「VAAMについて」。https://www.meiji.co.jp/products/brand/vaam/about/ (VAAMの名前の由来について。企業の製品説明)
なおした ところ
更新履歴
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- 初版を公開。
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