1. たまごは、みずの すぐ うえに うまれる
1. 卵は、水や湿った地面の真上に産みつけられる
1. 産卵場所 ── 幼虫が育つ環境の上に産む
あぶの めすは、みずべや しめった ところの きの したや はの うらに、たまごを ひとかたまりに して うみつけます[2]。
アメリカの だいがくの かいせつでは、たまごを うむ ところは、いつも みずや しめった じめんの ま うえに あると かかれて います[3]。たまごから かえった ちいさな こどもは、そのまま みずや しめった つちの うえに おちる しくみです[3]。
あぶの こどもは、うまれた ばしょが もう、そだつ ばしょなのです。では、その そだつ ばしょは、ぜんぶ みずの なかなのでしょうか。
2. こどもの いえは、ぜんぶ みずの なか?
2. 幼虫の家は、水の中だけではない
2. 幼虫の環境 ── 水生・半水生・湿った土まで幅がある
あぶの こどもは、うじむしのような すがたです。おがわや たんぼ、みずうみ、しっちなどに すんで います[1]。ちいさな どうぶつを たべる にくしょくです[1]。
でも、すんで いるのは みずの なかだけでは ありません。つちの なか、たおれた きの した、しめった こけの した、うみべの どろの なかなど、いろいろな ところが あると かかれて います[2]。
いきものに よって、すきな ばしょが ちがうのです。ほとんどの あぶは、いっしょうの いちぶを しめった ところで すごすと いわれます[4]。
にほんには、あぶが 100しゅるいほど います[1]。みんなが おなじ ところに すんでは いないでしょう。
名古屋市の解説によると、アブの幼虫はウジ虫のような形で、小川、水田、湖沼、湿地などにすみ、小さな動物を捕らえて食べます[1]。
ただし、「アブの子は水の中」と決めつけるのは正確ではありません。百科事典には、幼虫の環境は土の中、森林の倒木の下、湿ったコケの下、海岸の泥の中、水田、湿地など多様だと書かれています[2]。イギリスの泥炭地保全の団体の解説も、ほとんどのアブ類は一生の一部を湿地に頼り、幼虫には水生・半水生、または湿った土の環境が必要だとしています[4]。
日本には約100種が記録されています[1]。種ごとの好みの違いが、こうした幅のある居場所につながっているのでしょう。共通しているのは「しっとり湿っていること」です。
では、幼虫は、そこでどれくらいの時間を過ごすのでしょうか。
幼虫の生息環境は、一つに絞れない。名古屋市の解説は、ウジ虫型の幼虫が小川、水田、湖沼、湿地などにすみ、肉食性で小動物を捕食すると述べる[1]。一方、百科事典の記述では、土中、森林内の倒木の下、湿ったコケの下、海岸の泥中、水田、湿地など多様とされる[2]。「幼虫は水の中」という理解は、半分だけ正しいといえる。
英国のIUCN泥炭地プログラムの解説は、ほとんどのアブ類が生活史の一部を湿地に依存し、幼虫には水生・半水生または湿った土壌の環境が必要だと説明する[4]。この資料は属ごとの好みの違いにも触れているが、欧州の種についての記述なので、日本種には当てはめない。
日本から約100種が記録されている[1]以上、種ごとに好む環境が違うと考えるのが自然だが、種別の詳しい資料は今回の範囲にない。共通点として言えるのは、「湿っている」ことだけである。では、幼虫はどれほどの期間をこうした場所で過ごすのか。
3. こども じだいは、どれくらい つづくの?
3. 幼虫の期間は数か月から数年、成虫の姿は最後の一幕
3. 幼虫期間とさなぎ ── 乾いた土に移るまで
あぶの こどもは、なんども かわを ぬぎながら おおきく なります[3]。
アメリカの かいせつでは、こども じだいは すうかげつから 1ねんほど だと あります[3]。しゅるいに よっては 3かげつから 3ねんと する しりょうも あります[3]。にほんの あぶが なんねん かは、ここでは わかりません。
おおきく なると、かわいた つちに うつって さなぎに なります[3]。さなぎの きかんは、2しゅうかんから 3しゅうかんほどです[3]。
ながい あいだ、どろや しめった つちの なかで すごして から、そらを とぶ おとなに なるのです。
4. おとなに なった あぶは、どこで まつの?
4. 成虫は、木陰や茂みで宿主が通るのを待つ
4. 成虫の待ち場所 ── 茂みと畜舎、時間帯は種で違う
おとなに なった あぶは、なつを ちゅうしんに あらわれます[1]。きの かげや しげみで、どうぶつが とおるのを まって います[3]。
うしあぶは 6がつから 8がつごろに あらわれて、うしを かって いる ところの ちかくに おおいと いわれます[1]。いよしろおびあぶは 8がつから 9がつで、あさと ゆうがたに おおく うごきます[1]。
めすは、どうぶつの いきの にさんかたんそに ひきよせられ、ちかづくと たいおんを かんじると いわれます[2]。
こどもは みずの そば、おとなは きの かげ。くらす ばしょが、そだつ ばしょと すこし ちがうのです。
成虫は夏を中心に現れ、木陰や茂みの中で、血を吸う相手の動物が通りかかるのを待っているとされます[3]。暑い夏から初秋にかけて出会いやすいと紹介されています[3]。
種によって場所や時間はさまざまです。名古屋市の解説では、ウシアブは6〜8月ごろに現れ、畜舎や放牧場の近くに多く、イヨシロオビアブは8〜9月に出て、早朝と夕方に人を激しく襲い、アカウシアブは日中にも活動します[1]。
待ち伏せている雌は、動物の吐く息の二酸化炭素に引き寄せられ、近づくと体温を感じて、口器で皮膚を切って流れ出る血をなめるといいます[2]。血を吸うのは雌だけで、産卵に必要な栄養をとるためと考えられています[1]。
幼虫は水辺や湿った土、成虫は木陰や牛のそば。生まれ育つ場所と、血を求める場所が少し離れているのです。
成虫は木陰や茂みで宿主が通りかかるのを待つ。暑い夏から初秋にかけて遭遇しやすいとされる[3]。名古屋市の解説は種ごとの違いを示す。ウシアブは6〜8月ごろに出て畜舎や放牧場の近くに多く、イヨシロオビアブは8〜9月に出て早朝と夕方に活動し、アカウシアブは日中にも活動する[1]。
宿主の見つけ方については、百科事典に、成虫は動物の呼気中の二酸化炭素に誘引され、近づくと体温を感じて興奮し、口器で皮膚を切って流れ出る血をなめると書かれている[2]。吸血するのは雌のみで、産卵のための栄養をとるためと考えられている[1]。
ここまでの流れをまとめると、卵は水や湿った地面の上に産まれ、幼虫は湿った環境で肉食の生活を送り、乾いた土でさなぎになり、成虫は木陰や畜舎近くで宿主を待つ。幼虫の環境と成虫の待ち場所は重ならない。なお、高原牧場で各種がどう発生するかを示す原典は今回の範囲にない。
5. あぶの いえを、とおくから さがして みよう
5. 水辺と木陰で、アブの「二つの居場所」を探してみる
5. 幼虫の環境と成虫の待ち場所を、自分の目で重ねてみる
おうちで
かみに「たまご」「こども」「おとな」と かいて、それぞれが いる ところを かいて みましょう。「こども」の ところには、みずや しめった つちを かきこみます。
そとで
たんぼの ふちや おがわの ちかくを、とおくから みて みましょう。ちかづきすぎたり、さわったり しません。あぶは さすので、おうちの ひとと いっしょに いきましょう。
家でできること
紙に「卵」「幼虫」「成虫」と書き、それぞれの居場所と、そう言える根拠になった資料の言葉を書き込んでみましょう。「水の中」と書きたくなったとき、倒木の下や湿ったコケの下という記述が資料にあったことを思い出すと、書き方が変わります。
外でできること
水田のふちや小川のそば、木陰の茂みを、少し離れた場所から眺めてみます。幼虫の家になりうる湿った場所と、成虫が待つ木陰が、どれくらい近いのかを目で確かめます。刺されるおそれがあるので、近づきすぎず、大人と行きます。
家でできること
「卵」「幼虫」「さなぎ」「成虫」の四つの欄をつくり、各段階の居場所と、その根拠にした資料を書く。米国の資料の記述と日本の自治体の記述が重なる部分と、日本種に当てはめにくい部分を色分けしてみる。
外でできること
水田のふち、小川や湿地、木陰の茂みを、少し離れた場所から観察する。幼虫の環境になりうる湿った場所と、成虫の待ち場所との距離を見積もってみる。吸血されるおそれがあるため、近づきすぎず、大人と行く。
資料を読むなら
名古屋市の解説は日本の種の季節と場所を、フロリダ大学の解説は卵と幼虫の発育を、IUCNの解説は湿地との関わりを説明している。どれも日本全体を説明する資料ではないので、種と地域の条件を確かめながら読むとよい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
幼虫・成虫の居場所と日本の種は自治体の解説、卵・幼虫期間・待ち場所は大学の解説、環境の幅は辞典と保全団体の解説による。
- 名古屋市「衛生害虫(アブ類)」 https://www.city.nagoya.jp/ (種数・幼虫の環境・日本の種の季節と場所)
- コトバンク「アブ」(日本大百科全書・世界大百科事典) https://kotobank.jp/ (産卵場所・幼虫の環境の幅)
- University of Florida IFAS "Horse flies and deer flies" https://ask.ifas.ufl.edu/publication/IN155 (産卵面の位置・幼虫期間・さなぎ・成虫の待ち場所)
- IUCN UK Peatland Programme "Tabanid flies" https://www.iucn-uk-peatlandprogramme.org/ (湿地への依存)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。