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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

しゃくとりむしは、どんな ところで くらして いるの?

シャクトリムシは、世界のどんな場所で暮らしているのか

シャクトリムシは世界のどんな場所で暮らし、その分布はどこまで広がっているのか

分野:生きもの

しゃくとりむしは、なんきょくを のぞく 世界じゅうに います。北の とても さむい 森で、木の 葉を たべつくす ほど ふえる ことも あります。

しゃくとりむしは、どんな ところで くらして いるのでしょう。木の 葉の 上だけ なのでしょうか。この ページを 読むと、くらす 場所の ひろがりが わかります。

シャクトリムシは、南極をのぞく世界じゅうに暮らしています。北欧の北のほうの森では、2種のシャクトリムシが大発生して、木の葉を食べ尽くすこともあります。

身近な虫なのに、これほど広い場所にいるのはなぜでしょうか。どんな場所を選んで暮らしているのでしょうか。この記事を読むと、世界での広がりと、葉の上だけではない暮らし場所の例が分かります。

シャクトリムシは、南極を除くすべての生物地理区に分布するシャクガ科の幼虫で、熱帯から極域に近い地域まで暮らす[2]。北欧の亜北極の森では、2種の幼虫が大発生して、広い範囲の木の葉を食べ尽くす例が報告されている[4]。

では、これほど広い範囲で、幼虫はどんな場所を暮らしの場にしているのか。木の葉の上だけなのか。このメモを読むと、世界と日本での広がり、葉の上以外の暮らし場所、それぞれの資料が何をどこまで言っているかが分かる。

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1. どこの 国にも いるの?

1. 南極以外のほぼ全部。森も畑も町もある

1. 分布の広さ:南極を除く全域と、日本の約900種

しゃくとりむしは、ガの なかまの ようちゅうです[1]。この なかまは、世界で 24000 しゅるいに ちかいと いわれます。日本にも、900 しゅるいに ちかい なかまが いると しられて います[1]。

くらして いる 場所は、あつい 国から さむい 国まで、たかい 山から ひくい 土地まで、とても ひろいのです[2]。ただし、なんきょくには いません[2]。

森や、ひくい 木が 多い ところに いる なかまが 多いと されます。そして、畑や 町でも くらせる なかまが 多いと いわれます[2]。

では、そこで 木の 葉の 上いがいに、どんな ところに いるのでしょうか。

南極以外の、ほとんどの地域に

シャクトリムシは、基本的にはシャクガ科というガの仲間の幼虫です[1]。この科は世界で24000種近く、日本でも900種近くが報告されています[1]。数え方で数字に幅が出る概数なので、目安として読んでください。

暮らす場所は、熱帯・亜熱帯・温帯、さらに極に近い地域まで、さまざまな標高にわたります。分布しないのは南極だけだとされます[2]。

森だけでなく、農地や都市にも

Animal Diversity Webによれば、多くの種は、森や低木の林と結びつきが強いとされます。一方で、農地や都市でも生き残れる種が多いと紹介されています[2]。

森に多いのは、幼虫が木の葉を主に食べるからだと考えられています[2]。では、暮らす場所は、本当に木の葉の上だけなのでしょうか。

シャクトリムシがいる場所を考えるとき、まず分布の広さに注目したい。基本的にシャクガ科の幼虫を指し、この科は世界で24000種近く、日本でも900種近くが報告されている[1]。24000という数字は概数で、数え方によって幅がある点には注意が要る。日本の種数は、世界の4%弱(900÷24000=0.0375)にあたる。

分布は、南極を除くすべての生物地理区に及び、熱帯・亜熱帯・温帯・極域に近い地域まで、幅広い標高に暮らす[2]。これだけ広がれたのは、種ごとに暮らし方が違うからだと考えられる。Animal Diversity Webによれば、多くの種は木本植物の葉を主に食べ、そのため森や低木林と結びつく種が多い一方、農地や都市でも生き残る種が少なくない[2]。

ここで疑問が残る。木の葉を食べるなら、暮らす場所は葉の上だけに限られるのか。実際の調査記録を見てみよう。

2. はっぱ いがいの ところに いる 子も

2. 山の雨林で見つかった、シダと地衣類の上

2. 葉以外の足場:エクアドルの山地雨林の調査記録

南アメリカの エクアドルに ある 山の 雨林で、しゃくとりむしを しらべた 人が います。59 しゅるいの ようちゅうを あつめて、どこに いたかを 記ろくしました[3]。

ほとんどは、ひくい 木や 高い 木の 上で 見つかりました[3]。でも、ワラビという シダの 上で 見つかった しゅるいが 6 しゅるい ありました。木の 上に ある ちいるい(コケに にた 生きもの)の 上で 見つかった 子も 3 しゅるい いました[3]。

ただし、これは この 山の 59 しゅるいの 話です。世界じゅうの しゃくとりむしの わりあいでは ありません[3]。

じっと して いる 子は、まわりに まぎれて いる ことが 多い ようです。それは どんな すがたなのでしょう。

59種の幼虫を調べた研究

エクアドルのアンデス山地雨林(標高1800〜2800m)で、シャクガ科の幼虫59種を集めて、どの植物にいたかを記録した研究があります[3]。

多くは低木か高木で採れました。しかし、シダの一種ワラビにいた種が6種(10%)、地衣類にいた種が3種(5%)ありました[3]。地衣類は、木の幹や枝にはりつく、コケに似た生きものです。

この数字の読み方

この割合は、この地域で調べた59種の中での話です。世界全体のシャクトリムシの割合ではありません[3]。それでも、葉の上以外の足場を使う種がいることを示す例です。

こうした場所で、幼虫は敵に見つからないのでしょうか。

葉の上以外にも幼虫がいるのか。この点を調べた研究がある。Bodnerらは、エクアドルのアンデス山地雨林(標高1800〜2800m)で、シャクガ科の幼虫59種を採集し、採れた植物を記録した[3]。

結果は、ほとんどが低木か高木で採れた一方、シダのワラビで6種(6÷59=約10%)、地衣類で3種(3÷59=約5%)も記録されたというものだ[3]。幼虫が食べる植物の例外として、地衣類やシダが入ってくる。ただし、採集場所は地域も標高も限られており、この割合を世界の傾向として読むことはできない。

また、足場が葉以外であっても、幼虫は目立つ場所にいることになる。そのまま食べられてしまわないのか。次の章で、その点を見る。

3. どうして てきに 見つからないの?

3. 枝のふりをして暮らす。それでも敵はいる

3. 擬態と寄生:隠れる体と、それでも逃れられない敵

しゃくとりむしには、とまって いる すがたが 木の えだや 葉、あたらしい めに よく にて いる 子が たくさん います[1]。

うごくと きは、まず 前の あしで えだに つかまって、体を のばします。つぎに うしろを ひきよせると、体が Uの 字に なります[1]。

でも、かくれて いても、てきは います。さっきの 59 しゅるいの 研究では、そだてて しらべた 159 ひきの うち 54 ひき(およそ 34%)から、はちや ハエの なかまの 虫が 出て きました[3]。ようちゅうの 体に たまごを うみつける 虫です。

ただし、これは 小さな 数を しらべた 目安です。ふだんの わりあいでは ありません[3]。

こうした てきが いる 中で、もっと さむい 北の 森では、どうなって いるのでしょうか。

枝や新芽にそっくりな姿

シャクトリムシには、止まった姿が植物の枝や葉、新芽によく似る種が多いと知られています[1]。

腹の脚は、後ろのほうに2対だけ残っています。胸の脚でつかまって体を伸ばし、後ろを引き寄せるとU字になります。これをくり返して、枝の上を進みます[1]。名前の「尺取り」は、この動きから来たとされます。

それでも、寄生する虫がいる

先ほどの研究では、飼育できた159匹のうち54匹から、寄生バチやヤドリバエが出てきました[3]。計算すると約34%です。ただし、採集した325匹全部で数えれば約17%で、数え方で数字は変わります。標本も小さいので、目安としてとらえます。

身を隠す工夫があっても、敵がゼロになるわけではありません。では、極に近い寒い森では、シャクトリムシはどう暮らしているのでしょうか。

葉以外の足場にいても、食べられずに済むのは、止まった姿が植物に似る種が多いからだと考えられる。止まった姿が枝・葉・新芽に酷似する種は多い[1]。腹脚は後方の2対(第6・第10腹節)に退化しており、胸脚でつかまって体を伸ばし、後端を引き寄せてU字になって進む[1]。ただし、カバシャク亜科のように腹脚が5対残る例外もある。

ところが、隠れていても寄生者から逃れられるとは限らない。先の研究では、飼育できた159個体のうち54個体(54÷159=約34%)から寄生バチやヤドリバエが出た[3]。採集した325個体全体で割れば約17%(54÷325)になり、分母の取り方で値が変わる。標本は小さく標準化もされていないため、数字は目安にとどまる。

このように、暮らす場所には食べ物だけでなく、鳥や寄生者との関係も関わる。では、そうした条件がまるで違う、極に近い寒冷な森ではどうなのか。

4. 北の さむい 森では どうなの?

4. 北欧の北の森で、葉を食べ尽くすほど増える2種

4. 亜北極の森:2種が引き起こす大発生

北ヨーロッパの 北の ほうに、ダケカンバという 木の 森が あります。北いど 68 どより 北の ところです[4]。

この 森では、ガの なかまの 2 しゅるいの ようちゅうが ものすごく ふえて、木の 葉を たべつくす ことが あると いわれて います[4]。

「さむい ところには、虫は あまり いない」と 思いますよね。でも、しゃくとりむしの なかまが 森を 大きく かえる ほど ふえる ことも あるのです。

では、ふゆに くらす しゃくとりむしの なかまは、どこに いるのでしょうか。

ダケカンバの森に起きる大発生

北欧のスカンジナビア半島などでは、北緯68度より北にダケカンバの森が広がります。この森で、シャクガ科の2種の幼虫が大発生して、葉を食べ尽くすことが報告されています[4]。

ここでいう森は、ツンドラそのものではなく、亜北極の寒い地域の森です。また、種の名前は学名で書かれた資料なので、ここでは「2種のシャクガ科」と書いておきます。

暖かい森だけではない

寒い場所でも暮らし、条件がそろえば大発生する。この例は、シャクトリムシの暮らす場所が、暖かい森だけに限られないことを示しています。では、冬を迎えるシャクトリムシの仲間は、どう過ごしているのでしょうか。

気候が厳しい地域でも幼虫が暮らす例として、北欧の亜北極の森が挙げられる。Jepsenらの報告によれば、フェノスカンジア(北欧)の北緯68度以北のダケカンバ(Betula pubescens)の森で、シャクガ科の2種(Epirrita autumnata と Operophtera brumata)の幼虫が大発生し、森の葉を食べ尽くす[4]。

ここで言う森はツンドラ本体ではなく、亜北極の森林である。したがって「極域に暮らす」とは、極に近い寒冷な森に暮らすという意味で読む。

一方、寒さの中でも大発生する種が、葉を食べ尽くして森の姿まで変える点は大きい。条件がそろえば数が一気に増える種がいることは、暮らす範囲の広さを考える手がかりになる。では、冬になるとシャクガ科の仲間は、どこにどう過ごすのか。

5. ふゆに あらわれる なかま

5. 冬にだけ飛ぶ、フユシャクと落ち葉の下

5. 冬の成虫:フユシャクと、場所についての限界

シャクガ科の なかまには、ふゆだけ すがたを あらわす 「フユシャク」が います。日本では 40 しゅるいに ちかいと いわれます[5]。

この なかまの おとなは、口が ちいさく なって いて、なにも たべません。ひるの あいだは、落ち葉の 下や、木々の あいだに いる ことが 多いそうです[5]。

めすには はねが ない 子も 多く、あっても 小さい ようです[5]。

この しりょうには、ようちゅうが どこに いるかは 書かれて いません。ですから、「落ち葉の 下」は おとなの すがたの 話です。

そこで、身近な 木を 見に いきましょう。

冬に成虫が出るシャクガの仲間

フユシャクは、冬にだけ成虫が出るシャクガ科の仲間で、日本では40種近くが知られています[5]。自治体の自然観察資料によると、成虫は口が退化していて何も食べません。昼のあいだは、落ち葉の下や木々のあいだにいることが多いとされます[5]。

メスは、翅がないか、あっても発達していません[5]。

書かれていないこと

この資料は成虫の過ごし方を述べたもので、幼虫やさなぎの場所は書かれていません。「冬は落ち葉の下」という言い方は、成虫についてだけ使います。

冬に姿を現すシャクガ科の仲間にフユシャクがいる。日本では40種近くが知られ、成虫は雌雄とも口が退化していて食物を一切とらない。昼間は落ち葉の下や木々の間にいることが多いとされる[5]。メスは翅がない、または発達していない種が多い[5]。

この記述は自治体の自然観察資料に基づくため、一般向けの紹介として読むのが妥当だ。したがって、「落ち葉の下」を幼虫の暮らし場所と読むことはできない。

ここまでの記録を並べると、シャクトリムシの暮らす場所は、南極を除く各地の森、農地、都市、葉やシダや地衣類の上、亜北極の森、冬の落ち葉の下(成虫)と、条件に応じて広がる。

6. 木の ところで ためして みよう

6. 近所の木で、場所を決めて見る道すじ

6. 確かめる道すじ:観察の場所を決める・原典を読む

あたたかい 日に、近くの 公園や 道ばたの 木を 見て みましょう。まず、葉の 上と えだの 上を、ゆっくり 目で さがします。

見つけた 虫に、さわらないで ください。毛の ある 虫は、さわると かゆく なる ことが あります。見つからなくても ふつうです。にて いる ものは、見つけにくい ものです。

見つけたら、どこに いたかを、ノートに かきます。葉の 上、えだ、みきの どこか。1ぴきでも 十分です。

今日できること:木を1本決めて、見る場所をかえてみる

近所の公園や道ばたで、木を1本選びます。葉の表、葉の裏、枝、幹の順に、触らずに目で探します。シャクトリムシは、枝に似た姿で止まっていることが多いので、じっとしているものを見つけにくいはずです。見つからなくても、ふつうのことです。

見つけたら、どの場所にいたかを書きとめます。毛のある虫には、手で触れません。

もっと知りたくなったら

エクアドルの59種の調査は、Bodnerらの論文が原典で、本文を無料で読めます。北欧の大発生は、Jepsenらの論文があります。どちらも英語です。日本語で読むなら、シャクガ科の項目から入り、参考文献を追うのが近道です。

確かめる道すじは3つある。第一に、近所の公園や道ばたの木を1本決め、葉の表・裏、枝、幹の順に触れずに目で探す。見つけた場所を書きとめれば、本文の「葉の上だけではない」という記述を自分の記録と照らせる。毛のある虫には手で触れない。枝に似た幼虫は見つけにくく、見つからないほうがふつうだ。

第二に、原典を読む。エクアドルの59種の記録は Bodner ら(2010)が J. Insect Sci. に発表しており、本文が無料で読める[3]。北欧の大発生は Jepsen ら(2009)が Proc. R. Soc. B に発表している[4]。

第三に、数字の条件を確かめる。本稿の割合は、どれも限られた地域・標本の値である。「世界の傾向」と読めるかどうかを、原典の方法の節で確かめるとよい。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文は、ここにある資料の内容を、自分の言葉で言いかえたものです。種数や割合は、資料や数え方で幅があります。

  1. Wikipedia(日本語)「シャクガ科」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%AF%E3%82%AC%E7%A7%91 (種数、擬態、脚と歩き方。二次資料)
  2. Animal Diversity Web, Geometridae https://animaldiversity.org/accounts/Geometridae/ (分布、すみ場所、食べ物)
  3. Bodner et al. (2010) Caterpillars and Host Plant Records for 59 Species of Geometridae, Journal of Insect Science https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3388973 (エクアドルの山地雨林での記録、寄生者の割合)
  4. Jepsen et al. (2009) Proceedings of the Royal Society B https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2821342 (北欧の亜北極のダケカンバ林での大発生)
  5. 常陸大宮市 自然観察資料(PDF) https://www.city.hitachiomiya.lg.jp/data/doc/1553476286_doc_113_0.pdf (フユシャクの成虫の特徴。自治体の観察資料)

なおした ところ

更新履歴

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