1. 日本一 大きい ぼくじょうは、どれくらい?
1. 調べた中で最も広い牧場は、どれくらいの広さか
1. 調べた中で最も広い牧場は、四角にすると1辺どれくらいか
ぼくじょうの 広さは、「ヘクタール」と いう たんいで あらわします。1ヘクタールは、たて 100メートル、よこ 100メートルの 広さです。
国の 十勝ぼくじょう(北海道)は、かんこうの しりょうでは 4100ヘクタールほどと しょうかい されます。四角に すると、1つの へんが 6.4キロメートルくらいです。
北海道の ナイタイ高原ぼくじょうは 1700ヘクタールで、「日本一 広い」と しょうかいされます[7]。これは、よその 牛を あずかって そだてる ぼくじょうの 中での 話です。
ですから、「何十キロも つづく 1つの ぼくじょう」は、しらべた かぎりでは 見あたりません。
ヘクタールをキロ四方に直す
牧場の広さは、ヘクタール(ha)で表します。1haは100m四方なので、100haが集まって、ようやく1km²になります。
調べた資料の中で最も広い1つの牧場は、北海道音更町にある家畜改良センター十勝牧場で、約4,100ha(約41km²)と紹介されています。国の機関で、重種馬を育てて品種を良くする仕事を、国内で唯一おこなう牧場とされます[8]。昔はもっと広く、創設の1910年(明治43年)には約9,620haありました。41km²を正方形にすると、1辺は約6.4kmです。ただし4,100haは観光サイトなどに出ている数字なので、おおよその目安です。
「日本一広い」には条件がつく
北海道上士幌町のナイタイ高原牧場は約1,700haで、「日本一広い牧場」と紹介されます[7]。これは町内外から牛を預かって育てる公共牧場の中での言い方で、観光ガイドの表現です。十勝牧場のほうが数字は大きいので、「日本一」は条件つきの言葉だと分かります。
こうして見ると、1つの牧場を四角に直しても、1辺は6〜7kmほどです。「何十km」という感覚と合わないのは、なぜでしょうか。その答えは、阿蘇の草原の広さと使い方にあります。
牧場の面積はha(ヘクタール)で表され、1haは100m四方、100haが1km²にあたる。調べた資料で最も広い1つの牧場は、北海道音更町の家畜改良センター十勝牧場で、約4,100ha(約41km²)と紹介される。√41≒6.4なので、正方形に直せば1辺は約6.4kmだ。創設時の1910年(明治43年)は約9,620haだったため、現在は半分以下になっている。国の機関で、重種馬の育種改良を行う国内唯一の牧場とされる[8]。
4,100haは複数の観光サイトの記述にもとづく目安の数字だ。
では「日本一広い」はどうか。ナイタイ高原牧場(上士幌町)は約1,700haで、観光ガイドが「日本一広い牧場」と紹介する[7]。数字は十勝牧場より小さいので、この「日本一」は、町内外から牛を預かって育てる公共牧場に限った表現と読める。条件を外すと、言葉と面積の順位は一致しない。
面積を1辺の長さに直すと、1つの牧場の最大級は6〜7km四方になる。「何十km」という感覚と合わないのはなぜか。その答えは、阿蘇の草原の広さと使い方にある。
2. あその 草原は、だれの ぼくじょう?
2. 阿蘇の広い草原は、だれが使っているのか
2. 約170の牧野組合が使う草原 ── 入会権を知る
くまもと県の あそには、「カルデラ」と いう 大きな くぼ地が あります。東西 18キロ、南北 25キロも ある、世界でも 大きい ほうの くぼ地です[3]。
その 中と まわりの 山に、草原が ひろがります。広さは やく 22000ヘクタールで、日本で いちばん 大きい 野草の 草原と いわれます[1]。
この 草原を 使う のは、1人の ぼくじょうでは ありません。やく 170の 「ぼくや くみあい」が、いりあいの きまりで、いっしょに 使って います[5]。
ただし、くみあいの 数は しりょうに よって 160と かいて ある ことも あります。
カルデラの大きさと、草原の広さは別もの
阿蘇カルデラは東西18km、南北25kmで、世界最大級とされます[3]。ところが18×25で面積を出そうとすると450km²になり、資料の総面積約380km²より大きくなってしまいます。それは、カルデラが長方形ではないからです。草原はその中と外輪山一帯に広がります[4]。
約170の組合が使う
では、この広い草原を使っているのはだれでしょうか。熊本県の資料によると、約170の牧野組合が入会権のもとで利用しています[5]。入会権は、地域の人たちが昔からの決まりで共同して使う権利のことです。つまり阿蘇の広い草原は、1人の経営者の牧場ではなく、地域の組合が共同で使う場所です。
ただし組合の数は、別の県の資料では約160と書かれています。年や数え方で変わるため、「約170」とおおよそで読むのが安全です。
阿蘇カルデラは東西18km、南北25kmで、世界最大級とされる[3]。ところが、18×25=450km²とはならない。国土交通省の多言語解説は総面積を約380km²とし、草原はそのうち約200km²とする[4]。端から端の長さと面積は別の量で、カルデラの形は長方形ではないためだ。
草原の面積は、阿蘇草原保全活動センターによれば約22,000ha(約220km²)で、日本一とされる[1]。国交省の約200km²とは差があるが、資料に理由の記載はなく、差の理由は分からない。この草原は外輪山一帯にも及ぶので、カルデラの中だけの数字ではない点にも注意がいる。
では、この草原を使っているのは誰か。熊本県の資料の抜粋によれば、約22,000haの草地は約170の牧野組合が入会権のもとで利用している[5]。入会権とは、地域の住民が慣行に従って共同で山野を利用する権利だ。ただし組合数は資料により約160とも書かれるため、「約170」と丸めて読む。
3. その 草原は、ぼくじょう なんこぶん?
3. 阿蘇の草原を、牧場の単位に直してみる
3. 220km²を牧場の単位に直す ── 検算と注意点
あその 草原は、やく 22000ヘクタールです。東京ドームに すると、4600こぶんほど だと しょうかいされます[2]。
十勝ぼくじょうは 4100ヘクタールほどです。あその 草原は、その 5ばいくらいです。
あとで 出てくる、北海道の ふつうの ぼくじょうは、1つが 50ヘクタールくらいです。それなら、あその 草原は 440こぶん です。
ただし 22000ヘクタールの 中には、人が 草の たねを まいた 草地も 入って います。野草の 草原は、やく 16000ヘクタールです[1]。
数字を並べ替えてみる
では、22,000haとは、どれくらいの広さなのでしょう。単位を直すと220km²で、東京ドーム約4,600個分と紹介されます[2]。東京ドームを約4.7haとして割ると約4,700個になるので、おおよそ合っています。
そこで、牧場の単位にも直してみます。十勝牧場の約4,100haと比べると、220÷41≒5.4で約5倍です。次の章に出てくる1戸約50haの牧場なら、22,000÷50=440で440戸ぶんになります。ただしこれは広さの比べ方で、実際に440の牧場があるわけではありません。
22,000haの中身
約22,000haには、人工の牧草地も含まれます。野草地は約16,000ha(約72%)で、この野草地の面積が日本一とされます[1]。
約22,000ha=220km²を、他の資料の単位に直してみる。東京ドームを約4.7haとして割ると22,000÷4.7≒4,700個で、紹介記事の約4,600個分とほぼ一致する[2]。
牧場の単位でも比べられる。十勝牧場(約4,100ha)の約5.4倍(220÷41)、次章の1戸約50haの牧場なら440戸ぶん(22,000÷50)にあたる。ただし後者は広さを比べるための換算で、実際にその数の牧場があることを意味しない。
さらに、22,000haは阿蘇の全草地で、約16,000ha(約72%)が野草地、残りは人工の草地と読める[1]。「日本一」とされるのは野草地の面積で、全体の数字と混ぜると、面積を過大に見積もってしまう。
こうして、阿蘇の広い景色は、多数の使い手が分け合う草原だと分かった。では、北海道の広い牧場の景色は、何が集まってできているのか。
4. 北海道の 広い けしきは、なにが あつまって できる?
4. 北海道の広い景色は、1戸約50haの牧場が集まってできる
4. 根室の新酪農村 ── 約15,000haは数百戸の集まり
北海道の 根室の ほうでは、1973年から、新しい 牛の 村を つくる 大きな 工事が はじまりました[9]。つくった 土地は、やく 15000ヘクタールです。
この 村では、1つの 家が 50ヘクタールくらいの 草地で、牛を そだてる のだと いわれます[10]。50ヘクタールは、1つの へんが 700メートルほどの 四角です。
北海道の ふつうの ぼくじょうは、ほかの 県の ぼくじょうの 13ばいほど 大きい のだそうです[11]。だから、小さな 家の 草地が あつまると、遠くまで つづく けしきに なります。
ここでは 1つの 家が 自分の 草地を 持ちます。あその 草原とは、持ち方が ちがいます。
1973年に始まった大工事
北海道の根室地方では、1973年に新酪農村建設事業が着工しました。根室市・中標津町・別海町を中心に、約15,000haの農用地をつくる大きな事業です[9]。これは阿蘇の草原の約7割にあたります。入植した農家の数は、資料によって数え方が分かれるので、「数百戸」と覚えておけば十分です。
それでは、1戸はどれくらいの広さを持つのでしょうか。約50haの草地で、牛60頭ほどを飼う形だと紹介されています[10]。正方形に直すと、1辺は約700mです。観光記事の数字なので、およその目安として読んでください。
北海道の農家の平均は、都府県より大きい
農林水産省の資料では、北海道の1経営体あたりの経営耕地面積は34.5haで、都府県の13.3倍です[11]。これは地域全体の平均で、1つの牧場の広さを直接示す数字ではありません。ただ、約15,000haが数百戸の集まりだとすれば、広い景色が生まれる背景の1つと考えられます。
阿蘇は約170の組合で分け合う草原、根室は1戸ずつが持つ牧場の集まり。同じ「広い景色」でも、持ち方はまったく違います。
北海道の広い牧場の景色は、別の仕組みでできている。根室市・中標津町・別海町を中心とする新酪農村建設事業は、1973年に着工し、約15,000haの農用地を造成した[9]。15,000÷22,000≒0.7なので、阿蘇の草原の約7割にあたる広さだ。
この15,000haを使うのは、数百戸の入植農家だ。戸数は資料により94戸・222戸・226戸と異なり、数え方(入植農家のみか、施設を含むか)の違いと考えられるため、数百戸と丸めて読む。1戸あたりは40〜50ha級とされ、観光記事は約50haの草地で牛60頭ほどを飼う形と紹介する[10]。50haは0.5km²で、1辺は√0.5≒0.7km、つまり約700mだ。
背景として、北海道の経営体は全体に大きい。農林水産省の概要資料では、北海道の1経営体あたりの経営耕地面積は34.5haで、都府県の13.3倍とされる[11]。倍率から逆算すると都府県は約2.6haで、概算にすぎないが、規模の違いが分かる。この平均は地域の規模の参考値で、個々の牧場の面積を示すものではない。
両者を並べると、阿蘇は多数の組合が1つの草原を分け合い、根室は1戸ずつが自分の牧場を持つ。見た目の広さが近くても、使い手の数は桁が違う。1戸約50haは観光記事の数字で、目安として読む。
5. 広い 草原は、ほうって おくと どうなる?
5. 広い草原は、放っておくとどうなるのか
5. 人が手を入れ続けて成り立つ草原 ── 千年のつきあいと担い手
あその 草原は、ほうって おくと、だんだん 森に もどって しまう と いわれます[6]。
だから、人が 牛を はなしたり、草を かったり、春に 野やきを したり して、草原を まもって きました。牛や 馬を 草原に はなすのは、5月から 10月ごろです[1]。
この つきあいは、千年 いじょう つづくと いわれます。平安時代の 「えんぎしき」にも、あその ぼくの ことが のって いると いわれます[1]。
いま、草原を まもる 人が 足りなく なって、野草の 草原は へって います[6]。広い けしきは、人の 手で つづいて きた ものです。
人が手を入れて続いてきた
阿蘇の草原は、放置すると森林に戻ります。そこで、牛馬を放牧する、草を刈る、春に野焼きをする、といった作業で維持されてきました[6]。牛馬の放牧は、草が伸びる5月から10月ごろです[1]。
この草原と人のつきあいは、千年以上に及ぶといわれます。平安時代の法令集『延喜式』に阿蘇の牧の記述があるとされ、牛馬の放牧のほか、堆肥や茅葺き屋根の材料にも使われてきました[1]。
担い手が減っている
いま、担い手不足で野草地の面積は減っています[6]。広い景色は、大勢の手間が続いてきた結果であり、約170の組合で分け合うのは、広い草原を1人では管理できないからだと考えられます。
阿蘇の草原は、放置すれば森林に戻る。そのため、放牧・採草・野焼きなど人が手を入れることで維持されてきた草原環境だ[6]。牛馬の放牧は、草が伸び出す5月から10月ごろに行われる[1]。野焼きの生態への効果はここでは扱わない。
人と草原のつきあいは千年以上とされ、平安時代の法令集『延喜式』に阿蘇の牧の記述があるという。牛馬の放牧のほか、堆肥や茅葺き屋根の材料にも使われてきたため、草原は暮らしの資源でもあった[1]。
では、なぜ約170もの組合で使うのか。管理に大きな人手が要るので、地域が共同で担う形をとってきたと考えるのが自然だが、資料に因果として書かれているわけではない。確かなのは、担い手の不足によって、日本最大規模とされる野草地の面積が減っているという点だ[6]。
6. 地図で、6.4キロと 25キロを さがして みよう
6. 地図で、6.4kmと25kmを探してみる
6. 出口 ── 「誰の牧場か」を、地図と資料で確かめる
地図帳を 用意します。いえの 場所を 見つけて、地図の すみに ある ものさしの 目もりを 使い、いえから すきな ほうこうに 6.4キロの 長さを はかって みます。
その 長さが、十勝ぼくじょうを 四角に した ときの 1つの へんくらいです。つぎに おなじ ようにして 25キロの 長さを はかって、あその カルデラの 南北と くらべます。
そして、ぼくじょうを 見かけたら、「この 草地は だれが 使って いるのかな」と 考えて みましょう。1つの 家か、くみあいか、ちがいが あるかも しれません。
家にある地図帳か、地図アプリではない紙の地図を使って、自分の家の場所から好きな方向に、6.4kmと25kmの長さを測ってみましょう。縮尺(地図の端にある物差しの目盛り)で、地図上の長さを実際の距離に直せます。
6.4kmは、十勝牧場を正方形にした1辺です。25kmは阿蘇カルデラの南北の長さです。その範囲に、何があるかを見てみてください。
北海道や阿蘇に行ったら、牧場の看板や柵に注目してみましょう。「ここは1つの牧場か、いくつもの牧場の集まりか、組合の草原か」を、資料と見比べる材料になります。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:阿蘇草原保全活動センター、環境省、国土交通省、熊本県、農林水産省の資料と、観光案内・報道記事を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 阿蘇草原保全活動センター「阿蘇の草原についてQ&A」。https://aso-sougencenter.jp/grassland/ (草原の面積、野草地の割合、千年のつきあい、放牧の時期について)
- チューリッヒ保険「阿蘇の野焼き」の記事。https://www.zurich.co.jp/sustainability/articles/gm25045/ (東京ドーム換算の紹介について。二次資料)
- 環境省 阿蘇くじゅう国立公園のストーリー。https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/list/aso-kuju/feature/story/ (カルデラの東西・南北の長さについて)
- 国土交通省 地域観光資源の多言語解説文データベース(阿蘇くじゅう 草原)。https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/H30-01249.html (カルデラの総面積と草原の面積について)
- 熊本県 阿蘇草原関連資料。https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/100943.pdf (牧野組合の数と入会権について。検索結果の抜粋にもとづく)
- 環境省 里なび(阿蘇くじゅう 草原を守る)。https://www.env.go.jp/nature/satoyama/43_kumamoto/no43-3.html (草原の維持と担い手不足について)
- ほっかいどう観光ガイド(北海道観光振興機構)ナイタイ高原牧場。https://www.visit-hokkaido.jp/spot/detail_10448.html (ナイタイ高原牧場の面積について。観光資料)
- 農林水産省 北海道農政事務所 帯広 フォトレポ(家畜改良センター十勝牧場)。https://www.maff.go.jp/hokkaido/obihiro/photorepo/gannba/20250212.html (十勝牧場の役割について。面積は観光サイトの記述による)
- 酪農学園大学の論文(新酪農村建設事業)。https://rakuno.repo.nii.ac.jp/record/4898/files/J-27-2-55.pdf (新酪農村の着工年と造成面積について。検索結果の抜粋にもとづく)
- きっず旅マガジン(観光記事)。https://tabi-mag.jp/ho0476/ (1戸あたりの草地の広さについて。観光記事)
- 農林水産省 北海道の農林水産業の概要(都道府県概要 令和8年版)。https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tiho/15sonota/2026PDF/todouhuken_gaiyou2026-01.pdf (北海道と都府県の経営耕地面積の違いについて)
なおした ところ
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