1. すの なかから なにが でてきたの?
1. 巣の残りかすを調べると、鳥がいちばん多かった
1. 十勝の巣内残渣 ── 44%が鳥類、32%が家畜
トビは、ひろい かわや うみの ちかくに すんで います。ひとつの すを しらべた けんきゅうが あります[1]。
すの まわりには、ひなの ために はこばれた えものの のこりが ありました。それを しらべると、44パーセントが とり、32パーセントが ねこや うしなどの かちくでした[1]。ヤチネズミや アカネズミも みつかりました。
ちいさな とりの ひなを、すごと もって かえる ことも あるそうです[1]。
ただし、これは ほっかいどうの とかちでの ことです。ぜんこくで おなじ わりあいに なる、という ことでは ありません。
「死肉か魚」だけではなかった
山階鳥類研究所の解説によると、トビは魚か動物の死体を食べるスカベンジャーと思われがちですが、繁殖期には鳥やネズミなどの小さな哺乳類、ヘビなどを積極的に捕まえています[1]。
その手がかりが、巣に残った餌の残りかすです。北海道の十勝で調べたところ、餌にされた動物の44%が鳥、次いで32%が猫や牛、豚、羊などの家畜で、ヤチネズミやアカネズミも見つかりました[1]。小鳥のヒナを巣ごと運ぶ例もあります。
この数字をどう読むか
32%の家畜は、生きた家畜を襲った数字とは読めません。死んだ動物を拾った可能性があるからです。44+32=76で、残りの24%はヤチネズミなど別の動物ですが、内訳までは資料に書かれていません。また、これは十勝の巣の例で、全国の割合ではありません。解説は、トビが地域ごとに手に入りやすいものを使っているのだろうと述べています[1]。
トビの食性は、魚食か動物の死体を食べるスカベンジャーと理解されやすい。しかし山階鳥類研究所の解説によれば、繁殖期には鳥類・小型哺乳類・ヘビ類を積極的に捕食している[1]。その根拠の一つが、北海道十勝での巣内残渣(ヒナに運ばれた餌動物の食べ残し)の調査である。
残渣から同定された餌動物のうち、44%が鳥類、32%が猫・牛・豚・羊などの家畜で、ヤチネズミやアカネズミも含まれた[1]。小鳥のヒナを巣ごと持ち帰る例もある。ただし家畜は死体を拾った可能性を排除できず、生きた家畜を襲った数字とは読めない。44+32=76%で、残る24%の内訳は資料にない。しかも十勝の営巣地での値であり、全国値ではない。筆者は、トビが各地で手に入りやすいものを利用していると解釈している[1]。
では、トビは「掃除屋」と「狩り手」のどちらなのか。次の章で、見かたが割れる理由を見る。
2. しんだ どうぶつを たべる、は まちがい?
2. 「死んだ動物が主な食べ物」という説明は、まちがいなのか
2. スカベンジャー説と捕食説 ── 地域・時期・獲物の大きさのちがい
がっこうの ずかんや はくぶつかんでは、ちがう せつめいも あります。
あびこ市 とりの はくぶつかんの かいせつでは、トビの おもな たべものは しんだ どうぶつで、いきている 大きな どうぶつを おそう ことは ほとんど ない、と あります[3]。
とっとりけんの おしらせも、おもに どうぶつや さかなの しがいを たべる、と かいて います。でも カエルや ネズミなど、いきた ちいさな どうぶつも たべます。まちでは 生ゴミも たべます[2]。
どちらも まちがいでは ありません。ばしょや じきや えものの 大きさで、トビの たべものは かわるのです。
二つの説明は食いちがうのか
我孫子市鳥の博物館の解説では、トビの主な食べ物は死んだ動物の死体で、生きた大型動物を襲うことはほとんどないとされています[3]。鳥取県の注意書きも、主に動物や魚の死骸を食べるとしたうえで、カエルやネズミなど生きた小動物も食べ、都市部では生ゴミも食べると書いています[2]。
先ほどの繁殖期の巣の調べ(十勝)とは、強調する場所がちがいます。ただし、どれかが誤りというより、地域・時期・獲物の大きさがちがう話だと読むのが自然です。「大型の生きた動物は襲わない」と「小さな鳥やネズミは捕る」は、同時に成り立ちます。
ニュージーランドの資料にも似た説明がある
ニュージーランドの鳥類サイトも、トビの仲間(英名ブラックカイト)を、食べ物の中心は死肉だが、人のごみや貝、魚、小さな哺乳類、爬虫類、昆虫、鳥も食べ、ほかの鳥の食べ物を奪うこともある日和見的な猛禽だと紹介しています[6]。日和見とは、その場にあるものを取る、という意味です。
十勝の結果は、トビを「死肉食」とだけ説明する資料と食いちがって見える。我孫子市鳥の博物館の解説は、トビの主な食べ物を死んだ動物の死体とし、生きた大型動物を襲うことはほとんどないとする[3]。鳥取県の注意喚起も、主に動物や魚の死骸を食べるとしつつ、カエルやネズミなど生きた小動物も食べ、都市部では生ゴミも食べると記す[2]。
これらは、対立というより視点のちがいと解釈できる。繁殖期の巣内の食べ残しは、ヒナのために運ばれた獲物に偏りうる。一方で通年の主食は死体という説明とも、「大型の生きた動物は襲わず、小型の鳥・ネズミ・ヘビは捕る」という内容は両立する。どの割合が全国で多いかは、巣内の一例からは決められない。
国外のブラックカイトの解説にも、幅広い餌を使う例が紹介されている。ニュージーランドの鳥類サイトは、ブラックカイト(トビの仲間)を日和見的な猛禽とし、食べ物の中心は死肉だが、人のごみ・貝・魚・小型哺乳類・爬虫類・昆虫・鳥も食べ、ほかの鳥の食べ物を奪うことがあると説明する[6]。日和見的とは、その場で得やすいものを選ぶ食べ方を指す。そこで、同じ「魚を食べる猛禽」でも、魚を主食とするミサゴと比べると、トビの特徴が見える。
3. ミサゴと トビは どうちがう?
3. 魚を狙う猛禽でも、ミサゴとトビはやり方がちがう
3. ミサゴとの比較 ── 水に飛び込む漁と、急降下してすくう狩り
うみや かわで さかなを とる とりに、ミサゴが います。ミサゴは、そらから みずに とびこんで、あしで さかなを つかまえます[3]。さかなが おもな たべものです。
トビは、とびながら えものを さがし、みつけると、きゅうに おりて あしで すくうように つかまえます[4]。
キヤノンの とりの せつめいでは、ミサゴは ほそくて ながい つばさだから、みずに とびこんでも また とびあがれる、と いいます。ほかの タカの なかまは、つばさが みずに ひろがって、とびあがれない ことが あるそうです[5]。
トビは、みずに とびこむ りょうは とくいでは ないのかも しれません。さかなだけに たよらず、いろいろな ものを たべる トビと、ちがいが あります。
水に飛び込むミサゴ、すくうトビ
ミサゴは魚を主食とし、空中から水に飛び込んで足で魚を捕まえます[3]。トビは、飛びながら獲物を探し、見つけると急降下して、足ですくうように捕まえます[4]。
キヤノンの鳥の解説によると、ミサゴは細くて長い翼のおかげで、水に飛び込んでも舞い上がれます。ほかのワシ・タカの仲間は、飛び込むと翼が水面に広がって、飛び立てなくなることがよくあるそうです[5]。企業サイトの解説なので、トビが飛び込めないとまでは言えません。ただ、飛び込む漁はトビの得意技ではなさそうです。
見分けるなら尾羽
トビは、尾羽の中央が少しへこんでいて、ほかのタカの仲間と見分けられます[3]。新潟県の鳥類図鑑には、日本の猛禽類で尾羽がバチ状(先がへこんだ形)なのはトビだけ、とあります[4]。
水に近い場所で魚を捕る猛禽として、ミサゴと比べられることが多い。ミサゴは魚を主食とし、空中から水に飛び込んで足で捕らえる[3]。トビは飛翔しながら獲物を探し、見つけると急降下して足ですくうように捕獲する[4]。獲物に一点集中するか、見つけたものを取るかのちがいが、狩りの方法にも出ている。
この背後に翼の形があるという解説もある。キヤノンのバードブランチは、ミサゴは細く長い翼が有利に働いて、水に飛び込んでも舞い上がれる一方、ほかのワシ・タカ類は飛び込むと翼が水面に広がり飛び立てなくなることがよくあると述べる[5]。これは企業サイトの解説なので、トビが飛び込めないと断定はできない。飛び込む漁が得意でない、という程度に読むのが妥当である。
形で見分けるなら尾羽が手がかりになる。トビは尾の中央が少しへこむ[3]。新潟県の図鑑は、日本の猛禽類で尾羽がバチ状なのはトビのみとする[4]。魚だけに絞らず、手に入るものを使う性格は、人の暮らしの近くでも見られる。次の章では、食べ物が子育てにどう影響するかを見る。
4. ごみすて場の ちかくの ひなは どうなる?
4. 餌場に近い巣ほど、ヒナは重く巣立っていた
4. 餌場からの距離と巣立ち時の体重 ── 十勝の繁殖成績
トビは、ひなを そだてる ときも、たべものを さがします。
とかちの しらべでは、ごみすて場など えさ場に ちかい すほど、ひなが すだつ ときの おもさが おもく なっていました[1]。
たべものの ある ばしょに ちかい すほど、ひなは おもく そだって いたのです。
5. うみべで たべものを ねらうのは なぜ?
5. 海辺で、人の食べ物だけがねらわれる理由
5. 人の食べ物への執着 ── 鎌倉の観察と、鳥取県の対策
うみべで おべんとうや おやつを とられた はなしを きいた ことが あるかも しれません。
かまくらで しらべた けんきゅうしゃは、トビが うえから たべものを さがし、もっている 人の うしろから、たべものだけを つかんで とんで いく、と かいて います[1]。
人に おそいかかるのでは なく、たべものだけが めあてだと いいます。むかし 人から えさを もらった トビが、この やりかたを おぼえて しまったのだろう、と かんがえて います[1]。
とっとりけんは、こう すすめます。トビに えさを あげません。うえが ひらけた ばしょでは たべません。やねの したで たべるか、なかが みえない ふくろに いれるか、ひがさで かくします[2]。
みえなければ、ねらえません。トビは、たべものを 目で さがしているからです。
後ろから、食べ物だけをつかむ
鎌倉で観察した研究者の報告では、トビは上空で餌を探し、食べ物を持つ人の背後から近づいて、食べ物だけをつかんで飛び去ります。人を襲っているというより、食べ物にだけ執着しているようだ、と書かれています[1]。人から餌をもらったトビに、人の持つ食べ物を取る行動が定着したのだろうと推定されています。これは研究報告の筆者による観察と推定です。
見せなければ、ねらわれない
鳥取県は、人の食べ物の味を覚えたトビは執着するとして、餌をやらない、上空が開けた場所での食事を控える、屋根の下で食べる、食べ物を中の見えない袋に入れる、日傘などで見せない、といった対策をあげます[2]。研究者も、傘やパラソルで食べ物を見せないことを勧めています[1]。
食べ物の味を覚えたトビは、手に入りやすいものを選ぶという、これまでの章の性格を、そのまま人の食べ物にも向けているのかもしれません。
神奈川県の鎌倉での観察報告によると、トビは上空で餌を探し、食べ物を持つ人の背後から接近して、食べ物だけをつかんで飛び去る。人を襲うというより、餌だけに執着しているように見える。筆者は、人から餌をもらったトビにこの行動が定着したと考えている[1]。これは筆者の観察に基づく推定であり、餌付けが唯一の原因と断定されているわけではない。
この観察は、前の章の性格とつながる。魚に絞らず、その場で得やすいものを選ぶトビにとって、人の手の食べ物は、ごみ捨て場と同じく「手に入りやすい餌」になりうる。ただし資料は、この因果までは述べていない。
鳥取県は、人の食べ物の味を覚えたトビは執着するとして、餌を与えない、上空が開けた場所での食事を控える、背丈より高い壁を背にするか屋根の下で食べる、中の見えない袋に食べ物を入れる、日傘などで見せない、という対策を示す[2]。研究者も傘やパラソルを勧める[1]。共通するのは、食べ物を見せない、という方針である。
6. トビを めで おって みよう
6. 空を見上げて、トビの尾と声を確かめてみる
6. 観察の手がかり ── 尾の形・鳴き声・生息場所
トビは、にほんの ほとんどの ちいきで みられます。あまみより みなみと、いくつかの しまを のぞいた ぜんこくに います[1]。ひろい かわや うみの ちかくを さがして みましょう。
そらを とんでいる とりを みつけたら、おを よく 見ます。まんなかが すこし へこんで いたら、トビです[3]。
こえも てがかりです。「ピーヒョロロロ」と すんだ こえで なきます[1]。
うみべで ごはんを たべる ときは、うえから 見えないように、やねの したや ふくろの なかで たべると いいですよ。
日本では、トビは奄美以南と一部の島を除く全国に分布し、おもに漁港や川幅の広い河川、水田などの農耕地にすんでいます[1]。近所の川や田んぼの上を見上げてみてください。
手がかりは二つあります。ひとつめは尾羽で、中央が少しへこんでいればトビです[3]。ふたつめは声で、「ピーヒョロロロ」と澄んだ声で鳴きます。繁殖期には、帆のように翼を広げて飛びながら、よく鳴きます[1]。
食べ物の話の続きを知りたくなったら、山階鳥類研究所の解説(出典[1])には、巣の材料に軍手や靴下がよく使われることや、冬の空港周辺で昆虫を食べることも書かれています。トビが何を食べるかは、季節や場所を変えながら見ると、また新しい顔が見えてきます。
観察の手がかりは三つある。第一に尾羽。トビは尾の中央が少しへこむ[3]。日本の猛禽類で尾羽がバチ状なのはトビだけとされる[4]。第二に声。ピーヒョロロロと澄んだ声で鳴き、繁殖期には帆翔しながらよく鳴く[1]。第三に生息場所。日本では奄美以南と一部の島嶼を除く全国に分布し、おもに漁港・川幅の広い河川・水田などの農耕地で見られる[1]。
山階鳥類研究所の解説には、本文で触れなかった話もある。巣材に軍手・靴下・布切れなどの人工物がよく使われること、秋から冬の空港周辺では、よく刈り込まれた草地の昆虫を餌に大きな群れでねぐらをとることなどである[1]。「何でも食べる」は、季節や場所ごとにちがう形で現れる。一次資料に当たると、このメモが拾わなかった細部に出会える。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文で使った資料です。数字や言い回しは、各ページで確かめてください。
- 山階鳥類研究所 岩見恭子「トビ」Bird Research News Vol.8 No.10 https://www.bird-research.jp/1/seitai/8_10migrans.pdf (巣の残渣・分布・ヒナの育ち・鎌倉の観察・鳴き声)
- 鳥取県「トビにご注意ください」 https://www.pref.tottori.lg.jp/329087.htm (食べ物・人の食べ物への対策)
- 我孫子市鳥の博物館「てがたん 2020年1月 手賀沼のタカとハヤブサ」 https://www.city.abiko.chiba.jp/bird-mus/info2/tegatan/tegatan2017_.files/tega202001.pdf (主な食べ物・尾羽・ミサゴ)
- 新潟県「トビ(鳥類図鑑)」 https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908743310.html (狩りの方法・尾羽の形)
- キヤノン バードブランチ「ミサゴ」 https://global.canon/ja/bird-branch/photo-gallery/misago/ (ミサゴの翼と飛び込み)
- New Zealand Birds Online「Black kite」 https://nzbirdsonline.org.nz/species/black-kite (海外の資料による食べ物の説明)
なおした ところ
更新履歴
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