1. いつもの 草むらに いるのは、どんな てんとうむし?
1. 草むらや畑にいるテントウムシは、何を食べているのか
1. 草地・畑地・住宅地 ── ナナホシとナミの生息場所と餌
赤い 体に 黒い 星が 7つ。ナナホシテントウは、草むらや 畑で ふつうに 見られます[1]。子どもの ときも 大人に なっても、アブラムシを 食べて くらします[1]。
ナミテントウは、もう すこし はば広く います。町の 中から 山まで、ふつうに 見られる 虫です[2]。体の 長さは 4.7〜8.2ミリです。こちらも 子どもの ときから アブラムシを 食べます[2]。
ナミテントウは、はねの 色や もようが いろいろです[2]。だから、ナミテントウは 星の 数だけでは、なかまを 見分けられません。
ここまでで、答えの 1つめ。てんとうむしは、アブラムシの いる 草むらや 畑、町の 中に います。でも、これは ぜんぶの てんとうむしの 話では ありません。
赤い体に黒い点が7つ。ナナホシテントウは、草地や畑地で普通に見られます。国土交通省の河川の生きもの調査の資料では、幼虫も成虫もアブラムシ類を餌にする虫とされています[1]。
ナミテントウは、もう少し生活の場が広い種類です。図鑑には、住宅地から山地まで普通に見られると書かれています。体長は約4.7〜8.2ミリで、幼虫も成虫もアブラムシを捕らえて食べる肉食性です[2]。
ナミテントウは、羽の色や模様が個体によって大きく違います[2]。そのため、ナミテントウは星の数だけでは種類を見分けられません。
ここまでが、題名の問いへの最初の答えです。身近なテントウムシは、アブラムシのいる草地や畑、住宅地や山で暮らしています。ただし、これは全部のテントウムシに当てはまる話ではありません。
2. アブラムシを 食べない てんとうむしも いるの?
2. アブラムシを食べないテントウムシは、どこにいるのか
2. 菌食・植物食・特定の餌 ── 餌の違いが生息場所を決めるか
います。てんとうむしの 中には、食べ物が ぜんぜん ちがう なかまが います。
キイロテントウは、うどんこ病という 植物の 病気の カビを 食べます[3]。ニジュウヤホシテントウは、虫では なく、ナスや ジャガイモ、トマトなどの 葉を 食べます[4]。ナスの 葉を 食べて しまうので、畑の 人には こまりものです。
カメノコテントウは、クルミハムシという 虫の 子どもを 食べます。この 虫は クルミの 木に いるので、カメノコテントウも、クルミの 木で 見られる ことが 多いのです[3]。
食べ物が ちがう てんとうむしは、いる 場所も ちがう ことが あるのです。
島根県の農業の資料では、ナスの葉を食べる害虫が「テントウムシダマシ」という名前で呼ばれています。アブラムシを食べる益虫のテントウムシによく似ているからです[4]。
その一つ、ニジュウヤホシテントウは、ナスのほか、ジャガイモやトマトなどのナス科の植物を食べます。葉の裏から、さざ波のような跡を残して葉肉を食べていきます[4]。
ほかにも、食べ物に特徴のある種類がいます。キイロテントウは、うどんこ病の原因になる菌類などを食べます[3]。カメノコテントウはクルミハムシの幼虫を食べ、クルミの木で見られることが多い種類です[3]。
種類によっては、「どこにいるか」が食べ物のある場所とつながっています。次の疑問は、食べ物が一番多い夏に、テントウムシはどうしているのか、です。
島根県の資料では、ニジュウヤホシテントウ類は、アブラムシを捕食する天敵のテントウムシに似ていることから「テントウムシダマシ」と総称される[4]。ナスのほか、ジャガイモ・トマト・ホオズキなどナス科を食べ、葉の裏からさざ波状に葉肉を食害する[4]。
Honda の森のライブラリによれば、キイロテントウの餌は菌類で、うどんこ病菌などを食べる。カメノコテントウはクルミハムシの幼虫を餌とし、クルミの木で見られることが多い[3]。この種では、餌のいる場所が生息場所と重なっている。
種によっては、餌が生息場所を限る例がある。夏の過ごし方は種や地域で違うため、次章では、ナナホシテントウを中心に季節の動きを見る。
3. 夏の あつい 日、てんとうむしは どこに いるの?
3. 暑い夏、テントウムシはじっとしている
3. 夏の過ごし方 ── 落ち葉・葉裏・ススキの株
あつい 夏、てんとうむしは あまり 動きません。落ち葉の 下や、葉の うらで、じっと して いる ことが 多いと いわれます[6]。
ナナホシテントウを しらべた 研究では、8月に 夏の ねむりに ついて いた 大人の 虫は、ススキの なかまの かぶに いた ものが おもだった、と 書かれて います[5]。ススキの かぶは、ねもとが こんもり して、すき間が あります。
夏の 草むらは、てんとうむしにとって、食べ物を さがす 場所だけでは ありません。休む 場所でも あるようです。
夏のテントウムシは、意外に静かです。暑い夏には、落ち葉や葉の裏でじっとしていることが多いと紹介されています[6]。
ナナホシテントウでは、夏に活動を止めて休む「夏眠」をする成虫がいます。中部地方で調べた研究では、8月に夏眠していた成虫は、おもにススキの仲間の株にいたと報告されています[5]。ただし、ほかの地域や種類にも当てはまるとは限りません。
夏は活動を止めて草の株で休み、季節が変わると別の場所で過ごす。テントウムシは、一年のなかで場所を変えて暮らしているようです。
暑い時期のテントウムシは、落ち葉や葉裏でじっとしていることが多いとされる[6]。ナナホシテントウでは、夏眠(夏の休眠)する成虫が知られる。Takahashi(1993)の要旨によれば、中部日本で8月に夏眠していた成虫は、おもにススキ類の株にいた[5]。
この報告は英語の要旨にもとづく。「ススキの株で夏を越す」とは一般化せず、「この研究では、夏眠中の成虫の多くがススキ類の株で見つかった」という強さで読む。なお、夏眠の有無は地域によって違う可能性がある。資料によって書き方が異なり、断定できない。
ここまでの要点は、夏の居場所は餌の場所とは別に、休むための場所として選ばれているらしい、という点だ。では、冬はどうか。次の章へ進む。
4. 冬、てんとうむしは どこで ねむるの?
4. 冬のテントウムシは、どこに集まるのか
4. 越冬場所 ── 落ち葉の下・岩のすき間・建物
冬に なると、てんとうむしの 多くは 大人の すがたで、冬を こします[7]。
ナナホシテントウは、寒い 日には 草の ねもとや 落ち葉の 下で ねむります。天気の いい 日が つづくと、外に 出て くる ことも あります[3]。
ナミテントウは、もっと にぎやかです。冬には 数十ぴきから 数百ぴきが、風が あたらず、温度の かわりが 小さい 岩の すき間や、のき 下に 集まります[3]。11月ごろ、白い たてものに 集まる ことも あります[2]。
落ち葉の 下、木の かわの 下、家の 屋根うらなど、中でも 冬を こします[7]。てんとうむしは、冬の あいだも 人の 近くに いるのです。
冬を迎えるテントウムシは、成虫で冬を越す種類が多いとされます[7]。
ナナホシテントウは、寒い日は草の根元や落ち葉の下で眠っています。天気のよい日が続くと、外に出てくることもあります[3]。
ナミテントウは、集団をつくります。冬には数十〜数百匹が、風が当たらず温度変化の小さい岩のすき間や軒下に集まります[3]。図鑑には、11月ごろに越冬のため白い建物へ集まることもある、と書かれています[2]。なぜ白い建物なのか、理由は今回の資料にはありません。
落ち葉の下や樹皮の下のほか、屋根裏などの建物の中で冬を越すこともあります[7]。島根県の資料にも、オオニジュウヤホシテントウの成虫が山際の落ち葉の下や建物の屋根裏で冬を過ごすと書かれています[4]。
種類によって、場所も集まり方も違います。カメノコテントウは、岩のすき間や樹皮の裏で集団越冬します。キイロテントウは、葉や樹皮の裏などに1匹か数匹で隠れます[3]。
日本の主なテントウムシは成虫越冬の種が多く、ナミテントウ・ナナホシテントウは落ち葉の下や樹皮下のほか、屋根裏など屋内でも越冬する[7]。
ナナホシテントウは、寒い日には草の根元や落ち葉の下で休み、好天が続くと外に出る[3]。いっぽうナミテントウは、風が当たらず温度変化の小さい岩の隙間や軒下に、数十〜数百匹で集まる[3]。11月ごろに白い建物に集まるという記述もあるが[2]、白い建物を好む理由は資料に書かれていないため、扱わない。
オオニジュウヤホシテントウの成虫は、山際の落ち葉の下や建物の屋根裏で越冬する[4]。なお、同じ資料のニジュウヤホシテントウの項には越冬場所の記載がないため、混同してはならない。種ごとに越冬場所が異なる例として、カメノコテントウは岩の隙間や樹皮の裏で集団越冬し、キイロテントウは葉や樹皮の裏に単独か数匹で隠れる[3]。
ナミテントウの集団越冬場所は、風が当たらず温度変化の小さい岩の隙間や軒下だった。ほかの種も同じ条件で場所を選んでいるかは、この資料からは分からない。次章では、中部地方でナナホシテントウの越冬場所を測った研究を見る。
5. ススキの かぶでは、どんな てんとうむしが 見つかったの?
5. ススキの株の南側に、何がそろっていたのか
5. ススキの株と方位 ── 気温差とアブラムシの量
中部地方で 2月に、冬を こして いる ナナホシテントウを さがした 研究が あります[5]。見つかった 場所は、ススキの なかまの かぶや、そのまわりの もりあがりでした[5]。
しかも、多かったのは、南や 東を 向いた かぶです。そこは、北向きの 場所より、気温が 2〜6度 高く、アブラムシも 多かった そうです[5]。
ひなたの あたたかい 場所で、近くに 食べ物も ある。てんとうむしは、冬を こす 場所と 食べ物の 場所が、近くに ある ところに いたのです。
中部地方で2月に越冬中のナナホシテントウの成虫を調べた研究があります。成虫が見つかったのは、ススキの仲間の株や、その周りの盛り上がりでした[5]。
とくに多かったのは、南向きや東向きの株です。そこは北向きの場所より気温が2〜6℃高く、アブラムシも多かったと報告されています[5]。つまり、日当たりのよい暖かい株の近くに、越冬する成虫が多かったことになります。
ただし、これは英語の要旨で確かめた報告で、一地方の一つの研究です。ススキの株が他の地域でも同じように使われるとは、ここでは言えません。それでも、「冬を越す場所」と「食べ物のある場所」が近いという見方は、ここまでの章とつながります。
Takahashi(1993)の報告は、中部日本の2月に、越冬中のナナホシテントウ成虫が、ススキ類の株やその周りの盛り上がりで見つかったとする。南向き・東向きの株に多く、そこは北向きより気温が2〜6℃高く、アブラムシも多かった[5]。
この結果から、越冬個体は暖かさと餌の近さの両方がそろう場所にいた、と読める。ただし、成虫が暖かさを選んだのか、餌を選んだのかは、要旨からは分からない。ほかの地域や種へ一般化できる強さはない。
前章までの、岩の隙間(ナミ)、落ち葉の下(ナナホシ)、屋根裏(オオニジュウヤホシ)という種ごとの違いと並べると、場所の候補はいくつもあり、風・温度・餌の近さといった条件で、種や地域ごとに使い分けていると考えられる。
6. てんとうむしを、いつ・どこで 見つけるか
6. 季節ごとに、テントウムシを探す場所を変えてみる
6. 出口 ── 季節ごとに場所を変えて探す、資料の読みどころ
近くの 草むらで、てんとうむしを さがして みましょう。春や 秋には、アブラムシの いる 草の 葉の うらを 見ます。
あつい 日は、葉の うらや 落ち葉の 下を そっと 見ます。冬は、ススキの かぶや、その まわりの 落ち葉を、さわらずに 見て みます。
見つけたら、さわらずに 見るだけに します。落ち葉を めくった ときは、元の とおりに もどして ください。岩の すき間や のき下に 集まって いる ときも、つつかないで、そっと 見るだけに しましょう。
何を 食べて いるか、どんな 場所に いるかを、見たまま メモして みましょう。
近くの草むらや畑のそばで、季節ごとにテントウムシを探してみましょう。春は、アブラムシのいる草の葉の裏を見ます。夏は、日陰の葉の裏や落ち葉の下をそっとのぞきます。冬は、ススキの株や、そのまわりの落ち葉を、さわらずに見てみます。
見つけたら、どの種類かを決めるより先に、「何の上にいたか」「何を食べているように見えたか」「日なたか日陰か」を、見たまま記録してみましょう。ナミテントウは色や模様が多様なので、星の数で種類を決めないようにします。
安全のため、さわらずに観察します。落ち葉をめくったときは、元に戻してください。岩のすき間などに集団でいても、つついたり持ち帰ったりしません。
資料を読むなら、種ごとの食べ物や越冬場所は、Honda の森のライブラリ[3]で読めます。ナスの害虫としての姿は島根県の資料[4]に、ススキの株の研究は高橋さんの報告[5]にあります。
種類ごとに「どこで何を食べて、いつどこにいるか」を見分けていくと、見える草むらが少し変わってきます。
観察は、草地・畑・住宅地の植え込みなどで、季節を変えて同じ場所を見るとよい。春はアブラムシのいる草の葉裏、夏は葉裏や落ち葉の下、冬はススキの株やそのまわりの落ち葉の下が候補になる。種の同定を急がず、「餌らしきもの」「場所」「日当たり」を記録するほうが、本稿の問いには合う。ナミテントウは斑紋が多様なので、星の数で種を決めない[2]。
安全上、さわらず、落ち葉は元に戻し、集団越冬中の個体を持ち帰らない。
資料の読みどころとしては、ナミテントウの図鑑[2]、Honda の森のライブラリ[3]、島根県のナスの害虫の資料[4]、Takahashi(1993)の越冬・夏眠場所の報告[5]がある。この記事は、集団越冬の利点や、地域差の資料までは扱っていない。そこが次に読む問いになる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:国の機関の資料、図鑑、自治体の農業資料、研究報告の要旨を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。
- 国土交通省 武雄河川事務所「松浦川 河川水辺の生物(昆虫)」。https://www.qsr.mlit.go.jp/takeo/livingthing/matsuura/karyuiki_insect.html (ナナホシテントウの生息場所と餌)
- Honda 生きもの図鑑「ナミテントウ」。https://www.honda.co.jp/outdoor/adventure/namitentou.html (ナミテントウの生息場所・体長・越冬)
- Honda の森 ライブラリ「テントウムシ」。https://global.honda/jp/philanthropy/hondawoods/forest/library/019/ (種ごとの餌と越冬場所)
- 島根県「ナスの害虫 テントウムシダマシ」。https://www.pref.shimane.lg.jp/industry/norin/gijutsu/nougyo_tech/byougaityuu/byougaityuu-index/nasu/nasu-tentoumusidamashi.html (植物を食べる種と越冬場所)
- Takahashi K. (1993) Overwintering and aestivation sites of Coccinella septempunctata brucki, Applied Entomology and Zoology 28(4)。https://www.zin.ru/ANIMALIA/COLEOPTERA/ADDPAGES/Andrey_Ukrainsky_Library/References_files/Takahashi93a.htm (ススキの株での越冬・夏眠の報告。要旨の確認)
- HugKum「テントウムシはここを観察しよう」。https://hugkum.sho.jp/140822 (夏の過ごし方)
- DIME「テントウムシ」の記事。https://dime.jp/genre/2062252/ (成虫での越冬)
なおした ところ
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