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ここに書いてあることは、誰かが実際に手を動かして調べ、考え、作り上げてきたものを拾い集めています。専門の本や論文、作品、そしてそれを生み出した人たち。気になったことがあれば、ぜひそのおおもとに直接ふれてみてください。このメモには書ききれない熱を、感じてもらえると思います。

ちずの しろい ところは、いま どのくらい のこって いるの?

地図の白い場所は、いまどれくらい残っているのか ── 陸と海と、森の下

地図の空白 ── 人類はどこまで地球を歩き尽くしたのか、陸・海・森の下の測量から

分野:自然

むかしの 小説しょうせつに、ちずの しろい ところに ゆびを おいて、「おおきく なったら ここへ いく」と いう 男の子が でて くる。しろい ところは、ちずに なにも かいて いない ところ。

いまの せかいの ちずにも、しろい ところは のこって いるのだろうか。人は ちきゅうを、どこまで あるいた のだろう。

このメモでは、ちずの しろい ところを、陸りくと うみと もりの したで しらべて みた。

いまから120年ほど前の小説に、地図の白い場所に指を置いて「大きくなったらここへ行く」と言う少年が出てくる。白い場所とは、地図に何も描かれていない場所のことだ。

いまの世界地図に、白い場所は残っているのだろうか。人は地球をどこまで歩いたのか。このメモでは、陸と海と、森の下を順に調べてみた。

ジョゼフ・コンラッドの中編小説『闇の奥』(1899年に雑誌へ連載)に、地図の白い場所に指を置いて「大きくなったらここへ行く」と言う少年の話が出てくる[1][2]。では、いまの地図に、その白い場所は残っているのか。

人が「歩いた」ことと、地図に「描けた」ことは、別の問いだ。ニューギニア高地の人々、陸の標高地図、登頂の記録がない山、海底地図、森の下のレーザー測量を順に見て、この問いに答えられるところまで答えてみる。

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1. しろい ところに ゆびを おいた 男の子

1. 少年が指を置いた、地図の白い場所

1. 「地図の空白」── 少年が指を置いた場所

ちずが だいすきな 男の子が いた。ちずの しろい ところに ゆびを おいて、「おおきく なったら、ここへ いく」と いった。しょうせつの なかの はなしだ。

しろい ところは、ちずに なにも かいて いない ところ。そこには、だれか いたのだろうか。

『闇の奥』という小説に、地図が好きだった少年の思い出が出てくる。少年は南アメリカやアフリカの地図を何時間もながめて、とくに心をひかれた白い場所に指を置き、「大きくなったらここへ行く」と言った[1]。この小説は、1899年に雑誌に連載された[2]。

白い場所とは、地図に何も描かれていない場所のことだ。人がいないのか、行った人がいないのか、測っていないだけなのか。白い場所に本当に入っていった人の話から見てみよう。

『闇の奥』の語り手マーロウは、子どものころ地図に夢中だったと話す。南アメリカ、アフリカ、オーストラリアを何時間もながめ、とくに心をひく白い場所を見つけると、そこに指を置いた[1]。

At that time there were many blank spaces on the earth, and when I saw one that looked particularly inviting on a map (but they all look that) I would put my finger on it and say, "When I grow up I will go there."

Joseph Conrad, Heart of Darkness(1899年に雑誌へ連載、1902年に単行本。Project Gutenberg 版)[1][2]

地図に描かれていない場所は、「空白」と呼ばれた。この記事では、その空白が、いまどれくらい残っているのかを調べる。まず気になるのは、白い場所とは何が白いのか、だ。誰もいないのか、誰も行っていないのか、それとも地図を描く側が知らないだけなのか。

2. しろい ところに、たくさんの 人が くらして いた

2. 白いはずの谷に、たくさんの人が暮らしていた

2. ニューギニア高地 ── 白い場所に暮らしていた人々

1930ねんだい、いまから 90ねんくらい まえの はなし。ニューギニアという しまの 山の おくは、だれも すんで いないと おもわれて いた。そこへ、金を さがしに きた 人たちが はいって いった。

すると、ひろい たにに、100まん人ほどの 人が くらして いたと いわれる。かいせつでは、たにの 人たちは、そとの せかいの ことを しらなかった とされて いる。

しろい ところは、だれも いない ところ とは かぎらなかった。ちずを かく 人が、まだ しらなかった だけ。ベトナムの ソンドン洞窟どうくつも、ちかくに すむ 人が さきに いりぐちを 見つけて いた。ただし、ぜんぶの しろい ところが そうだった とは いえない。

それでは、いまの ちずには、しろい ところは のこって いるのだろうか。

90年ほど前まで、ニューギニア島の内陸は、「けわしい山と、じめじめしたジャングルが続いているだけ」と考えられていた[3]。金を探しにきたオーストラリア人のミック・リーヒーたちは、人が住んでいない土地だと思って、山の奥へ入っていった[4]。1933年2月、リーヒーの一行は山の上から、人の多い広い谷を見つけた[3]。

その高地には、100万人ほどが暮らしていたと紹介されている[4]。この解説では、高地の人たちは外の世界を知らず、外から来た人たちを初めて見たとされている[4]。地図の白い場所は、だれもいない場所とはかぎらなかった。谷の人たちのほうから見れば、外の世界がまだ知らない場所だった、ともいえる。

ベトナムのソンドン洞窟も、1990年に地元の男性が入り口を見つけ、2009年にその案内で国際調査隊が入った[5](くわしくは洞窟探検家の記事)。ただ、白い場所のぜんぶがそうだったとまでは言えない。

では、いまの地図に、白い場所は残っているのだろうか。

1930年ごろまで、ニューギニア島の内陸は、「けわしい山と、毒気のたちこめるジャングルが続くだけ」と考えられていた[3]。オーストラリア人の探鉱者ミック・リーヒーは、1930年にマイケル・ドワイヤーと川の上流へ入り、1933年2月15日には弟のダンらとエリンバリ山から、人の多いワギ谷を見おろした[3]。

リーヒー兄弟は、金探しのために、人が住んでいないと思っていた土地へ入った[4]。ところが、その高地には100万人ほどが暮らしていたと紹介されている[4]。この解説は、高地の人々のほうも外の世界を知らなかったと伝えている[4]。1983年のドキュメンタリー『ファースト・コンタクト』は、リーヒー自身が撮っていた映像を使った作品で、解説ページが公開されている[4]。

地図の白は、その土地に誰もいないという意味ではなかった。地図を描く側が、まだその土地を知らなかった、という意味だった。谷の人々の側から見れば、外の世界のほうが知らない場所だった、という言い方もできる。同じ型の例は、ほかにもある。ベトナムのソンドン洞窟は、1990年に地元の男性ホー・カインさんが入り口を見つけ、2009年にその案内で国際調査隊が入った[5](洞窟探検家の記事)。ただ、この2つの例から、白い場所の全部がそうだったとまでは言えない。

では、いまの世界地図には、白い場所はもう残っていないのだろうか。

3. 陸りくの ちずは、そらから うまった

3. 陸の地図は、宇宙から埋まっていった

3. 衛星とスペースシャトル ── 陸の高さの地図が埋まるまで

じんこう衛星えいせいが、そらから ちきゅうの しゃしんを とる ように なったのは、1972ねんから。

2000ねんには、スペースシャトルが 11にち かけて、陸りくの 8わりほどの 高さを はかった。山の 高さや、たにの ふかさが、せかい じゅうで おなじ やり方で わかる ように なった。

でも、しゃしんや 高さの ちずが あっても、人が そこへ いった とは かぎらない。つぎは、まだ だれも のぼって いない 山の はなし。

地図の白を埋めたのは、歩く人だけではない。1972年、アメリカが地球観測衛星ERTS-1(のちのランドサット1号)を打ち上げた。1年の予定だった観測は6年ほど続き、撮った画像は地球の表面のおよそ75%にわたった[6]。

2000年2月には、スペースシャトルのエンデバー号が、11日間の飛行でレーダーを使い、陸の高さを測った。北緯60度から南緯56度のあいだにある陸のおよそ80%を測った。約30メートルおきに1点という細かさで観測している[7][8]。

1899年の小説から、およそ100年後のことだ。ただし、この観測がとどいたのは、北緯60度から南緯56度のあいだまで。それに、高さの地図があることと、人がそこへ行ったことは、別の話だ。

地図の白を埋めたのは、歩く人だけではない。1972年7月23日、NASAが地球観測衛星ERTS-1(のちのランドサット1号)を打ち上げた。設計上の運用は1年だったが、実際は6年ほど働き、撮った画像は地球の表面のおよそ75%にわたった[6]。

2000年2月11日から22日の11日間には、スペースシャトルのエンデバー号が、レーダーで陸の高さを測るSRTMという観測をした。北緯60度から南緯56度のあいだにある陸地のおよそ80%のデータが集まった。観測の細かさは約30メートル(1秒角)ごとに1点だ[7][8]。

小説の少年が地図の前に座った1899年から、およそ100年後のことだ。ただし、この観測の範囲は北緯60度から南緯56度のあいだだけで、それより高緯度の陸は含まれていない。それに、高さのデータがあることと、人がその場所へ行ったことは、別の話だ。

4. まだ だれも のぼって いない 山

4. だれも登っていない山は、なぜ残っているのか

4. ガンカー・プンスム ── 登山が禁じられた山

ブータンという くにに、ガンカー・プンスムという 山が ある。7570メートルで、てっぺんに たった 人の 記録きろくが ない 山では、いちばん 高いと いわれる。

むかし、なんども のぼろうと した 人たちが いたが、だれも てっぺんに つけなかった。いまは、ブータンの きまりで、山に のぼっては いけない。山には かみさまや 精霊せいれいが すむ、と かんがえる 人たちが いる ためだと いわれる。

ちずの しろい ところは、いけない から のこる ことも ある。いっては いけないと きまって いる から のこる ことも ある。

ブータンのガンカー・プンスムは、高さ7570メートル。登頂の記録がない山としては、世界でいちばん高いといわれる[9][10]。ブータンは1983年に登山を受け入れはじめ、1985年から86年に4つの隊が登ろうとしたが、どれも頂上に立てなかった[9][10]。

その後、ブータンは1990年代なかばに、6000メートルより高い山に登ることを禁じた。2003年からは、登山そのものが禁止されている[9][10]。山を神や精霊のすみかと考える信仰があるためだと説明されている[9][10]。

この山が白いまま残っているのは、行けなかったからだけではない。国が登山を禁じているからでもある。人が山に登る理由はなぜ人は山に登るのかの記事にもある。

では、人がまだ足をふみ入れていない場所は、全部でどのくらい残っているのだろう。その割合を数えた数字は、見つけられなかった。洞窟のなかにも、まだ探検の途中の場所がある(洞窟探検家の記事)。

ブータンのガンカー・プンスム(標高7570メートル)は、登頂の記録がない山としては世界でいちばん高いといわれる[9][10]。ブータンが登山に門戸を開いたのは1983年で、1985年から86年に4つの遠征隊が挑んだが、どれも登頂に失敗した[9][10]。

その後、ブータンは1990年代なかばに6000メートルを超える山への登山を禁じ、2003年からは登山そのものを禁じている[9][10]。山を神や精霊のすみかと考える土地の信仰があるため、と説明される[9][10]。禁止の始まりを1994年とする資料と1996年とする資料があるので、ここでは「1990年代なかば」と書いた。

この山が地図の白いまま残っているのは、行けなかったからだけではない。国が登山を禁じているからでもある。人が山に登る理由はなぜ人は山に登るのかの記事にもある。

では、人がまだ足をふみ入れていない場所は、全部でどのくらい残っているのか。その割合を数えた数字は、見つけられなかった。洞窟には、いまも探検の途中の場所がある(洞窟探検家の記事)。山や洞窟のように、「登った」「入った」という記録のない場所が残っていることは、確かだ。

5. いちばん しろい ところは、うみの 底そこ

5. いちばん白いのは、海の底

5. 海底地図 ── Seabed 2030 が測り残している7割

いま いちばん 大きな しろい ところは、うみの 底そこ。せかいの うみの 底そこの うち、こまかい ちずが できて いるのは、2026ねんで 28.7パーセント。7わりくらいは、これから。

うみの なかは、ひかりが すこししか とおらない。だから、そらから しゃしんを とっても、うみの 底そこは 見えない。ふねが おとを だして、かえって くるまでの じかんで、ふかさを 測はかる。

1960ねん、ふたりの 人が、ふかい うみに もぐる ふねに のって、いちばん ふかい ところの 底そこに おりた。そこに いたのは、20ぷんくらい だった そうだ。人が いった ことと、こまかく はかった ことは、べつの こと。

いま、いちばん大きな白い場所は、海の底だ。日本財団と、海底地図づくりの国際的な取り組みGEBCOは、2017年にSeabed 2030という計画を始めた。2030年までに海底の地図を完成させる計画だ。始めたころ、決めた細かさで測れていたのは海底の6%ほど[11]。2026年4月の発表では28.7%になった[13]。1年で500万平方キロメートル近く増えたが、残りは7割ほどある。

測るのがむずかしいのは、光が海のなかを数百フィートほどまでしか通らないからだ[14]。空から写真を撮るやり方は使えない。かわりに、船が音を出して、はね返ってくるまでの時間から深さを測る[15]。

衛星でも、大きな海山などが持つ重さによる重力のちがいから、おおまかな地形を推定できる。ただ、細かいところはぼやける[15]。GEBCOは、「火星の表面の形のほうが、地球の海底の形より知られている、とよくいわれる」と書いている[16]。

1960年1月23日、ジャック・ピカールとドン・ウォルシュが乗った潜水艇が、いちばん深いチャレンジャー海淵の底に降りた。底にいたのは20分ほどだといわれる[17]。人が行ったことと、細かく測ったことは、別のことだ。深海の生きものの話は深海には何がいるのかの記事にある。

いま、いちばん大きな白い場所は海の底だ。日本財団と、海底地形の地図をつくる国際的な取り組みGEBCOが、2017年にSeabed 2030という計画を始めた。2030年までに海底全体の地図を完成させる計画だ。始めたとき、基準を満たす細かさで測れていたのは、海底の6%ほどだった[11]。2025年6月には27.3%[12]、2026年4月には28.7%になった[13]。1年で500万平方キロメートル近くが加わり、220の組織がデータを出している[13]。それでも、残りは7割ほどある。

なぜ、陸のように空からは測れないのか。陸の地図は、光を使った衛星やレーザーで作れる。ところが、光は海水のなかを、水面から数百フィートほどまでしか通らない[14]。そこで、船が音を出し、はね返ってくるまでの時間から深さを測る。扇のように広がる何本もの音で広い幅を一度に測るマルチビーム測深機がある[15]。ただ、測れるのは船が通ったところだけだ。

空白といっても、地図がまったくないわけではない。衛星は、大きな海山が持つ質量による重力のちがいをとらえて、海底の地形を推定する。1.5キロメートルより大きな海山なら分かるが、細かいところはぼやける[15]。GEBCOは、「火星の表面の形のほうが、地球の海底の形より知られている、とよくいわれる」と書いている[16]。

1960年1月23日、ジャック・ピカールとドン・ウォルシュが乗った潜水艇トリエステ号が、いちばん深いチャレンジャー海淵の底に降りた。底にいたのは20分ほどだったといわれる[17]。人が行ったことと、その一帯を細かく測ったことは、別のことだ。深海の生きものは深海には何がいるのかの記事で書いた。

6. もりの したに、まちが あった

6. 森の下に、いくつもの町が隠れていた

6. LiDAR ── 森の下を「見えるように」した測量

もりの 上から しゃしんを とっても、はっぱしか うつらない。そこで、ひこうきから レーザーの ひかりを じめんに あてる、という はかり方が つかわれる。はっぱの すきまを とおった ひかりが じめんに とどくので、コンピューターで 木を とりのぞくと、じめんの かたちが 見えて くる。

この はかり方で、グアテマラや エクアドルの もりの 下から、むかしの 人たちの まちや みちの あとが、たくさん 見つかった。エクアドルの まちは、2500ねんくらい まえから あった ようだ。

しろい ところの 下には、むかし そこに くらした 人たちが いた。では、人は ちきゅうを あるきつくしたのかな。まだ そうは いえなさそうだ。

森の上を飛んでも、写真には木の葉しか写らない。そこで使われるのが、飛行機からレーザーを地面に向けて当てる測量、LiDAR(ライダー)だ。はね返ってくるまでの時間から距離を測る[18]。葉のすきまを通って地面まで届くレーザーがあるので、コンピューターで木を取りのぞくと、地面の形が現れる[18][20]。

グアテマラ北部の森では、2016年に東京都ほどの広さがレーザーで測られ、6万を超える建物や道路の跡が見つかった[20][21]。これまでのマヤの人口の見積もりより、多く考える研究者もいる[20]。

エクアドルのウパノ谷でも、森の下から、6000ほどの土の台地と、15の集落、それをつなぐ道路が見つかった。紀元前500年ごろから、およそ2000年にわたって人が暮らしていたらしい[22][23]。研究者のロスタンたちは、それまでも何十年か、この谷の土の盛り上がり(マウンド)を掘ってきた。上から測ることで、全体の広がりが見えてきた[23][24]。

では、人は地球をどこまで歩き尽くしたのか。地図の白は、時代ごとに意味が変わってきた。昔は「地図に描かれていない」場所だった。いまは、「細かく測られていない」海の底、「登頂の記録がない」山、「葉の下に何があるか分からない」森がある。この記事の例では、白い場所の下に、そこで暮らした人々がいた。「歩き尽くした」とは、まだ言えなさそうだ。

森の中は、上空から撮った写真には木の葉しか写らない。それを変えたのが、飛行機からレーザーを地面へ向けて出し、はね返ってくるまでの時間(time of flight)から距離を測るLiDAR(ライダー)だ[18][19]。レーザーは木の葉のすきまを通り抜けることがあり、いちばん最後にはね返った光は、たいてい地面かその近くのものだ[18]。データから木を取りのぞくと、地面の形が浮かび上がる[20]。

2016年、グアテマラ北部のペテン地方で、マヤ低地の森が約2100平方キロメートル(東京都ほどの広さ)測られた。2018年にCanutoらが『Science』に発表した結果では、6万を超える建物や道路などの人工物が見つかった[20][21]。それまでマヤ低地の人口は500万人ほどと見積もる人が多かったが、1000万〜1500万人だった可能性を示す研究者もいる[20]。

エクアドルのアマゾン側にあるウパノ谷でも、2024年1月にRostainらが『Science』に発表した研究で、森の下に6000ほどの土の台地が15の集落に分かれて並び、道路でつながっていたことが分かった[22][23][24]。紀元前500年ごろから、およそ2000年にわたって人が暮らしていたらしい[22]。Rostainたちは、それまでも何十年か、谷の土の盛り上がり(マウンド)を発掘してきた。全体の広がりを見たくて、レーザー測量を組み合わせた[23]。

では、人類はどこまで地球を歩き尽くしたのか。地図の白は、時代ごとに意味が変わってきた。昔は「地図に描かれていない」場所だった。いまは、「細かく測られていない」海底、「登頂の記録がない」山、「葉の下に何があるか分からない」森がそれにあたる。この記事で見た例では、白い場所の下に、そこで暮らした人々がいた。「歩き尽くした」とは、まだ言えなさそうだ。

7. じぶんでも しらべて みよう

7. 白い場所を、画面と足で確かめる

7. 白い場所を、資料と地図で確かめる

おとなと いっしょに、パソコンで 「BathyGlobe」を ひらいて みよう。こまかく はかれた うみが、ちきゅうぎの 上に しめされて いる。うみの まんなかと、日本の ちかくを 見くらべて みる。

ちかくの 川や おかは、「地理院ちず」の 「陰影いんえいきふく図」で 見られる。白黒の ちずで、じめんの でこぼこが よく わかる。

安全のために

ちずで 見た 場所へ いく ときは、明るい じかんに、おとなと いっしょに。川の ちかくや がけの ふちには、ちかづかない。

海底の白い場所は、大人といっしょにパソコンで確かめられる。ニューハンプシャー大学の「BathyGlobe」は、マルチビームで測られてデータが公開されている海を、地球儀の上に示している[25]。日本の近くと、太平洋の真ん中を見くらべてみよう。しめされている場所と、そうでない場所は、予想と合うだろうか。

自分の町は、国土地理院の「地理院地図」で、「標高・土地の凹凸」から「陰影起伏図」を選ぶと見られる。陰影をつけた白黒の地図で、地面のでこぼこがよく分かる[26]。地図で見た坂や丘を、明るい時間に、大人といっしょに歩いてみるのもいい。

安全のために

地図で見た場所へ行くときは、明るい時間に、大人といっしょに、行ったことのある道で。川の近くやがけの縁には近づかない。

Seabed 2030 の発表を年ごとにたどり、海底地図が測られた割合を書き出してみよう。2017年の6%[11]、2025年6月の27.3%[12]、2026年4月の28.7%[13]のほかに、その間の年の発表(たとえば2024年6月)も公式サイトのニュース欄に出ている。伸びを並べると、2030年までの残りの年数で何ポイント増やす必要があるかが計算できる。

「BathyGlobe」は、マルチビームで正確に測られ、データが公開されている海を地球儀の上に示す[25]。日本の近くと、太平洋の真ん中を見くらべると、どこが細かく測られているかが分かる。

自分の町は、「地理院地図」の「標高・土地の凹凸」にある「陰影起伏図」で見られる。陰影をつけた白黒の地図だ[26]。地図で見た坂や丘を、明るい時間に、大人といっしょに歩いて、地図と足の感覚を比べてみるのもよい。原資料は、Conradの原文[1]、Leahyの伝記[3]、映画『ファースト・コンタクト』の解説[4]、Seabed 2030の各ページ、LiDARの2本の論文(Canutoら、Rostainら)[21][24]から読める。

安全のために

地図で見た場所へ行くときは、明るい時間に、大人といっしょに、行ったことのある道で。川の近くやがけの縁には近づかない。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

このメモは、下にあげた公開情報をもとに書いています。文章や図を無断で転載してはいません。もっと正確に知りたいときは、必ず下の出典にあたってください。リンク先の内容や、リンク先で起きたことについて、当サイトは責任を負いません。

  1. Joseph Conrad, “Heart of Darkness”(英語。Project Gutenberg 版)。 https://www.gutenberg.org/ebooks/219 (語り手マーロウが、少年のころ地図の白い場所に指を置いた場面の原文)
  2. The Victorian Web, “The Initial Publication Context of Joseph Conrad’s Heart of Darkness”(英語)。 https://victorianweb.org/authors/conrad/pva46.html (1899年2〜4月の雑誌連載と、1902年の単行本という発表の経緯)
  3. Australian Dictionary of Biography, “Leahy, Michael James (Mick)”(英語。オーストラリア国立大学による人物事典)。 https://adb.anu.edu.au/biography/leahy-michael-james-mick-7134 (1930年代のニューギニア高地の探検と、1933年にワギ谷を見おろした日付、それまでの内陸のとらえ方)
  4. Australian Screen Online(オーストラリア国立映像音響アーカイブ), “First Contact (1983)” 解説ノート(英語)。 https://aso.gov.au/titles/documentaries/first-contact/notes/ (人が住んでいないと思って入った高地に100万人ほどが暮らしていたこと、解説が伝える谷の人々の外の世界についての知識)
  5. Oxalis Adventure, “Son Doong Cave – Discovery and exploration”(英語)。 https://oxalisadventure.com/son-doong-cave-discovery-and-exploration/ (ソンドン洞窟の探検ツアーを運営する現地旅行会社による、1990年の発見と2009年の調査の経緯)
  6. U.S. Geological Survey, “Landsat 1”(英語。アメリカ地質調査所)。 https://www.usgs.gov/landsat-missions/landsat-1 (1972年7月23日の打ち上げ、6年間の観測、撮った画像が地球の表面の約75%にわたったこと)
  7. U.S. Geological Survey, “USGS EROS Archive – Digital Elevation – Shuttle Radar Topography Mission (SRTM) 1 Arc-Second Global”(英語)。 https://www.usgs.gov/centers/eros/science/usgs-eros-archive-digital-elevation-shuttle-radar-topography-mission-srtm-1 (観測は2000年2月11〜22日、北緯60度から南緯56度の陸の80%以上(USGS)、約80%(JPL)、約30メートル間隔のデータ)
  8. NASA ジェット推進研究所, “Shuttle Radar Topography Mission (SRTM)”(英語)。 https://www.jpl.nasa.gov/missions/shuttle-radar-topography-mission-srtm/ (2000年の11日間の飛行で、地球の陸の約80%のデータを集めたこと)
  9. Outdoor Revival, “Gangkhar Puensum – One of the highest unclimbed mountains in the world”(英語)。 https://www.outdoorrevival.com/featured/gangkhar-puensum-one-highest-unclimbed-mountains-world.html (標高、1985〜86年の4つの遠征隊、1994年までの6000メートル超の登山禁止、2003年からの登山禁止、山を精霊のすみかと考える信仰)
  10. Gripped, “This is the World’s Highest Unclimbed Mountain”(英語。登山の専門誌のサイト)。 https://gripped.com/profiles/this-is-the-worlds-highest-unclimbed-mountain/ (標高、1983年の登山開放と1985〜86年の失敗、1996年に始まった6000メートル超の登山禁止という記述、山を神々のすみかとする考え)
  11. Seabed 2030, “About”(英語。日本財団とGEBCOによる海底地図計画の公式サイト)。 https://seabed2030.org/about/ (2017年に始まった計画と、開始時に基準を満たす細かさで測られていたのは6%だったこと)
  12. Seabed 2030, “Seabed 2030 announces millions of square kilometers of new seafloor data on World Hydrography Day”(2025年6月。英語)。 https://seabed2030.org/2025/06/21/seabed-2030-announces-millions-of-square-kilometers-of-new-seafloor-data-on-world-hydrography-day/ (2025年6月時点で27.3%)
  13. Seabed 2030, “Global seabed mapping reaches new milestone as five million square kilometres added in a year”(2026年4月。英語)。 https://seabed2030.org/2026/04/20/global-seabed-mapping-reaches-new-milestone-as-five-million-square-kilometres-added-in-a-year/ (2026年4月の発表で28.7%、1年で500万平方キロメートル近く増えたこと、220の組織からのデータ)
  14. U.S. Geological Survey, “Why we have better maps of Mars than of the seafloor—and what USGS is doing to change that”(2023年11月。英語)。 https://www.usgs.gov/news/science-snippet/why-we-have-better-maps-mars-seafloor-and-what-usgs-doing-change (光は海水のなかを数百フィートほどまでしか通らず、陸の地図に使う方法が海底では使えないこと)
  15. NOAA Ocean Exploration, “Seafloor Mapping”(英語。アメリカの海洋大気庁による解説)。 https://oceanexplorer.noaa.gov/explainers/mapping/ (音がはね返る時間から深さを測ること、マルチビーム、衛星による推定は大きな地形しか分からず細かいところはぼやけること)
  16. GEBCO, “The Nippon Foundation-GEBCO Seabed2030 project”(英語)。 https://www.gebco.net/about-us/seabed2030-project (2030年までの海底全体の地図づくりという目標と、火星の表面のほうが海底より知られているとよくいわれるという説明)
  17. EARTH Magazine, “Benchmarks: January 23, 1960: Humans reach the deepest point on Earth”(英語。アメリカ地球科学協会の雑誌)。 https://www.earthmagazine.org/article/benchmarks-january-23-1960-humans-reach-deepest-point-earth (1960年1月23日にピカールとウォルシュがチャレンジャー海淵の底に降りたこと、底にいたのは20分ほど)
  18. OpenTopography, “What is Lidar?”(英語。地形データを公開する研究基盤の解説)。 https://opentopography.org/lidar_basics (レーザーがはね返る時間で距離を測ること、木の葉のすきまを通って地面近くまで届くこと)
  19. Archaeology Magazine, “Lidar Survey Reveals Thousands of Maya Structures”(2018年2月。英語)。 https://archaeology.org/news/2018/02/02/180202-guatemala-maya-landscape/ (飛行機からのレーザーで、森の下の6万ほどのマヤの建造物が見つかったこと)
  20. National Geographic, “Guatemala’s Maya Society Featured Huge ‘Megalopolis,’ LiDAR Data Show”(英語)。 https://www.nationalgeographic.com/history/article/maya-laser-lidar-guatemala-pacunam (約2100平方キロメートルの調査、6万を超える建物・道路などの跡、人口の見積もりの変化)
  21. Canuto, M. A. et al. (2018) “Ancient lowland Maya complexity as revealed by airborne laser scanning of northern Guatemala”. Science 361(6409): eaau0137. https://doi.org/10.1126/science.aau0137 (2016年にグアテマラ北部で2144平方キロメートルを空から測った論文。英語)
  22. Science News, “An ancient, massive urban complex has been found in the Ecuadorian Amazon”(英語)。 https://www.sciencenews.org/article/ancient-urban-complex-ecuador-amazon-laser (6000ほどの土の台地、15の集落、道路、紀元前500年ごろからおよそ2000年の居住)
  23. Archaeology Magazine, “Network of Ancient Amazonian Cities Identified in Ecuador”(2024年1月。英語)。 https://archaeology.org/news/2024/01/12/240116-amazonia-city-network/ (ウパノ谷の集落と道路、少なくとも2500年前という年代、ロスタンらが何十年も土の盛り上がり(マウンド)を発掘してきたこと)
  24. Rostain, S. et al. (2024) “Two thousand years of garden urbanism in the Upper Amazon”. Science 383: 183–189. https://doi.org/10.1126/science.adi6317 (ウパノ谷のレーザー測量の研究論文。英語)
  25. ニューハンプシャー大学 沿岸・海洋マッピングセンター, “Bathymetric Globe”(英語)。 https://ccom.unh.edu/project/bathymetry-globe (マルチビームで測られ、データが公開されている海を地球儀の上に示すこと)
  26. 国土地理院「標高・土地の凹凸|地理院地図の使い方」。 https://maps.gsi.go.jp/help/intro/looklist/3-hyoko.html (陰影起伏図は、陰影をつけた白黒の地図で、地表面の凹凸がよく分かること)

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