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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

パンダは 竹を たべるのに、竹を こなす 力が ないの?

竹を消化する遺伝子がないパンダは、なぜ同じ大きさの哺乳類の約4割のエネルギーで暮らせるのか

肉食動物の体のまま竹を食べるジャイアントパンダ ── 消化の弱さを補う腸内細菌・省エネ・「偽の親指」

分野:生きもの

パンダの ゲノム、つまり 体の せっけいずを しらべると、竹の おもな 中身を こなす ための こうそを つくる いでんしが ありません[1]。それなのに、パンダは 食べ物の ほとんどを 竹に して いきて います。

どうして、そんな ことが できるのでしょう。おなかの さいきん、少ない エネルギーで くらす ちから、竹を つかむ 手の しくみを 見ると、パンダの 竹の 食べ方が わかります。

パンダはクマの仲間で、ゲノムを読むと、肉食動物の消化に必要な酵素の遺伝子はそろっています。ところが、竹の主成分であるセルロースを分解する酵素の遺伝子はありません[1]。それでも食事の約99%は竹です[6]。

消化が苦手な体で、なぜ竹を主食にして暮らしていけるのでしょうか。腸内細菌、少ないエネルギーですむ体、竹をつかむ手首の骨、そして祖先のくらしの研究から、パンダの竹の食べ方が分かります。

ジャイアントパンダのゲノムは、肉食動物の消化に要る酵素をすべてコードしている一方、竹の主成分セルロースを消化する酵素の遺伝子を欠く[1]。それでも食事の約99%を竹が占める[6]。

この食い違いを、パンダはどう埋めているのか。腸内細菌、1日のエネルギー消費量が同じ大きさの哺乳類の約4割(37.7%)にとどまること[4]、手首の骨でできた「偽の親指」、そして祖先の食性までの研究を突き合わせると、「補い」の中身と、まだ決着していない部分が分かる。

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1. 竹を たべる のに、竹を こなす いでんしが ない?

1. 竹を食べるのに、竹を分解する酵素の遺伝子がない

1. 竹を主食にしながら、セルロース分解酵素の遺伝子を欠く

竹を 食べる 動物と きくと、ウシのような 草食の 動物を おもいうかべる 人が 多いでしょう。でも パンダは、クマの なかまで、体は 肉を 食べる 動物と 同じ つくりです。

けんきゅうでは、パンダの いでんしを ぜんぶ しらべました。すると、肉を こなす ための こうそは そろって いました。でも、竹の おもな 中身の セルロースを こなす こうそは、つくる いでんしが 見つかって いません[1]。

また、パンダの ちょうは 短く、まっすぐです。肉を 食べる 動物に にた つくりで、竹を こなす ことは 上手では ないと されます[3]。

ふつうに 考えると、竹を 主食に して くらすのは むずかしそうです。パンダは どうして やって いけるのでしょうか。

パンダは、ウシやヒツジのような草食動物ではありません。分類ではクマの仲間で、体のつくりは肉食動物のままです。

2011年に発表された腸内細菌の研究によると、パンダのゲノムには、肉食動物の消化に必要な酵素の遺伝子がすべてそろっています。その一方で、竹の主成分であるセルロースを分解する酵素の遺伝子は見つかっていません[1]。

腸の形も、肉食動物に似ています。パンダの腸は短くて直線的なので、腸の中で働く細菌が定着しにくく、竹の消化への適応は不完全だと説明されています[3]。

自前の酵素がなく、腸も短い。それなのに食事のほとんどを竹にして生きられるのはなぜでしょうか。まず、腸にすむ細菌に目を向けます。

パンダは食肉目クマ科で、消化器は肉食動物型のままである。Zhu ら(2011, PNAS)によれば、ゲノムは肉食性の消化に必要な酵素をすべてコードしているのに、竹の主成分セルロースを消化する酵素の遺伝子を欠く[1]。

形態の面でも条件は厳しい。腸が短く直線的な肉食動物型の構造のため、腸内で働く細菌が定着しにくく、竹食への適応は不完全とされる[3]。

消化の仕事を自分の遺伝子で担えないなら、外部に頼っている可能性がある。次節では、腸内細菌がどこまで役に立っているのかを検討する。

2. おなかの さいきんが たすけて いるの?

2. 腸内細菌は竹の消化を助けているのか

2. 腸内細菌への依存仮説と、その限界

2010ねんに、パンダの ゲノムを せつめいした ろんぶんは、「パンダの 竹の 食べ方は、じぶんの いでんしよりも、おなかの さいきんに たよって いるのかも しれない」と のべました[2]。

のちに、パンダの ふんを しらべた 研究が ありました。すると、竹の 中身を こなす ことで しられる なかまに ちかい さいきんが、13しゅるい 見つかりました。そのうち 7しゅるいは、ほかの ほにゅう動物には なく、パンダに だけ いました[1]。

ただし、これで ぜんぶ 安心という わけでは ありません。おなかの さいきんが もつ こうその うち、竹の 中身を こなす ものは 2%で、いちばん 少なかったのです[1]。これは、竹の 中身を こなす 力が あまり 高くない ことを 表して いる かもしれません。

2010年にパンダのゲノムを報告した論文(Nature)は、パンダの竹食は、自前の遺伝子よりも腸内細菌に頼っているのかもしれない、と述べました[2]。ここで大事なのは、「かもしれない」という推測の段階だったことです。

翌年のPNASの研究では、パンダのふんを調べて、セルロースを分解することで知られるクロストリジウムの仲間に近い細菌を13種類見つけました。そのうち7種類は、ほかの哺乳類には見られないパンダ特有のものでした[1]。

ただし、この研究は「十分に竹を消化できている」とまでは言っていません。腸内の微生物がもつ酵素のうち、セルロース類を分解するものは2%と最も少なく、竹のセルロースやヘミセルロースの消化率が低いことを反映している可能性があるとされています[1]。2%は酵素の割合で、竹の消化率そのものではありません。

細菌が助けているとしても、竹から得られる栄養は多くなさそうです。では、パンダは足りない分をどうしているのでしょうか。

腸内細菌への依存は、まずゲノム論文で示唆された。Li ら(2010, Nature)は、パンダの竹食が自前の遺伝子構成よりも腸内微生物に依存している可能性を指摘している[2]。ただし、これは推測の域を出ない。

Zhu ら(2011, PNAS)は、糞便の菌叢解析で、セルロース分解菌を含むクロストリジウム(Clostridium)群 I と XIVa に近い13の操作的分類単位を検出し、うち7はほかの哺乳類で見られないパンダ特有のものだった[1]。そのため、竹に特化した腸内細菌がいる、という解釈は成り立つ。

ところが、同じ研究のメタゲノム解析では、セルラーゼとエンドヘミセルラーゼの存在量が2%と最も少なかった。これは竹のセルロースとヘミセルロースの消化率の低さを反映する可能性があるとされる[1]。2%は微生物がもつ酵素の構成比であり、竹の消化率ではない点に注意が要る。

細菌の助けは、あっても限られる。そのぶんの不足を、パンダは別の方法でも埋めているのではないか。次はエネルギーの使い方に目を向ける。

3. パンダは どれくらい エネルギーを つかうの?

3. 同じ大きさの哺乳類の約4割しか使わない体

3. 1日のエネルギー消費量37.7% ── 省エネの仕組みと、残る推測

2015ねんの 研究では、パンダが 1日に つかう エネルギーを はかりました。かって いる パンダ 5とうと、野生の パンダ 3とうが たいしょうです。へいきんは 5.2メガジュール。同じ 大きさの ほにゅう動物から 考えられる 13.8メガジュールの、37.7%でした[4]。

だいたい、4わりに あたります。たくさん 食べて 力を つくる のでは なく、つかう ほうを へらして、少ない 食べ物で くらして いる のです。

野生の 3とうだけを 見ると、6.2メガジュールで、同じ 大きさの ほにゅう動物の、およそ 45%でした。どうして こんなに 少なくて すむのかは、いくつかの ことが あわさって いると 考えられて います。体の 一部の ぞうきが 小さい こと、あまり 動かない こと、体の はたらきを 高める ホルモンが 少ない ことなどです[5]。

竹からとれる栄養が多くないなら、使うエネルギーを減らす方法もあります。2015年にScienceに載った研究は、パンダの1日のエネルギー消費量を、飼育下の5頭と野生の3頭で測りました。平均は5.2MJ(メガジュール)で、同じ大きさの哺乳類から予想される13.8MJの37.7%、つまり約4割でした[4]。

野生の3頭だけの平均は約6.2MJで、哺乳類から予想される値の約45%です[5]。飼育下の個体を含めた平均と、野生だけの平均は別の数字なので、混ぜないようにします。

省エネの理由としては、一部の臓器が小さいこと、活動が少ないこと、甲状腺ホルモン(T4とT3)が予想値の46.9%と64%と低いことなどの組み合わせが挙げられています。パンダ固有のDUOX2遺伝子の変異が、この低いホルモン値を説明するかもしれない、という段階です[5]。

消化の弱さを、少ない消費で補う。もう一つ、竹を食べるうえで欠かせない道具があります。パンダの手です。

消化の弱さを、摂取側ではなく消費側で補っている可能性がある。Nie ら(2015, Science)は、飼育下5頭と野生3頭の1日のエネルギー消費量の平均を5.2MJと測り、同じ体の大きさの哺乳類の予測値13.8MJの37.7%に当たるとした[4]。5.2÷13.8≒0.377 なので、数字は整合する。

野生3頭に限ると約6.2MJ/日で、予測値の約45%である[5]。飼育5頭を含めた平均(37.7%)と混同しないことが要る。

省エネの内訳は、一部の臓器が小さいこと、活動が少ないこと、甲状腺ホルモンが低いこと(T4・T3が予測値の46.9%・64%)などの組み合わせとされる。DUOX2遺伝子のパンダ固有の変異が、甲状腺ホルモンの合成を介して低い値を説明するかもしれない、という推測も付く[5]。ただし、これは「説明するかもしれない」にとどまる。

体の中の工夫に加え、竹そのものを扱う道具立てもある。次は手の話をする。

4. 竹を つかむ「六ほん目の ゆび」って なに?

4. 手首の骨が「6本目の指」になっている

4. 橈側種子骨(とうそくしゅしこつ) ── 竹を操る「偽の親指」

パンダの 手を よく 見ると、5ほんの ゆびの ほかに、手首の ところに 大きな でっぱりが あります。これは、手首の 骨ほねが 大きく 発たつ した ものです[8]。

この 骨ほねは、まるで 6ほん目の ゆびのように はたらきます。竹を つかむとき、おや指の かわりのように はたらく ので、「にせの おや指」とも よばれます[8]。

わたしたちも、おや指と ほかの ゆびで ものを はさんで もちます。パンダは、この 6ほん目と ほかの ゆびで、竹を はさんで もって いるのです。

この 「にせの おや指」は、いつから あるのでしょう。パンダの ごせんぞを たどって みます。

パンダの手には、5本の指のほかに、手首のところに大きく発達した骨があります。橈側種子骨という骨で、6本目の指のように働き、竹を操るための「偽の親指」の役目をしています[8]。

私たちの親指は、ほかの4本の指と向かい合わせに動かせるので、物をはさんで持てます。パンダの場合は、親指そのものではなく、手首の骨が発達して、同じような「はさむ」働きをしていると考えられます。

この「偽の親指」は、いつ、どのようにできたのでしょうか。祖先の化石が手がかりになります。

パンダの手は、5本の指に加えて、手首の橈側種子骨(とうそくしゅしこつ)が大きく発達し、6本目の指として竹を操る「偽の親指」の働きをもつ[8]。

これは、親指そのものが変形したのではなく、手首の骨が別の役割を獲得した構造である。竹を扱うという用途に合わせた、指とは別の部位の転用といえる。

この構造は、いつ、どの段階で現れたのか。次節で、祖先の化石から検討する。

5. パンダの ごせんぞは 竹だけを 食べて いたの?

5. 祖先は竹だけを食べていたのか ── 化石と骨から探る

5. 偽の親指と古代パンダの食性 ── 竹食の起源をめぐる推定のずれ

中国の 雲南せいで 見つかった、大むかしの パンダの なかまの かせきを しらべた 研究が あります。この かせきの 手首の 骨ほねは、もう 大きく、つかえる 「にせの おや指」に なって いました[8]。

これは、およそ 600万年から 700万年前の ものと されます。そのため 研究者は、竹を 食べはじめたのは、このころまで さかのぼる かもしれないと 考えて います[8]。

でも、ごせんぞが 竹だけを 食べて いたとは かぎりません。中国の 南の 7つの いせきから 見つかった 12とうぶんの 骨ほねを しらべると、むかしの パンダは、今の パンダより 食べ物の はばが、3ばいほど 広かったと されます[9]。

ごせんぞは、肉も 食べる、いろいろ 食べる 動物だった かもしれないと 考えられて います。竹を 主食に する くらしは、そのあとに できたようです[9]。

手首の 骨ほねは、竹を つかむ 力の 手がかりです。ごせんぞが 竹ばかり 食べて いた 時期を あらわす ものでは ありません。

中国の雲南省にある水塘壩(すいとうは)遺跡からは、後期中新世(約600万〜700万年前)の化石が見つかっています。祖先のパンダ(学名はAilurarctos)の化石で、手首の骨はすでに大きく、機能する「偽の親指」になっていました[8]。この論文は、パンダが竹を専門に食べるようになった起源が、600万〜700万年前までさかのぼりうると述べています[8]。

ただし、その後この「親指」はさらに大きくならなかったとされます。歩くときに体重を支える骨でもあるため、大きくなりすぎるのに制約があったと考えられています[8]。

竹専門の食性はいつ始まったのでしょうか。中国南部の7つの遺跡から出た古代パンダ12頭の骨を、炭素などの同位体で調べた2019年の研究では、古代パンダの食べ物の幅は現代より約3倍広く、祖先は雑食または肉食だったとする見方があります。竹への特殊化は、その後だったとみられます[9]。「約3倍」は食べ物の幅の広さで、肉を食べた量ではありません。

手首の骨は竹を扱う能力の手がかりですが、祖先が竹ばかり食べていた時期を示すものではありません。

祖先の食べ物の幅が広いのに、手の道具はすでにあった。竹食の始まりをどこに置くかは、研究によって見方に幅があります。

古代パンダの化石は、偽の親指の起源を示す。雲南省水塘壩の後期中新世の化石(祖先パンダ Ailurarctos)に、すでに機能する大きな橈側種子骨があった[8]。Wang ら(2022, Sci Rep)は、この「粗い親指」から、専門的な竹食の起源が600万〜700万年前までさかのぼりうると推定した[8]。ただし、親指は歩行時に体重を支える骨でもあるため、その後は大きくならなかったとされる。

一方で、同位体分析(Han ら, 2019, Current Biology)は、中国南部の7遺跡・12個体から、古代パンダの食の幅が現代より約3倍広かったことを示した。祖先は雑食または肉食だったとする見方があり、竹への特殊化はその後と考えられる[9]。「約3倍」は食の幅(ニッチ)の広さで、肉食の量ではない。

橈側種子骨は竹を扱う能力の手がかりであり、祖先が竹食に偏っていた時期を直接示すものではない。

では、手の骨で見る「竹食の始まり」は、遺伝子の変化から見える時期と重なるのか。次に、味の遺伝子を見る。

6. 肉の うま味を かんじる いでんしは どう なったの?

6. 肉のうま味を感じる遺伝子は壊れている ── それは竹食の原因か結果か

6. Tas1r1 の偽遺伝子化 ── 約420万年前という推定と、因果の未決着

パンダは 食べ物の、およそ 99%が 竹です。それなのに、肉の おいしさに かかわる 「うま味」を かんじる いでんし、Tas1r1が こわれた 形に なって います[6]。

この いでんしが はたらかなく なったのは、およそ 420万年前と 見つもられました。ただし はばは 130万年から 1000万年前と、とても 広い 見つもりです。かせきから 考えられる、パンダが 食べ物を かえた じきと、ほぼ 合います[6]。

肉を 食べなく なった けっかとして こわれた のでは ないかと 考えられて います。でも、ウシや ウマは この いでんしを もったまま 草を 食べて います。だから、ほかの わけも あるはずです[6]。味が なくなったから 竹を 食べたのか、竹を 食べたから こわれたのか、はっきり していません。

竹を よく 食べる レッサーパンダにも、同じ いでんしの こわれが 見つかって います[7]。パンダと レッサーパンダは、べつの なかまです。それぞれ べつに 竹を 食べる ように なって、同じ ことが おきた のでしょう。

なお、手の 骨ほねから 考える 時期(600万〜700万年前)と、この 420万年前は、見つもりに ずれが あります。研究が すすんで いる ところです。

パンダの食事の約99%は竹です。ところが、肉食動物であるのに、うま味受容体の遺伝子Tas1r1は壊れた偽遺伝子になっています[6]。

Tas1r1の働きが弱まった時期は、約420万年前(95%信頼区間は130万〜1000万年前)と推定されました。化石から推定される食の切りかえ時期とほぼ合っています。肉を食べなくなった結果として壊れた可能性が高い、とされています[6]。

ただし、ウシやウマはTas1r1を保ったまま草を食べているので、ほかの要因もあるはずです[6]。「味を失ったから竹を食べた」と、原因と結果を逆に書くことはできません。

Tas1r1の偽遺伝子化は、竹食で独立に進化したレッサーパンダにも見つかっています。この仲間は、ジャイアントパンダとは別の科です[7]。それぞれ別に竹食と偽の親指を手に入れ、味のセンサーでも似た変化が起きたことになります。

手の骨から推定した竹食の始まり(600万〜700万年前)と、この約420万年前は、別の方法による推定で、ずれがあります。

Tas1r1(うま味受容体の遺伝子)は、食事の99%が竹のパンダで偽遺伝子になっている[6]。Zhao ら(2010, Mol Biol Evol)は、その機能が緩んだ時期を約420万年前(95%信頼区間130万〜1000万年前)と推定し、この値は化石から推定される食の切りかえ時期と整合するとした[6]。区間は広い。

著者らは、肉を食べなくなった結果として偽遺伝子化した可能性が高いと考えるが、牛や馬は Tas1r1 を保って草を食べている。だから「味覚の喪失が植物食の原因」とも断定できず、ほかの要因があるはずだと述べる[6]。原因か結果かは未確定である。

Hu ら(2017, PNAS)は、竹食に独立に特化したレッサーパンダ(食肉目だが、ジャイアントパンダとは別の科)でも TAS1R1 が偽遺伝子化していると報告した[7]。独立に竹食と偽の親指を獲得した2種で、同じ遺伝子が壊れたことになる。

前節の化石の推定(600万〜700万年前)と、この遺伝子の推定(約420万年前)は別の方法によるもので、年代にずれがある。

7. じぶんでも たしかめて みたく なったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

7. 自分でも調べてみたくなったら

やってみよう。おや指を 手のひらに いれて、のこりの ゆびで えんぴつを もちあげたり、つくえの 上で ころがしたり して みましょう。こんどは おや指も つかって くらべます。ちがいを、ことばで 言って みましょう。おや指の ありがたさが 分かります。

どうぶつえんで パンダを 見る ときは、竹を どんな 手で もって いるか、見て みましょう。パンダの 本を 読むなら、おうちの 人と いっしょに さがして みて ください。

次のようなことを、試したり調べたりできそうです。

  • 親指を手のひらに入れて、残りの指で鉛筆を持ち上げたり、机の上で転がしたりしてみましょう。次に親指を使って比べると、何が変わるでしょうか。パンダの「偽の親指」の役割を想像するきっかけになります。
  • 動物園でパンダに会ったら、竹をどの指と手首のどこではさんでいるか、観察してみましょう。
  • 「竹を食べるのは味のせいか、食べ方が先か」について、論文の要旨を読んで、どこまでが分かっていて、どこからが推測かを整理してみましょう[6]。

自分でも資料を読んで、数字の意味を確かめてみよう。

  1. Zhu ら(2011, PNAS)と Li ら(2010, Nature)の要旨を読み、「腸内細菌に依存しているかもしれない」という推測と、「セルラーゼは2%」という数字が、どの主張を支えるのか整理する[1][2]。
  2. Nie ら(2015, Science)で、飼育下の個体を含む平均(37.7%)と野生のみの値(約45%)がどう違うか、原典で確認する[4][5]。
  3. Wang ら(2022)と Zhao ら(2010)の推定年代(600万〜700万年前と約420万年前)がどう違う方法で出されたかを比べる[8][6]。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

本文で使った出典。論文の細部は、要旨や研究機関の紹介記事にもとづく。

  1. Zhu et al. (2011) PNAS, パンダの腸内細菌 Europe PMC(PNAS 2011の要旨) (酵素の遺伝子、腸内細菌13種、酵素2%)
  2. Li et al. (2010) Nature, パンダのゲノム Europe PMC(Nature 2010の要旨) (腸内細菌に頼る可能性)
  3. Frontiers in Microbiology (2022) 腸の構造に関する要旨 Europe PMC(検索結果) (短く直線的な腸)
  4. Nie et al. (2015) Science, パンダのエネルギー消費 Europe PMC(Science 2015の要旨) (1日のエネルギー消費量 37.7%)
  5. 中国科学院遺伝発生生物学研究所, Nie et al. (2015) の紹介 https://genetics.cas.cn/sourcedb/zw/kycg/fblw/202112/t20211221_6323836.html (野生3頭の値、省エネの要因)
  6. Zhao et al. (2010) Mol Biol Evol, パンダのうま味受容体 Europe PMC(MBE 2010の要旨) (Tas1r1の偽遺伝子化と推定時期)
  7. Hu et al. (2017) PNAS, 2種のパンダの比較 Europe PMC(PNAS 2017の要旨) (レッサーパンダの偽遺伝子化)
  8. Wang et al. (2022) Scientific Reports, 祖先パンダの種子骨 Europe PMC(Sci Rep 2022の要旨) (偽の親指と祖先の化石)
  9. Han et al. (2019) Current Biology の紹介, Asian Scientist https://www.asianscientist.com/2019/02/in-the-lab/ancient-pandas-bamboo-isotope-analysis/ (古代パンダの食の幅)

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