1. 水の 中で、溶岩は どう なるの?
1. 水に入った溶岩は、外側から固まり、殻を破って増える
1. 枕状溶岩のでき方 ── 急冷した殻、内部の膨張、破れて次の枕へ
あつい 溶岩が 水に ふれると、いちばん 外がわだけが、すぐに 冷えて 固まります。うすい ガラスのような 殻です。
殻の 中は まだ どろどろで、新しい 溶岩が 下から 入って きます。すると 殻が ふくらんで、丸い まくらの ような 形に なります。
やがて 殻が 破れると、そこから 次の 溶岩が 出て きて、また 殻が できます。歯みがきの チューブを 少しずつ おして、先から 出す ところを 思いうかべて ください。ただし 本当は、出て きた 先が すぐ 固まるので、チューブの 中身のように 長くは のびません。
こうして まくらが 横に ならんだり、上に つみ重なったり して、大きな 岩の かたまりに なります。
溶岩が水に触れると、いちばん外側だけが一気に冷えて、ガラスのような薄い殻になります。殻は熱を伝えにくいので、内側の溶岩はしばらく熱いままです[4]。
内側には、新しい溶岩が供給され続けます。殻はふくらみ、やがて圧力に耐えきれず破れます。破れ目から溶岩がにじむように出ると、そこでまた殻ができて、次の枕になります。これが、枕状溶岩のでき方です[3]。
たとえば、歯みがき粉をチューブから少しずつ出す様子に似ています。ただし本当は、出てきた先がすぐに固まるので、細く長くのびることはありません。
枕状溶岩は、噴火のいきおいが比較的ゆるやかなときにできやすいと説明されています[2]。枕が割れて流れの先へ転がり、そこから新しい枕ができることもあります[2]。
玄武岩質の溶岩が水中に出ると、表面が急冷されてガラス質の殻になる。この殻が断熱材のはたらきをして、内部の溶岩は熱を保つ[4]。
内部には溶岩の供給が続き、殻は膨らむ。圧力が高まると殻が破れ、そこから玄武岩が押し出されて新しい枕になり、これが繰り返されて厚い堆積物になる[3]。枕状溶岩は、水中の噴火のうち、噴出率が比較的低いときにできやすいとされる[2]。枕が割れて流れの先端へ転がり、そこから新しい枕が育つこともある[2]。
枕の形は、溶岩と水の温度差から生まれる[4]。水は、海だけでなく湖や川でもよい。米国地質調査所(USGS)は、北カリフォルニアの旧コプコ湖付近の玄武岩の流れを、湖に入った溶岩が海と同じ急冷と膨張を受けた例として紹介している[4]。
2. 切ると、どんな 形が 見えるの?
2. 断面には、ガラスの縁と放射状の割れ目が見える
2. 断面の特徴 ── ガラス質の縁、放射状の割れ目、枕の間の充填物
枕を まん中で 切ると、まるい 形の 外がわに、ガラスのような うすい ふちが あります。そこは いちばん 早く 冷えた ところです。
中心から 外へ、放射の ように ひび割れが 走って います。この 形から、切った 岩は「車石」とも よばれます。車の 輪の ように 見えるからです。
まくらと まくらの すきまには、くだけた 小さな かけらや どろが つまって います。大きさは、数十センチから、数メートルくらいの ものまで あります。
枕状溶岩を割ると、外側はガラス質で、内部は中心から外へ向かって放射状の割れ目が入っています。外から内へ冷えるときに縮んで割れるためだと説明されています[4][5]。
断面が、米俵に似ているので「俵状溶岩」、放射状の割れ目から「車石」と呼ばれることもあります[5]。
枕と枕のすき間は、水で急に冷やされて砕けた細かい破片や、泥岩などで埋まっていることがあります[5]。枕の大きさは、辞典によって、数十センチから1メートル、数メートルなどと書き方に幅があります[5]。
断面では、各枕の表面が急冷によるガラス質の殻になり、内部に放射状の割れ目が発達する[5]。国立公園局(NPS)も、急冷のためガラス質で、気泡(ベシクル)は比較的少なく、気泡がある場合は外側から冷えたことを反映した放射状の配列を示すと説明している[2]。
断面が俵に似ることから「俵状溶岩」、中心から広がる割れ目から「車石」の別名がある[5]。枕の間は、細粒の水冷破砕岩、泥岩、石灰岩などが埋める[5]。
大きさは辞典ごとに差があり、「長径数cmから数m」(岩石学辞典)、「数十cmから1m」(百科事典マイペディア)などの記述がある[5]。断面の直径をひとつの値に決めず、幅をもって読むのがよい。
NPSはさらに、玄武岩ガラスと水の反応でできる物質(パラゴナイト)を含むことが多く、これが陸上のパホイホイ溶岩との区別に役立つとしている[2]。
3. この 岩が できる ところを、だれが 見たの?
3. 1970年代、ダイバーが「できる場面」を初めて見た
3. 1969〜73年のマウナ・ウル噴火 ── 枕ができる過程の直接観察
海の 底は くらくて、水は 深く、火山が ふき出す ところに ちかづくのは むずかしいことです。だから、枕状溶岩が どう できるかは、長い あいだ 考えで しか 分かりませんでした。
ハワイ島の キラウエア火山では、1969年から 1973年まで、毎年 数週間ずつ、溶岩が 海に 流れこみました。1971年の4月、ダイバーが もぐって、水の 中の 溶岩を はじめて 調べました。あつい 水、爆発の ような しょうげき、にごった 水と、よい 条件では ありませんでしたが、役に 立つ ことを 見つけて 持ち帰りました。
枕状溶岩は、水に触れた溶岩が急に冷えてできると、多くの研究者が考えていました。ただ、アメリカの地質学者ジェームズ・ムーアは、この研究の前には、枕ができる過程は一度も直接観察されたことがなかったと書いています[1]。
そのきっかけが、ハワイ島のキラウエア火山でした。1969年6月からマウナ・ウル火口の溶岩が約12キロ流れ下って海に入り、1973年まで毎年数週間ずつ、同じことがくり返されました[1]。
1971年4月、スキューバダイビングの調査隊が、水中を流れる溶岩に初めて近づきました。熱い水、爆発のような衝撃、強い対流、にごりで見えにくい視界という悪い条件のなかで、役に立つ観察を集めたと報告されています[1]。
USGSのムーアによる1975年の論文は、枕状溶岩を「海洋底の広い範囲を覆う特徴的な溶岩」と位置づけ、多くの研究者は流動的な溶岩が水と接して急冷することで枕ができると考えているが、「この研究の前には、枕の形成過程は一度も直接観察されたことがなかった」と述べる[1]。
観察の機会になったのが、キラウエア火山のマウナ・ウル噴火だった。1969年6月から、噴出口の溶岩が南斜面を約12km流れ下って海へ入り、1973年まで毎年数週間続いた[1]。1971年4月には、スキューバダイバーが水中の溶岩流を初めて調べた。熱水、爆発性の衝撃、強い対流、懸濁した堆積物による視界不良のなかでも、有用な観察ができたとされる[1]。
同じ論文は、水深約2.7kmの大西洋中央海嶺で、潜水艇による近接観察から「このプレート境界で噴出した溶岩のほとんどすべてが枕状である」ことも確かめられたとしている[1]。海洋底の新しい地殻の大部分が枕状玄武岩であることは、USGSの解説にも書かれている[4]。
4. 海の 底の 岩が、どうして 陸で 見つかるの?
4. 陸で見つかる枕状溶岩は、昔そこが水の中だった目印
4. 陸上の枕状溶岩 ── 上下の判定と、過去の水域の手がかり
山の 上や がけで、まくらの 形の 岩が 見つかることが あります。そこは、むかし、水の 中だった ところです。長い 長い 時間の あいだに、海や 湖の 底が もちあがって、陸に なった ところも あります。
まくらの 下の ほうは、すきまを うめるように、下へ とがって たれさがる ことが あります。この 形を 見ると、岩が できた ときの 上と 下が 分かります。
日本の 新潟県の 糸魚川には、枕状溶岩が 見られる 場所が あります。
山や崖で枕状溶岩が見つかったら、そこは昔、水の中だったと考えられます[3]。海底がプレートの動きで持ち上がって陸になる、長い時間の話です。
枕の下側には、すき間を埋めるように、下へ尖った部分(キール)ができることがあります。上側は丸く出っ張ります[2]。つまり、岩の形から、できたときの上下が分かります[5]。岩が傾いていたり、ひっくり返っていたりしたとき、地層がどうなったかを知る手がかりになります。
アメリカの国立公園には、デナリ国立公園の約2億年前の枕状溶岩や、オリンピック国立公園の約4000万〜5000万年前の枕状溶岩があります[2]。日本では、新潟県糸魚川市の大断層から東へ歩いて10分ほどの場所で、海の底の噴火でできた枕状溶岩が見られます(糸魚川-静岡構造線の記事)。
陸上で枕状溶岩が見つかれば、その場所が水域だった手がかりになる。USGSの用語集も、古い岩石に枕状玄武岩が見つかれば、その地域はかつて水中だったと推定できると説明する[3]。水は海に限らず、NPSはアリゾナ州ペトリファイド・フォレスト国立公園の枕状玄武岩を、浅い湖があった堆積盆地でできたものとして紹介している[2]。
枕は、上側が凸で、下側にはキール(尾部)が伸びる。キールは、新しい枕が既存の枕の間の空間を埋めるときにできる[2]。固まる前に変形して下のすき間に垂れ下がるため、その形から堆積当時の上下を判断できると辞典類にも書かれている[5]。NPSは、ケナイ・フィヨルド国立公園の枕が噴出後に約45度傾いている例も挙げている[2]。
年代の例として、NPSはデナリ国立公園の約2億年前、ゴールデンゲート国立レクリエーションエリアの約1億9000万年前、ケナイ・フィヨルドの5700〜5800万年前などを挙げる[2]。日本の例は、糸魚川-静岡構造線の記事で扱っている。
5. 自分でも しらべて みよう
5. 自分でも調べてみたくなったら
5. 自分でも調べてみたくなったら
溶岩を 水に 入れる 実験は できません。まず、図鑑や 博物館の 写真で、まくらの 形の 岩を さがして みましょう。切った 面に ある ガラスの ふちと、車の 輪のような ひびは、見つけやすい 目じるしです。
「ここは むかし、海だったのかな」と 思う 場所に 行ったら、岩の 形を 見て みましょう。岩を わったり、持ち帰ったり しては いけない 場所が 多い ので、見るだけに しましょう。
写真で枕を見つける
図鑑や博物館、ジオパークのウェブサイトの写真で、枕状溶岩を探してみましょう。まず、丸い枕の外側のガラス質の縁と、中の放射状の割れ目を見つけます。次に、枕の下側に、キールのようにとがった部分があるかを見ます。それが分かると、上下がどちら向きだったかを自分で言い当てられます。
見に行くとき
国立公園やジオパークでは、岩を割ったり持ち帰ったりできないことが多いので、見るだけにして、ルールを守ります。糸魚川の枕状溶岩は、新潟県などの案内ページで場所と見学のルールを確かめてから出かけましょう。
原典に当たる
日本語では、辞典類をまとめたコトバンクの「枕状溶岩」の項目[5]が入り口になります。英語の資料も読める人は、ムーアの論文の題名と概要を、USGSの出版物サイトで読めます[1]。NPSの記事は、アメリカの国立公園にある枕状溶岩の写真と年代を並べて紹介しています[2]。
断面と上下を写真で読む
図鑑やジオパークの写真で、ガラス質の縁、放射状の割れ目、枕間の充填物、キールを探し、露頭の上下が逆転していないかを形から判断してみる。上下の判定が当たっているかは、周囲の地層の傾きと照らすと確かめられる。
水の深さと形の関係を調べる
枕状溶岩は噴出率が比較的低いときにできやすいとされる[2]。噴出の速さや水深によって、溶岩の固まり方がどう変わるかは、この記事では扱っていない。論文を探す手がかりとして、ムーアの論文[1]の引用文献を見るとよい。
原典に当たる
ムーアの1975年の論文(American Scientist 63巻3号)はUSGSの出版物サイトに記録がある[1]。NPSの記事[2]は、写真と地域ごとの年代が整理されている。日本語の定義は、辞典類をまとめて引けるコトバンク[5]から入るとよい。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:[1]は枕状溶岩ができる過程を直接観察した研究の記録、[2]〜[4]は米国の公的機関の解説、[5]は日本の辞典類をまとめたサイトです。
- James G. Moore, “Mechanism of Formation of Pillow Lava”, American Scientist, 63(3), 269–277(1975)。米国地質調査所(USGS)出版物サイト。 https://www.usgs.gov/publications/mechanism-formation-pillow-lava (1969〜73年のマウナ・ウル噴火、1971年のダイバー調査、直接観察されていなかったこと、中央海嶺の観察)
- 米国国立公園局(NPS)“Pillow Basalts”。 https://www.nps.gov/articles/000/pillow-basalts.htm (水中噴火・噴出率が低いとき、ガラス質、気泡、キール、各国立公園の例と年代)
- 米国地質調査所(USGS)火山用語集 “pillow lava”。 https://volcanoes.usgs.gov/vsc/glossary/pillow_lava.html (殻が破れて次の枕が出ること、過去に水中だった目印)
- 米国地質調査所(USGS)カルボ観測所 “Don’t try to have a pillow fight with these pillows”。 https://www.usgs.gov/observatories/calvo/news/dont-try-have-a-pillow-fight-these-pillows (ガラス質の殻が断熱になること、湖でも同じこと、海洋地殻の大部分)
- コトバンク「枕状溶岩」(デジタル大辞泉、岩石学辞典、最新地学事典、世界大百科事典などの項目をまとめたもの)。 https://kotobank.jp/word/%E6%9E%95%E7%8A%B6%E6%BA%B6%E5%B2%A9-135919 (俵状溶岩・車石の別名、枕の間の充填物、大きさの幅、上下判定)
なおした ところ
更新履歴
更新履歴(改版の記録)
- 初版を公開。
このサイトでは、公開した記事の本文は原則として書き直しません。誤りが見つかったときや、内容が古くなったときだけ手を入れ、その理由をこの欄に残します。