1. うさぎは、せかいの どこに いるの?
1. ペットのウサギと野山のウサギは、同じ暮らしをしているのか
1. ウサギ類の分布と暮らし方の型 ── 穴を掘るアナウサギ類、掘らないノウサギ類
うさぎの なかまは、せかいに 92しゅるいほど 知られて います[1]。なんきょくを のぞく、すべての たいりくに いる そうです。
すむ 場所も いろいろです。さばくや くさはら、森、高い 山、こおった 土地まで、ほとんど どこにでも くらします[2]。
くらし方を くらべる てがかりの 一つは、穴を ほるか どうかです。土の 中に 穴を ほって 巣を つくり、むれで くらす なかまと、穴を ほらずに 地上に 巣を つくって 子を うむ なかまです[2]。
ペットの うさぎは、穴を ほる なかまから 生まれた うさぎです[6]。穴を ほる なかまは、土の 中に どんな 家を つくるのでしょう。
ウサギのなかま(ウサギ目)は約92種が知られ、南極をのぞくすべての大陸に分布します[1]。すむ環境も砂漠、草原、森林、高山、ツンドラと、ほとんどあらゆる場所に及びます[2]。
その暮らし方を比べる手がかりの一つが、穴を掘るかどうかです。アナウサギ類は地中に穴を掘って巣をつくり、群れで暮らします。ノウサギ類は穴を掘らず、地上に巣をつくって子を産みます[2]。
ペットなどのカイウサギは、前者のヨーロッパアナウサギ(学名 Oryctolagus cuniculus)の子孫です[6]。ローマ時代から人との関わりがあり、本当の意味での家畜化は約200年前からという見方もあります[6]。一方、日本の本州・四国・九州のノウサギは後者の型です[3]。
つまり、ペットのウサギと野山のウサギは、暮らし方の型が違うということです。では、穴を掘る型の暮らしとは、どんなものでしょうか。
ウサギ目は約92種が知られ、南極以外のすべての大陸に分布する[1]。砂漠・草原・森林・高山・ツンドラなど、ほとんどあらゆる環境にすむ[2]。分布がこれほど広いのに、アナウサギ類とノウサギ類の暮らし方は、穴を掘るかどうかで大きく二つの型に整理できる。
百科事典の記述では、アナウサギ類は地中に穴を掘って巣をつくり、群れで生活する。生まれた子は目が開かず赤裸である。ノウサギ類は穴を掘らず地上に巣をつくって子を産み、子は体毛が生えそろって目も見え、すぐ歩き回れる[2]。ペットなどのカイウサギは、前者のヨーロッパアナウサギ(Oryctolagus cuniculus)の子孫で、本来の分布域はイベリア半島で進化し地中海地域に広がったと考えられている[6]。
ただし、家畜化の時期は、ローマ時代から人との関わりがあったとされる一方、本当の意味での家畜化は約200年前からという見方もあり、一つに決められない[6]。また、ノウサギについては、地上に巣をつくるとする資料と、巣をつくらないとする資料があり、表現が割れている[2][3]。そこで本稿では、「穴は掘らず、地上で子を産む」という範囲にとどめる。
ここまでで、題名の問いへの要点は出ている。穴を掘る型と掘らない型があり、ペットは前者、日本の野山のノウサギは後者である。では、穴を掘る型は、地下にどんな住まいをつくるのか。
2. 穴を ほる うさぎは、土の 中に どんな 家を つくるの?
2. 穴を掘るアナウサギは、地下にどんな住まいをつくるのか
2. アナウサギは集団でワレンという巣穴を掘る ── 掘り方と赤ちゃんの姿
アナウサギは、「ワレン」と よばれる 大きな 巣穴を、みんなで 土の 中に ほります[4]。水が たまりにくい 坂や どての 土が 多いと いわれます[5]。
ほり方は こうです。前あしで 土を かき、うしろあしの あいだから 後ろへ けり出します[5]。
ワレンは、てきから 子を 守る 安全な 場所に なります[5]。めすは、本そうから はなれた 場所で 子を そだてる ことも あります[5]。
うまれる 子は 3〜9ひきで、毛が なく、目も 開いて いません[4]。穴の 中で 守られて 大きく なる のです。
では、穴を ほらない うさぎの 赤ちゃんは、どう なのでしょう。
アナウサギは「ワレン」と呼ばれる、複雑な造りの大規模な巣穴を、集団で地中に掘ります[4]。水はけのよい斜面や土手に多く、前脚で土をかき、後ろ脚の間から後ろへ蹴り出して掘り進めます[5]。
1つのワレンには、例として成獣のオス1〜5匹とメス1〜8匹の社会集団がすみ、天敵から安全に子を育てる場所になります。数は固定ではありません[5]。
メスは、本巣から離れた場所で繁殖することもあります[5]。アナウサギの子は1回に3〜9匹で、毛はなく、目も閉じています[4]。
原産地は、ヨーロッパ南西部からアフリカ北部とされます[4]。地中の巣穴は、天敵から子を守る場所として使われています。穴を掘らないノウサギの赤ちゃんは、どう生まれてくるのでしょうか。
アナウサギは、複雑な造りの大規模な巣穴「ワレン」を集団で地中に掘る[4]。ワレンは水はけのよい斜面や土手に多く、前脚で土をかき、後ろ脚の間から蹴り出して掘り進める[5]。掘るのは集団の仕事で、巣穴は一つの家というより、複数の個体が使う地下の施設に近い。
1つのワレンには、成獣のオス1〜5匹とメス1〜8匹の社会集団がすむという例がある。ここでの数字は一例の範囲で、集団の大きさは固定値ではない[5]。ワレンは天敵から安全に子を育てる場所であり、メスが本巣から離れた場所で繁殖に使う例も挙げられている[5]。
こうして守られた巣で、3〜9匹の赤裸で閉眼の子が生まれる[4]。つまり、子は未発達な状態で生まれてから、穴の中で育つ、という順になっている。
原産地はヨーロッパ南西部からアフリカ北部とされるが、日本大百科全書は「ヨーロッパ中部と南部、アフリカ北部に分布」と書き、原産地と現在の分布を混ぜると食いちがう[4]。では、穴を掘らないノウサギは、赤ちゃんをどう迎えているのか。
3. 穴を ほらない ノウサギは、赤ちゃんを どう 守るの?
3. 穴を掘らないノウサギは、赤ちゃんをどう迎えるのか
3. 巣穴をつくらないニホンノウサギ ── 生まれてすぐ走れる子
日本の 本州と 四国と 九州には、ニホンノウサギが います[3]。たいらな 土地から 高い 山まで すみ、草原にも 森にも います。林の ふちに とくに 多い そうです。
ノウサギは、穴を ほりません。とくべつな 巣も つくらず、地上で 子を うみます[3]。
赤ちゃんは、穴の うさぎと ぜんぜん ちがいます。生まれた とき、毛が 生えそろい、目も 開いて いて、すぐ 走る ことが できます[3]。
穴の 中で 守られて 大きく なる なかまと、生まれて すぐ 動ける なかま。くらし方と 赤ちゃんの すがたが、ひと組みに なって います。ただ、そう なって いる 理由までは、資料に 書かれて いません。
では、日本には 穴で くらす うさぎは いないのでしょうか。
ニホンノウサギは、佐渡や隠岐を含む本州・四国・九州の平地から高山にすみます。草原にも森林にもすみますが、林のふち(林縁部)にとくに多いとされます[3]。
アナウサギと違い、巣穴のような特別な構造の巣はつくりません。子は体毛が生えそろい、目も開いた状態で生まれ、すぐ走ることができます[3]。穴の中で守られて育つアナウサギの子とは、まるで逆の生まれ方です[2]。
生まれてすぐ動ける子と、穴の中で守られる子。資料は、この二つを暮らし方の違いとして並べて説明しています。ただし、穴を掘らないから子が育っているのか、子が育つから穴が要らないのか、因果までは書かれていません。
ここまで、穴を掘る型と掘らない型を比べました。では、日本の山や森に、穴を掘る仲間はいないのでしょうか。
ニホンノウサギは本州・四国・九州(佐渡・隠岐を含む)の平地から高山にすみ、草原と森林のどちらにもすむが、林縁部に特に多い[3]。林と草地の境は、身を隠せる場所と、えさの草が近い場所が重なりやすいと想像できるが、資料に書かれているのは「多い」という事実までである。
アナウサギと異なり、巣穴などの特別な構造の巣はつくらない。新生子は体毛が生えそろい、目があき、すぐ走ることが可能である[3]。アナウサギの子は赤裸で目が閉じている[4]ので、同じウサギ類の中で、生まれた時点の発達度がまったく違うことになる。
この違いを並べると、穴で守りながら未発達な子を産む型と、穴を掘らず発達した子を産む型、という二つの組みが見える。ただし、百科事典の記述は「巣穴などの特別の構造をもつ巣はつくらない」「地上に巣をつくる」と表現が分かれていて、巣の有無と赤ちゃんの発達度の因果までは、ここで使った資料からは言えない[2][3]。
では、日本の中にも、穴を掘る型の仲間は存在するのか。
4. 日本にも、穴で くらす うさぎが いるの?
4. 日本にも、穴で暮らすウサギがいるのか
4. 奄美の森のアマミノクロウサギ ── 古い森と「穴を掘る」暮らし
います。鹿児島県の 奄美大島と とくのしまの 二つの 島だけに すむ、アマミノクロウサギです[7]。
古い 森か、そのとなりの えさの 多い ところに すんで います。大きな 木の ねもとや 岩の 穴に、休んだり 子を うんだり する ための 穴を ほります[7]。
体の 重さは 1.3〜2.7キロで、1リットルの 牛にゅうパックの 1.3〜2.7本分ほど。あたまから おしりまでは 41〜51センチです[7]。
ほかの うさぎに 見られない、古い かたちの とくちょうを もつ、大切な うさぎと されて います[7]。いま、数が すくなく なって いますが、マングースを へらす とりくみなどで、奄美大島では ふえる ようすが 見られると されます[7]。
では、木も 少ない 岩だらけの 山には、どんな うさぎが いるのでしょう。
います。鹿児島県の奄美大島と徳之島の2島にだけ分布する、アマミノクロウサギです[7]。環境省の資料によると、高齢級林(古い森)か、それに隣接した餌の多い場所に生息します。樹洞や岩穴のほか、大木の根元などに、休息や子を産むための穴を掘ります[7]。
体重は1,300〜2,700g、頭胴長は41〜51cmです。1リットルの牛乳パックにたとえると1.3〜2.7本分、頭胴長は30cmの定規の1.4〜1.7倍にあたります[7]。環境省は、この種を「特異で原始的な形質を有する」学術的に重要な種としています[7]。
環境省の第4次レッドリストでは絶滅危惧IB類に分類される一方、マングースの防除事業により、奄美大島の生息状況は回復傾向とされます[7]。日本の森の中に、穴を掘って暮らすウサギが今もいる、というのは意外です。次は、森とはまた別の環境を見ます。
アマミノクロウサギは、鹿児島県の奄美大島と徳之島の2島にのみ分布する固有種である。高齢級林あるいはそれに隣接した餌量の多い場所に生息し、樹洞・岩穴のほか、大木の根元などに休息・産仔用の穴を掘る[7]。つまり、日本の中にも、穴を掘る暮らしをするウサギがいる。ただし、ここで資料から言えるのは「穴を掘る」ことと、すむ森の条件までである。
体重は1,300〜2,700g、頭胴長は41〜51cm。1リットルの牛乳パック1.3〜2.7本分の重さで、頭胴長は30cmの定規の1.4〜1.7倍にあたる[7]。環境省は、第4次レッドリストで絶滅危惧IB類に分類していること、「特異で原始的な形質を有する」学術的に重要な種であることを述べている[7]。
なお、外来生物であるマングースの防除事業により、奄美大島の生息状況は回復傾向とされる[7]。数が少ないことと、回復が進んでいることの両方を、同じ資料が書いている点に注意したい。
森に穴を掘る仲間の次は、同じ日本でも、木が少なく岩が多い山の暮らしを見る。
5. 岩だらけの 山には、どんな うさぎが いるの?
5. 岩の多い山で冬を越すウサギは、何を食べているのか
5. 北海道の岩場のナキウサギ ── 貯めた草で冬を越す暮らし
ナキウサギは、うさぎの なかまの 中の「ナキウサギ科」と いう グループです[8]。北海道に すむ エゾナキウサギは、大雪山や ひだかさんみゃくなど、岩の 多い 山に すんで います。
この うさぎは、秋に 草を あつめて、岩の 下に ためて おきます。冬は 冬眠せず、ほしくさを 食べて すごします[8]。
雪と 岩に かこまれた 冬でも、ためて おいた 草が ごはんに なる のです。穴を ほる なかま、地上で 子を うむ なかま、岩の 多い 山で 草を ためる なかまが います。うさぎの くらし方は、一つでは ありません。
ナキウサギはウサギ目のナキウサギ科に属します。北海道にすむエゾナキウサギは、山地から高山の、乾燥した岩場にすみます[8]。大雪山や日高山脈のように、岩の多い山岳地帯です。
秋になると草を集めて、岩の下にためておきます。そして冬は冬眠せず、貯蔵した干し草を食べて過ごします[8]。
穴を掘る仲間、地上で子を産む仲間、岩場で草をためる仲間がいます。ウサギのなかまの暮らし方は一つではありません。
ナキウサギはウサギ目ナキウサギ科の動物で、北海道にすむエゾナキウサギは山地から高山の、乾燥した岩場にすむ。大雪山や日高山脈のように、岩の多い山岳地帯である[8]。
秋に草を集めて岩の下に貯え、冬は冬眠せず、貯蔵した干し草を食べて過ごす[8]。冬の間は新しい草が得にくいので、この貯蔵が食料になるのだろう。ただし、これは食性の記述の範囲であり、巣の構造や繁殖の詳しい様子は、ここで使った百科事典の記述にはない。
ここまでで、ウサギ類の暮らし場所の使い方を三つに分けられた。穴を掘る型(アナウサギ・アマミノクロウサギ)、掘らず地上で産む型(ニホンノウサギ)、岩場で干し草を貯える型(ナキウサギ)である。どの型も、その場所の環境と結びついて整理できる。
では、この違いを、自分の目と手で確かめるにはどうすればよいか。
6. 自分でも、うさぎの すむ 場所を 調べて みよう
6. 近くの図鑑で、ウサギの暮らし方を三つに分けてみる
6. 自分で確かめる道すじ ── 暮らし方の三つの型を、本と地図で整理する
やってみよう。図書館や 家の 図鑑で、うさぎの なかまを 3しゅるい 見つけます。そして「穴」「地上」「岩の 多い 山」の どれで くらして いるかを、メモに 書き出します。
地図帳が あれば、奄美大島と 北海道の 場所も さがして みましょう。
うさぎの くらし方が、なぜ そう 分かれたのかは、図鑑には 書かれて いない ことも あります。そこが、これから 自分で 調べる 入り口です。
やってみよう:図書館や家の図鑑で、ウサギ目のなかまを3種類選び、「穴を掘る」「地上で産む」「岩場にすむ」のどれに近いかをメモに書き出します。そのとき、赤ちゃんが生まれたときに毛が生えているか、目が開いているかも、一緒に見てみましょう。
地図帳があれば、奄美大島、徳之島、大雪山、日高山脈の位置を確かめます。同じウサギのなかまが、これだけ離れた場所で、違う暮らしをしていることが見えてきます。
「なぜ暮らし方が分かれたのか」は、この記事の資料だけでは答えが出ませんでした。図鑑や環境省の資料(出典[7])の続きに、手がかりがあるかもしれません。
確かめる道すじを2つ挙げる。①図書館や家の図鑑で、ウサギ目の3種類を選び、「穴を掘る」「地上で産む」「岩場にすむ」のどれに近いかを書き出す。そのとき、赤ちゃんの生まれたときの状態(毛・目・動けるか)も一緒に調べると、本稿の二つの型が自分の目で確かめられる。
②地図帳で、奄美大島・徳之島・大雪山・日高山脈の位置と、本州・四国・九州の位置関係を確かめる。同じウサギ類が、これだけ離れた場所で、別々の環境を使っていることが分かる。
資料としては、環境省のアマミノクロウサギのページ(出典[7])が一次資料にあたる。百科事典(出典[2][3][4][8])や論文(出典[6])は、種ごとの記述が違う点を見比べると、原産地・巣の有無・家畜化の時期など、本稿で「諸説ある」とした部分が、資料でどこまで分かるのかを確かめられる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:研究機関の発表、公的機関の資料、百科事典、論文、解説記事を使いました。何に使ったかは、各項目の最後に書いています。
- 京都大学 研究ニュース(2021年3月16日)。https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-03-16 (ウサギ目の種数と、分布する大陸)
- コトバンク「ウサギ」(百科事典マイペディア・日本大百科全書)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE-34444 (すむ環境、穴を掘る型と掘らない型の違い)
- コトバンク「ノウサギ」(世界大百科事典・日本大百科全書)。https://kotobank.jp/word/%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE (ニホンノウサギの分布、巣、子の状態)
- コトバンク「アナウサギ」(世界大百科事典・日本大百科全書・ブリタニカ国際大百科事典)。https://kotobank.jp/word/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE (ワレン、子の数と状態、原産地)
- Wikipedia「European rabbit」。https://en.wikipedia.org/wiki/European_rabbit (ワレンの場所、掘り方、集団の例、産室。英語の百科事典で、補足的に使用)
- Rabbit genetics / Domestic rabbit review (PMC7158370)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7158370/ (カイウサギの祖先と、家畜化の時期の諸説。英語の論文)
- 環境省「アマミノクロウサギ(保護増殖事業)」。https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/amaminokurousagi.html (分布、穴を掘る場所、体の大きさ、保護の状況)
- コトバンク「ナキウサギ」(世界大百科事典・ブリタニカ国際大百科事典・マイペディア)。https://kotobank.jp/word/%E3%83%8A%E3%82%AD%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%82%AE (ナキウサギのすむ場所、干し草の貯蔵、冬の過ごし方)
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