1. みみに 見えるのは、みみじゃ ないの?
1. 「耳」に見える羽は、聞くための耳ではない
1. 羽角は耳ではない ── ミミズクとフクロウの境目
みみずくの あたまには、みみの ように 見える 2ほんの はねが あります。「うかく」と いいます[1]。でも、ここで ものを きいて いる わけでは ありません。
では、なんの ために あるのでしょう。じつは、はっきり わかって いません。木の はや えだに まぎれる ため、という せつや、なかまに きもちを つたえる ため、という せつが あります[4]。どちらも すいそくで、きまった こたえは ありません。
ふくろうと みみずくも、はっきり わけられる わけでは ありません。シマフクロウは なまえは「ふくろう」ですが、うかくが あります[1]。
では、うかくの ある とりは、どんな ところに いるのでしょう。まず、林から 見て みます。
ミミズクとは、フクロウ目の鳥のうち、頭に耳のような飾り羽(羽角)をもつ種をいいます。羽角は、聴覚とは関係がないとされています[1]。
では、何のためにあるのでしょうか。はっきりした答えはまだありません。木の葉や枝にまぎれて、体の輪郭をぼかすためという説や、仲間に気分を伝える合図だという説が出されていますが、どちらも推測の段階です[4]。
名前の区別も、きっぱりとは分けられません。羽角の有無で「ミミズク」と「フクロウ」を分けることが多い一方、シマフクロウのように、名前は「フクロウ」でも羽角がある鳥がいます[1]。
「ミミズク」という呼び名は、暮らす場所を示す名前ではありません。そこで、羽角をもつ鳥の暮らす場所を、種ごとに見てみます。最初は、林の暗がりにひそむ鳥です。
ミミズクの定義は、フクロウ目の鳥のうち、外耳のように見える冠羽(羽角)をもつ種、というものだ。羽角は聴覚とは関係がない[1]。ただし、羽角の有無による区別は完全ではない。名前が「フクロウ」でも羽角をもつシマフクロウの例がある[1]。ミミズクは分類上のまとまりというより、見た目をもとにした呼び名だと考えたほうがよい。
羽角の機能は定説がない。英語版Wikipediaのトラフズクの項は、羽角が、仲間に気分などを伝える合図になるという説もある[4]。木の葉や枝にまぎれて輪郭をぼかす役目だという説もあるが、これも定説ではない。羽角が聴覚と無関係で、役目も決まっていないなら、ミミズクの暮らす場所は羽角から予想できない。
では、実際にはどこにいるのか。まず、日本の林で見られるトラフズクから見る。
2. ひるまの 林で、じっと やすむ とり
2. 昼は林の暗がりで休み、冬は仲間とねぐらを分け合う ── トラフズク
2. 昼の休み場と冬のねぐら ── トラフズクが林にいる理由
トラフズクは、平らな 土地から 山の 林、川の ちかく、田や 畑の まわりに すんで います[2]。ひるまは、くらい 林の 中で 休んで います。そして ゆうがたに なると、うごき はじめます[2]。
ふゆには、すこし ふしぎな ことが おきます。なつの あいだは 2わで くらして いても、ふゆに なると 数わが あつまります。京都府の しりょうには、ふゆの あいだ、数わから 数十わが いっしょに いる ことも ある、と あります[3]。
この とりは、じぶんで す を つくりません。木の あなや、からすの ふるい す を かりて、たまごを うみます[2]。
ひるまの ねどこに なる 林が あれば、くらせる ようです。では、木の ない ところは、どうでしょう。
トラフズクは、平地から山地の林、河原、農耕地などで暮らします。日中は暗い林の中で休み、夕方から活動を始めます[2]。昼間にこの鳥を見つけるのが難しいのは、暗がりで休んでいるからでしょう。
冬には、おもしろい暮らし方をします。繁殖の季節はつがいで過ごしますが、冬は数羽で群れます[2]。京都府の資料には、越冬中に数羽から数十羽が一緒にいることもある、とあります[3]。
海外の解説では、冬のねぐらに6〜50羽が集まる例があり、ヨーロッパには約150羽の記録もあります[4]。ただしこの数は海外での大きな記録で、日本で普通に見られる数ではありません。
巣は、自分では作りません。樹洞(木のほら)や、カラス類やタカ類が使った古い巣を借りて、卵を産みます[2][3]。林には、休む暗がりと、巣を借りる木の両方があるわけです。
では、木のない場所には、ミミズクはいないのでしょうか。
トラフズクの生息環境は、新潟県の資料では平地から山地の林、河原、農耕地などとされる。日中は暗い林内で休息し、夕暮れから活動を始める[2]。夜に狩りをする鳥が、昼は光の弱い林の中に身を置く、という組み合わせだ。
この種は、冬に社会的な姿を見せる。繁殖期はつがいで暮らすが、冬は数羽で群れる[2]。京都府のレッドデータブックは、越冬中に数羽〜数十羽が一緒にいることもあると記す[3]。海外の解説では冬のねぐらに6〜50羽、ヨーロッパの記録では約150羽が集まった例がある[4]。150羽は大きな記録であり、日本での普通の数と読むべきではない。
営巣は、樹洞やカラス類・タカ類の古巣を利用する[2][3]。自分で巣を作らないので、昼の休み場になる暗い林や、巣を借りられる木・古巣が、生息地の条件の一部になると考えられる。
分布は広く、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の中緯度地帯で繁殖し、冬は低緯度へ渡る[3]。では、林を使わない種はいるのか。次は、木のない草原にすむ種を見る。
3. 木の ない 草はらに、す を つくる?
3. 木のない草原で、地面に巣をつくる ── コミミズク
3. 開けた草地の鳥 ── コミミズクの休み場・えさ・巣
こみみずくは、林ではなく 草はらや 田や 畑、川の ちかくに すんで います[5]。ひるまは、草の たけの ひくい 草はらで 休みます[5]。
日本には、ふゆの 鳥として わたって きます。新潟県の しりょうでは、10月ごろに やって きます[5]。
えさは、おもに ねずみです。たくさん つかまえた ときは、あぜの くぼみや 草むらに ためて おきます[5]。
外国の せつめいでは、こみみずくは 木では なく、地めんに す を つくります。す は ひくい 草で かくされて います[6]。
ここまでは、あまり 人の すまない 場所の はなしでした。まちの ちかくには、いないのでしょうか。
コミミズクは、トラフズクとはちがい、木のない場所を好みます。冬鳥として日本に渡来し、平地から山地の草原、農耕地、河原、埋立地などにすみます。昼は、草丈の低い一定の草地で休みます[5]。
えさは主にネズミで、たくさん捕れたときは、畦(田畑のあいだの盛り土)のくぼみや草むらにためておきます[5]。ネズミが多い開けた草地が、この鳥の暮らしを支えているのでしょう。
巣についても、海外の解説が興味深い記述をしています。コミミズクは、草原やツンドラ、サバンナなどの開けた土地で、地面に巣をつくります。巣は低い草で隠されます[6]。また、この鳥は南極とオーストラリアを除くすべての大陸にいて、ネズミの一種のハタネズミが少ない年には、食べ物を求めてあちこちさまよう、とあります[6]。
草原の鳥と林の鳥がいるとして、人の暮らしに近い場所にはどんな種がいるのでしょうか。
新潟県の資料によると、コミミズクは冬鳥として10月ごろ平野部に渡来する。この時期は新潟県での記述で、全国一律ではない。生息環境は平地から山地の草原、農耕地、河原、埋立地で、日中は草丈の低い草地で休息する[5]。トラフズクが昼に林の暗がりを必要とするのに対し、コミミズクの休み場は、見通しのよい草地だ。
食物は主にネズミで、多く捕れたときは畦のくぼみや草むらに保存する[5]。狩りの場と貯蔵の場が同じ草地にあることになる。
営巣については、英語版Wikipediaの記述による。草原・ツンドラ・サバンナ・牧草地など開けた土地の地面に巣を作り、巣は低い草で隠される。分布は南極とオーストラリアを除く全大陸に及び、主な獲物であるハタネズミが少ない年には、食物を求めて移動する[6]。
以上から、同じミミズクでも、トラフズクは樹洞や古巣という「木」に頼り、コミミズクは草丈で巣を隠す「地面」に頼る。では、人の暮らしに近い場所にはどの種がいるのか。
4. まちの ちかくの 林や 公園にも いる
4. 屋敷林や公園、巣箱も使う ── オオコノハズク
4. 人里の林を使う小型のミミズク ── オオコノハズク
おおこのはずくは、平らな 土地から 山の 林、お屋しきの まわりの 林、公園などに すんで います[7]。
この とりも、木の あなで たまごを うみます。でも、人が かけた すばこを つかう ことも あります[7]。
えさは、おもに ねずみです。とりや、とかげのような いきもの、かえる、虫も たべます[7]。
ここまでの 3しゅは、林か 草はらの とりでした。でも、もっと けわしい ところに すむ みみずくも います。
オオコノハズクは、平地から山地の林のほか、屋敷林や公園などにすみます[7]。屋敷林とは、昔から家の周りに植えられた林のことです。
この鳥は、樹洞で繁殖しますが、巣箱を使うこともあります[7]。人が作った巣箱を使えるのですから、人の暮らしに近い場所でも、条件が合えば暮らしていけるのでしょう。
食べ物は、主にネズミの仲間です。そのほか、鳥、は虫類、両生類、昆虫も食べます[7]。何でも食べるわけではなく、林の周りで捕まえられる動物が中心になります。
トラフズクは林、コミミズクは草地、オオコノハズクは人里の林です。では、人里から遠い、けわしい場所に暮らすミミズクはいるのでしょうか。
オオコノハズクは、新潟県の資料では、平地から山地の林のほか屋敷林や公園などに生息するとされる。樹洞で繁殖するが、巣箱を利用することもある。食物は主にネズミ類で、鳥類・は虫類・両生類・昆虫も捕る[7]。
ここで注目できるのは、人工物の巣箱を受け入れる点だ。種によって、よく使う巣の場所に違いがある。オオコノハズクは、樹洞が足りない場所では巣箱で代わりが利くことが、記述から読み取れる。ただし、巣箱の利用がどのくらい多いかは、資料に数字がない。
林・屋敷林・公園という環境の幅から、人里に近い緑地も使える種だと言える。
ここまでの3種は、木の洞か地面かのちがいはあっても、平地から山地にかけての環境にすむ。最後は、さらに奥深い場所にすむ、大型の種を見る。
5. がけや 大きな 木に すむ、大きな みみずく
5. 崖の棚や巨木のほら、砂漠にまで ── ワシミミズク
5. 生息環境の幅が最も広い種 ── ワシミミズクの営巣場所と日本での状況
わしみみずくは、せかいで いちばん 大きい なかまの 1つです[8]。からだの 長さは 約67センチ、はねを ひろげると 約124センチです[9]。1メートルを こえます。
すむ ところも、とても ひろいです。木の ある 林から、草の 原、さばくの ような ところまで います[8]。
す は、けわしい がけの たな のように なった ところや、大きな 木の あな、からすなどの ふるい す に つくります[8]。
日本では、北海道の 原生林に 少しだけ います[8]。とても めずらしい ため、1997ねんに 国から ほごされる ことが きまりました。
ワシミミズクは、世界最大級のフクロウの仲間です。全長は約67cm、翼を広げると約124cmあります[9]。124cmは、1メートルを軽く超える長さです。
暮らす場所の広さも、この鳥の特徴です。平地から森林限界まで(木が生えなくなる高さまで)の針葉樹林や混交林、地中海地方の低木林、ステップ(草原)、砂漠までが生息地に含まれます。分布は、ヨーロッパ、北アフリカからユーラシア大陸、東アジアに及び、日本もその一部です[8]。
巣は、森の内外にある急な崖の棚のような場所、巨木の樹洞、カラス類や猛禽類の古巣などにつくります[8]。
日本では、北海道の原生林に少数がいて、繁殖するとされています[8]。1997年には国内希少野生動植物種に指定されました[8]。ただし、動物園の解説には北海道に冬鳥として渡来することもあるとの記述もあり、資料によって書き方に差があります[9]。
4種を並べると、暮らし方の幅の広さが見えてきます。身近な場所で、この「幅」を感じる方法はあるでしょうか。
ワシミミズクは世界最大級のフクロウの一種で、全長約67cm、翼開長約124cm[9]。生息環境は4種の中で最も幅が広く、平地から森林限界までの針葉樹林・混交林、地中海地方の低木林、ステップ、砂漠までを含む。分布はヨーロッパ、北アフリカからユーラシア大陸、東アジア、サハリン、日本に及ぶ[8]。
営巣場所は、森林内外の急な崖地の棚状部、巨木の樹洞、カラス類や猛禽類の古巣などだ[8]。トラフズクと同じく古巣を利用する一方、崖の棚という、他の3種にない場所を使う。秋田市大森山動物園の解説は、巣を作らず平原の草間のくぼみや岩棚、岩陰などを使うと説明している[9]。この4種を比べると、ワシミミズクはさまざまな場所に巣を作ることが分かる。
日本での状況は、資料間で書き方が分かれる。百科事典は北海道の原生林に少数が生息して繁殖すると記し、1997年に国内希少野生動植物種に指定されたとする[8]。一方で動物園の解説は、冬鳥として北海道に渡来することもあると述べる[9]。そのため、ここでは「北海道に少数」と書くにとどめる。
4種を比べると、羽角をもつ鳥でも、休む場所や巣の場所が種によって異なることが分かる。この「ちがい」を、身近な場所で想像する方法を最後に考える。
6. ちかくの 場しょで、ねどこを さがして みよう
6. 近所の「昼のねどこ」と「ネズミの草地」を探す
6. 近所の環境を、4種の条件で読み直す
みみずくが すむ ところには、ひるまに 休める くらい 林や、ねずみの いる 草はらが あります。ひるまに、ちかくの 公園や 川や 草はらを あるいて、そんな 場しょが ないか さがして みましょう。
やくそくが 3つ あります。まず、かならず おとなと いっしょに いく こと。つぎに、よるの おさんぽは しない こと。さいごに、とりが いても ちかづかないこと。
みみずくに あえなくても、だいじょうぶです。「ここなら ねどこに なりそう」と かんがえる ことが、いちばんの たのしみです。
ミミズクに出会えなくても、できることがあります。近所の公園、河原、草地、林を昼間に歩き、「昼に鳥が休めそうな暗がり」と「ネズミが隠れていそうな低い草地」の2つがあるかを探してみます。
安全のため、必ず大人と一緒に行き、夜には出かけないでください。鳥や巣には近づかないようにします。
探す前に、住んでいる県の資料を読むと、手がかりになります。ここで使った新潟県や京都府のように、県のレッドデータブック(絶滅のおそれのある生きものの解説)には、トラフズクやコミミズクの生息環境が日本語で載っています。「トラフズク 県名 レッドデータ」などで検索すると、自分の県の資料が見つかります。
同じミミズクでも暮らす場所が種ごとにちがうなら、自分の住む町でどの種が暮らせるのか、想像する余地があります。
ここまでの条件を整理すると、トラフズクには昼に休める暗い林と、巣を借りられる樹洞や古巣が、コミミズクには見通しのよい草地とネズミが、オオコノハズクには林や屋敷林、公園と、樹洞か巣箱が、ワシミミズクには崖の棚や巨木の樹洞など多様な営巣場所が、それぞれ必要とされる。
この見方を使って、近所の環境を昼間に歩いて読み直してみる。安全のため大人と一緒に行き、夜は出かけず、鳥や巣には近づかない。観察の目的は鳥に会うことではなく、「昼の休み場になる暗がり」「ネズミのいそうな草地」といった条件が、近所にあるかどうかを見ることである。
確かな情報は、各都道府県のレッドデータブックの解説に載っている。本記事で使った新潟県・京都府の資料のほか、住んでいる県の資料を読み比べると、同じ種でも県ごとに書き方がちがうことに気づくかもしれない。海外の解説(英語版Wikipedia)は一般的な情報として参考にとどめ、日本の状況は日本の資料で確かめたい。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
各項目は、本文で使った事実の出どころです。県の資料は、各県の公式サイトに掲載されています。
- コトバンク「ミミズク」(日本大百科全書ほか) https://kotobank.jp/word/ミミズク (ミミズクの定義、羽角と聴覚、名前の例外)
- 新潟県「トラフズク」(レッドデータ解説) https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908744749.html (生息環境、昼の休み方、冬の群れ、巣)
- 京都府レッドデータブック「トラフズク」 https://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/bio/db/bird0044.html (越冬中の群れ、巣、分布)
- Wikipedia「Long-eared owl」(英語) https://en.wikipedia.org/wiki/Long-eared_owl (羽角の役目の説、海外の冬のねぐらの数)
- 新潟県「コミミズク」(レッドデータ解説) https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908744835.html (渡来の時期、生息環境、えさ)
- Wikipedia「Short-eared owl」(英語) https://en.wikipedia.org/wiki/Short-eared_owl (分布、地面の巣、ハタネズミが少ない年の移動)
- 新潟県「オオコノハズク」(レッドデータ解説) https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/kankyotaisaku/1356908744405.html (生息環境、巣箱、えさ)
- コトバンク「ワシミミズク」(世界大百科事典) https://kotobank.jp/word/ワシミミズク-3176771 (生息環境、営巣場所、日本での状況)
- 秋田市大森山動物園「ワシミミズク」 https://www.city.akita.lg.jp/zoo/information/1003682/1005303/1003882.html (大きさ、巣の使い方、日本での渡来の記述)
なおした ところ
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