1. おなかの 上で、なにを して いるの?
1. 浮かびながら、胸の上で貝を打つ
1. 石の3つの使い方 ── 水中・胸の上・岩への打ちつけ
ラッコは、うみの 上に あおむけで うかびます。かいを りょうほうの 手で もって、いしや いわに うちつけて、からを わります[1]。
おなかや むねの 上が、そのまま つくえ みたいに なります。
うみの どうぶつで、ふだんから いしを どうぐに するのは、ラッコだけと いわれます[1]。
2. すきな 食べものが へると、どう なるの?
2. 好物が減った海で、歯を守る道具になる
2. 好物の枯渇と道具使用 ── 歯の損耗を減らす(Law ほか 2024)
ラッコの すきな 食べものは、大きな アワビや ウニです。これは いしが なくても 食べられます[3]。
でも、ラッコが 食べつくして へって くると、カニや かたい からの 小さな かいへ、食べものを ひろげます[3]。
かたい ものを そのまま かじると、歯が いたみます。いしを つかう ラッコは、歯の いたみが すくなかった、と ほうこくされて います[2]。
好物が消えると、食べ物を広げる
南カリフォルニアのラッコは、大きなアワビやウニといった好物なら、道具なしでも食べられます。ところがそれらがラッコに食べ尽くされて減ると、カニ、二枚貝、イガイ、殻の硬い小さな巻貝へと食べ物を広げます[3]。
歯の傷みが少なかった
電波発信機をつけた196頭の長期データを調べた2024年の研究では、道具を使う個体、とくにメスは、より大きい、あるいは殻の硬い獲物を食べられ、歯の傷みが少なかったと報告されました[2]。メスは、道具を使うオスと比べ、最大35%硬い獲物を食べられたともいいます[3]。
研究では、好物が減った環境では、道具の使用が生き残るために必要な個体もいる行動かもしれない、と考えられています。「全員に必須」と決まったわけではありません[2]。
南カリフォルニアでは、大型のアワビやウニといった好物は道具なしでも食べられるが、捕食圧で減少すると、カニ・二枚貝・イガイ・殻の硬い小型の巻貝へと食性が広がる[3]。
Law ほか(2024, Science 384: 798–802)は、196頭の電波発信機つき南方ラッコの長期データから、道具を使う個体(特にメス)がより大きい・硬い殻の獲物を食べられ、歯の損耗が少なかったことを示した[2]。大学の解説は、メスが道具を使うオスと比べ最大35%硬い獲物を食べられたと述べる[3]。著者らはこの結果から、道具使用が好物の減った環境で生き残るのに必要な個体もいる行動だと示唆している[2]。「必ず必要」とまでは読めない。
3. ラッコは みんな おなじ ように つかうの?
3. 使う割合は、個体によってまるで違う
3. 個体差 ── 捕獲の0〜98%(Fujii ほか 2017)
いいえ。いしを よく つかう ラッコも いれば、あまり つかわない ラッコも います[4]。
食べにくい えものを 食べるのが とくいな ラッコほど、どうぐを よく つかう、という けっかも あります。
カリフォルニアの211頭を調べた2017年の研究では、道具を使う割合に大きな個体差がありました。獲物が豊富な地域では、捕まえた獲物のうち道具を使ったのは4〜38%でした。獲物が限られる地域では、0〜98%と幅がさらに広がりました[4]。
食べにくい獲物に特化した個体ほど、道具をよく使う傾向も報告されています。ラッコの中にも「石をよく使う個体」と「あまり使わない個体」がいるということです。
4. かいがらの われかたで、なにが わかるの?
4. 貝殻の割れ方が残す「ラッコの跡」
4. 貝殻の破片の偏り ── 台の岩と貝塚(2007〜2017年観察)
カリフォルニアの ある うみべでは、おなじ 大きな いわを 何ども 「だい」に する ラッコが、10ねんかん かんさつ されました[8]。
いわには きずが つき、下には わった かいがらが たまります。
その かいがらは、あるほうの からは つながった まま、もうひとつの からは ななめに われて いました[1]。この われかたの くせは、ラッコが 食べた あとの めじるしに なります。
10年観察された「台の岩」
カリフォルニアのベネット・スラウという場所では、海岸の大きな岩を台として繰り返し使うラッコが、2007〜2017年の10年間観察されました。台にされた岩には特徴的な傷ができ、その下には割れた貝殻がたまります[8]。
割れ方に癖がある
ラッコが割ったイガイの殻では、左の殻が蝶番でつながったまま残り、右の殻は斜めに割れる、という一貫した割れ方が見られました。調べた29片のうち18片が左殻、11片が割れた右殻です。ただしこれは1地点で拾った29片で、ラッコ全体の数字ではありません[1]。
遺跡の貝塚を読む手がかり
この癖は、人間や他の動物が割ったものと見分ける手がかりになり、考古学者が遺跡の貝塚を読むのに役立つと考えられています。割れ方が片側にそろうことから、「この場所のラッコは右利きが多いと示唆される」とも伝えられています[5]。あくまで示唆で、確定ではありません。
Bennett Slough Culverts(カリフォルニア)では、海岸の大きな岩を台として繰り返し使うラッコが2007〜2017年の10年間観察され、台にされた岩には特徴的な傷が、下には割れた貝殻の堆積ができた[8]。
Fujii ほか(2019)は、ここで採取したイガイの殻を調べた。左殻が蝶番で右殻の断片とつながったまま残るものと、斜めの破断面をもつ右殻の断片が繰り返し現れた。29片のうち18片が左殻、11片が右殻だった。1地点の抽出であり、ラッコ全般の割合ではない[1]。
この破断パターンは、ヒトや他の動物による破砕と区別する手がかりとなり、考古学の貝塚解釈に応用しうる。ナショナルジオグラフィックは、割れ方が片側にそろうことから「このサイトのラッコは右利きが多いことが示唆される」と紹介している[5]。示唆にとどまる。
5. 「おきにいりの いし」は、ほんとうに いるの?
5. 「お気に入りの石」説と、研究者の否定
5. 定説の再検討 ── 「お気に入りの石を持ち歩く」説とHakai Magazineの記事
ラッコの わきの 下には、ふくろの ように たるんだ ひふが あります[7]。ここに 食べものを いれて はこぶ すがたが 知られて います。
そこから、「おきにいりの いしを、ずっと もちあるく」と いう 話が ひろまりました。でも、ラッコを しらべる ジェシカ・フジイさんは「ラッコは いしを つかったら おとす」と 話して います[6]。
「ずっと もちあるく」と いう 話と、けんきゅうしゃの 話が ちがって います。もとの 文しょうを 自分で 読んで、たしかめて みましょう。
自分でも しらべて みたく なったら
自分でも調べてみたくなったら
自分でも調べてみたくなったら
きょう できること
あおむけで うかぶ ラッコの えを、かいて みましょう。手は どこに あるか、おなかの 上に なにが のって いるか、かんがえながら かくと、たのしいです。
おでかけで できること
ラッコの いる すいぞくかんに 行けたら、ごはんの じかんを しらべて みましょう。どんな ふうに 食べるか、ゆっくり みて みましょう。
今日できること
仰向けに浮かんで貝を割るラッコの姿を、絵に描いてみましょう。前足はどこにあり、胸の上には何がのっているのか。図鑑や写真を見ながら描くと、体の使い方が見えてきます。
出かけてできること
ラッコのいる水族館があれば、食事の時間を調べて見に行ってみましょう。飼育下の行動が野生と同じかどうかは分かりませんが、貝をどう扱うかは観察のヒントになります。
もっと知りたくなったら
出典[2]のScience論文の要旨と、出典[6]のHakai Magazineの記事は、道具を使う理由と、石を持ち歩くという説への見方を、それぞれ別の側から伝えています。読み比べると、同じラッコでも見え方が変わります。
今日できること
出典[2]のScience論文の要旨と、出典[6]のHakai Magazineの記事を読み比べ、「ラッコと道具」について道具使用と歯の傷みの研究、石を持ち歩く説への研究者の見解を、それぞれ整理してみる。
出かけてできること
ラッコのいる水族館があれば、給餌の時間に飼育下の行動を観察できる。飼育下の行動と野生の行動が同じかは、本メモの資料では確認できていない。
公式情報
各出典のURLは下の出典欄にある。論文はDOIまたは公開版を確認できる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の[ ]の番号は、下の出典と対応しています。英語の資料は、要旨や紹介記事をもとに日本語で説明しています。
- Fujii ほか (2019) Scientific Reports, 野生ラッコの石器使用と貝殻の破片。 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6418163/ (石の3つの使い方・貝殻の割れ方・29片)
- Law ほか (2024) Science 384:798-802(要旨)。 https://www.science.org/doi/10.1126/science.adj6608 (道具使用と歯の傷み)
- UC Santa Cruz News (2024) Sea otters and tools。 https://news.ucsc.edu/2024/05/sea-otters-tools/ (好物の減少・メスの35%)
- Fujii ほか (2017) Behavioral Ecology 28(5)(要旨)。 https://academic.oup.com/beheco/article-abstract/28/5/1206/4001444 (道具を使う割合の個体差)
- National Geographic, sea otters archaeology tool use California。 https://www.nationalgeographic.com/animals/article/sea-otters-archaeology-tool-use-california (右利き・遺跡との見分け)
- Hakai Magazine, The Quest for Archaeology of Sea Otter Tool Use。 https://hakaimagazine.com/features/quest-archaeology-sea-otter-tool-use/ (フジイの「石は落とす」発言)
- レファレンス協同データベース(『ラッコのいる海』ほか)。 https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?page=ref_view&id=1000290972 (脇の下の袋状の皮膚)
- Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology, sea otters tool use。 https://www.shh.mpg.de/1230807/sea-otters-tool-use (10年間の台の岩の観察)
なおした ところ
更新履歴
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