1. うみの そこの じしんけいは、なにを はかって いるの?
1. 海の底の観測点は、何を測っているのか
1. 海底観測点では、地震計と水圧計が何を測るのか
うみの そこの かんそくてんには、ふたつの しごとを する きかいが はいって います。ひとつは 地震計で、じめんの ゆれを はかります。もうひとつは すいあつけいで、うえに ある うみの みずの おもさを はかります[1]。
つなみが きて うみの みずが 1メートル たかく なると、うみの そこの みずの おもさも ふえます。ふえる ぶんは、おおよそ 0.1きあつ です(うみの みずの おもさから けいさんした めやすです)。だから みずの おもさの かわりかたを はかると、つなみを みつける てがかりに なります。
じしんで ゆれるのを じしんけいで、つなみで みずが ふえるのを すいあつけいで。この 2つが ケーブルの さきに ならんで、ずっと はたらいて います。
S-net(日本海溝海底地震津波観測網)の観測点には、揺れを測る速度計と加速度計、傾きを測る傾斜計、海水の重さを測る水圧計が入っています[1]。速度計・加速度計・傾斜計は1秒に100回、水圧計は1秒に10回、データを取ります[1]。
水圧計が津波の通過を捉えられるのは、水の深さが変わると圧力が変わるからです。海面が1m高くなれば、海底にかかる圧力は約0.1気圧(海水の密度から計算した目安)増えます。津波は沖合では波の高さが小さくても、その変化を海底で直接測ることができます。
地震計は地面の揺れを、水圧計は津波による水位の変化を測ります。1つの観測点が、地震と津波の両方に備えています。
S-netの観測点は、3成分の速度計、高感度・低感度の6成分加速度計、水圧計、傾斜計を備える。速度計・加速度計・傾斜計は100Hz、水圧計は10Hzでデータを取得する[1]。
水圧計で津波を測れるのは、海底の圧力が、上にある水柱の重さで決まるからだ。海水の密度を約1025kg/m³とすると、水位が1m上がれば海底の圧力は約10kPa(約0.1気圧)増える(密度×重力加速度×高さからの計算値)。地震計は地盤の揺れ、水圧計は津波による水位変化という別々の現象を観測し、1つの観測点で地震と津波の両方に備える。
2. どれだけ はやく わかるように なるの?
2. 緊急地震速報と津波の検知が、どれだけ早まるのか
2. 数字で見る効果 ── 最大25秒、最大約20分
きしょうちょうは、うみの そこの じしんけいの データを、きんきゅう じしん そくほうに つかって います。にほん かいこうの ちかくで おきる じしんでは、さいだい 25びょうくらい はやく なる みこみです。きいはんとうおきから むろとみさきおきの じしんでは、さいだい 10びょうくらいです[2]。
つなみでは、もっと ながい じかんが かせげます。みなみかい トラフの にしがわに できた あたらしい かんそくあみ(N-net)の データを つかうと、つなみを みつける のが さいだい 約20ぷん はやく なる みこみです[3]。
20びょうと 20ぷんは、ぜんぜん ちがう ながさです。しらせが はやく でると、ばしょに よっては、つよい ゆれの まえに みを まもる じかんが ふえる ことが あります。つなみも、みつけるのが はやいほど、たかいところへ にげる じかんが ふえる かのうせいが あります。
気象庁は2019年6月27日から、DONETとS-netの観測データを緊急地震速報に使い始めました。日本海溝付近で起きる地震では最大25秒程度、紀伊半島沖から室戸岬沖で起きる地震では最大10秒程度、発表が早まると見込まれています[2]。陸の観測点からは遠い震源でも、すぐそばの海底で揺れを捉えられるからです。
津波については、南海トラフの想定震源域のうち、これまで観測網がなかった西側(高知県沖から日向灘)にN-netが整備されました。気象庁は2025年11月20日から、N-net沿岸システムの津波観測データも使い始めました。津波の検知は、沿岸システムだけで最大約10分、沖合システムと合わせて最大約20分早まる見込みです[3]。
数字は「最大」で、地震の場所や条件によって変わります。それでも、揺れの数十秒前や津波の数十分前に分かる可能性は、避難や安全行動を取る時間につながります。
気象庁は2019年6月27日から、DONETとS-netの観測データを緊急地震速報に活用している。日本海溝付近の地震は最大25秒程度、紀伊半島沖から室戸岬沖の地震は最大10秒程度、発表が早まる見込みだ[2]。ページには観測網ごとの内訳が書かれておらず、海域との対応は地域から読み取ったものである。
津波については、観測網のなかった南海トラフ西側(高知県沖から日向灘)にN-netが整備された。沖合システムの津波データは2024年11月21日から、沿岸システムは2025年11月20日から津波情報等に使われている。津波の検知は、沿岸システムの追加で最大約10分、沖合システムと合わせて最大約20分早まる見込みだ。津波観測値を発表する沖合の観測点は250地点から268地点に増えた[3]。
これらは「最大」の見込みであり、震源の位置などで効果は変わる。なお、S-netのメンテナンス時の気象庁の説明では、津波警報の第1報や地震情報の発表時間・内容には影響しないとされた[4]。効果は、緊急地震速報の迅速化や、警報の更新・精度向上に出る。
3. どうして ケーブルで つなぐの?
3. 150の観測点と5500kmの光ケーブル
3. なぜケーブルか ── リアルタイム伝送と観測点の数
うみの そこの きかいから、りくへ すぐに データを とどけたいからです。S-netは、150この かんそくてんを 5500キロメートルほどの ケーブルで つないで、りくの 2か所の きょくと、24じかん いつも データを やりとり しています[1]。
ケーブルが ながいので、うみの そこの じゅんびも たいへんです。ぎょせんが はたらく あさい うみ(1500メートルより あさい ところ)では、ケーブルと きかいを、うみの そこに ほった 1メートルほどの みぞに うめて います[1]。あみや いかりで こわされないように する ためです。
ケーブルを うみに しずめる ほうほうは、うみの そこの つうしんケーブルの きじも よんで みましょう。
4. ふつうの つうしんケーブルにも、センサーを つけられる?
4. 通信ケーブルにセンサーを載せる「SMARTケーブル」
4. 通信用ケーブルにセンサーを載せる ── SMARTケーブル構想
せかいでは、ふだん インターネットに つかう ケーブルに、センサーを つける かんがえが ていあんされて います。ケーブルには、ひかりの しんごうを 大きくする そうち(リピーター)が、ところどころに あります。その なかに、うみの そこの みずの 温度、あつりょく、じしんの ゆれを はかる きかいを いれます[5]。
これを SMARTケーブルと よびます。ポルトガルの ちかくでは、70キロメートルごとに センサーを つける ケーブルの けいかくが ありました。
世界では、ふだんは通信に使う海底ケーブルに、観測センサーを載せる構想が提案されています。海底ケーブルには、光の信号を増幅するリピーターが一定の間隔で置かれています。SMARTケーブルは、そのリピーターに、海底の水温・圧力・地震の加速度を測るセンサーを入れます[5]。この構想は、2012年に国際電気通信連合(ITU)・世界気象機関(WMO)・ユネスコ政府間海洋学委員会(IOC)が合同作業部会をつくって始まりました。
津波観測では、現在はDART津波ブイが約70基使われていますが、常に約30%が故障や停止中だと報告されています。SMARTセンサーの故障率は、25年の運用で約5%と見積もられています[5]。ポルトガルでは、全長約3700km、約70km間隔でセンサーを載せたケーブルが計画されています(運用開始は2025年の見込みと、2022年の記事で書かれていました)[5]。
SMARTケーブル(Scientific Monitoring And Reliable Telecommunications)は、海底通信ケーブルのリピーター内に、水温・圧力・地震の加速度を測るセンサーを収める構想だ。2012年にITU・WMO・ユネスコIOCの合同作業部会が設立された[5]。通信の信頼性を損なわないことが前提である。
ITUの記事によると、津波観測の主力であるDART津波ブイは約70基で、常時約30%が故障・停止している。一方、SMARTセンサーの故障率は25年の運用で約5%と試算されている。ポルトガルのCAMリング(約3700km、約70km間隔で約50のリピーター)は、追加費用が全体の約10%(約1200万ユーロ)とされ、運用開始は2025年の見込みと記されていた(2022年の記事)。バヌアツ〜ニューカレドニアの計画は、深さ6500mの海溝をまたぐ[5]。いずれも2022年の記事で紹介された計画・見込みである。
5. たよりに しすぎて いいの?
5. 観測網も、点検や故障では止まる
5. 運用上の限界 ── 保守のあいだは効果が小さくなる
かんそくあみも、てんけんの ために データが つかえない ことが あります。きしょうちょうは、S-netの メンテナンスの あいだ、その ちかくの じしんでは、はやく しらせる こうかが ちいさく なると つたえて います[4]。
それでも、さいしょの つなみけいほうなどは、いつもどおり だされます。ほかの かんそくあみと いっしょに、じしんや つなみの じょうほうを だすために つかわれて います。
海の底の観測網も、点検や修理のあいだは止まります。気象庁は2021年のS-netのメンテナンス時、対象の観測点のデータが使えない間は、緊急地震速報の迅速化や精度向上の効果が小さくなる、と発表しました。ただし津波警報の第1報や地震情報の発表時間と内容には影響しないとしています[4]。
海底の観測網は、陸の観測網や沿岸の観測と組み合わせて使います。
気象庁は2021年のS-netメンテナンスの際、対象観測点のデータを緊急地震速報の発表や津波警報の更新に使えない期間は、迅速化や精度向上の効果が小さくなるが、津波警報の第1報や地震情報の発表時間・内容には影響しない、と発表した[4]。
海底観測網は、陸上や沿岸の観測と併用され、それらを補う役割を持つ。SMARTケーブルのような構想も、ブイなどの既存の手段を置きかえるというより、数を増やして弱点を補う方向で議論されている。
6. 自分でも やって みよう
6. 自分でも調べてみたくなったら
6. 自分でも調べてみたくなったら
ペットボトルの よこに あなを 3つ、たかさを かえて あけて、みずを いれて みましょう(おうちの 人と、そとか せんめんじょで)。ひくい あなほど、いきおいよく みずが でます。ふかいほど みずの おもさが かかる ということです。うみの そこの すいあつけいは、これと おなじ ことを はかって います。
あなを あけるときは、おうちの 人に てつだって もらいましょう。
水の深さと押される力を感じる
ペットボトルの横に穴を3つ、高さを変えてあけ、水を入れてみましょう(外か洗面所で)。低い穴ほど、勢いよく水が出ます。深いほど水圧が大きい、という海底の水圧計と同じ原理です。
観測点の位置と今日のデータを見る
防災科学技術研究所の海底地震津波観測網のサイトでは、S-netなどの観測網の説明が読めます[1]。サイトの地図で、観測点がどの海域にあるか見てみましょう。
しらべた ところ
参考にした情報源
参考にした情報源
出典について:観測網の仕様は防災科研、情報への活用は気象庁の報道発表、SMARTケーブルはITUの記事によります。海水1mで約0.1気圧という数字は、海水の密度から計算した目安で、資料の引用ではありません。DONETとN-netの仕様の細部、SMARTケーブル計画のその後は、ここでは確かめていません。
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所「日本海溝海底地震津波観測網:S-net」。 https://www.seafloor.bosai.go.jp/S-net/ (150観測点、総延長約5500km、センサー、100Hz・10Hz、24時間双方向伝送、水深1500m以浅での埋設)
- 気象庁 報道発表(2019年6月21日)「海底地震観測データを活用した緊急地震速報の発表について」。 https://www.jma.go.jp/jma/press/1906/21a/eewkatsuyou20190621.html (2019年6月27日12時から。最大25秒程度・最大10秒程度)
- 気象庁 報道発表(2025年11月14日)「津波情報等に活用する観測地点の追加について ~N-net沿岸システムの活用開始~」。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2511/14b/20251114_N-net.html (2025年11月20日から。検知が最大約10分・約20分早まる、250地点から268地点)
- 気象庁 報道発表(2021年1月28日)「S-netのメンテナンスに伴う緊急地震速報等への影響について」。 https://www.jma.go.jp/jma/press/2101/28a/20210128_snet_mainte.pdf (メンテナンス中の影響の説明)
- ITU News(2022年6月)「Submarine cables for telecom, climate monitoring and tsunami forecasts」。 https://www.itu.int/hub/2022/06/submarine-cables-telecom-climate-monitoring-tsunami-forecasts (SMARTケーブル、リピーター、DARTブイ約70基・約30%停止、故障率約5%、ポルトガルの計画)
なおした ところ
更新履歴
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