1. ゆびの かずを かぞえて みよう
1. 「2本指」と「3本指」の数え方に落とし穴がある
1. 指の数 ── 前肢2本と3本、後肢はどちらも3本
フタユビは「ゆびが 2ほん」、ミユビは「ゆびが 3ぼん」という 名前です。では、あしの ゆびは ぜんぶ ちがうのでしょうか。
かぞえて みると、うしろあしは どちらも 3ぼんです[1][2]。ちがうのは まえあしだけで、フタユビは 2ほん、ミユビは 3ぼんです。
どちらの 手にも、大きく まがった かぎづめが あります。木の えだに ひっかけるのに、ぴったりです。
体は、フタユビの ほうが すこし 大きい ようです[4]。
名前だけ見ると、フタユビは「指が2本」、ミユビは「指が3本」の動物に思えます。ところが数えてみると、後ろ足の指はどちらも3本です[1][2]。
ちがうのは前足です。フタユビの前足の指は2本、ミユビは前足も後ろ足も3本です。日本語の事典にも、フタユビは前足に2本・後ろ足に3本の指があると書かれています[2]。
指の先には、どちらも大きく曲がった鉤づめがあり、木の枝にひっかける道具になっています[2]。大きさはフタユビのほうがやや大きく、体重は4〜8kg、ミユビの一種のノドチャミユビナマケモノは3.5〜5kgほどとされます[1][4]。
指の数のほかにも、2つのグループのちがいはあるのでしょうか。体の中をのぞくと、首の骨にも差が見つかります。
名称から「指が2本/3本」と誤解しやすいが、Choloepus は前肢2指・後肢3指、Bradypus は前後肢とも3指である[1][2]。すなわち後肢は共通で、差は前肢にある。いずれの指にも湾曲した大きな鉤爪があり、枝にかけて体を支えるのに使われる[2]。
体の大きさは、Choloepus が体長58〜70cm・体重4〜8kg、ノドチャミユビ(Bradypus variegatus)が体長約60cm・体重3.5〜5kg前後で、Choloepus がやや大きい[1][4]。ただし本稿のミユビの記述は、ノドチャミユビ中心の資料による。外見の差が前足の指に限られるなら、内部の構造にも差があるのかを、次に頸椎で確かめる。
2. くびの ほねの かずも ちがう
2. 首の骨の数は、2つのグループでちがう
2. 頸椎の数 ── Choloepus は5〜7個、Bradypus は8〜10個
くびの ほねは、ほとんどの ほにゅうるいで 7こです。人も、キリンも 7こです。
ところが ナマケモノは ちがいます。フタユビは 5〜7こ、ミユビは 8〜10こです。しゅるいに よって かずが ちがいます[3]。
ミユビの ふえた ぶんの ほねは、くびが のびたと いうより、むねの ほねが くびの ほうに 入って きたもの、という せつめいが あります[3]。
首の骨(頸椎)の数は、人もキリンも、ほとんどの哺乳類で7個です。ナマケモノはこの決まりから外れていて、しかも2つのグループで数がちがいます。
2010年の論文によると、フタユビはホフマンフタユビが5〜6個、リンネフタユビが7個です。ミユビは8〜10個で、種によって数がちがいます[3]。
ミユビの余分な首の骨は、肋骨を持たず、発生の途中の様子が他の哺乳類の胸の一番前の骨に似ているといいます。首が長く伸びたというより、胸の骨が首の側に入りこんだのではないか、という解釈です[3]。
体のつくりだけでなく、食べ物にもちがいがあります。
哺乳類の頸椎は通常7個だが、ナマケモノでは例外的である。Hautier ら(2010)によれば、Choloepus は5〜6個(C. hoffmanni)または7個(C. didactylus)、Bradypus は8〜10個と、種によって数が異なる[3]。資料によってはミユビを8〜9個とする表記もある。
ミユビの余分な尾側の頸椎は、従来は頸椎とされてきたが、発生上は他の哺乳類の最前部の胸椎と似た特徴を示す。そのため、首が伸びたのではなく胸椎が首側に取りこまれたと解釈される[3]。こうした体のつくりの差が、食性や活動量の差とどう関わるのかは、この資料からは分からない。次に、食べるものと活動量の差をみる。
3. なにを たべて いるの?
3. フタユビは小動物まで食べ、ミユビは植物を食べる
3. 食性 ── 小動物まで食べる Choloepus と、植物食の Bradypus
フタユビは、おもに 夜に うごきます。木の 葉の ほか、き の み、わかい め、ときには 小さな どうぶつまで たべるようです[1][5]。
ミユビは、しょくぶつを たべます。おもに 葉ですが、花や くだものも たべます。ノドチャミユビは、セクロピアという 木を おもに たべると いわれます[4]。
フタユビは 夜に 木に ぶらさがって、1日に 15〜18じかんも ねる そうです[5]。
フタユビは、夜に活動することが多く、木の葉を中心に、果実や新芽、木の実、樹皮、小さな脊椎動物まで食べるとされます[1]。動物園の資料でも、食べ物は木の葉や木の実、新芽などと説明され、1日のうち15〜18時間ほどは木にぶら下がって眠ります[5]。
これに対してミユビは植物を食べ、葉を中心に花や果実も食べます。ノドチャミユビナマケモノでは、主にセクロピアという木を食べると記されています[4]。ただし、これはミユビ5種のうち1種の記述で、ほかの種にそのままあてはまるかは分かりません。
小さな動物まで食べるといわれるフタユビと、植物を食べるミユビ。この差は、体の動かし方のちがいにもつながっているようです。
4. ミユビは もっと のんびり?
4. 野生で測ると、ミユビのほうがさらに省エネだった
4. 野外代謝率 ── ミユビはフタユビより31%低い
コスタリカの 森で、ナマケモノを しらべた けんきゅうが あります。ミユビ 10とう、フタユビ 12とうが ふくまれて います[6]。
その けっか、ミユビが つかう エネルギーは、フタユビより 31パーセント 少ない、と ほうこく されました[6]。ほかの どうぶつと くらべても、とても 少ない ほうだと いいます。
フタユビは よく うごき、ミユビは 木の 上で 食べて ねる ことが 多いと いわれます[6]。
コスタリカの野生のナマケモノを調べた研究が、ミユビとフタユビの暮らしぶりの差を数字で示しています。ミユビ10頭とフタユビ12頭を測ったところ、野外でのエネルギー消費(野外代謝率)は、ミユビのほうが31%低いと報告されました。冬眠中の動物を除くと、哺乳類で記録された最低の値だと伝えられています[6]。
ミユビは、1日わずか460キロジュール(およそ110キロカロリー)ほどしか使わない、と研究者は述べています[7]。
動き方もちがいます。ミユビは林冠で食べて眠ることが多く、ほとんど動きません。フタユビは、ずっとよく動き回ります[6]。研究者は、木の上で暮らす動物は環境に特化するほど、1日のエネルギー消費が小さくなると説明しています[7]。
では、これほどちがう2つのグループが、なぜ見た目はそっくりなのでしょうか。
Pauli ら(2016)の報告を伝えた記事によると、コスタリカの野生個体を対象に、Bradypus variegatus(10頭)の野外代謝率は Choloepus hoffmanni(12頭)より31%低く、冬眠していない哺乳類で記録された最低値とされる[6]。論文原文は確認しておらず、ここでは報道を通した数字として扱う。別の資料は、Bradypus の1日のエネルギー消費を約460kJ(約110kcal。460÷4.184≒110)と伝える[7]。
行動にも差があり、Bradypus は林冠で摂食と休息を繰り返してほとんど動かず、Choloepus はよく動き回る[6]。研究者は、樹上性の動物は特殊化が進むほど1日のエネルギー消費が小さいと述べ、Bradypus は Choloepus より環境に特化していると位置づける[7]。これだけちがう2属が、なぜ似た外見を持つのか。系統をさかのぼると、意外な答えがある。
5. そっくりなのは なぜ?
5. 別々に木の上で暮らすようになったのに、そっくり
5. 系統 ── 木の上の生活は独立に進化した
むかしの ナマケモノには、じめんで くらす なかまも いました。いまは いない、ミロドンの なかまなどです[8]。
古い ほねから とった DNAを しらべると、フタユビは ミロドンの なかまに 近く、ミユビは べつの グループの 中に 入る ことが 分かりました[8]。
つまり、木の 上の くらしは、べつべつの グループが、べつべつに 見つけた らしいのです。ただし、くわしい ところは まだ 研究の とちゅうです。
6. どうぶつえんで くらべて みよう
6. 見かけたら、指・動き・首を見比べる
6. 出口 ── 観察の視点と資料の読みどころ
写真や ずかんで ナマケモノを 見る とき、まず まえあしの ゆびを かぞえて みましょう。つぎに、うしろあしも かぞえます。どちらも 3ぼんの はずです。
どうぶつえんに いる ときは、よく うごくか、じっと して いるかも 見て みましょう。ナマケモノを 見られる どうぶつえんは かぎられます。行く まえに、どうぶつえんの ホームページで たしかめて ください。
家でできるのは、写真や図鑑で前足の指を数えることです。そのあと後ろ足も数えて、「2本指」「3本指」という名前との差を確かめてみてください。
動物園で見られるときは、前足の指や動き方を見比べます。食事を見られたら、何を食べているかも観察します。ナマケモノを飼育している動物園は限られるので、事前に園のホームページで確認してください。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
出典について:事典・動物園の資料・大学の広報・論文の解説を使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。海外の資料は英語のままのものがある。
- Wikipedia「Two-toed sloth」。https://en.wikipedia.org/wiki/Two-toed_sloth (指の数、食べ物、体の大きさについて。二次資料)
- コトバンク「ナマケモノ」。https://kotobank.jp/word/ナマケモノ (指の数と鉤づめについて)
- Hautier et al. 2010, PNAS(PMC)。https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2973901 (首の骨の数と、余分な骨の解釈について)
- Animal Diversity Web「Bradypus variegatus」。https://animaldiversity.org/accounts/Bradypus_variegatus/ (ノドチャミユビの食べ物と体の大きさについて)
- アドベンチャーワールド プレスリリース(2017)。https://kyodonewsprwire.jp/release/201710317416 (フタユビの食べ物と睡眠について)
- Science News「Three-toed sloths are even more slothful than two-toed sloths」。https://www.sciencenews.org/blog/wild-things/three-toed-sloths-are-even-more-slothful-two-toed-sloths (野外代謝率と動き方について。報道)
- UW-Madison News。https://news.wisc.edu/?p=28803 (1日のエネルギー消費と特殊化について)
- McMaster大学 古代DNAセンター「Ancient DNA suggests drastically different evolutionary history for modern and extinct sloths」。https://adna.mcmaster.ca/news/ancient-dna-suggests-drastically-different-evolutionary-history-for-modern-and-extinct-sloths (系統と、木の上の暮らしの独立した進化について)
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