1. ひとでは、かたい かいを どうやって あけるの?
1. ヒトデは、閉じた二枚貝をどうやって開けるのか
1. 閉じた二枚貝をどう開けるか ── 管足の牽引と、すき間への胃の挿入
ひとでの すきな たべものの ひとつは、にまいがいです。あさりや ムールがいの ように、からが ふたつ ある かいの ことです[2]。
かいは、からを ぎゅっと とじて みを まもります。ひとでの うでの うらがわには、管足と いう ちいさな あしが たくさん あります。管足は みずの ちからで うごいて、かいに ぴたっと くっつきます[3]。
そして、からの りょうがわを ひっぱって、すこしずつ ひらきます[3]。ほんの すこし ひらけば、もう じゅうぶんです。ヨーロッパの ひとでの はなしでは、1ミリの すきまでも、胃を いれられるそうです[3]。じょうぎの 1めもりぶんです。
すきまから いれるのは、あしでも はさみでも なくて、胃です。それは どういう ことでしょう。
ヒトデがよく食べるものの一つが、二枚貝です。事典には、ヒトデはほとんどが肉食で、動きの鈍い動物、とくに二枚貝を好む、と書かれています[2]。
貝は、殻をぴったり閉じれば身を守れそうです。ところがヒトデには、水の力で動く管足という小さな足が、腕の裏側にたくさんあります。管足で獲物にはりつき、二枚貝は殻の両側を引っぱって、少しずつ開けるとされます[3]。
開けると言っても、大きくこじ開ける必要はありません。ヨーロッパのマヒトデ類について、マリンライフ情報網(MarLIN)が紹介した記述では、1ミリのすき間があれば胃のひだを貝の中へ入れられます[3]。定規の1目盛りぶんです。ただし、すき間の大きさは種によって違うといわれ、これは一つの例です。
差し入れるのは、足やはさみではなく「胃」です。胃を外に出すとは、どういうことでしょうか。
二枚貝は殻を閉じれば守りに入れそうなのに、なぜヒトデの獲物になるのか。事典は、ヒトデがほとんど肉食で、動きの鈍い動物、とくに二枚貝を好む、とまとめている[2]。動きが鈍ければ逃げられず、殻を閉じる以外の防御は限られる、というのが背景だろう。ただし、この因果は事典の記述からの推測で、資料が明言しているわけではない。
開ける役を担うのは管足である。水の力で動く管足で獲物にはりつき、二枚貝では殻の両側を引いて少しずつ開ける、と英国の海洋生物情報網の整理にはある[3]。管足で引かれた貝が開くしくみの細部は、この資料の範囲では述べられていない。
ここで重要なのは、開く幅が小さくてよいことだ。同じ資料は、ヨーロッパのマヒトデ類では1mmのすき間でも胃のひだを入れるのに足りる、と述べる[3]。0.1mm程度という説もあるが出典が弱く、種や貝の大きさでも変わるため、数字は一例にとどめておく。
貝のすき間に入るのは、足でも口器でもなく胃である。では、胃を外に出すとはどういう仕組みなのか。
2. おなかの 胃を そとに だすって、ほんとう?
2. 胃を体の外に出して消化する ── ただし全部のヒトデではない
2. 体外消化 ── 胃を口から出して獲物を包む食べ方と、その限界
ほんとうです。ひとでの なかまには、胃を くちから おもてがわに ひっくりかえして、そとへ おしだす ものが います[2]。そとへ だした 胃で えものを つつんで、とかして、からだに とりこみます。からだの そとで しょうかするので、「たいがいしょうか」と いわれます。
だから、かいの なかみだけを たべる ことが できます。からの すきまから 胃だけを いれて、なかみを とかして たべるのです[1]。
おおきな えものは、すうじつから 1しゅうかん ほど かけて とかす ことも あるようです[1]。ごはんに、そんなに じかんが かかるのです。
でも、ぜんぶの ひとでが そうでは ありません。おおくの ひとでは、ふつうに くちで たべます[1]。
ヒトデの食事でいちばん不思議なのは、胃の使い方です。事典によれば、ヒトデには、胃を反転させて口から外へ押し出し、獲物を体の外で消化する「体外消化」を行うものが多いとされます[2]。
外に出した胃で獲物を包み、溶かして吸収します。京都大学白浜水族館の資料では、アカヒトデなど一部のヒトデがこれを行い、大きな獲物は数日から一週間ほどかけて消化することもあるようだ、と紹介されています。貝殻のすき間から胃だけを入れて、貝の中身だけを食べることもできます[1]。殻ごと飲みこまなくても中身を食べられる、ということです。
ここで注意したいのは、「ヒトデはみんな胃を出す」わけではないことです。同じ資料は、多くのヒトデはそのまま口で食べると書いています[1]。胃を出す食べ方は、ヒトデの食事の一つの型で、全部ではありません。
では、ヒトデは貝のほかに何を食べているのでしょうか。
貝の外から中身を食べるというしくみは、胃を口から反転させて外へ押し出す体外消化で成り立つ。事典は、ヒトデにはこの体外消化を行うものが多いとする[2]。外に出した胃で獲物を包んで溶かし、そのまま吸収する方式である。貝殻のすき間から胃だけを差し入れ、中身だけを食べることもできる[1]。
この方式には利点がある。口に入る大きさの獲物しか食べられないという制限が外れるからだ。京都大学白浜水族館の資料は、アカヒトデなどが大きな獲物を数日から一週間ほどかけて消化することがあるとする[1]。獲物を飲みこまずに、時間をかけて外で溶かしていくわけである。
一方で、限界もある。同じ資料は、多くのヒトデは体外消化せずに口で食べるとも述べている[1]。事典も「胃を反転して体外消化を行うものが多い」と書くにとどまり[2]、すべての種でそうだとは言っていない。「ヒトデは胃を出して食べる」という言い方は、一部または多くの種に当てはまる説明として読むのが正確だろう。
では、そもそもヒトデは何を食べているのか。貝だけが獲物なのか。
4. サンゴを たべる ひとでって、どんな ひとで?
4. オニヒトデは、サンゴを胃で包んで食べる
4. オニヒトデ ── サンゴの体外消化と、大量発生の記録
サンゴを たべる ひとでは、オニヒトデと いいます。おおきさは、ちょっけいで 30から 50センチ。うでが 14ほんから 18ほん あります[4]。
オニヒトデは、胃を からだの そとへ だして、サンゴを つつみこんで とかして たべます[4]。たべて いる さいちゅうの オニヒトデを ひっくりかえすと、そとに でた 胃が みえる そうです[4]。
オニヒトデは、たくさんの サンゴを たべます。あるしりょうでは、1ぴきが 1ねんに たべる サンゴは、おおきい ときで 6へいほうメートルほどだと みつもって います[5]。たたみに すると 3まいよりも ひろい ぶんです。これは「さいだい」の みつもりで、きせつや おおきさで かわります。
オニヒトデが たくさん ふえると、サンゴの うみは たいへんです。沖縄では、たくさん ふえた とき サンゴが おおきな ひがいを うけたと せつめいして います[6]。
では、「たべる がわ」が いなくなったら、うみは どうなるのでしょう。
ヒトデの食べ方の中で、いちばん規模が大きいのは、サンゴを食べるオニヒトデかもしれません。環境省の串本海域公園の解説では、オニヒトデは直径30〜50cm、腕は14〜18本です。胃を体の外に出し、サンゴを包みこむようにして消化吸収します。食事中の個体をひっくり返すと、外に出た胃が見えるそうです[4]。
食べるのは、石サンゴ類の生きた部分(ポリプ)です。ある資料は、1匹で1年に最大約6平方メートルのサンゴを食べるという見積もりを紹介しています。畳でいえば3〜4枚ぶんです。ただし「最大」の見積もりで、野外の測定では、大きな個体で夏は1日に数百平方センチメートル(はがき2〜3枚ぶん)、冬は1日に60平方センチメートルほどと、季節で大きく変わります[5]。
数が増えると影響は大きくなります。沖縄県は、過去のオニヒトデの大量発生でサンゴ礁が大きな被害を受けたと説明し、現在も駆除を続けています。平成13年(2001年)末からは、沖縄島周辺と慶良間諸島で再び大量発生が起きました[6]。
食べる側が増えすぎれば、食べられる側が減ります。では、食べる側がいなくなると、どうなるのでしょうか。
オニヒトデの食べ方は、体外消化の典型例として知られる。環境省の串本海域公園の解説によれば、直径30〜50cm、腕は14〜18本で、胃を体外に出してサンゴを包み込み、消化吸収する。食事中の個体を裏返すと、外に出た胃が見える[4]。腕の数は成体で最大21本とする資料もあり、数字には幅がある。
捕食量の見積もりも、条件つきで読む必要がある。英語版百科事典が引く推定では、1個体が1年に食べる生きたサンゴ礁は最大約6m²(約3.7畳)とされる。同じ項目が引く野外測定では、大きな個体(40cm以上)で、冬は1日に約61cm²、夏は1日に357〜478cm²と大きく季節差がある[5]。「最大約6m²」は別の見積もりによる年間の最大値で、季節別の野外測定とは条件が異なるため、単純には比べられない。
食べる対象は石サンゴ類のポリプ、つまり生きた部分である。サンゴの生きた部分が減れば、サンゴ礁そのものへの影響になる。沖縄県は、過去の大量発生でサンゴ礁が大きな被害を受けたこと、現在も駆除を続けていることを示し、平成13年末から沖縄島周辺と慶良間諸島で再び大量発生が起きたと記している[6]。なぜ大量発生が起きるのかは、本記事の資料では述べられていないので、ここでは扱わない。
サンゴを食べる側が増えれば、サンゴが減る。では逆に、食べる側のヒトデがいなくなると、岩場の生き物にはどんな変化が起きるのか。
5. ひとでが いなく なると、いわばの いきものは どうなるの?
5. ヒトデを取りのぞいたら、岩場の生き物が減った
5. 捕食者を取りのぞく実験 ── 食べる側が岩場の多様さを支える
ひとでが いなく なったら、いわばの いきものは ふえるでしょうか。それとも へるでしょうか。
むかし、ペインと いう がくしゃが、アメリカの ワシントンしゅうの いわばで たしかめました。ひとでを とりのぞいた ばしょと、そのままに した ばしょを くらべたのです[7]。
ひとでの いない ばしょでは、まず フジツボが いわを うめつくしました。しばらくして、ムールがいの なかまが ひろがり、ほかの いきものを おいだして しまいました[7]。いきものの しゅるいは、へりました。
ひとでが ほかの いきものを たべて いたので、いわばの いきものの しゅるいが たもたれて いたのです。たべる がわが いるから、いろいろな いきものが すめました。
1960年代、アメリカのペイン(Paine)は、ワシントン州の岩礁の海岸で実験をしました。一部の場所からヒトデ(Pisaster)を取りのぞき、隣の場所を、そのままにした比べる区画にしたのです[7]。
ヒトデがいない場所では、まずフジツボが岩の上を埋めて、ほかの多くの種を追い出しました。のちにイガイ(ムール貝の仲間)が広がり、フジツボも追いやりました。その結果、場所にいる生き物の種類は下がったと伝えられています[7]。数字は、二次資料の伝聞が中心で確かめにくいため、ここでは使いません。
ヒトデは貝やフジツボのような生き物を食べて、広がりすぎないよう抑えていました。食べる側がいたから、岩場に多くの種が住めたのです。こうした、生態系の顔ぶれに強い影響を与える生き物は、のちに「キーストーン種」という言葉で呼ばれました。
これは一つの海岸の実験で、すべての海のヒトデに当てはまるとは限りません。それでも、この実験では、ヒトデがいなくなった場所で、フジツボやイガイが広がり、ほかの種が減りました。
ヒトデの捕食が岩場の生き物の種類を保っている、という見方を実験で示したのが、1960年代にワシントン州の岩礁海岸で行われたペイン(Paine)の除去実験である。一部の区画からヒトデ(Pisaster)を取りのぞき、隣接する区画を対照として比べた[7]。
結果はこうだ。ヒトデのいない区画では、まずフジツボが岩の上を占め、ほかの多くの種を追い出した。数か月後には、カリフォルニアイガイがフジツボをも圧倒して広がった[7]。捕食者がいなくなると、競争に強い種が場所を独占し、種の多様さが下がる。ヒトデは、フジツボやイガイといった岩場の優勢な種が広がりすぎるのを食べて抑える役目を果たしていた、という解釈である。
こうした、群集全体の種の顔ぶれに強い影響を与える種を、のちに「キーストーン種」と呼ぶようになった。ただし、この実験の具体的な種数の変化(「15種から8種」など)は、二次資料の伝聞にとどまっており、本記事では数字を採らない。また実験は1つの海岸のもので、ほかの海のヒトデにそのまま当てはめられるとは限らない。
だから、オニヒトデのように「食べる側が増えすぎる」例と、Pisasterのように「食べる側がいなくなる」例は、対になっている。どちらも、ヒトデの食事が海の中の釣り合いと切り離せないことを示す。水族館や磯では、ヒトデの管足の動きを自分の目で確かめられる。
6. ひとでの ごはんを、じぶんの めで みるには?
6. ヒトデの食事を、自分の目で確かめるには
6. 食事の場面を確かめる ── 観察の道すじと、読む資料
いきものは、水族館で あんぜんに みられます。ひとでの うらがわを、ガラスごしに さがして みましょう。管足が たくさん うごいて いるのが わかるかも しれません。
うみの いわばで ひとでを みつけても、さわったり ひっくりかえしたり しないで、そっと みるだけに しましょう。いきものにも、あなたにも あぶない ことが あります。
ずかんで、ひとでが かいを たべる しゃしんや えを さがして、しくみを ことばで せつめいして みるのも たのしいです。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文の事実は、次の資料にもとづきます。英語の資料は、読めるところだけ参考にしています。
- 京都大学白浜水族館「ヒトデの中身」 https://www.seto.kyoto-u.ac.jp/shirahama_aqua/wp-content/uploads/2023/03/hitode-no-karada.pdf (食べ物と体外消化)
- コトバンク「ヒトデ」(日本大百科全書・世界大百科事典ほか) https://kotobank.jp/word/%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%87-120360 (肉食・二枚貝・種数)
- Common starfish (MarLIN, Budd 2008) と CIMI「How sea stars feed」 https://cimi.org/blog/how-sea-stars-feed/ (管足で貝を開ける・1mmのすき間)
- 環境省 串本海域公園「オニヒトデ」 https://www.env.go.jp/nature/nco/kinki/kushimoto/JP/topics/topics200302o.html (大きさ・食べ方)
- Wikipedia「Crown-of-thorns starfish」 https://en.wikipedia.org/wiki/Crown-of-thorns_starfish (サンゴを食べる量の見積もり。二次資料)
- 沖縄県「オニヒトデのはなし」 https://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/shizen/hogo/onihitode_no_hanasi.html (大量発生と駆除)
- JSTOR Daily「How the keystone species concept transformed ecology」 https://daily.jstor.org/how-the-keystone-species-concept-transformed-ecology (ペインの除去実験の紹介)
なおした ところ
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