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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

クジラの ひれの 中には、手の 形の ほねが はいって いるの?

クジラのひれの中には何の骨がある? ── 首・尾・骨盤・化石に見る、陸から海への変化

クジラの胸びれの骨は、陸の動物の何を受け継いだのか ── 首・尾・骨盤・化石に読む骨格の作り変え

分野:生きもの

クジラの ひれの 中を のぞくと、人の うでや 手と おなじ しゅるいの ほねが はいって います[1]。しかも、ゆびの ほねまで あるのです。

どうして、うみに すむ どうぶつの ひれに、手の ほねが あるのでしょう。クジラの ほねを、ひれ、くび、おびれ、うしろあしの じゅんに 見ると、りくから うみへ うつる とちゅうで、なにを のこし、なにを つくりかえ、なにを なくしたのかが わかります。

みんなが ふだん 見る 大きな クジラや イルカの すがたの 中に、りくの どうぶつの なごりが かくれて います。

クジラの胸びれの中には、人の腕や手と同じ種類の骨が入っています[1]。海で泳ぐための大きなひれなのに、骨組みをよく見ると、上腕、前腕の2本、手首、手、指の骨が並んでいるのです。

では、泳ぐために作り変えられた体のなかで、陸の動物だったころの骨は、ほかにどこに、どんな形で残っているのでしょうか。ひれ、首、尾びれ、骨盤、そして足のあるクジラの化石を、骨の部位ごとに比べると、陸のなごりと、海のための作り変えが、骨の中に両方入っていることが分かります。

クジラの胸びれは、一枚の板のように見える。ところが骨は、ヒトの腕と同じ種類、つまり上腕骨、前腕の2本の骨、手首・手・指の骨でできている[1]。海に適応しきったはずの体に、なぜ陸の動物の骨組みが残るのか。

首の骨(頸椎)、尾びれ、骨盤、そして足をもつクジラの化石を、論文や博物館の解説で部位ごとに比べると、骨格には「そのまま残したもの」「作り変えたもの」「小さく残ったもの」が混在していることが分かる。この記事は、その区別を骨ごとに整理する。

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1. ひれの 中には、なにが はいって いるの?

1. ひれをのぞくと、腕と手の骨が出てくる

1. 胸びれの骨は腕と同じ種類 ── 5本の指と、増えた指の骨

クジラの ひれは、ぱっと 見ると ただの いたのようです。でも 中の ほねは、人の うでと おなじ しゅるいです[1]。うでの つけねに 太い ほねが 1本、その さきに 細い ほねが 2本。そのさきには、手くびと 手と ゆびの ほねが つづきます。

ゆびは 5本 あります。ひれから ゆびの あいだの にくを とりのぞいた しゃしんでは、5本ゆびの 手が のこって いました[2]。ミトンの 手ぶくろを 思いうかべて ください。ミトンの 中にも、ゆびは 5本 あります。ただし 本当の ひれは、ミトンより ずっと 長くて ひらたい かたちを して います。

ゆびの ほねは、ふえて いる クジラも います。おおくの ほにゅうるいは、1本の ゆびに ほねが 2〜3こ です。クジラの なかまには、6こ いじょうに なる しゅるいも います[3]。

ひれの 中が 手なら、からだの ほかの ぶぶんは、どう なって いるのでしょう。つぎは、くびを 見て みましょう。

クジラ類の胸びれの骨は、人の腕と同じ種類です。上腕の骨が1本、前腕の骨が2本、その先に手首の骨、手の骨、指の骨が続きます[1]。ひれの外側からは一枚の板に見えても、中には腕と手の設計が入っています。

指は5本あります。デンマークの博物館の研究者が、クジラのひれから指の間の肉を取りのぞいた写真を紹介した記事では、5本指の手がそのまま現れています[2]。ミトンの手袋を思い浮かべると近いでしょう。ミトンの中にも指は5本あって、外から見るとひとつの袋です。ただし本当のひれは、ミトンよりずっと細長く、骨が長くのびています。

多くの哺乳類は、1本の指に指の骨(指節骨)が2〜3個ずつです。クジラ類では、指が長くなり、1本の指の骨が6個以上に増えた種もあります。これを過指節といいます[3]。指の数は変わらず、1本ずつの骨だけが増えている点が目を引きます。

ひれの中が腕と手なら、体のほかの部分も、陸の動物の骨を作り変えたものなのでしょうか。つぎは首の骨を見てみます。

胸びれの骨は、ヒトの腕と同じ種類の骨からできている。アメリカ自然史博物館の解説は、上腕骨1本、前腕の2本の骨、手首・手・指の骨があり、指が長くのびて骨が増える場合があると述べる[1]。外見は一枚のひれでも、骨格は腕と手の構造を保っている。指の数も基本は5本で、デンマークの研究者が公開した解剖写真の報道では、ひれから指の間の組織を取り除くと5本指の手が現れる[2]。ただしこれは報道に載った解剖例であり、一次の論文ではない。

この対応は、同じ祖先から受けついだ骨組みが、別の使い道に合わせて作り変えられた例として読める(相同)。ヒトの腕は物をつかみ、クジラのひれは水を押すのに、骨の種類と並び順は同じだ。指の骨が増えている種もあり、ひれは長く細い形をしている。その形が泳ぎの上でどう役立つのかは、扱った資料には書かれておらず、推測の域を出ない。

変わったのは指の数ではなく、1本あたりの骨の数だ。多くの哺乳類は各指2〜3個の指節骨をもつが、クジラ類では4〜5個から、極端な過指節の種では6個以上になる[3]。ヒレナガゴンドウのように、1本の指で10個をこえるとされる種もあり、指の骨の数には大きな幅がある。

では、腕と手の設計が残っているなら、ほかの部位はどうか。首の骨で、同じ問いを立てる。

2. くびの ほねは、なんこ あるの?

2. 首の骨は7個のまま、短くつまっている

2. 頸椎は7個のまま短く平たくなった ── 癒合の程度は種で違う

クジラや イルカを 見ると、くびが ほとんど 見えません。ほねは、すくなく なったので しょうか。じつは、くびの ほねは ほかの ほにゅうるいと おなじ 7こ です[4]。人も ほにゅうるいですから、くびの ほねは 7こ だと いわれて います。

ちがうのは、1こ ずつの かたちです。おおくの クジラの くびの ほねは、みじかくて ひらたく、ほとんど 動かせません。いちばん 上の 1ばんめと 2ばんめの ほねは くっついて、ひとつの ほねのように なって います[4]。ぎゅっと かためて、およいで いる とき あたまが ぐらぐら しないように して いる のかも しれません。

ところが、シロイルカの ように、くびを わりと じゆうに 動かせる なかまも います[4]。ほねの かず は おなじでも、かたまり ぐあいは しゅるいに よって ちがうのです。

では、およぐ ときに いちばん はたらく おびれは、どんな ほねで できて いるのでしょう。

首が見えないクジラやイルカは、首の骨も少ないのでしょうか。小笠原海洋センターの解説では、クジラ類の頸椎は、ほかの哺乳類と同じ7個です[4]。人の首の骨も7個といわれます。

違うのは、骨1個ずつの形です。多くのクジラ類では、頸椎が体の長さに比べて短く平たくなり、ほとんど動かせません。いちばん上の第1頸椎と第2頸椎は、くっついて1つの骨のようになっています。種によっては第3頸椎までくっつきます[4]。首を固めることで、泳いでいる間に頭が左右にぶれにくくなるのではないか、と考えることもできますが、この資料にその理由までは書かれていません。

一方、シロイルカ(ベルーガ)やカワイルカの仲間は、癒合があまり進まず、首を比較的自由に動かせるとされています[4]。骨の数は同じでも、固まり方は種によって違います。

首の骨は、数を保ったまま形を変えていました。では、泳ぎの力を出す尾びれの中は、どうなっているのでしょうか。

クジラ類の頸椎は7個で、ほかの哺乳類と同数だ。しかし多くの種では、体の長さに比べて短く平たく、ほとんど動かせない。第1頸椎(環椎)と第2頸椎(軸椎)は癒合して1つの骨のようになり、種によっては第3頸椎まで癒合する[4]。つまり、数は保存され、個々の骨の形と可動性が変わっている。首を固めることが泳ぎの安定に役立つ、という解釈はありうるが、この資料はその因果までは述べておらず、推測の段階だ。

癒合の程度は一様ではない。シロイルカやカワイルカの仲間は癒合が進まず、首を比較的自由に動かせる[4]。同じ7個でも、固まる程度は種ごとに違い、首の動かしやすさにも差がある。

数は同じで形が変わる、という変化は、推進力を出す尾びれではどう現れるのか。

3. おびれの 中に、ほねは あるの?

3. 尾びれの葉の中に、骨はない

3. 尾びれの葉の中身 ── 尾椎と結合組織、筋肉もない葉

クジラが うみで およぐ とき、いちばん はたらく ところは、おびれです。大きな 力を 出す ところ だから、ほねが ぎっしり はいって いると 思いませんか。

ところが、おびれの ひらたい ぶぶんには、ほねが ありません[5]。ささえて いる のは、しっぽの ほねと、かわに つつまれた、とても じょうぶな ひものような ぶぶんです[5]。ひらたい ぶぶんの 中には、きんにくも ありません。

しっぽの ほねは、おびれの つけねの ほうまで つづきます。そこから さきは、ほねの かわりに、じょうぶな ひもが ぎっしり つまって います。ほねが ない のに、しっかり した かたちを たもって いるのです。

ひれには 手の ほねが あり、おびれには ほねが ない。では、うしろあしは、どこへ いったので しょう。

泳ぐときに大きな力を出すのは、尾びれです。それなら、中には太い骨が通っていそうですが、2024年に発表されたシロイルカの胚の研究では、尾びれの平たい部分(葉)は、尾の椎骨と、皮膚におおわれた丈夫な結合組織で支えられている、と報告されています[5]。葉の中には骨がなく、筋肉もありません。

結合組織は、コラーゲンのせんいが集まった、じょうぶなひものような組織です。尾の骨は尾びれの付け根までで、そこから先の葉を、このひもの束が形づくっています。尾びれは、前に進む力と、向きを変える舵の役目を兼ねています[5]。

ここで注意したいのは、「尾びれに骨がない」のは、平たい葉の部分だけだという点です。尾の骨は、葉に入る手前まで続いています。

胸びれには手の骨が残り、尾びれには骨がありません。もう一つ、体の後ろには、陸の動物が持っていたものがあるはずです。後ろあしはどこへ行ったのでしょうか。

尾びれ(フルーク)の葉の部分に骨はない。Developmental Dynamics 掲載のシロイルカ胚の研究(2024)は、左右対称の尾びれが、尾椎と、皮膚に包まれた密な結合組織で支えられており、葉の内部には筋肉もないと述べる[5]。尾びれは推進と舵取りを兼ねる。葉の形は、骨ではなく結合組織の束で作られている。

ただし条件がある。骨がないのは葉の部分に限り、付け根の尾椎は葉に入る手前まで続く。また調べた対象はシロイルカの胚であり、この記述をすべてのクジラ類にそのまま当てはめることはできない。

手の骨は残り、尾びれの骨は消えた。では体の後ろ、後肢の骨はどうなったのか。

4. うしろあしは、どこへ いったの?

4. 後ろあしはなくなり、骨盤の骨が筋肉に残った

4. 後肢の消失と痕跡的な骨盤 ── SHH遺伝子の停止と、骨盤骨の役目

いまの クジラや イルカには、うしろあしが ありません。でも、からだの 中の わきばらの 筋肉きんにくに、ちいさな ほねが うまって います[6]。むかし、うしろあしを ささえて いた ほねの なごりです。

この ほねは、からだの 大きさに くらべると、とても ちいさい ものです。それでも、なにも して いない わけでは ありません。ある けんきゅうでは、オスの おちんちん(陰茎いんけい)を 動かす 筋肉きんにくが、この ほねに くっつくと つたえられて います[7]。からだの 大きさに くらべて、精巣せいそう(こどもの もとを つくる ぶぶん)が 大きい クジラほど、ほねも 大きい、と いう けっかも あります[7]。

なぜ うしろあしが なくなったのかに ついても、けんきゅうが あります。おなかの 中の あかちゃんの ころ、あしを つくる ときに はたらく ある いでんしが、クジラでは とちゅうで とまって いる、と いう ものです[3]。ただし、これが りゆうの ぜんぶだと きまった わけでは ありません。ひとつの ゆうりょくな てがかりです。

それでは、うしろあしが あった ころの クジラは、どんな すがたを して いたのでしょう。

現代のクジラ類に後ろあしはありません。ところが、脇腹の筋肉の中に、退化した骨が埋まっています[6]。陸にいたころの後ろあしを支えていた骨盤のなごりです。

この骨は、体の大きさに比べてとても小さいものです。それでも、役目はあります。2014年の研究を紹介した大学の記事によると、オスの陰茎(動きの大きな生殖器)を動かす筋肉が、この骨盤の骨に直接つきます。そして、体の大きさに対して精巣が大きい種ほど、骨盤の骨も体に対して大きい、という結果が出ています[7]。足を支える骨だったものが、別の働きに使われるようになった、という見方です。

なぜ後ろあしそのものがなくなったのかについては、遺伝子の研究があります。後ろあしの形づくりに関わるSHHという遺伝子の働きが、クジラ類の胚では、後肢の芽の中で止まっていることが、後ろあしの退化の一因と考えられています[3]。「一因」であって、これだけで説明できると決まったわけではありません。

では、後ろあしがまだあったころのクジラ類は、どんな姿をしていたのでしょうか。

現生のクジラ類に後肢はないが、退化した骨が脇腹の筋肉に埋まって残る[6]。体に比べて小さいこの骨盤骨は、足を支える役目を失ったあと、別の役目を担っている。USC の解説が紹介する2014年の研究によれば、オスの陰茎を動かす筋肉が骨盤骨に直接つき、体サイズに対する精巣の相対サイズが大きい種ほど、体サイズに対する骨盤骨の相対サイズも大きい[7]。相関であり、因果の証明ではない点に注意が要る。

後肢そのものが消えた仕組みについては、BMC Genomics の2022年の論文が、後肢芽でのSHH遺伝子の発現が止まること(ZRSと呼ばれる調節領域の活性が関わるとされる)を、後肢退化の一因とする[3]。原因の断定ではなく、複数ある要因のひとつという位置づけだ。

この論文の題名には、前肢の「ひれ化」と後肢の消失の両方が入っている。同じクジラ類の中で、前肢は形を変えて残り、後肢は小さな骨盤だけを残して消えた。ひれの中の手の骨と、筋肉に埋もれた骨盤が、同じ体の中で対になって残っていることになる。

痕跡的な骨盤と、止まった遺伝子の働き。この結果から、後肢が実際に使われていた時代の化石が見つかっているのか、という問いが出てくる。

5. あしの ある クジラは、いたの?

5. 足のあるクジラの化石 ── 歩ける足から、泳ぎに使えない足まで

5. パキケトゥスからバシロサウルスまで ── 約5000万〜4000万年前の後肢の違い

クジラの なかまは、むかし、陸りくの どうぶつから うまれた、と かんがえられて います[8]。やく 5000万ねん まえごろ(しりょうに よって はばが あります)には、陸りくと 水の りょうほうで つかえる あしを もつ アンブロケタスが いました[6]。

ウシや シカの なかまに ちかい どうぶつから、やく 4900万ねん まえごろに わかれた らしいと、いわれて います[8]。いちばん ふるい なかまの ひとつ、パキケトゥスは、おもに 陸りくで くらして いた、と かんがえられて います[6]。

それより あとの、やく 4260万ねん まえの ペレゴセタスは、うしろあしが まえあしより それほど みじかくなく、水かきの ある あしと、小さな ひづめも もって いました。およぐ ことも、陸りくを あるく ことも できた、と かんがえられて います[10]。ペルーの 海ぞいで 2011ねんに 見つかった ものです[9]。

さらに あとの、やく 4000万ねん まえの バシロサウルスは、すっかり 水の 中の くらしで、うしろあしは、およぐのに つかえない ほど ちいさく なって いました[6]。

ペレゴセタスから バシロサウルスまでは、数百万ねんほどです。ちがう しゅるいどうし なので、そのあいだに 1つの 動物の あしが かわった とは いえません。それでも、あるける あしから、およぐのにも つかえない あしまで、ひらきが ある ことは わかります。

では、後ろあしのあるクジラ類は、本当にいたのでしょうか。約5000万年前ごろ(資料により幅があります)のアンブロケタスは、陸と水の両方で使える後ろあしを持っていました[6]。

クジラ類は、約4900万年前ごろ、陸にすむ偶蹄類(ウシやシカの仲間)か、それに近い動物から進化したと考えられています[8]。最古級のパキケトゥスは、おもに陸上で暮らしていたとされます[6]。

それより新しいのが、ペルー南部の海岸で2011年に出土したペレゴセタスです。約4260万年前のもので、後ろあしが前あしよりそれほど短くありませんでした。膝のお皿(膝蓋骨)や足首の小さな骨、小さなひづめを示す骨が残り、足には水かきがあり、泳ぎも陸上の歩行もできたと推測されています[9][10]。体長は約4m(CNN)、3m未満(キール大学)と、報告によって違います。

さらに新しい、約4000万年前の完全な水生のクジラ類バシロサウルスでは、後ろあしがとても小さくなり、泳ぐ役には立たなくなっていました[6]。ペレゴセタスからバシロサウルスまでは、約260万年ほどです。別々の種どうしなので、1つの種の足が変わったとは言えません。それでも、歩ける足を持つ種と、泳ぎにも使えない小さな足の種が、数百万年以内に並んで見つかっていることは、数字から読み取れます。

骨は、過去の暮らし方の手がかりです。その骨組みの名残は、自分の体でも少し確かめられます。

Hooper Museum の整理では、約5000万年前ごろ(資料で47〜50百万年前と幅がある)のアンブロケタスは、陸と水の両方で使える後肢をもっていた[6]。クジラ類が偶蹄類か、その近縁の動物から進化したのは約4900万年前ごろと考えられ[8]、最古級のパキケトゥスは陸上生活が主だったとされる[6]。

それより新しい約4260万年前のペレゴセタス・パシフィカスが、次の手がかりだ。ペルー南岸で2011年に出土し、後肢が前肢よりそれほど短くない。膝蓋骨や足首の小さな骨、小さなひづめを示す節骨が残り、後ろ足の骨には靭帯や腱がつく隆起があって、水かきの存在を示す。尾の骨にはビーバーのような泳ぎを助けた特徴があり、陸も歩けたと考えられる[9][10]。体長は約4m(CNN)と3m未満(Keele 大学)と報告が割れている。

さらに新しい約4000万年前の完全に水生のバシロサウルスでは、後肢が泳ぎに使えないほど小さくなっていた[6]。ペレゴセタスとバシロサウルスの年代差は、約4260万年前と約4000万年前で、約260万年になる(年代には幅があるので目安だ)。種が別なので、1つの系統で後肢が縮んだ速さを示す数字ではない。それでも、泳ぎにも歩行にも使える後肢の種と、泳ぎにも使えないほど小さい種が、このくらいの時間幅の中に並ぶ。この比較から分かるのは、異なる後肢をもつ種がこの時間幅に見つかっていることまでだ。

ここで扱った化石は、およそ5000万〜4000万年前の、約1000万年の幅におさまる。

骨は、ひれ・首・尾・骨盤・足の化石と、部位ごとに違う作り変えを記録している。年代と後肢の特徴を並べて比べる読み方は、次の章の表づくりで試せる。

6. てと くびを さわって、ほねを さがして みよう

6. 自分の手と首で試し、標本の骨を探す

6. 手と首で確かめ、標本や論文で骨を比べる

まず、じぶんの 手の こうを さわって みましょう。ゆびの ねもとから てくびの ほうまで、ほねの すじが のびて います。この ほねが、クジラの ひれの 中にも 入って います。ゆびを いっぽん ずつ 動かして、ひれの ミトンの 中を そうぞうして みて ください。

つぎに、くびを ゆっくり まわして みます。クジラの くびの ほねも おなじ 7こですが、おおくの クジラでは ほとんど 動かない ように くっついて います(シロイルカの ように 動かせる なかまも います)。まわせる 人は ふつう、1こずつ 動く ほねの おかげです。むりに 大きく 回さないで ください。

はくぶつかんや すいぞくかんで ほねの ひょうほんを 見る ときは、ひれの 中の ゆびと、おびれの ほねが どこまで あるかを さがして みましょう。

まず、自分の手の甲を触ってみましょう。指の付け根から手首のほうへ、骨の筋がのびているのが分かります。この骨が、クジラのひれの中にも入っています。指を1本ずつ動かしながら、ひれの中のミトンの形を想像してみてください。

次に、首をゆっくり回してみます。首の骨の数は人もクジラも7個ですが、多くのクジラはほとんど動かないように固まっていて、人は1個ずつ動きます。無理に大きく回さず、痛くない範囲で試してください。

博物館や水族館でクジラやイルカの骨格標本を見る機会があれば、ひれの中の指の骨、尾びれのあたりで尾の骨が終わる位置、脇腹の小さな骨盤の3か所を探してみましょう。

新しい化石が見つかると、この年代と足の長さの並びも、書きかわるかもしれません。ニュースで足のあるクジラの化石を見かけたら、年代と足の長さを、この記事の数字に1行ずつ足していくと、自分だけの表ができます。

自分の体で確かめられることがある。手の甲を触って指の骨の筋を探し、ひれの骨格と対応させる。首をゆっくり動かし、7個の骨が1つずつ動く人の首と、癒合して固まった多くのクジラの首を比べる。無理のない範囲で行う。

  • 博物館や水族館の骨格標本で、胸びれの指の骨、尾の骨が終わる位置、脇腹の骨盤骨の3か所を探す[1][6]。
  • 第5章の年代と後肢の説明を使い、アンブロケタス・ペレゴセタス・バシロサウルスの後肢の特徴を年代順に表にして、並びから何が読み取れるかを自分で考える。
  • BMC Genomics(2022)で、過指節の種ごとの数値と SHH 遺伝子の記述を確かめ、検索要約の数字(ヒレナガゴンドウなど)と見比べる[3]。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:博物館の解説、大学の記事、論文の要旨、水族館・研究施設の解説、報道を突き合わせて使った。何に使ったかは、それぞれの項目の最後に書いている。

  1. AMNH(アメリカ自然史博物館)の投稿「cetacean flippers」. https://tumblr.amnh.org/post/50929169013 (ひれの骨がヒトの腕と同じ種類であることについて)
  2. ナゾロジー「クジラのヒレの中の5本指」. https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/96560 (解剖写真の報道。5本指が残る例について)
  3. BMC Genomics (2022) Evolutionary genetics of flipper forelimb and hindlimb loss in cetaceans. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9719152 (指の骨が増える過指節と、後肢の退化に関わる遺伝子の働きについて)
  4. 小笠原海洋センター「イルカの骨を眺める③ 首の骨」. https://bonin-ocean.net/archives/13858 (首の骨の数と、癒合の程度の違いについて)
  5. Developmental Dynamics (2024) シロイルカ胚の尾びれの研究. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11656686 (尾びれの葉に骨と筋肉がなく、結合組織で支えられることについて)
  6. Hooper Museum, Carleton University "Ancient Cetaceans". https://hoopermuseum.carleton.ca/cetaceans/ancient.htm (脇腹の退化した骨と、古いクジラ類の後ろあしの変化について)
  7. USC Dornsife「Whale mating in the hips」(2014). https://dornsife.usc.edu/news/stories/whale-mating-in-the-hips/ (骨盤の骨に筋肉がつくことと、骨盤の大きさの違いについて)
  8. Discover Magazine "Whales from so humble a beginning". https://discovermagazine.com/planet-earth/whales-from-so-humble-a-beginning (クジラ類が陸の偶蹄類の近縁から進化したことについて)
  9. CNN.co.jp「4本足のクジラの化石」. https://www.cnn.co.jp/special/biodiversity/35135319.html (ペレゴセタスの化石の骨と体長について)
  10. Keele University news (2019) "Four-legged whales". https://www.keele.ac.uk/about/news/2019/april/four-legged-whales/ancient.php (ペレゴセタスの後ろあしと水かき、体長について)

なおした ところ

更新履歴

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