1. オオカミは、どんな ところに いるの?
1. 森にも凍原にも、同じオオカミがいる
1. ツンドラから砂漠まで:ハイイロオオカミの生息環境の幅
オオカミと いうと、ふかい 森を あるく すがたを おもいうかべる 人が おおいかも しれません。
でも、しらべて みると、オオカミが いるのは 森だけでは ありません。湿地にも、くさの はらにも、北極に ちかい こおった 大ちにも、さばくにも、山の いわの ところにも います[1]。
むかしは、きたの 地きゅうの ひろい はんいに いたと されて います[2]。いまは、きた アメリカと ユーラシアの かぎられた ところに のこって います。
さばくに いる オオカミは、どんな くらしを して いるのでしょう。
森のイメージより、ずっと幅が広い
オオカミと聞くと、深い森を思いうかべる人が多いかもしれません。ところが、ある概説が挙げるハイイロオオカミの生息環境には、森林のほか、湿地、低木の茂る土地、北極のツンドラを含む草原、牧草地、砂漠、山の岩場までが入っています[1]。
もともとの分布も、北半球の広い範囲だったとされます[2]。今は、北アメリカとユーラシアの限られた地域に残っています。この資料には、南の端の緯度が誤記らしい数字で書かれていたので、この記事では数字を使わず「北半球の広い範囲」と書きます。
では、いちばん厳しそうな場所では
森や草原は想像しやすくても、砂漠で暮らすオオカミは想像しにくいはずです。そこで次は、食べ物の少ない場所のオオカミを見ます。
2. さばくや 高い 山でも くらせるの?
2. 砂漠と高山で、オオカミは何を食べているのか
2. 食べ物の少ない砂漠と高山:アラビアオオカミとエチオピアオオカミ
アラビアオオカミは、アラビアはんとうの かわいた さばくで くらして います[3]。たべものが すくない きびしい ところに、あわせて くらして いるのです。
こんどは、山です。エチオピアオオカミは、エチオピアの 標高3000メートルから 4400メートルの たかい ところに います[4]。これは、ハイイロオオカミとは べつの しゅるいの オオカミです。
この オオカミが いちばん よく たべるのは、ネズミの なかまです。えものの 100の うち 96ちかくが ネズミの なかまだった、という しらべが あります。
では、えさの おおさで、むれの くらしは どう かわるのでしょう。
砂漠のオオカミ
アラビア半島などの乾燥地には、アラビアオオカミがいます。2025年の論文は、このオオカミを、植物や獲物が少ない砂漠のような厳しい環境に適応して暮らすものとして紹介しています。その地域での保全の状況は「危急」とされています[3]。
標高3000mを超える山のオオカミ
エチオピアの高地には、エチオピアオオカミがいます。ハイイロオオカミとは別の種で、標高3000〜4400mの草原や低木地に暮らします。主な獲物はネズミの仲間で、調べられた獲物のうち95.8%を占めたという報告があります[4]。最も大きな集団はバレ山地国立公園にいて、1995年の資料では120〜160頭ほどとされています。
大きなシカやヒツジを追うイメージとは違い、このオオカミは小さな獲物を専門にしているわけです。獲物の種類と量は、場所によってこれほど違います。それなら、群れが必要とする土地の広さも違うはずです。
砂漠の例として、アラビア半島と南レバントの乾燥地に暮らすアラビアオオカミがいる。2025年の論文は、生産性の低い砂漠のような厳しい環境に適応した存在としてこれを扱い、地域の保全状況を「危急(Vulnerable)」としている[3]。
高山の例はエチオピアオオカミで、ハイイロオオカミとは別種である。エチオピアの数か所の山地、標高3000〜4400mの草原や低木地に暮らす。獲物の95.8%がネズミ類という調査があり、群れで大型獣を追うオオカミの像とは食べ物が大きく違う。最大の集団はバレ山地国立公園にいて、1995年の資料では120〜160頭とされる[4]。
環境が変われば獲物の種類も量も変わる。では、その差は群れが使う土地の広さに、どのくらい現れるのか。
3. なわばりは、どれくらい ちがうの?
3. 縄張りの広さは、場所によって約190倍ちがう例がある
3. 縄張りの面積は記録例どうしで約190倍:場所による違い
オオカミの むれは、じぶんたちの なわばりを もって います。その ひろさは、ばしょに よって、ぜんぜん ちがいます。
アメリカの ミネソタで しらべられた ちいさな むれは、33へいほうキロメートルほどでした。アラスカの 10とうの むれは、6272へいほうキロメートルほどでした[1]。この 2つは、きろくされた れいの なかで、ちいさい ほうと おおきい ほうです。6272を 33で わると、やく 190ばいです。
33は、いっぺんが 5.7キロメートルの しかくと おなじ ひろさです。その しかくの いっぺんを あるくと、おとなで 1じかん ちょっとです。6272は、いっぺんが 79キロメートルの しかくです。ずっと あるいても、1日 かかる くらいです。
この ちがいには、えさの おおさも かんけい して いると いわれて います。
えさが たくさん ある ところは せまくても くらせて、すくない ところは ひろく あるきまわる ひつようが ある、と かんがえられて います。
33km²と約6,272km²
群れの縄張りの広さは、地域や生息地によって大きく違い、獲物の量もその条件の一つとされます。ある概説には、ミネソタの小さな群れの縄張りが約33km²、アラスカの10頭の群れでは約6,272km²と書かれています[1]。これは記録された例の中の小さい方と大きい方で、6,272÷33を計算すると約190倍です。
正方形にたとえてみます。33km²は、一辺が約5.7kmの正方形です。時速4kmで歩くと、一辺をおよそ1.4時間で歩ける広さです。6,272km²は一辺が約79kmで、同じ速さだと端から端まで歩くのに約20時間かかります。
資料によって数字は違う
別の資料は、縄張りを130〜13,000km²、1つの群れは2〜36頭で多くは5〜9頭としています[2]。下限が33と130で食いちがうのは、調べた地域や群れの違いが関係している可能性があります。こちらも最大と最小で約100倍の差があり、「場所によって広さが大きく変わる」という点は、どちらの資料でも同じです。
ただ、どんなに広く使えても、そこに人が多く住んでいれば話は別です。人の多い場所に、オオカミは戻れるのでしょうか。
縄張りの面積は、地域や生息地で大きく異なり、獲物の量はその条件の一つとされる。ミネソタの小さな群れは約33km²、アラスカの10頭の群れは約6,272km²と記録され[1]、6,272÷33≒190で、この二つの例どうしでは約190倍の差がある。33km²を正方形とみなせば一辺は約5.7km、6,272km²なら約79kmで、時速4kmで歩き通した場合の端から端までは、それぞれ約1.4時間と約20時間になる。実際の縄張りは正方形ではないので、あくまで大きさを実感するための換算である。
別の資料は、群れの縄張りを130〜13,000km²(最大と最小で約100倍)、群れの頭数を2〜36頭(多くは5〜9頭)とし、生息地と獲物の量によって変わると述べる[2]。下限が33km²と130km²で食い違うが、調査地や群れの違いが関係している可能性があり、どちらかが誤りだとはいえない。2つの出典は、縄張りの広さが場所によって大きく違う点では一致している。
ただし、縄張りを広く使えるのは、人の暮らしと衝突しない土地があってこそである。人の多い場所では、オオカミはどうなるのか。
4. 人が おおい ところにも もどって きたの?
4. 人の多いヨーロッパに、オオカミは戻ってきたのか
4. 人口密度の高いヨーロッパへの回復:2014年のScience論文
ヨーロッパは、人が たくさん くらして いる ところです。ここに、オオカミが もどって きて います。
2014ねんに、26の 国の 76人の せんもんかが しらべた けっかが、「サイエンス」という ざっしに のりました[5]。オオカミ・クマ・オオヤマネコ・クズリの 4しゅるいの うち 1しゅるいでも いる ところが、ヨーロッパの 3ぶんの 1ほどの ひろさに なった、という ないようです。
そのとき、オオカミは 12000とうほど いました。
もどって きた どうぶつたちは、人が おおく、道ろで わけられた ところにも いました。
2014年の調査結果
2014年、26か国の専門家76人による研究が科学雑誌「サイエンス」に載りました。ヨーロッパでは、オオカミ、ヒグマ、オオヤマネコ、クズリの4種のうち少なくとも1種がいる地域が、大陸の約3分の1の面積に広がっている、という内容です[5]。オオカミは約12,000頭と見積もられました。この数は2014年時点のもので、今の数ではありません。
人のすぐそばにも
おもしろいのは、戻ってきた動物たちが、人口密度の高い地域や、道路などで人の手が大きく入った景色の中にもいたことです[5]。「人が多い場所には野生の大型の肉食獣はいない」という思いこみとは、少し違う景色が見えてきます。
これは、大規模な保護計画だけで戻ったのでしょうか。それとも、どこかで人が手助けをしたのでしょうか。次は、人が運んで放した有名な例を見ます。
2014年のScience論文(26か国76人の専門家)は、オオカミ、ヒグマ、オオヤマネコ、クズリの4種のうち少なくとも1種がいる地域が、ヨーロッパ大陸の約3分の1の面積に及ぶと報告した。オオカミは約12,000頭で、クマ約17,000頭、オオヤマネコ約9,000頭などと並ぶ数字である[5]。これは2014年時点の推定で、現在の数ではない。
注目すべきは、戻った4種のすべてが、人口密度が高く、景観が大きく改変された地域にも生息していた点である[5]。つまり大型の肉食獣は、人の少ない土地でしか生き延びられないとは限らない。ただし、この報告から読めるのは「その地域に生息している」ことまでであり、人との間に問題が生じていないという意味ではない。
では、戻ってきた過程は具体的にどうだったのか。人が意図的に動かした例が北アメリカにある。
5. イエローストーンの オオカミは どうなったの?
5. 一度いなくなったイエローストーンに、群れが放された
5. イエローストーンの再導入:1995年から2025年まで
アメリカの イエローストーンという 大きな こうえんでは、1920ねんだいから 1960ねんだいに かけて、オオカミが ほとんど いなく なりました[6]。
そこへ、1995ねんの 1がつに、カナダの アルバータしゅうから オオカミが はこばれて きました。3がつに、こうえんの 中で はなされました。
それから 30ねんたった 2025ねんの おわりには、7つの むれと、あたらしい 1つの グループに、あわせて 84とうが くらして いました[7]。むれの 大きさは、2とうから 18とう。へいきんは、11.7とうでした。
オオカミが かえって きた 場しょは、アメリカだけでは ありません。日本は、どうだったのでしょう。
ほぼいなくなってから、運ばれてきた
アメリカのイエローストーン国立公園では、1920年代から1960年代にかけて、オオカミがほぼいなくなりました。1995年1月、カナダのアルバータ州から運ばれたオオカミが公園の入口を通り、3月の終わりごろに公園の中で放されました[6]。
放された頭数は、この記事で使った資料の間ではそろっていません。数字は書かないでおきます。
いまの様子
公園の2025年の年次報告によると、2025年12月の終わりには、7つの群れと新しい1グループで、合計84頭のオオカミがいました。群れの大きさは2〜18頭、平均で11.7頭です[7]。
放してから約30年で、7つの群れと新しい1グループが確認されていました。オオカミが戻ってくる話は、ヨーロッパやアメリカだけではありません。日本は、どうだったのでしょう。
イエローストーン国立公園では、1920年代〜60年代にオオカミがほぼ姿を消した。その後、1995年1月にカナダのアルバータ州から運ばれた群れが公園へ入り、3月の最後の2週間に放された[6]。放獣した頭数は出典間で未照合なので、ここでは数を挙げない。
国立公園局の2025年年次報告によれば、2025年12月末の時点で、公園内には7つの群れ(繁殖つがいは3組)と新たな1グループ、計84頭のオオカミがいた。群れの大きさは2〜18頭、平均11.7頭である[7]。
この例が示すのは、いなくなった場所に再び定着しうるということだが、それは公園という特別な管理のもとでの結果である。同じ条件が他の地域にもそのまま当てはまるとは限らない。これと対照的に、日本では、オオカミは今、いない。
6. 日本の オオカミは どこに いたの?
6. 日本のニホンオオカミは、どこに暮らしていたのか
6. ニホンオオカミの分布と、1905年の最後の記録
日本にも、オオカミが いました。ニホンオオカミです。本州・四国・九州に いたと されて います[8]。
ハイイロオオカミの なかまで、からだは ちいさく、体の 長さは 82センチから 110センチほどです。
1905ねん(明治38ねん)に、奈良県で つかまった わかい オスを さいごに、きろくが ありません。いなく なったと 考えられて います[8]。
なぜ いなく なったのかは、ひとつの りゆうに きめられて いません。びょうきの ながれ、きりひらかれた 土ち、えさの シカが へった ことが かさなったと 考えられて います。
本州・四国・九州にいた小型のオオカミ
ニホンオオカミは、かつて本州・四国・九州に分布していた、ハイイロオオカミの小型の仲間です。体長は約82〜110cm、尾の長さは約30cmとされています[8]。
1905年の記録と、いなくなった理由
1905年(明治38年)に奈良県で捕獲された若い雄を最後に、確かな記録がなく、絶滅したとみられています[8]。理由は一つに決まっておらず、狂犬病やジステンパーの流行、開拓の進行、餌になるシカの減少が重なったと考えられています。
日本のオオカミは、いまは野外にいません。それでも、北極から砂漠、人の多いヨーロッパまで暮らす仲間のことを知ると、地図の見え方が少し変わってきます。
7. ちずの 上に、なわばりを かいて みよう
7. 地図帳に、縄張りの大きさを描いてみる
7. 縄張りの面積を、自分の地図で換算する
ちずちょうを ひらいて、自分の 町を さがして みましょう。ちずの 下の ほうに、「5キロメートル」などの ものさしが のって います。
その ものさしを つかって、5.7キロメートルは どこまでか、ゆびで たどって みます。これが、いちばん せまい なわばり(33へいほうキロメートル)の 1へんです。
こんどは、79キロメートルを たどって みます。ちずの 上で、どこまで とどくでしょうか。まわりの 町が いくつ はいるのか、かぞえて みましょう。
地図帳で、一辺5.7kmと79kmを測る
地図帳を開いて、自分の町を探します。ページの端に縮尺が出ているので、定規を当てて、縮尺をもとに一辺5.7kmが何cmになるかを計算してみてください。同じように、79kmも計算します。縮尺によっては紙面に収まらないので、そのときは「これだけ広いのか」と気づければ十分です。
33km²と6,272km²の縄張りが、自分の知っている町のどのあたりまで広がるか、指でたどると想像しやすくなります。ただしこれは正方形にたとえた大きさで、実際の縄張りは川や尾根に沿った形をしています。
自分の町と比べてみる
地図帳で、自分の町の端から端までの長さを測り、5.7kmや79kmと比べてみましょう。自分の町より狭い縄張りと、いくつもの町をまたぐ縄張りがあると分かります。ニホンオオカミは、国立科学博物館などの標本が知られています。
手元の縮尺つきの地図(紙の地図帳など)で換算すると、33km²の正方形の一辺は約5.7km、6,272km²なら約79kmである。縮尺1:200,000なら、それぞれ約2.9cmと約40cm程度になる計算で、後者は地図帳の1見開きに収まらないことがすぐ分かる。
さらに調べるなら、一次寄りの資料として、NPSのイエローストーンのオオカミ年次報告(英語)がある。本稿で使ったMech & Boitaniの縄張りの数値は二次資料経由のため、原典の概説にあたると、33km²と6,272km²の測定条件(調べた年、地域、群れの数)が確かめられる。
日本語の資料では、ニホンオオカミの標本が国立科学博物館などに保管されていると紹介されている。所蔵先の公式ページにあたると、標本の点数や状態が分かる。
しらべた もとの じょうほう
参考にした情報源
参考にした情報源と、その使い方
本文は、ここにある資料の内容を自分の言葉で言いかえたものです。数字や名称は、資料によって細部が異なることがあります。
- Wikipedia, Wolf(Mech & Boitani, 2003 を引く概説。二次資料) https://en.wikipedia.org/wiki/Wolf (生息環境、縄張りの広さの例)
- Animal Diversity Web (University of Michigan), Canis lupus https://animaldiversity.org/accounts/Canis_lupus/ (分布、縄張りの範囲、群れの頭数)
- PMC, Conservation of the Threatened Arabian Wolf in NW Saudi Arabia (2025) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12292966/ (アラビアオオカミの暮らす環境)
- Animal Diversity Web, Canis simensis https://animaldiversity.org/accounts/Canis_simensis (エチオピアオオカミの標高、獲物、集団)
- LCIE, Europe is wilder than we think(Science 2014 の紹介) https://lcie.org/News/europe-is-wilder-than-we-think-wild-wolves-bears-and-lynx-are-sharing-landscapes-with-humans-in-many-parts-of-europe-a-new-study-in-science-finds (ヨーロッパの大型肉食獣の回復)
- NPS, Yellowstone Wolf Program Records https://www.nps.gov/yell/learn/historyculture/upload/RG01-Wolf.pdf (1995年の再導入)
- NPS, Yellowstone Wolf, Cougar, and Elk Project Annual Report 2025 https://www.nps.gov/yell/learn/upload/2025-YELL-Wolf-Cougar-Elk-Project-Annual-Report-508.pdf (2025年末の頭数、群れの大きさ)
- コトバンク(日本大百科全書 ほか)ニホンオオカミ https://kotobank.jp/word/%E3%83%8B%E3%83%9B%E3%83%B3%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%9F (ニホンオオカミの分布、体の大きさ、最後の記録、絶滅の理由)
なおした ところ
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