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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

野生の フタコブラクダは、塩しおからい 水を どうして のめるの?

野生のフタコブラクダは「海水より塩辛い水」を飲むのか――報告と、まだ分からない体のしくみ

野生フタコブラクダが飲むという「海水より塩辛い水」── ヒトの腎臓の限界と、いまだ決着していない仕組み

分野:生きもの

人が 海の 水を のむと、体の 水が へって しまいます。ところが、中国の さばくに すむ 野生の フタコブラクダは、海の 水より 塩しおが 多い 水を のんで いきて いると いわれて います。

どうして そんな ことが できるのでしょう。この 記事では、人の 体の ほうが どこで こまるのか、ラクダの 体に どんな ヒントが あるのか、そして まだ 答えが 出て いない ことが わかります。

人が海水を飲むと、飲んだ量より多くの水を失って脱水します。ところが、中国の砂漠にすむ野生のフタコブラクダは、海水より塩分の高い水を飲んで生きているといわれます。

人には無理なことを、なぜラクダはできるのでしょうか。この記事では、人の腎臓がどこで限界になるのか、ラクダの腎臓や遺伝子に見つかっているヒント、そして決着していない部分が分かります。

ヒトの腎臓は、海水より塩分の濃い尿を作れない。だから海水を飲むと、塩を出すために飲んだ以上の水を失い、脱水する[1]。ところが中国北西部の野生フタコブラクダは、淡水のない場所で海水より塩分の高い水を飲むと報告されている。

この「飲める」は、どこまで確かめられた話なのか。ラクダの腎臓や遺伝子には何が見つかり、何がまだ仮説なのか。この記事では、根拠の強さを区別しながら、分かっていることと決着していないことが分かるように書く。

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1. 人は、どうして 海の 水を のめないの?

1. 人が海水を飲むと、飲んだ以上の水を失うのはなぜか

1. ヒトの腎臓に上限がある ── 海水が「飲む脱水剤」になる理由

人の 体は、およそ 半分から 6わりが 水です。1日に 体に 入る 水と 出て いく 水は、ほぼ 同じで、あわせて 2.5リットルほどと いわれます[2][3]。

出て いく 水の 大きな 通り道が、おしっこです。おしっこを 作るのは 腎臓じんぞうで、いらない 塩しおも いっしょに 出して くれます。

でも 人の 腎臓じんぞうが 作れる おしっこは、海の 水ほど 塩しおからくは なりません。海の 水を のむと、塩しおを 出すために、のんだ 水より 多くの 水を おしっこにして 出す ことに なります。のどを うるおすつもりが、脱水だっすいに なって しまうのです[1]。

人の 腎臓じんぞうには、作れる おしっこの 塩しおからさに 上限じょうげんが ある、と いうことです。

人の体は、思ったより水でできています。成人男性で体重の約60%、女性で約50%、乳児では約70%という目安があります[2]。年齢や体格で変わる数字です。

この水は、毎日入れかわっています。1日に体へ入る水と出る水は、成人の平均的な目安でほぼ同じ約2.5リットルで、飲み水はそのうち1.2リットルほどとされます[3]。入った分だけ出ていくので、体の水の量はつり合います。

海水を飲むと、このつり合いがくずれます。人の腎臓は、海水より塩辛い尿を作れません。そのため、海水に含まれる塩を尿として出そうとすると、飲んだ水よりも多くの水を尿にして捨てることになり、体は脱水します[1]。

つまり人の腎臓には、「作れる尿の塩辛さの上限」があります。この上限を越える水を飲み続ける動物がいるとしたら、体の中のしくみが人とはちがう可能性があります。

ヒトの体は、成人男性で体重の約60%、女性で約50%が水分とされる(乳児・小児早期は約70%、肥満では約50%に下がる。いずれも目安)[2]。この水は常に入れかわり、1日に体へ入る量と出る量は、成人の平均的な目安でほぼ等しい約2.5リットル、うち飲み水は約1.2リットルとされる[3]。入出力が釣り合うことで、体液の量と濃さが保たれている。

海水はこの釣り合いを崩す。ヒトの腎臓がつくれる尿は、海水より塩分が薄いものに限られる。そのため海水中の塩を尿で排出しようとすると、飲んだ量を上回る水を尿として失う。結果は水分の正味の損失、つまり脱水である[1]。

要するに、腎臓が作れる尿の濃さには上限がある。ここで問いが立つ。この上限を越えた水を飲む動物がいるなら、腎臓などに、ヒトとは異なる仕組みがある可能性が高い。次の章では、その動物の話がどこまで確かめられているかを、資料の強さを見ながら整理する。

2. 「海の 水より 塩しおからい 水」を のむ ラクダとは?

2. 「海水より塩辛い水」を飲む野生ラクダは、どこにいるのか

2. 「海水より塩辛い」の根拠は何か ── 新疆の泉と、資料の強さ

この ラクダは、中国の 北西にある さばくに すんで います。ガシュン・ゴビや ロプ・ヌールと いう ところです[4]。

そこには、塩しおの 少ない 水が ない 場しょが あります。野生の フタコブラクダは、そんな 場しょで、海の 水より 塩しおが 多い 水を のむ ように なった、と いわれて います[4]。

人が かって いる フタコブラクダ(家畜かちく)は、そこまで 塩しおからい 水には たえられない、と されます。ロプ・ヌールの いずみは、家畜かちくの ラクダが 口を つけない ほど 塩しおからい、と 2009年に つたえた 人が います[5]。

さて、「どうして のめるの?」の 答えは、まだ 決まって いません[4][6]。なぜ 決まって いないのか、それを 次に 見て いきます。

この ラクダは、いま 中国の 北西に 3つの すむ 場しょが あり、モンゴルの 南西にも すんで います。いきのこって いるのは、およそ 950頭です[7]。

中国北西部の新疆には、ガシュン・ゴビやロプ砂漠があり、野生のフタコブラクダがすんでいます。淡水のない場所では、海水より塩分の高い水を飲むように適応したとされます[4]。

家畜のフタコブラクダは、これほどの塩分には耐えられないとされます。2009年に、ロプ・ヌールの野生ラクダの泉の水は、家畜のフタコブラクダが口をつけないほど塩辛い、と訴えた人がいます[5]。百科事典のWikipediaも、野生のフタコブラクダは海水より塩辛い水でも生きられる、とこの訴えを引いて書いています[6]。

ここで、答えの要点を先に書いておきます。「海水より塩辛い水を飲めるといわれる」点は複数の資料に出てきますが、体の中でどう塩をとりこみ、どう外へ出しているのかは、決着していません[4]。「海水より塩辛い」と言える根拠も、保護団体の資料や百科事典が中心で、水の塩分を測った数字が示されているわけではありません。だから、この記事では「といわれる」「報告がある」の強さで書いています。

野生のフタコブラクダは、中国北西部の3地域(ロプ・ヌール、タクラマカン、アルチン山脈)とモンゴル南西部に分かれてすみ、生き残りは約950頭で、減っているとされます[7]。数少ない動物の体のしくみが、まだ研究の途中なのです。

舞台は新疆(中国)のガシュン・ゴビやロプ砂漠である。淡水のない場所で、野生のフタコブラクダは海水より塩分の高い水を飲むよう適応したとされ、家畜のフタコブラクダはこれほどの塩分に耐えられないとされる[4]。2009年にJ. Hare氏が保全団体へ送った訴えには、ロプ・ヌールの野生ラクダの泉は、家畜のフタコブラクダが口をつけないほど塩辛いとある[5]。Wikipediaも、これを引用して「海水より塩辛い水でも生きられる」と書く[6]。

ただし、根拠の強さを区別する必要がある。この主張は主に保護団体の資料と百科事典の記述に依っており、水の塩分濃度の実測値は示されていない。査読論文での確認は、今回たどれた範囲では見つかっていない。本稿が「といわれる」「報告がある」と書くのはこのためである。さらに、どう塩を吸収・排出しているのかは決定的には分かっていない[4]。つまり、題名の問いへの現時点の答えは「飲むという報告はあるが、仕組みは決着していない」である。

この動物は、中国北西部の3地域(ロプ・ヌール、タクラマカン、アルチン山脈)とモンゴル南西部の大ゴビA保護区に分かれて生息し、生き残りは約950頭、減少傾向にある[7]。ここから先は、答えが出ていないなりに、手がかりが何なのかを見ていく。

3. ラクダの 腎臓じんぞうには、どんな ヒントが あるの?

3. 手がかり1:ラクダの腎臓は、水を逃がさない濃い尿を作る

3. 手がかり1:ヒトコブラクダの腎臓は尿を濃縮する ── ただし野生フタコブのデータではない

野生の フタコブラクダの 腎臓じんぞうは、まだ くわしく わかって いません。そこで、ちかい なかまの ヒトコブラクダの 研究けんきゅうが ヒントに なります。

5頭の ヒトコブラクダを 10日間 水なしで すごさせた、きびしい しけんが ありました。

そうなると、体重たいじゅうが 23%も へりました。それでも、腎臓じんぞうは 水を にがさない ように、とても こい おしっこを 作りました[8]。

体重が 50キロの 人で 23%を 考えると、11.5キロです。500ミリリットルの ペットボトルなら 23本ぶんに あたります。

ただし、これは ヒトコブラクダの 話です。野生の フタコブラクダでは、まだ 同じことが 調べられて いません。それに、水を にがさない ちからと、塩しおからい 水を のむ ちからが 同じ しくみなのかも、わかって いません。

野生のフタコブラクダの腎臓については、くわしいデータがありません。そこで、近い仲間であるヒトコブラクダの研究がヒントになります。

5頭のヒトコブラクダに10日間水を与えない実験で、体重は23%減り、腎臓が血液をろ過する量(糸球体ろ過量)は約75%下がりました。それでも腎臓は、尿をとても濃くして、体から逃げる水を少なくしていました[8]。

23%を実感するために計算してみます。体重50キロなら、23%は11.5キロです。500ミリリットルのペットボトルの水に当てはめると、23本ぶんの重さになります。

ただし、これはヒトコブラクダの値で、野生のフタコブラクダで確かめられた数字ではありません。また、水をむだにしない力と、塩辛い水を飲む力が同じしくみなのかどうかも、資料からは分かりません。

野生フタコブラクダの腎機能を直接測ったデータは、見当たらない。そこで近縁のヒトコブラクダ(5頭)の脱水実験が手がかりになる。10日間断水すると体重は23%減少し、糸球体ろ過量は約75%低下した。一方、尿の浸透圧(濃さの指標)は平均1,466 mosm/kg、個体の最高は2,372 mosm/kgに達した[8]。水を失う危機のなかで、腎臓が濃い尿を作る力を保っていたことになる。

体重の23%を実感するために計算する。体重50kgなら11.5kgで、500mLのペットボトル23本の重さに当たる。

ただし限界が2つある。第一に、この値はヒトコブラクダのもので、野生フタコブラクダのものではない。第二に、水を保つ力と、海水より塩辛い水を飲む力は別の問いである。前者が後者の説明になるかどうかは、今回の資料からは言えない。

4. 遺伝子いでんしからは、何が わかって きたの?

4. 手がかり2:ゲノムの比較は、まだ「手がかり」の段階

4. 手がかり2:2012年のゲノム比較は仮説の入口にとどまる

2012年に、野生の フタコブラクダ 1頭と、家畜かちくの フタコブラクダ 1頭の、体の せっけいず(ゲノム)が 読まれました[9]。

書いた 人たちは、この ふたつを くらべると、ラクダが 塩しおに つよい わけを さぐる ヒントに なるかも しれない、と 書いて います。

ただし、これは 「かもしれない」と いう だんかいです。まだ 答えでは ありません。

2012年、野生のフタコブラクダ1頭と家畜のフタコブラクダ1頭のゲノム(遺伝情報の全体)を解読した論文が出ました[9]。論文は、2頭を比べることが、ラクダのおどろくべき塩への強さの遺伝的な土台を明らかにする手がかりになりうる、と述べています。

これは仮説の段階です。比べたのは2頭だけで、どの違いが塩への強さにつながるのかは、この論文から分かる話ではありません。研究の入口だと考えるのがよさそうです。

Jirimutuらは2012年、野生1頭と家畜1頭のフタコブラクダのゲノムを解読した[9]。論文の要旨は、両者の比較が「ラクダの驚くべき塩への耐性」の遺伝的な基盤を明らかにする手がかりになりうる、と述べる。

ここで注意が要る。この記述はあくまで可能性の提示で、個々の遺伝子と塩耐性の因果までは示していない。サンプルも2頭にすぎない。したがって、腎臓の機能(手がかり1)とゲノム(手がかり2)は、まだ一本の説明につながっていない。2つの手がかりが同じ方向を指すかどうかは、今後の研究に委ねられている。

5. 家で できる、水の かぞえかた

5. 家でできる、自分の水のかぞえかた

5. 家でできること:自分の水の出入りを数える

今日できること:1日に 自分が のんだ 水の 量りょうを、コップや ペットボトルで かぞえて みましょう。大人の 飲み水は、1日に 1.2リットルほどが 目安と いわれます[3]。500ミリリットルの ペットボトルなら、2本と すこしです。人によって、日によって かわります。

もうひとつ、こんな ぎもんも 持って みましょう。野生の フタコブラクダは、どうして 塩しおからい 水を のめるのか。これは 大人の 学者にも、まだ 答えが 出て いない 問いです。

今日できること:1日に自分が飲んだ水の量を、コップやペットボトルで数えてみましょう。飲み水は、成人の平均的な目安で1日に1.2リットルほどとされます[3]。500ミリリットルのペットボトルなら2本半くらいです。暑い日や運動をした日、体の大きさで変わります。

この記事のラクダの問いは、まだ答えが出ていません。腎臓の働き、遺伝子、そして飲んでいる水の実際の塩分濃度。どこがいちばん気になりましたか。出典の論文や団体のページの題名だけでも、研究がどこまで進んでいるかが見えてきます。

今日できること:1日に自分が飲んだ水の量を、コップやペットボトルで数える。飲み水は、成人の平均的な目安で約1.2リットル、体に入る水の合計は約2.5リットルとされる[3]。気温や活動量、体格で変わるので、他人との比較ではなく、自分の日ごとの変化を見るために使う。

この記事のラクダの問いは、まだ答えが出ていない。腎臓の働き、遺伝子、飲んでいる水の実際の塩分濃度のうち、どこがいちばん気になったか。数日分の飲水量の記録を並べると、人の体でも水の出入りが日ごとに変わることが見えてくる。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

資料の強さはそれぞれ異なります。生物の「海水より塩辛い水」の部分は保護団体と百科事典、人の水の目安は医学書と自治体、ラクダの腎臓とゲノムは論文の要旨です。

  1. NOAA National Ocean Service「Can you drink seawater?」 https://oceanservice.noaa.gov/facts/drinksw.html (ヒトの腎臓と海水)
  2. MSDマニュアル「水とナトリウムの平衡」 https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/10-内分泌疾患と代謝性疾患/水代謝/水とナトリウムの平衡 (体の水分の割合)
  3. 千葉県営水道「健康を支える水」 https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/mame/mame03.html (1日の水の出入り)
  4. Wild Camel Protection Foundation「Salt Water」 https://www.wildcamels.com/camelus-ferus/scientific-data (野生ラクダの塩水と未解明の点)
  5. EDGE of Existence blog (2009) https://www.edgeofexistence.org/edgeblog/?p=762 (ロプ・ヌールの泉の訴え)
  6. Wikipedia「Wild Bactrian camel」 https://en.wikipedia.org/wiki/Wild_Bactrian_camel (百科事典での書かれ方)
  7. EDGE of Existence「Wild camel」 https://www.edgeofexistence.org/species/wild-camel (分布と頭数)
  8. Yagil & Berlyne (1978) 糸球体ろ過量と尿濃縮(ヒトコブラクダ) https://cris.bgu.ac.il/en/publications/glomerular-filtration-rate-and-urine-concentration-in-the-dromeda-5/ (脱水10日の実験の要旨)
  9. Jirimutu et al. (2012) Nature Communications 3:1202 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3514880 (ゲノム解読の要旨)

なおした ところ

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