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ここにあるのは、だれかが実際に調べ、考え、作ってきたことを集めたメモです。気になったら、ページの下の「参考にした情報源」から、もとの本や記事、それを生み出した人たちに、直接ふれてみてください。このメモには書ききれないおもしろさが、そこにあります。

冷つめたい 海の ちかくでは、なぜ きりが たくさん できるの?

冷たい海のそばに、霧がよく出るわけ ── 釧路・サンフランシスコ・ナミブ砂漠

冷たい海流の上で霧が生まれるしくみ ── 釧路・カリフォルニア・ナミブに共通する「移流霧」

分野:自然

なつの 3か月の うち、北海道ほっかいどうの 釧路くしろでは、約やく47日が きりの 日です。東京とうきょうでは、0.2日しか ありません。

この ちがいを つくって いるのは、海の 水の 温度です。冷つめたい 海の うえを 暖あたたかい 空気が とおると、きりに なります。おなじ しくみで、アメリカの サンフランシスコや、アフリカの さばくの そばにも、きりが やって きます。この きじでは、その わけを しらべます。

夏の3か月のうち、北海道の釧路では約47日が霧の日です。東京では0.2日しかありません。

この違いをつくっているのは、海の水温です。冷たい海の上を暖かく湿った空気が通ると、霧になります。同じしくみで、アメリカのサンフランシスコや、アフリカのナミブ砂漠にも、海から霧がやって来ます。この記事では、その理由を調べます。

夏(6〜8月)の霧日数の平年値は、釧路で47.3日、東京で0.2日。同じ日本で、200倍以上の開きがある。

差をつくっているのは、沖を流れる海流の温度だ。暖かく湿った空気が冷たい海面の上を動くと、冷やされて霧(移流霧)になる。同じ構図が、カリフォルニア、ナミブ砂漠、アタカマ砂漠の海岸にもある。この記事では、そのしくみと、「なぜその海だけ冷たいのか」を調べる。

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1. 冷つめたい 海の うえで、きりが うまれる

1. 暖かい空気が、冷たい海で冷やされる

1. 夏の釧路と東京 ── 霧日数の差は海がつくる

気象庁きしょうちょうの 釧路くしろの 気象台きしょうだいは、1991年ねんから2020年ねんの へいきんで、6月から8月の きりの 日を しらべて います。釧路くしろは 47.3日、帯広おびひろは 20.8日、札幌さっぽろは 0.7日、東京とうきょうは 0.2日です[1]。

釧路くしろの きりは、南から くる 暖あたたかくて しめった 空気が、冷つめたい 千島海流かいりゅう(親潮おやしお)に ひやされて できる、と 説明せつめいされて います[1]。

冷つめたい ジュースを コップに いれると、まわりに 水てきが ついた ことが ありますか。あれは、コップの ちかくの 空気が ひやされて、水じょうきが 水てきに かわるからです。海の うえでも、冷つめたい 海が 空気を ひやすと、水じょうきが 水てきに なって うかびます。それが きりです。これを 「移流霧いりゅうぎり」と いいます[2]。

これが、題名の 答えです。では、どうして その 海だけ 冷つめたいのでしょう。

釧路地方気象台は、1991〜2020年の平年値で、6〜8月の霧日数を比べています。釧路47.3日、帯広20.8日、札幌0.7日、東京0.2日です。いずれも参考値とされています[1]。

釧路の夏の霧は、南からの暖かく湿った空気が、冷たい千島海流(親潮)に冷やされてできると説明されています。暖かい空気ほど、水蒸気をたくさん含めます。それが冷たい海面の上を進むと、含みきれなくなった分が細かい水滴になって浮かびます。これが霧です。このように、空気が水平に動いて冷たい面に触れてできる霧を、移流霧といいます[1][2]。

霧のでき方の種類や、釧路の霧の詳しい説明は、霧はどうやってできるのかの記事にあります。この記事で知りたいのは、その先です。なぜ、その海だけ冷たいのでしょうか。

釧路地方気象台は、1991〜2020年の平年値で、夏(6〜8月)の霧日数を示している。釧路47.3日、帯広20.8日、札幌0.7日、東京0.2日で、いずれも参考値だ[1]。釧路は東京の200倍以上になる。

同気象台の説明では、南からの暖かく湿った空気が冷たい千島海流(親潮)に冷やされて霧になり、太平洋高気圧が強まる夏型の気圧配置では出やすい[1]。空気の温度が露点(水蒸気が水滴に変わり始める温度)まで下がるのが条件で、暖かい空気が冷たい面の上を水平に移動して冷えるタイプを移流霧という。冷たい海の上は、その条件がそろいやすい。霧は、地上で視程が1km未満になる状態を指す[3]。

霧の分類やでき方の全体は霧のでき方の記事に譲る。ここでは、海を冷たくするしくみを掘り下げる。海はなぜ、そこだけ冷たいのか。

2. その 海は、なぜ 冷つめたいの?

2. 冷たさの正体は、深いところから上がってくる水

2. 海流の冷たさと、湧昇(ゆうしょう)

海流かいりゅうが 冷つめたい もう ひとつの わけは、海の 深い ところから、冷つめたい 水が わき あがって くる ことです。これを 「湧昇ゆうしょう」と いいます。

アメリカの 宇宙うちゅう機関きかん NASA の 説明せつめいでは、サンフランシスコの ある カリフォルニアの 海では、春から 夏に かけて、海岸に 近ちかい 強つよい 風が、海の おもての 水を おきの ほうへ おしやります。すると、そこへ 深い ところの 冷つめたい 水が あがって きます[3]。

この 冷つめたい 水は、プランクトンの えさに なる ものも はこんで くる ので、海の いきものが ゆたかな ところに なります[3]。冷つめたい 海は、いきものの ゆたかな 海でも ある のです。

NASAの地球観測の解説は、サンフランシスコの夏の霧をこう説明しています。春から夏にかけて、太平洋高気圧が強まって海岸へ寄り、風の向きが変わります。この風が、北から南へ流れるカリフォルニア海流の表面の水を沖へ押し出し、そこへ深くて冷たい水が上がってきます。これが湧昇です[3]。

湧昇した水は冷たいだけでなく、栄養分が多く、生きものの豊かな海をつくります[3]。冷たい海は、生きものの豊かな海でもあるのです。

そこへ、海から陸へ向かう風が吹くと、水蒸気が凝結して移流霧になります[3]。海の冷たさには、冷たい海流そのものと、風が深い水を引き上げる湧昇の、二つが関わっています。

NASA Earth Observatoryの解説は、サンフランシスコの夏の霧を次のように説明している。春から夏にかけて太平洋高気圧が強まり海岸に寄ると、風が変わり、カリフォルニア海流の表面水が沖へ押し出される。そこへ深層の冷たい水が上がってくる(湧昇)。湧昇は海面水温を低くするが、同時に生物生産も高い[3]。

海面が冷たくなる経路は二つある。一つは、高緯度から低緯度へ向かう寒流が冷たい水そのものを運んでくること。もう一つは、風が表層水を押しやり、下の冷たい水が上がる湧昇だ。少なくともカリフォルニア沿岸では、この二つが重なっているとNASAは説明する。ほかの海域で同じかどうかは、この記事では確かめていない。

冷たい海の上を海風が渡ると、空気中の水蒸気が凝結して移流霧になる[3]。

3. さばくの そばの うみにも、きりが ある

3. 雨の降らない砂漠に、霧が来る

3. ナミブ・アタカマ ── 雨が降らない砂漠と、海からの霧

アフリカの みなみ西の ナミブ 砂漠さばくは、雨あめが ほとんど ふりません。それでも ヨーロッパの ウェブサイト EGU の 記事きじには、冷つめたい ベンゲラ海流かいりゅうが 空気を ひやし、きりを つくる、と あります。きりは、よく 海岸から さばくの ほうへ ながれて きます[4]。

南アメリカの アタカマ 砂漠さばくにも、「カマンチャカ」と よばれる 海の きりが あります。この きりの 水で、地衣類ちいるいや、一部の サボテンが いきて います[6]。きりを つかって いきる いきものは、きりを 水に する 植物の きじで しらべました。

2026年ねんの けんきゅうでは、衛星えいせいの かんそくから、ナミブの きりや ひくい くもと、海の 水の 温度に、つよい かんけいが ある と ほうこく されました。海が あたたまる 年は、きりが へります。アンゴラ側がわの ナミブでは、年ねんごとの きりの ふえへりの、最大さいだいで 半分ほどが、海の 温度で せつめい できる と いいます[5]。

「暖あたたかい 空気くうきと 冷つめたい 海」の さが 大きいほど、きりは できやすい、という ことです。

アフリカ南西部のナミブ砂漠は、降水がごくわずかです。EGU(ヨーロッパ地球科学連合)のブログは、冷たいベンゲラ海流が空気を冷やして乾燥を強める一方、同じ冷たさが霧もつくり、霧はしばしば海岸から砂漠へ流れこむ、と説明しています[4]。南米のアタカマ砂漠にも、カマンチャカと呼ばれる海の霧があり、その水分で、地衣類や藻類、一部のサボテンが生きています[6]。霧を使う生きものは、霧を水にして生きる植物の記事で調べました。

2026年の研究(Mass らの論文)は、人工衛星の観測(2004〜2019年)から、ナミブの霧と低い雲が海面水温と強く関係することを示しました。熱帯の暖かい水が流れこむ「ベンゲラ・ニーニョ」の年は、霧が減ります。アンゴラ側のナミブでは、霧と低い雲の年ごとの変動の最大で約半分が、この現象で説明できるとされています[5]。

また、この論文では、海岸の大気が安定している(上空が暖かくて空気が上下に混ざりにくい)ほど霧が増える関係も出ています。冷たい海面と安定した空気が、霧をつくる条件になっているようです[5]。

ナミブ砂漠は降水がごくわずかな一方、EGUのブログは、冷たいベンゲラ海流が空気を冷やして湿気を運びにくくすると同時に、霧もつくると説明する。霧はしばしば海岸から砂漠へ流れこむ[4]。アタカマ砂漠にも、カマンチャカと呼ばれる海の霧がある。ロマス(lomas)と呼ばれる場所では、海からの霧が季節性の植物と一部の動物をまかなうとされ、乾燥地の岩の下には藻類や地衣類もいる[6]。霧を使う生物は霧を水にして生きる植物の記事に詳しい。

この関係を数字で示した研究がある。Mass、Cermak、Andersen(2026、Atmospheric Chemistry and Physics)は、人工衛星による2004〜2019年の月別の霧・低層雲の被覆率を、アンゴラ側のナミブ(南緯15〜17度)と中央ナミブ(22〜24度)で解析した。熱帯の暖水が入りこむベンゲラ・ニーニョの指数とは、アンゴラ側で相関係数r=−0.68(決定係数R²=0.46)で、暖水の年ほど霧・低層雲が減る。中央ナミブでは、リューデリッツの湧昇域の指数でR²=0.22だった[5]。

また、海岸の「推定逆転強度(EIS)」が高い、つまり大気が安定するほど霧・低層雲が増える関係もあり、海洋起源の移流霧と整合的だと著者らは読んでいる[5]。一方、長期的な傾向はほぼゼロで、海面水温の上昇による減少と、大気の安定化による増加が打ち消し合っていると報告されている[5]。

4. きりを 陸りくに ひっぱる、暑あつい 陸りく

4. 霧を陸へ引きこむのは、暑い内陸

4. 霧を内陸へ引きこむ「陸の熱」

サンフランシスコの きりは、陸りくの 暑あつさと つながって います。NASA の 説明せつめいでは、カリフォルニアの 内陸ないりくの セントラルバレーで 暖あたたかい 空気が のぼると、その かわりに 西の 海から 冷つめたい 空気が ふいて きます。その 空気くうきに のって、きりと ひくい くもが ゴールデンゲートブリッジの ほうへ やって きます[3]。

陸りくで あたためられた 空気が のぼると、海から 冷つめたい 空気が ふきこむ ことが あります。暑あつい 日の すぐ 隣となりに、ひんやりした きりが あるのは、そのためです。

NASAの解説では、内陸のセントラルバレーで暖められた空気が上昇すると、その分を埋めるように、海から冷たい空気が吹きこみます。海の冷たい空気といっしょに、霧と低い雲が、ゴールデンゲート・ブリッジのあたりまで押し寄せます[3]。

内陸で暖められた空気が上昇すると、海から冷たい空気が吹きこみ、霧が陸へ運ばれることがあります。霧がどこまで届くかは、地形や天気で変わるはずです。

内陸のセントラルバレーで暖められた空気が上昇すると、それを埋める形で海から冷たい空気が流れこみ、霧と低層雲が押し寄せる[3]。海から冷たい空気が吹きこむ向きの風が、霧を陸へ運ぶ。

霧が内陸へ届く距離は、地形と天気で変わる。届く距離は、この記事の出典では数字を確かめていない。「冷たい海+海から陸への風」が、移流霧の海岸を決める組み合わせだ。

5. じぶんでも しらべて みたく なったら

5. 自分でも調べてみたくなったら

5. 自分でも調べてみたくなったら

日本地図にほんちずで 釧路くしろと 東京とうきょうの 場所を さがして、この きじの 夏の きりの 日の かずを くらべて みましょう。冷つめたい 海に 近いのは、どちらでしょう。

もっと 知りたく なったら、さばくは なぜ 雨あめが すくないのかの きじも よめます。

気象庁の「過去の気象データ検索」では、各地の霧日数を月ごとに調べられます。冷たい海流が近い地点(釧路など)と、そうでない地点を比べて、夏に差が出るか確かめてみましょう。

砂漠がなぜ乾くのかは、砂漠はなぜ雨が少ないのかの記事にもあります。冷たい海流は、その成因の一つとして出てきます。

気象庁の「過去の気象データ検索」で、地点別・月別の霧日数を調べられる。冷たい海流に面した釧路と、面していない地点を並べ、夏に差が出るか、霧日数が多い年に何が起きていたか(海面水温、風向き)を調べると、移流霧の条件が具体的に見える。

ナミブの論文は、海面水温と大気の安定度の効果が逆向きに働いて、長期傾向がほぼゼロになる可能性を示している。気候が変わったとき、霧は増えるのか減るのか。この問いの答えは、まだ定まっていないように見える。冷たい海流が砂漠をつくる仕組みは砂漠はなぜ雨が少ないのかで触れている。

しらべた ところ

参考にした情報源

参考にした情報源

出典について:[1]は気象庁の釧路地方気象台のページ、[3]はNASAの地球観測のページ、[5]は2026年の学術論文(査読の状況は未確認)、[2][6]はウィキペディア(アタカマの霧は[6]だけが根拠なので、詳しい数字は書いていません)、[4]は学会のブログ記事です。アタカマ砂漠の霧の高さや、海流ごとの湧昇の強さの数字は、本文では扱っていません。「釧路は東京の200倍以上」は、出典の数値から筆者が割った値です。

  1. 気象庁 釧路地方気象台「釧路の夏」。https://www.data.jma.go.jp/kushiro/bosai/season/KushiroSummer.html (夏の霧日数の平年値と、親潮による霧のでき方)
  2. Wikipedia English, Coastal fog。https://en.wikipedia.org/wiki/Coastal_fog (移流霧と冷たい面、湧昇域の説明)
  3. NASA Earth Observatory, Another Foggy Day in San Francisco (2012)。https://science.nasa.gov/earth/earth-observatory/another-foggy-day-in-san-francisco-79119 (太平洋高気圧、湧昇、移流霧、内陸の暖気、視程1km未満)
  4. EGU GeoLog, Rain on the Namib Desert (2019)。https://blogs.egu.eu/geolog/2019/12/16/imaggeo-on-mondays-rain-on-the-namib-desert/ (ベンゲラ海流とナミブの霧)
  5. Mass, Cermak, Andersen (2026) Atmospheric Chemistry and Physics 26, 12565。https://acp.copernicus.org/articles/26/12565/2026/ (ナミブの霧・低層雲と、湧昇・暖水流入)
  6. Wikipedia English, Atacama Desert。https://en.wikipedia.org/wiki/Atacama_Desert (カマンチャカ、フンボルト海流)

なおした ところ

更新履歴

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