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地球が まわる はやさは、どうして かわるの?

地球の自転の速さは、どうして変わるのか ── 空気・海・氷・地球内部のあいだで、回る勢いが移るから

地球の自転はなぜ変わるのか ── 大気・潮汐・氷・核と日長の変化、2020年以降の短縮

分野:宇宙・天文

2024年7月5日、地球は、いつもより ほんの すこし はやく 1回 まわりました。1日が、ふだんより 1000ぶんの 1.66びょう みじかかった のです。きろくに のこる、いちばん みじかい 日でした[5]。

じつは 地球が まわる はやさは、まいにち すこしずつ ちがいます。それは、どうして でしょう。こたえは、「まわる いきおい」を、空気や 海や 氷と わけあって いるから。この 記事で、ひとつずつ みて いきます。

2024年7月5日、地球は、いつもより少しだけ速く1回転しました。1日の長さが、基準の86400秒より約1.66ミリ秒(1000分の1.66秒)短かったのです。観測が始まってから、いちばん短い日の記録でした[5]。

地球の自転の速さは、毎日わずかに変わっています。なぜでしょうか。答えは、地球が持つ「回る勢い」の合計はほぼ変わらず、それが空気・海・氷・地球内部のあいだで移るからです。この記事では、その分け合いを順に見ていきます。

2024年7月5日、1日の長さは86400秒より約1.66ミリ秒短く、観測史上でもっとも短い日になった[5]。地球の自転は一定ではなく、毎日わずかに変わっている。

変わる理由の中心は、角運動量(回る勢いの量)の分け合いにある。地球全体の合計はほぼ保たれるが、大気・海・氷・液体の核とのあいだでやりとりされると、固体の地球の回転が速くなったり遅くなったりする。この記事では、変化の大きさを桁ごとに見ていき、2020年以降の短縮が説明しきれていないことまで書く。

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1. まわる いきおいを、わけあって いる

1. 答え ── 回る勢いの「分け合い」

1. 角運動量の保存 ── 変動の基本の仕組み

くるくる まわる いすに すわって、おとなの 人に ゆっくり まわして もらいます。うでを ひろげた まま まわって、うでを ぐっと ちぢめると、からだが はやく まわります。フィギュアスケートの 人が、くるっと まわるとき、うでを からだに ちかづけて はやく なるのと おなじです。

まわる いきおいの ぜんぶは かわらないので、おもさが ちゅうしんに ちかづくと、そのぶん はやく まわる のです。

地球も おなじです。地球は、いしの 地めんだけで なく、空気や 海、とけた 金ぞくの 中心(核かく)も かかえて います。その あいだで 「まわる いきおい」が やりとり されると、地めんの まわる はやさが すこし かわります[6]。

では、いちばん ふつうの ことから みましょう。1年の あいだに、どんな ことが おきて いるでしょう。

回転いすに座って腕を広げたまま回り、腕を縮めると、回転が速くなります。フィギュアスケートの選手が腕を体に引きつけて速く回るのも同じです。回る勢いの合計は変わらないのに、重さが回転の中心に近づくと、回転が速くなります。

地球にも同じことが起きます。地球は固い地面だけでなく、空気(大気)、海、そして中心の液体の核も抱えています。回る勢い(角運動量)は、これらのあいだでやりとりされます。ほかの部分が多く持てば、固体の地球の取り分が減って遅くなり、少なくなれば速くなります。重さが移動して地球の形が変わっても、速さが変わります[6]。

まず、いちばん身近な、1年のリズムから見ましょう。

角運動量は、閉じた系の中では保存される。回転いすに座って腕を広げて回り、腕を縮めると回転が速くなるのと同じ理屈で、慣性モーメントが小さくなれば角速度は上がる。

地球は固体の地球(マントルと地殻)、大気、海洋、液体の外核などに分かれ、それらの間で角運動量が出入りする。大気が多くの角運動量を持てば、固体の地球の自転は遅くなる(1日が長くなる)。また、氷の融解などで質量が極から赤道側へ動いて慣性モーメントが大きくなっても、自転は遅くなる[6]。

この2つの経路(角運動量の移動と質量の移動)が、以降のすべての変動の基本である。まず、最も規則的な、1年周期から見る。

2. 1年の あいだの ゆれ ── 風と エルニーニョ

2. 1年のリズム ── 風とエルニーニョ

2. 季節変動と年々変動 ── 大気角運動量とエルニーニョ

地球の 1日の ながさは、1年の あいだに、すこし ながく なったり みじかく なったり して います。ふくらみの おおきさは、およそ 1000ぶんの 1びょう です[2]。

この ゆれの ほとんどは、風が つくって います。地球の まわりの 風の むきや つよさが かわると、空気が もって いる まわる いきおいも かわります。その ぶん、地めんの まわり方が かわるのです[2]。

あたたかい 海の 流れが かたよる エルニーニョの 年にも、ちがいが 出ました。2015〜2016ねんの 冬、1日は 1000ぶんの 0.5びょうほど のびたと、せかいの 時間を まもる 人たちが しめして います[3]。

では、もっと みじかい リズムは ないのでしょうか。

地球の1日の長さは、1年のあいだに、約1000分の1秒(1ミリ秒)の振幅で増減しています[2]。

この季節の変化の大部分は、大気が持つ回る勢いの出入りで説明できると考えられています。1990年代の研究が「少なくとも95%」を大気に結びつけていて、残りには海などが関わります[2]。風の向きや強さが季節で変わると、空気が持つ勢いが変わり、固体の地球の回転が反対向きに変わるのです。

年ごとの差も見つかっています。2015〜2016年のエルニーニョでは、上空の東西方向の風が強まり、大気の勢いが増えました。その分、地球の自転が遅くなり、冬の1日は約0.5ミリ秒のび、とパリ天文台のIERS地球回転センターが報告しています[3]。

では、月や地震のような、風以外の原因はどうでしょうか。

1年周期の日長変動の振幅は、約1000マイクロ秒(1ミリ秒)である。ダイキーらの1993年の論文は、これまでの研究で、季節変動の少なくとも95%が大気と固体の地球との角運動量の交換で説明されてきたことを述べている[2]。残りは、海洋などの寄与で、この論文はその海洋の見積もりを改良する側にある。

年々の変動では、エルニーニョが現れる。IERS地球回転センターのビザールは、2015〜2016年のエルニーニョで、上空の東西循環が強まって大気角運動量が増え、角運動量保存により自転が遅くなって、冬の日長に約0.5ミリ秒の変化が生じたと報告している[3]。

大気は最大の担い手だが、ほかにも原因はある。次章で、月と、固体地球の変形を扱う。

3. 月に ひっぱられて、2しゅうかんの リズムが ある

3. 月の位置が変える、2週間のリズム

3. 月の赤緯と潮汐 ── 短周期と長期の効果

月が 地球の 海を ひっぱる ちからは、じつは 地球の まわり方にも ひびきます。月が 赤道から いちばん はなれた 北や 南に ある ころは、地球が すこし はやく まわる と いわれます[5]。月は 2しゅうかんくらいで、赤道に ちかく なったり とおく なったり するので、はやさも それに あわせて ゆれます。

もっと 長い 目では、月の しおの まさつが、地球を すこしずつ おそく して います。それは、べつの 記事で くわしく 書きました。→ 月は 1ねんで どれだけ とおく なるの?

では、地球の かたちが かわったら、どうなるでしょう。

月は、地球の海や大地を引いて潮をつくります。月が赤道から南北に遠く離れた位置(月の赤緯が大きいとき)にあるころには、地球の自転が速くなるといわれます[5]。月の位置は約2週間のうちに赤道に近づいたり遠ざかったりするので、日長も2週間ほどのリズムで揺れます。

もっと長い時間では、潮の摩擦が地球の自転を少しずつ遅くしています。仕組みは別の記事で詳しく扱いました。→ 月は毎年3.8cm遠ざかっている

ここまでの変化は、いわば地球の「外側」の動きでした。次は、地球そのものの形が変わる場合を見ます。

月の赤緯(赤道面からの角距離)が大きい時期に、日長が短くなる傾向がある。EarthSkyが紹介するtimeanddateの解説は、2025年に日長が短くなると予想された日を、月が赤道から最も離れる時期にあたるものとして挙げている[5]。月の赤緯は約2週間で変わるため、これは約2週間の周期の変動になる。

長期では、潮汐摩擦が自転を遅くする効果が働く。この仕組みと月の後退は、別の記事で詳しく扱っている。→ 月の後退(年約3.8cm)と潮汐摩擦

大気・潮汐が角運動量の移動だったのに対し、質量の移動による変化が次の話である。

4. じしんと 氷が、かたちを かえる

4. 地震と氷 ── 地球の形が変わる

4. 質量の再分布 ── 地震と氷床の融解

2011ねんの 東日本の おおきな 地震じしんでは、アメリカの NASAの 人が けいさんして、1日が 1000000ぶんの 1.8びょう みじかく なったと はっぴょう しました[1]。とても ちいさくて、からだで かんじる ことは できません。

地震じしんで 地球の 中の おもさの ばしょが かわって、スケートの 人が うでを ちぢめた ときのように、すこしだけ はやく なったのです[1]。

もっと 大きく きいて いるのは、氷です。きたの 氷や、山の 氷が とけて 水に なると、水は 海に ながれて、赤道の ほうへ ひろがります。おもさが 赤道へ うごいて、うでを ひろげた ときと おなじで、地球は すこし おそく なります[4]。

1990ねんより まえには、地球が まるい かたちに ちかづく ほうこうに かわり、はやく まわる けいこうが あったと しめされて います[4]。

2011年の東日本大震災(マグニチュード9.0)について、NASAジェット推進研究所のリチャード・グロスさんは、地球の1日が約1.8マイクロ秒(100万分の1.8秒)短くなったと計算しました。地球の自転軸も約17cm動いたといいます。2004年のスマトラ島沖地震(マグニチュード9.1)では6.8マイクロ秒の短縮と見積もられています[1]。

断層で地面が動き、地球の中の質量の位置が変わるので、慣性モーメントが少し変わるためです[1]。ただし、1.8マイクロ秒は、前の章の季節変動(約1000マイクロ秒)の500分の1ほどです。体で感じ取れる大きさではありません。

もっと大きな効果を持つのが、氷です。高い緯度の陸の氷がとけて海に流れ込むと、水が極から赤道の方へ移り、地球は少し扁平になって、自転が遅くなります[4]。逆に、1990年より前は、地球が球に近づく方向の変化があり、自転は速くなっていたと示されています[4]。

では、自転が速くなった、最近の記録は何が原因なのでしょうか。

NASA JPLのグロスは、2011年の東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)で日長が約1.8マイクロ秒短くなり、地球の形状軸が約17cm動いたと計算した。2010年のチリ地震(Mw8.8)は約1.26マイクロ秒、2004年のスマトラ島沖地震(Mw9.1)は6.8マイクロ秒の短縮と見積もられている[1]。いずれも慣性モーメントの変化による効果で、季節変動(約1000マイクロ秒)の約500分の1、またはそれ以下である。

氷の融解は、長期の趨勢に効く。カリフォルニア大学サンディエゴ校のアグニュー(Duncan Agnew)らの研究を紹介した同大学の記事によれば、高緯度の陸氷の融解は水を極から赤道方向へ動かし、自転を遅くする。1990年より前は、重力の測定から地球が球に近づいて自転が速くなる傾向が見られたが、1990年以降は逆転したという[4]。

では、こうした外側の原因だけで、最近の日長の短縮は説明できるのか。

5. 地球の おくの 動きと、まだ わからない こと

5. 地球の奥と、2020年以降の短い日

5. 液体核の寄与と、2020年以降の日長短縮という未解決の問い

地球の まんなかには、とけた 鉄の 核かくが あります。この 核かくの 動きも、地面の まわり方を かえます[4]。1972ねんいこう、核かくの まわり方が おそく なる けいこうが ほうこく されて います。その ぶん、地面は すこしずつ はやく なり、1日は 50ねんまえより 0.0025びょう みじかく なりました[4]。

2020ねんごろから、みじかい 日の きろくが つぎつぎ ぬりかえられ、2024ねん7月5日が いちばん みじかい 日に なりました。それまでは 1000ぶんの 1.05びょう みじかい 日が きろく でした[5]。

でも なぜ はやく なって いるのかは、まだ はっきり しません。ある けんきゅうしゃは、「げんいんは せつめい できて いない」、空気や 海の けいさんでは あわない、と いって います[5]。

この ままだと、いつか 時計から 1びょうを へらす 日が くる かも しれません[4]。くわしくは、こちらを どうぞ。→ うるう秒をへらす日は くるの?

地球の中心には、液体の鉄でできた核があります。この液体の動きも、固体の地球の自転に影響します。カリフォルニア大学サンディエゴ校の記事は、1972年以降、核の回転が遅くなる傾向があり、その分、固体の地球の回転が速くなり、1日が50年前より約0.0025秒短くなったと説明しています[4]。

2020年ごろからは、記録的に短い日が続いています。timeanddateの集計(EarthSkyの記事が紹介)では、2020年より前の最短は約1.05ミリ秒短い日でしたが、2024年7月5日に約1.66ミリ秒短い日が記録されました[5]。

しかし、なぜ速くなっているのかは、まだ分かっていません。モスクワ大学のゾートフさんは「この加速の原因は説明されていない」と述べ、多くの研究者が地球内部が原因と考えている一方、海や大気のモデルでは説明できないとしています[5]。

この速さが続くと、時計から1秒を引く「負のうるう秒」が必要になる日が来るかもしれません[4]。詳しくは別の記事にあります。→ 負のうるう秒はあり得るのか

外核の液体の運動は、固体の地球の自転に影響する。UCサンディエゴ校の記事は、1972年以降、核の回転が遅くなる傾向があり、その角運動量が固体の地球に渡った結果、1日が50年前より約0.0025秒(2.5ミリ秒)短くなったと述べている[4]。

2020年以降、短い日の記録が相次いだ。EarthSkyが紹介するtimeanddateの集計では、2020年より前の最短は約1.05ミリ秒短い日で、2024年7月5日の約1.66ミリ秒がそれを更新した[5]。

2020年以降の日長短縮を何が起こしているのかは、まだ決まっていない。モスクワ大学のレオニード・ゾートフは「原因は説明されていない」と述べ、多くの科学者は地球内部が原因と考えているが、海洋と大気のモデルでは説明がつかないとする。ゾートフは以前、減速へ転じると予測したが、早すぎる予測だったと認めたという[5]。

この速さが続いたとき、UTCから1秒を削る調整(負のうるう秒)が必要になるのは、アグニューの見積もりでは2028年ごろ(ネイチャー誌の解説に基づく報道では2029年)で、氷の融解がなければ約3年早まったとされる[4][6]。この制度の話は別の記事に譲る。→ 負のうるう秒はあり得るのか

6. じぶんで しらべて みよう

6. 自分で調べてみよう

6. 自分で確かめる ── 公開データと体験で

まず、からだで ためして みましょう。くるくる まわる いすに すわり、りょうてに 本を もって うでを ひろげます。ゆっくり まわって もらって、うでを むねに ひきよせると、まわる はやさが かわります。かならず おとなの 人と いっしょに、ゆっくり やりましょう。くらっと したら すぐ やめます。

つぎに、おうちの 人と、「うるう秒」という ことばを しらべて みましょう。地球の 日の ながさと つながって います。むずかしくても、きょうみが わいたら それが さいしょの 一歩です。

まず、体で確かめてみましょう。回転いすに座り、両手に本を持って腕を広げます。家の人にゆっくり回してもらい、腕を胸に引き寄せると、回転が速くなります。必ず大人と一緒に、ゆっくり行い、目が回ったらすぐやめましょう。

次に、家にある時計の秒の表示を、同じ時刻に1週間ほど見てみましょう。地球の1日の長さの変化は、この時計では見分けられないほど小さいことも、考えてみてください。この記事の出典にあるUCサンディエゴ校の記事、EarthSkyの記事は、短い日の原因について、どこまで分かっていて、どこから分かっていないかを知る入り口になります。

角運動量保存は、回転いすと両手に持った重り(本でも代用できる)で確かめられる。大人と一緒に、ゆっくり行い、目が回ったらすぐやめること。

日長の観測値は、IERS地球回転センターなどが公開している(英語)。季節変動、エルニーニョの影響、2020年以降の短縮を、自分でグラフにして見るとよい。ゾートフらが「原因は説明されていない」と述べた2020年以降の加速を、データで見るところが、この分野のいちばん面白い入り口である。

しらべた もとの じょうほう

参考にした情報源

参考にした情報源と、その使い方

数字は出典の値にもとづく。UCSDの記事と、EarthSkyの記事が紹介する数値は、一次の論文でなく、それらを紹介した記事から取った。アグニューの2029年は、NPRの報道が紹介するネイチャー誌の解説にもとづく。

  1. NASA JPL「Japan Quake May Have Shortened Earth Days, Moved Axis」 https://www.jpl.nasa.gov/news/japan-quake-may-have-shortened-earth-days-moved-axis/ (地震による日長の短縮と軸の移動)
  2. Dickey et al. 1993, "The oceanic contribution to the Earth's seasonal angular momentum budget," Geophysical Research Letters 20(24). https://ntrs.nasa.gov/citations/19950047236 (季節変動の振幅約1000マイクロ秒、大気が95%以上)
  3. IERS地球回転センター(パリ天文台)「El Niño 2015-2016 appears in Earth rotation rate」 https://syrte.obspm.fr/spip/en/actualites/article/el-nino-2015-2016-appears-in-earth-rotation-rate.html (エルニーニョと日長の0.5ミリ秒)
  4. UC San Diego「Global Warming Is Influencing Global Timekeeping」 https://today.ucsd.edu/story/global-warming-is-influencing-global-timekeeping (氷の融解、液体核、2028年ごろ)
  5. EarthSky「Earth will spin quickly: shortest days July and August」 https://earthsky.org/earth/earth-will-spinquickly-shortest-days-july-and-august/ (2024年7月5日の記録、月の位置、ゾートフの発言)
  6. NPR「Negative leap second: Climate change delays unusual step for time standard」 https://www.npr.org/2024/03/30/1241674216/climate-change-time-negative-leap-second (氷の融解と2029年、スケート選手のたとえ)

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